公開研究会
イメージのサーキュレーションとアーカイブ
この公開研究会は、これまで独自の文脈を築いてきた「映像(イメージ)研究」と「アーカイブ研究」が、改めて出会う場となるべく企画されたものです。
映像は本来、単体で存在するものではなく、「群れをなす」ものでした。また同時に個々の作品も、その輪郭の内には様々な視覚表現や音像(サウンド・イメージ)、文字やフレーム、メタ情報など、「痕跡の群れ」がアンサンブルとして構造化されていました。それを踏まえると、アーカイブ研究は、これまでの映像研究が分析的に担ってきた仕事を、実践的なアプローチから解体し、また映像研究は、アーカイブ研究がメタレベルに散らしてしまう記憶と認識の核を、再び編み直す手がかりを与えてくれる、という互いの関係が見えてきます。
サーキュレーション(「循環」)は、その協働の可能性を引き寄せるコンセプトとして浮かび上がったものです。その根底には「変容」「流れ」があります。マーシャル・マクルーハンが最晩年に著した「テトラッド(強化・回復・衰退・反転)」(『メディアの法則』)はまさにこの「変容の記述」の一般化の試みの一つといえましょう。この中に起こる意味と物性の絡み合いこそが、イメージ×アーカイブが相互に指示し合う、あるいはその結節点を辿りながら転移し、乗り移り、過去から現在・未来へ渡り歩く、原メディア的な「動き(プロセス)」なのです。
今回は特に、国内における「小型映画」の存在に興味を抱いた多様な分野の研究者が集まり、議論を展開します。この100年、無数に制作され、散らばり、埋もれてしまったイメージ群に再び光を当てる方法とは何か――近年発掘されたいくつもの映像を上映しながら、様々な角度から言葉を重ねてみたいと考えています。「作者」「作品」という旧来の殻を割って、 私たちはどのような世界を描くことができるのでしょうか。
──水島久光
第一部「散逸と(再)統合」13:00〜14:40
神戸映画資料館が収蔵する戦前のアマチュア映像(神戸映画保存ネットワークと神戸大学によるデジタル化)の上映と解説。上映映像について参加者のあいだでコミュニケーションを形成する。
解説者:板倉史明(神戸大学)他
上映:
『ガランドウの太鼓』(1934/坂本為之)
『鉤を失った山彦』(1936/竹村猛児)
『蜘蛛と頼光』(1938/竹村猛児)
『かぐや姫』(1941/荒井和五郎)
『ヴォルガの舟唄』『旋律』『千鳥の曲』(森紅)
第二部「映像のミクロストリア」15:00〜18:00
アマチュア映像制作者(森紅や荻野茂二など)や彼/彼女らの映像をめぐるミクロストリアについて思考し、参加者のあいだでイメージのサーキュレーションについて検討する。
上映作品:森紅作品、荻野茂二作品他
報告者:原田健一(新潟大学)、水島久光(東海大学)、北村順生(新潟大学)、榎本千賀子(新潟大学)、椋本輔(横浜国立大学)、松谷容作(神戸大学)、藤原征生(京都大学)
《参加費》無料 《会場》神戸映画資料館
共催:神戸大学地域連携事業「映像を媒介とした大学とアーカイブの地域連携」、一般社団法人神戸映画保存ネットワーク