松本俊夫特集

日本の前衛映画の巨匠・松本俊夫は映像作家としてだけでなく、「映像の発見―アヴァンギャルドとドキュメンタリー」などの著作を通じて制作・理論の両面から「映像とは何か」を問うてきた。記録映画、劇映画、実験映画、ヴィデオ・アートなど、領域を横断して映像史を体現する松本俊夫の軌跡を辿る新作ドキュメンタリー『映像の発見=松本俊夫の時代』五部作を軸に特集上映する。

 

matsumoto5-02『映像の発見=松本俊夫の時代』五部作
(2015/計700分)ブルーレイ上映
製作:プロダクション・バンブー
監督:筒井武文
撮影:瀬川龍、小野寺真、鈴木達夫
照明:市川元一
録音:山崎茂樹
サウンドデザイン:森永泰弘
編集:山崎梓
プロデューサー:武井登美

 

matsumoto1-01第Ⅰ部 記録映画篇(137分)
主な登場人物:藤原智子、湯浅譲二、観世栄夫、一柳慧、工藤充、佐々木守
1932年生まれの松本俊夫、その青春時代の映画との出会いから、初期の記録映画時代を語る。新理研映画で実験的なPR映画『銀輪』を手がけた後フリーとなり、映画のみならずラジオ、テレビ、演劇と多彩な活動を繰り広げる。

 

matsumoto2-01第Ⅱ部 拡張映画篇(153分)
主な登場人物:西嶋憲生、かわなかのぶひろ、波多野哲朗、金井勝、坂尻昌平、高山英男
3面マルチプロジェクション『つぶれかかった右眼のために』(1968)でカオスをはらんだ時代を捉え、大阪70年万博「せんい館」での映像表現に挑戦。第一批評集「映像の発見」の影響力の大きさが各氏の証言から浮かび上がる。

 

matsumoto3-01第Ⅲ部 劇映画篇(140分)
主な登場人物:中条省平、渡辺哲也、菊池滋、押切隆世、佐々木伯
松本の劇映画第一作『薔薇の葬列』(1969)から『修羅』(1971)、秋吉久美子のデビュー作ながら一時公開中止となった『十六歳の戦争』(1973)、そして『ドグラ・マグラ』(1988)に至る劇映画の系譜を探る。

 

matsumoto4-01第Ⅳ部 実験映画篇(109分)
主な登場人物:川村健一郎
実験映画の流れをたどりつつ、90年代以降の沈黙の意味を問う。2006年に川崎市市民ミュージアムで開催された特集上映「映像の変革」の関連企画展「眩暈の装置:松本俊夫をめぐるインターメディアの鉱脈」でのインスタレーションも記録。そこには松本の遺作(!)が展示されている。

 

matsumoto5-01第Ⅴ部 映画運動篇(161分)
松本と同様、映像作家で批評家である筒井武文が松本の書斎を訪ね、批評・映画運動に関する証言をまとめる。「記録映画作家協会」「映像芸術の会」「季刊フィルム」などで共闘した作家たちや、大島渚との論争などについて語られる。

 

 

 

 

松本俊夫監督作品集

haruwoyobu01春を呼ぶ子ら
(1959/20分)16mm上映
製作:新世界プロダクション
脚本・演出:松本俊夫 撮影:上村龍一
企画:進路指導シリーズ企画委員会
集団就職で都会へ出て行く若者を通して、日本の社会構造に疑問を投げかける。撮影現場は岩手県の山村と、労働力不足で中卒者を受け入れる工場の多い東京の下町。盛岡駅から中学生たちが送り出されてゆくラストシーンは松本監督の熱い思い入れが感じられる。

 

nshijin01西陣
(1961/26分)16mm上映
企画・制作:京都記録映画を見る会、「西陣」製作委員会 製作:浅井栄一 演出:松本俊夫
脚本:関根弘、松本俊夫 撮影:宮島義勇
「京都記録映画を見る会」の上映運動の成果として生まれた。当時のチラシのコピーには「日本で初めて作られた映画詩、機械と手と気のとおくなるようなハタ織り、その入り組んだ小路の奧に住む悪魔祓い釘抜き地蔵、伝統の地に現代の孤独をあばいた異色ドキュメンタリー」とある。1962年度ベネチア国際記録映画祭グランプリ受賞。

 

ishinohana01石の詩
(1963/25分)16mm上映
製作:東京放送、東京テレビ映画 構成:松本俊夫 音楽:秋山邦晴
瀬戸内海に臨む四国庵治村は、庵治石と呼ばれる御影石の産地。この村で営々と山の石に挑む石工たちの姿を写真構成で描く映画詩。

 

 

 

 

syura01修羅
(1971/134分)35mm上映
製作:松本プロ+ATG 脚本・監督:松本俊夫
撮影:鈴木達夫 美術:朝倉摂
出演:中村賀津雄、唐十郎、三条泰子
1960年代から1970年代にかけ映画ファンを魅了した日本アートシアターギルド(ATG)との提携作品で『薔薇の葬列』に続く松本の長編二作目。日本の古典、鶴屋南北の狂言「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」と、それを改作して青年座が上演した石沢秀二の台本をもとに、松本が映画用に脚色した異色の時代劇。全編夜の闇、しかも登場人物12人中、9人が死に果てるという凄惨な怨念劇で、松本はパンフレットに「私は積もりに積もった私と私の時代の青春のうめきを、力の及ぶかぎり塗りこめることによって、鎮魂のはなむけとなる映画をつくろうとした。そうでもしなければ、私は私なりに70年代へと向うことができなかったからである」と作品の狙いを述べている。

 

トーク(11月1日)
筒井武文
(映画監督) 川村健一郎(映画研究者/立命館大学教授)

 

協力:NPO法人 戦後映像芸術アーカイブ


Kobe Documentary Film Festival 2015
第7回神戸ドキュメンタリー映画祭
10月17日(土)、31日(土)〜11月10日(火)

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〈ホームムービーの日 in 神戸〉松本俊夫特集ロビンソン三部作
「波のした、土のうえ」上映と対話ドキュメンタリーの宝箱 山形国際ドキュメンタリー映画祭セレクション

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