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連続講座:映画批評_新しい映画と観客のために
第2回 甦る相米慎二

 『甦る相米慎二』(インスクリプト/9月30日出版予定)刊行記念
2011年9月24日(土)16:00(終了予定19:00)
 
講師:藤井仁子(映画批評)
ゲスト:濱口竜介(映画監督)
 気鋭の映画批評家たちによる連続講座。「映画批評はいまだ有効か」の堂々巡りを超えて、何度も新しくよみがえり続ける映画と観客のための批評の実践です。
 今回は、相米慎二論集『甦る相米慎二』(インスクリプト)の刊行を記念し、編者のお一人である藤井仁子氏を講師に、寄稿者である濱口竜介監督をゲストにお迎えします。80〜90年代の日本映画界を疾走し、同時代において多くの共感を得、その後にも深甚な影響をあたえた相米映画のその魅力を、あらためて顕彰/検証します。講座終了後、参考上映あり。
 
『甦る相米慎二』(インスクリプト/9月30日出版予定)を9月23日より神戸映画資料館で先行発売
  
[関連企画] 上映会[没後10年 甦る相米慎二]
「ラブホテル」「朗読紀行 にっぽんの名作「月山」」
 
甦る相米慎二、その 〈はじまり〉   藤井仁子
 映画が相米慎二を失って10年になる。その早すぎる死を惜しむ声はいまだに跡を絶たないが、他方で相米はいいときに死んだと、相米への愛ゆえにあえて口にする人もいる。確かに相米の死後、デジタル化の動きに加え、テレビ局と広告会社による映画産業の支配が呆れるほどのペースで進み、相米が撮るような作家性の強い映画が占めるべき場所は、現在の日本映画界にはほとんど残されていないかに見える。だが、ポルノに辛うじて活路を見いだした70年代の瀕死の撮影所で修業時代を送り、80年代にさまざまな製作形態を渡り歩きながら監督としての経歴をスタートさせた相米とは、考えてみれば撮影所址の瓦礫の隙間から、その下に眠る厖大な死骸を養分として奇跡的に咲いた一輪の花のような存在ではなかっただろうか? だから、映画界全体が再び瓦礫からの出発を強いられている今だからこそ、あらためて映画は相米を必要としているのではないか?
 われわれは、そのような意識から『甦る相米慎二』を作った。相米の映画が相米一人では決して作られえなかったように、この本も多くの人々の協働によって成り立っている。今回はそのなかから、まさしく相米以後の地平において瞠目すべき作品を発表しつづけている濱口竜介監督をゲストにお迎えし、まだまだ話し足りない相米論議を本の外で続行したいと思う。すでに11月の東京フィルメックスでは監督作全13本の一挙上映が決まり、相米と縁の深い日活が創立100周年を迎える来年にはこの波は海外にまで到達するだろう。ついに世界が相米慎二を発見しようとしている。『夏の庭 The Friends』の舞台でもある神戸の地で、その〈はじまり〉を目撃していただきたい。

藤井仁子(ふじい・じんし/映画評論家)
1973年生まれ。映画評論家。早稲田大学文学学術院准教授(映画学)。映画批評サイト『テアトル・オブリーク』主宰。編著書に『入門・現代ハリウッド映画講義』(人文書院)、共著書(分担執筆)に『成瀬巳喜男の世界へ』(筑摩書房)、『映画の政治学』(青弓社)、『日本映画とナショナリズム 1931-1945』『映画と「大東亜共栄圏」』、『映画と身体/性』(いずれも森話社)などがある。『甦る相米慎二』(インスクリプト/9月出版予定)を木村建哉、中村秀之と共編。
 
濱口竜介(はまぐち・りゅうすけ/映画監督)
1978年生まれ。東京大学在学中より自主映画製作を始め、卒業後、映画・ドラマの助監督、経済番組のアシスタント・ディレクター/ディレクターを経て2006年に東京藝術大学大学院映像研究科に入学。4本の映画を製作し、なかでも『PASSION』は2008年のサンセバスチャン国際映画祭、東京フィルメックスのコンペに出品されるなど、国内外の映画祭で上映された。以降の監督作に『永遠に君を愛す』(2009)、日韓共同製作作品『The Depths』(2010)などがある。2010年神戸映画資料館において 〈濱口竜介作品集〉 を開催。

 

《参加費》 1500円(講座+参考上映)
*ご予約受付中 
info@kobe-eiga.net 宛に、お名前、連絡先(電話)、参加希望日を書いてお送りください。
追って予約受付確認のメールを差し上げます。
 
《割引》
講座参加者は関連上映作品の鑑賞料200円引き

共催:インスクリプト

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