日本映画名画鑑賞会
2009年12月5日(土)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、上映1週間前より電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)
《料金》
一律500円
日本映画名画鑑賞会
2009年12月5日(土)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、上映1週間前より電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)
《料金》
一律500円
[貸館]ホラー映画向上委員会 MebiusRing 上映会
2009年12月5日(土)18:15 / 20:00
12月6日(日)13:15 / 14:30 / 15:45
8月に上映させていただきました東京下北沢トリウッドでは満席御礼で非常に好評を受け、この度神戸に上陸する事となりました!
ホラー映画向上委員会 MebiusRingでは、『憑依』を始め選りすぐりの作品をこれからも皆さまにお届けしたいと思っております。
この機会に是非、奮ってお足運び下さいませ。
『憑依』(50分)
脚本・監督:柘山一郎 撮影:國松正義 録音:辻 豊史
出演:吉田テツタ、高橋理通子、山梨ハナ、吉本大輔、中嶌 聡、瀬戸悠斗(子役)、渡部博哉
父親が亡くなった事で、18年間離れていた実家に帰って来た和夫。子供の頃、その家には誰だか分からないが美しい女性が居た。うっすらとした記憶を辿っていくうちに、妻の様子がおかしくなってくる。
[トーク]12月5日(土)19:05
柘山一郎監督によるトークショー
主催:ホラー映画向上委員会 MebiusRing
《料金》一律 700円
[貸館]神戸芸術工科大学 アスタ・アニメ上映会
2009年12月12日(土)13:00〜
毎月1回(来年3月まで:予定)神戸映画資料館でアニメ上映会を開催します。
12月は神戸映画資料館収蔵の珍しい日本のアニメーションをご覧いただきます。
「猿正宗」
(1930/12分)監督:村田安司
「茶目子の一日」
(1931/7分)監督:西倉喜代治
「のらくろ伍長」
(1934/11分)監督:村田安司
「ちんころ平平玉手箱」
(1936/8分)監督:大藤信郎
「べんけい対ウシワカ」
(1939/14分)監督:政岡憲三
「桜」
(1946/8分)監督:政岡憲三
主催:神戸芸術工科大学
《料金》無料
[貸館]神戸活動写真倶楽部 港館 presents
m a g i c k
2009年12月13日(日)15:00〜 / 19:00〜
『ビール瓶の想い』
脚本・監督:アカツキ サトシ
出演:ステラビール × eri & mizuho × アカツキ サトシ
パブのテーブルに置き去りにされたビールの空瓶。
リサイクルされるのか、はたまたゴミ捨て場に埋められるのか?
憂鬱な未来を描いてた彼の身に起こった不思議な出来事の話。
『into that world』
監督:吉田勝二 脚本:アカツキ サトシ
出演:原田功一 × 安田高彰 × アカツキ サトシ
酒の肴に心霊談義をしていた二人の男。
ちょっと面白い物を見せましょうと言う怪しい男に連れられて怪しいビルの一室へ。
そこで二人が体験するちょっとあぶない実験の話。
『昼下がりのカフェにて、文房具店の話』
監督:衣笠竜屯 脚本:アカツキ サトシ
出演:林絢子 × アカツキ サトシ
とあるカップルの別れの日。
気まずい沈黙をなんとか破ろうと頑張ってみた男のお話の話。
*** with special events ***
magic show by
fuga
神戸を中心に活躍するマジシャン。
テーブルからステージまで幅広くこなす。
得意技は鳩出し。
live music by
miho
自身の根底にあるもの「愛」
奇跡のような出会いを力強く繊細に歌う。
4月にシングル“history of love”をリリース。
主催:神戸活動写真倶楽部 港館
(お問い合せ)sattoangel@hotmail.com
《料金》前売1500円 当日2000円
ヤスミン・アハマド監督 “オーキッド4部作”
2009年12月18日(金)~21日(月)
マレーシア映画の新しい波を決定的に印象づけたヤスミン・アハマド監督の “オーキッド4部作” を一挙上映。
マレー系の少女オーキッドを中心にしたこの連作の劇中の時間軸は、『ムクシン』(06)→『細い目』(04)→『ラブン』(03)→『グブラ』(05)となり、製作年度順に時間が経過するのではなく、行きつ戻りつしながらその世界を広げていきます。
2009年7月、51歳の若さで逝去したヤスミン・アハマドが描いた「愛の世界」を体験してください。
ワスレナグサ――ヤスミン・アハマドへの手紙
私は、あなたの映画がマレーシアの現実を厳しく見据えながらも、「マレーシア映画」を超えていたからこそ心奪われたのだということを告白しなければなりません。エドワード・ヤンの映画が台湾の現実に根ざしながらも「台湾映画」を超えていたように、チョン・ジェウンの『子猫をお願い』が韓国の現実に根ざしながらも「韓国映画」を超えていたように、マレーシア以外のどの国からも生まれなかったであろうあなたの映画も、「マレーシア」や「東南アジア」という枠に閉じこめて語るべきではないと確信されたのです。同じように、あなたの映画は女性にしか撮ることのできない映画でありながら、「女性映画」の枠を軽く飛び越えてしまっている。それどころか好きな映画は『男はつらいよ』だというあなたにあっては、「芸術映画」と「大衆映画」の区別すらまるで通用しない。あなたは「ナントカ映画」ではなく、ただ「映画」を撮りつづけたのです。しかしただそれだけのことが、現代の作家誰もが直面するさまざまな困難に加え、マレーシアに固有の検閲と因習の壁に阻まれての苛酷きわまりない消耗戦であっただろうことは容易に推測できます。(中略)あなたの映画はどこを取っても映画的としかいいようのない瞬間に満ち満ちており、評価を下すより先に頬がゆるみ、目頭が熱くなってしまう。そのような瞬間を前に言葉は要らないと何度つぶやきかけたことでしょう。難解なところなど一つもないあなたの映画は、ただただ純粋に「映画」であることによって批評家を試練にかけるのです。
藤井仁子(映画評論家)
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「ラブン」Rabun
(マレーシア/2003/85分/BETACAM)
監督:ヤスミン・アハマド
製作:ロスナ・モハマド・カシム
撮影:ロウ・スン・キョン
編集:ミラジ・ポスト
美術:ウジャン
出演:M・ラジョリ、カルティナ・アジズ
定年を迎えたパッ・アタンとマッ・イノムの夫婦は、都会で就職したばかりの娘オーキッドと同居するために田舎を離れるが、都会の生活に馴染めず、オーキッドに何かと愚痴をこぼす。やがて母マッ・イノムが父親から田舎の家を相続していたことが分かり、これで週末や休暇には以前のような田舎暮らしが楽しめると喜ぶ。しかし、リフォーム業者と親戚たちが裏で取引していたことが発覚し……。CM業界から映画界へ転身したヤスミンの記念すべきデビュー作。オーキッドの年代記としては『細い目』と『グブラ』の間の時期の物語である。タイトルのRubunとは「鳥目」の意。MVA(マレーシア・ビデオ・アワード)最優秀アセアン映画賞受賞作。
「細い目」Sepet
(マレーシア/2004/107分/35mm)
監督:ヤスミン・アハマド
製作総指揮:ロスナ・モハマド・カシム
製作:エリナ・シュクリ
撮影・照明:ロウ・スン・キョン
美術:ウジャン&オデン
編集:アファンディ・ジャマルデン
出演:ン・チューシオン、シャリファ・アマニ
“金城武命!”のマレー系少女オーキッドと、露店で香港映画ビデオを売る華僑少年ジェイソンの初恋の物語。「私は『細い目』で初恋を描きたかったのです。相手の長所も短所も、すべてを受け入れるのに5分もかからない。それが初恋です。初恋以上に真実の愛などあるのでしょうか。残念なことに、私の周りには真実の愛があることすれ信じていない人がほとんどです。そんな彼らを見ていて思い出すのは、ヴィスワヴァ・シンボルスカの詩の一節です。『真実の愛の存在を否定する者には、そんなものは存在しないと思わせておいてあげなさい。生きてゆく時も、死ぬ時も、そう信じてさえいれば、彼らも少しは楽になれるのです』」(ヤスミン・アハマド)。マレーシア版アカデミー賞グランプリ受賞作。東京国際映画祭最優秀アジア映画賞受賞作。
「グブラ」Gubra
(マレーシア/2005/113分/35mm)
監督:ヤスミン・アハマド
製作総指揮:エディ・アブドラ、ナン・サレー
製作:エリナ・シュクリ
撮影:ロウ・スン・キョン
音楽:ピート・テオ
出演:シャリファ・アマニ、アドリン・ラムリ
広告業界のエリートと結婚したオーキッドは、父の入院をきっかけに、夫に裏切られているかもしれないと気づく。一方、街の反対側にある低所得者の地域では、リベラルな若いイスラム教聖職者とその妻が、近隣の娼婦たちとの問題に巻き込まれながら暮らしている。二組の夫婦を対照させながら、オーキッドの結婚生活の幸福と不幸を見据えた第3作。タイトルのGubraとは「心配」「不安」の意。「私は『グブラ』はある種の祈りだと考えています。神から与えられた愛を、私たちはこうも愚かで不器用に扱ってしまうことをお許しくださいという祈りです」(ヤスミン・アハマド)。『細い目』に続いてマレーシア版アカデミー賞グランプリを受賞。
「ムクシン」Mukhsin
(マレーシア/2006/97分/35mm)
監督:ヤスミン・アハマド
製作総指揮:ディジョジー
製作:アハマド・プアド・オナク、ロスナ・モハマド・カシム
撮影:ロウ・スン・キョン
編集:ミラジ
出演:モハマド・シャフィー、シャリファ・アルヤナ
オーキッドは10歳、ムクシンは12歳。学校の休暇中に出会った二人はすぐに親友になるが、やがて恋する季節が訪れて……。友情と恋の狭間で揺れる思春期の入り口の輝きを描いた第4作。オーキッドの年代記としては最初の物語。「私は、ありふれているけれども、居心地の悪さをおぼえるような人間の行動が持つ意味を『ムクシン』で掘り下げてみたかったのです。新しい遊びを覚えるのもいつも一緒で、一番仲良くしている親友が、いつしか自分に対して愛情を向け始めているとしたら……。(中略)こういった状況に置かれた人間を考察するのは面白いと思います。愛という美しいものが、時に、友情という別の美しいものを壊してしまいますが、それはどうしてなのでしょう。それがなぜなのか、私自身もわからないのです」(ヤスミン・アハマド)。ベルリン国際映画祭出品作。
ヤスミン・アハマド Yasmin Ahmad
1959年生まれ。英国で心理学を学んだ後、広告業界で活躍。2003年『ラブン』で映画監督デビュー。“オーキッド4部作”の後、『ムアラフ―改心』(07)や『タレンタイム』(09)を手がける。日本人祖母のルーツをたどる新作「ワスレナグサ」の製作に取りかかっていたが、2009年7月25日、51歳の若さで逝去。
フィルム・写真提供及び協力:国際交流基金
協力:一般社団法人コミュニティシネマセンター
《料金》
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円
《割引》
2本目より200円引き
山形国際ドキュメンタリー映画祭リポート
2009年12月26日(土)・27日(日)
今年の山形国際ドキュメンタリー映画祭「アジア千波万波」に招待された佐藤零郎を迎え、自作への想いや映画祭の成果などを語っていただく。また、評判の良かった「ナトコの時間」に想いを馳せ当館所蔵作品を特別上映。ナトコ(Natco)とは米国製16ミリ映写機の名称で、1948年にCIE(Civil Information and Education Section民間情報教育部)から文部省に1300台が無償貸与、各都道府県に配布された。それと併行してCIEは1947年からアメリカ製16ミリ短編教育映画を供給して日本の民主主義啓蒙に努めた。CIE映画は後にUSIS(United States Information Service 米国広報文化局)に引き継がれ、各地のアメリカ文化センターや視聴覚ライブラリーで活用された。
「長居青春酔夢歌」Nagai Park Elegy
(2009/69分/DVCAM/英語字幕付き)
監督・撮影・編集:NDS佐藤零郎
撮影協力:張領太、小嶋房子、中村葉子、布川徹郎
音構成:浦田晴夫、市川和孝 音楽:ありちこく
製作:NDS(中崎町ドキュメンタリースペース) 提供:川人りゑ
釜ヶ崎、長居、靫、扇町など公園にテント村を形成し、そこで生活する野宿者の多い大阪。2007年の世界陸上を控えて長居公園テント村では野宿者たちの強制排除が行われたが、その中で格闘する人々の姿を密着取材。大阪市北区中崎町に拠点を置いて活動するNDS(中崎町ドキュメンタリースペース)の佐藤零郎がメンバーの協力を得て完成、今年の山形国際ドキュメンタリー映画祭「アジア千波万波」上映作品に選ばれた。映画祭後初の凱旋上映である。上映後、佐藤零郎監督によるトークあり。
ナトコの時間in神戸
「電力と農園」Power and Land
(アメリカ/封切1946/20分/16mm/日本語字幕無し)CIE06
監督:ヨリス・イヴェンス
アメリカの一農村が、政府の援助によって電化し発展する様子を描く。ドキュメンタリー映画作家として著名なヨリス・イヴェンスの作品で、「動力と大地」として知られた作品。日本用CIEプリントではないが参考上映。
「平和への意志」The Will for Peace
(アメリカ/封切1951/33分/16mm/日本語版)CIE345
第二次大戦後、アメリカが推進した世界食糧農業機構、世界保健機構、国際難民機構などに参加しないソ連を批判。欧州はマーシャルプランにより各国の支援による復興を遂げつつある中、ドイツではソ連がベルリンを封鎖するもアメリカは空輸作戦で対抗。日本では自給力を手助けしてデモクラシーを守り育て、戦争より平和への道を手助けしている。
「わが子はめくら」My Child Is Blind
(アメリカ/封切1952/21分/16mm/日本語版)CIE371
製作:ヴィクター・D.ソロウ
ニューヨーク市のライトハウス看護婦学校の協賛を得て、目の見えない子を持つ親がどう力づけて育てるか、食事は自分でするように仕向けるなど盲児幼稚園の教育ついてを描く。
《当日料金》
一般:1200円 学生・シニア:1000円
会員一般:1000円 会員学生・シニア:900円
《割引》
2プロ目は200円引き
日本映画の新しい地平01「TOCHKA」
12月25日(金)〜29日(火)
急遽決定
25日(金)松村浩行監督来館
上映後 質疑応答
死者のまなざしを求めて彷徨う女
死者のまなざしに捕われたままの男
国境の海岸を見張り続けるトーチカの暗闇が
二人の記憶を重ね合わせる
「TOCHKA」
(2008/93分/DVCAM)
監督・脚本:松村浩行
助監督:大城宏之、石住武史、本間幸子
撮影:居原田眞美 録音・編集・整音・劇中写真:黄永昌
装置:相馬豊 装飾:浦井崇 衣装:居原田眞美
スチール:宮本厚志 制作:柴野淳、河合里佳
出演:藤田陽子、菅田俊、上野龍成、上野凌雅、モモ・ゴッツ・サッタール
[公式サイト]
映画『TOCHKA』は、北海道根室市の海岸に実際に残存する戦争遺跡=トーチカを舞台に、ほぼワンロケーション、主要登場人物二人、劇中音楽もなく撮影現場の環境音のみという、過激なまでに切り詰められた表現によって構成された野心作である。
太平洋戦争末期に建造されたものの、実戦では使用されることなく、とうの昔に廃墟と化したトーチカ群。分厚いコンクリートの壁で囲まれたその空間には、現在も冷たい闇が満ちている。その深い「闇」に引き寄せられるように、不意の出会いを遂げる一組の男女を演じたのは、現在の日本映画界に不可欠な活躍を続ける菅田俊と、『犬猫』での主演によって清冽な印象を残した藤田陽子。
広大な北の荒野をバックに、ただ眼差しと言葉によって、互いに距離を推し量るかのような息詰まる二人のやりとりには注目である。
個々人が抱える内なる「闇」としての記憶。その極めて私的な記憶を、同じひとつの場所を介して、見知らぬ他者と分かち持つことのかけがえのない意義。危険さと背中合わせになったある極限的な状況設定のもと、これらの根源的な主題を大胆かつ現代的な映画的形態のうちに具現化した本作は、今日活況を呈しているかに見える若手監督の作品群のうちにあっても特異な位置を占めており、今こそ多くの観客の目と耳によって確かめられるべき稀有な映画といえよう。
《当日料金》
一般:1500円 学生・シニア:1000円
会員一般:1000円 会員学生・シニア:900円
シネ・ヌーヴォX、プラネット・プラス・ワン、神戸映画資料館
3館共通前売り券(Pコード 461-491) 1200円
(当館のスケジュールチラシには1000円とありますが誤りです。ご迷惑をおかけします。)
『PASSION』とのセット券:1800円
日本映画の新しい地平02「PASSION」
12月25日(金)〜29日(火)
急遽決定
26日(土)濱口竜介監督来館
上映後トーク
「PASSION」
(2008/115分/HDCAM[上映DVCAM])
監督・脚本:濱口竜介 製作:藤井智 撮影:湯澤祐一 照明:佐々木靖之
美術:安宅紀史、岩本浩典 録音:草刈悠子 編集:山本良子 助監督:野原位 制作担当:渡辺裕子
出演:河井青葉、岡本竜汰、占部房子、岡部尚、渋川清彦
[紹介サイト]
結婚を間近に控えた一組のカップル。仲間の祝うパーティーの席上で、期せずして男の過去の浮気が発覚する。男と女は別れ、それぞれの夜を過ごす。等身大の20代男女が、夜の横浜を舞台に繰り広げる軽佻浮薄な恋模様、にも形而上学的な愛に関する考察、にも見える。彼らの辿り着いた結論に対して起こるのは感動か、嘲笑か。
コメント
群像劇を仕組んでそのなかから関係の劇を浮かび上がらせ転変させてゆく手並みに目を瞠り、流動的なキャメラワークやタテの構図における長回しの強度に舌を巻く。と同時に、新人がこんなことでいいのかと思う。何もかも達者すぎるからである。
山根貞男(映画評論家) 特別寄稿
かすかに口の端から漏れてくる一語が、一発の銃声のように、突然伸ばされる右手の握り拳のように、表面的には平穏に見える関係に確実に亀裂を入れていく現場に、ぼくらは作品の間、つきあっていくことになります。人間のアクションばかりが「活劇」を生んでいくわけではありません。
梅本洋一(映画評論家) 「nobody」28号より
そのダイアローグのセリフに唸った。俺はこんな映画を書きたかったのだ、と思った。
荒井晴彦(脚本家) 「映画芸術」426号より
濱口竜介の『PASSION』は、厖大かつ必ずしも「自然」ではない台詞の応酬を通じて「日本映画」の通念を爽快に破壊する。それでいてお仕着せの企画も難なくこなすであろうと予想させる演出力が頼もしい。俳優たちがみな過去の出演作とは比較にならぬほどいい顔をしているという事実に世間はもっと驚くべきだ。
藤井仁子(映画評論家) 「映画芸術」426号より
20代の終わりを迎えた若者たちの精神的危機を、デプレシャンを思わせる辛辣な台詞の応酬で描き切った傑作。短いカット・バックによる終盤の男女の「本音ゲーム」を断ち切るように、工場の白煙を背景にした超ロング・テイクの最後で決定的な言葉が漏れるとき、映画の神が降りて来る(としか言えない瞬間が訪れる)。精神を象徴するヒロイン河井青葉が圧倒的に素晴らしい。肉体を象徴する占部房子との間で、男たち(岡本竜汰、岡部尚)は、その二点間を往復することになる。単純なパートナーの取替え劇を混乱させる道化役としての渋川清彦も見逃せない。とにかく役者のすべてが胸を打つ好演である。タルコフスキー、ソダバーグよりいいという声もあがる前作『ソラリス』と続けて観れば、濱口竜介が現代日本映画の中核を担うべき作家であることを疑う者はいないだろう。
筒井武文(映画監督)
協力:東京藝術大学
《当日料金》
一般:1500円 学生・シニア:1000円
会員一般:1000円 会員学生・シニア:900円
『TOCHKA』とのセット券:1800円
※内容は予告無く変更する場合があります。
※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。