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映画講座「生誕100+1年 マキノ雅弘(正博)」
講師:山根貞男

2009年4月18日(土)
 
マキノ雅弘生誕101年を祝うために
           山根貞男
 神戸映画資料館で4月下旬、マキノ雅弘(当時は正博)の『肉体の門』と『幽霊暁に死す』が上映される。声を大にして断言するが、必見の2本である。
 第1の理由としては、この2本はめったに見られない。『肉体の門』は散逸したと見なされていた作品で、近年、国立フィルムセンターによりフィルムが発見された。『幽霊暁に死す』は、マキノ監督自身の会社の作品ゆえ、マキノ家の秘蔵フィルム(16ミリの改題版『生きてゐた幽霊』)しか存在しない。むろんビデオもDVDもない。そんな貴重な2本が特別上映される。
 第2に、この2本は面白い。見ないと損をするくらいに。というと、テキ屋の口上みたいだが、そこにはマキノ監督個人の事情が関わっており、それが必見の第3の理由となる。
 マキノ正博は1948年から50年にかけて、ヒロポン中毒でスランプ状態にあったといわれる。ヒロポンは覚醒剤のひとつで、それを常用したことは自伝『映画渡世』で語られている。注目すべきことに、1948年の『肉体の門』『幽霊暁に死す』はまさにその真只中で撮られた映画なのである。
 そこで、ぜひ2本を自分の目で見ていただきたい。この普通に面白い映画、いや、普通以上に楽しく見応えのある映画を、薬物中毒で再起不能といわれたことと結びつけ、軽んじることなど出来ようか。2本には、歌と笑いがあふれ、キャメラが軽妙に動き、この監督ならではの映画的醍醐味を楽しませてくれる。
 マキノ正博は1950年に雅弘に改名したが、作品歴が一変するわけはない。そのことは、全フィルモグラフィの真ん中に位置する問題の2本が魅惑たっぷりに体現している。詳しくは4月18日の講座で。マキノ雅弘生誕101年を祝うために。
 
 

山根貞男(映画評論家)
1939年大阪生まれ。映画批評誌「シネマ69」(1969-71)を編集・発行。蓮實重彦とともに海外の映画祭で加藤泰、鈴木清順、成瀬巳喜男の特集に関わる。1986年より始めた「キネマ旬報」での日本映画時評は現在も連載中である。主な著書に『映画狩り』、『映画の貌』、『現代映画の旅1994-2000』などがあり、『映画渡世』(山田宏一との共編)、『加藤泰、映画を語る』(安井喜雄との共編)、『成瀬巳喜男の世界へ』(蓮實重彦との共著編)などのインタビューや編著も多数。最新刊は『マキノ雅弘 映画という祭り』

 

《料金》(16ミリフィルム参考上映付き)
一般:1500円 学生・シニア:1200円
会員一般:1200円 会員学生・シニア:1000円

 
[関連特集上映] [生誕100+1年 マキノ正博](特集上映は4/17金〜4/19日です)

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