プログラムPROGRAM

ヤスミン・アハマド監督 “オーキッド4部作”
2009年12月18日(金)~21日(月)
 
マレーシア映画の新しい波を決定的に印象づけたヤスミン・アハマド監督の “オーキッド4部作” を一挙上映。
マレー系の少女オーキッドを中心にしたこの連作の劇中の時間軸は、『ムクシン』(06)→『細い目』(04)→『ラブン』(03)→『グブラ』(05)となり、製作年度順に時間が経過するのではなく、行きつ戻りつしながらその世界を広げていきます。
2009年7月、51歳の若さで逝去したヤスミン・アハマドが描いた「愛の世界」を体験してください。
 
ワスレナグサ――ヤスミン・アハマドへの手紙
  私は、あなたの映画がマレーシアの現実を厳しく見据えながらも、「マレーシア映画」を超えていたからこそ心奪われたのだということを告白しなければなりません。エドワード・ヤンの映画が台湾の現実に根ざしながらも「台湾映画」を超えていたように、チョン・ジェウンの『子猫をお願い』が韓国の現実に根ざしながらも「韓国映画」を超えていたように、マレーシア以外のどの国からも生まれなかったであろうあなたの映画も、「マレーシア」や「東南アジア」という枠に閉じこめて語るべきではないと確信されたのです。同じように、あなたの映画は女性にしか撮ることのできない映画でありながら、「女性映画」の枠を軽く飛び越えてしまっている。それどころか好きな映画は『男はつらいよ』だというあなたにあっては、「芸術映画」と「大衆映画」の区別すらまるで通用しない。あなたは「ナントカ映画」ではなく、ただ「映画」を撮りつづけたのです。しかしただそれだけのことが、現代の作家誰もが直面するさまざまな困難に加え、マレーシアに固有の検閲と因習の壁に阻まれての苛酷きわまりない消耗戦であっただろうことは容易に推測できます。(中略)あなたの映画はどこを取っても映画的としかいいようのない瞬間に満ち満ちており、評価を下すより先に頬がゆるみ、目頭が熱くなってしまう。そのような瞬間を前に言葉は要らないと何度つぶやきかけたことでしょう。難解なところなど一つもないあなたの映画は、ただただ純粋に「映画」であることによって批評家を試練にかけるのです。
   藤井仁子(映画評論家)
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「ラブン」Rabun
(マレーシア/2003/85分/BETACAM)
監督:ヤスミン・アハマド
製作:ロスナ・モハマド・カシム
撮影:ロウ・スン・キョン
編集:ミラジ・ポスト
美術:ウジャン
出演:M・ラジョリ、カルティナ・アジズ
定年を迎えたパッ・アタンとマッ・イノムの夫婦は、都会で就職したばかりの娘オーキッドと同居するために田舎を離れるが、都会の生活に馴染めず、オーキッドに何かと愚痴をこぼす。やがて母マッ・イノムが父親から田舎の家を相続していたことが分かり、これで週末や休暇には以前のような田舎暮らしが楽しめると喜ぶ。しかし、リフォーム業者と親戚たちが裏で取引していたことが発覚し……。CM業界から映画界へ転身したヤスミンの記念すべきデビュー作。オーキッドの年代記としては『細い目』と『グブラ』の間の時期の物語である。タイトルのRubunとは「鳥目」の意。MVA(マレーシア・ビデオ・アワード)最優秀アセアン映画賞受賞作。
 
 
「細い目」Sepet
(マレーシア/2004/107分/35mm)
監督:ヤスミン・アハマド
製作総指揮:ロスナ・モハマド・カシム
製作:エリナ・シュクリ
撮影・照明:ロウ・スン・キョン
美術:ウジャン&オデン
編集:アファンディ・ジャマルデン
出演:ン・チューシオン、シャリファ・アマニ
“金城武命!”のマレー系少女オーキッドと、露店で香港映画ビデオを売る華僑少年ジェイソンの初恋の物語。「私は『細い目』で初恋を描きたかったのです。相手の長所も短所も、すべてを受け入れるのに5分もかからない。それが初恋です。初恋以上に真実の愛などあるのでしょうか。残念なことに、私の周りには真実の愛があることすれ信じていない人がほとんどです。そんな彼らを見ていて思い出すのは、ヴィスワヴァ・シンボルスカの詩の一節です。『真実の愛の存在を否定する者には、そんなものは存在しないと思わせておいてあげなさい。生きてゆく時も、死ぬ時も、そう信じてさえいれば、彼らも少しは楽になれるのです』」(ヤスミン・アハマド)。マレーシア版アカデミー賞グランプリ受賞作。東京国際映画祭最優秀アジア映画賞受賞作。
 
 
「グブラ」Gubra
(マレーシア/2005/113分/35mm)
監督:ヤスミン・アハマド
製作総指揮:エディ・アブドラ、ナン・サレー
製作:エリナ・シュクリ
撮影:ロウ・スン・キョン
音楽:ピート・テオ
出演:シャリファ・アマニ、アドリン・ラムリ
広告業界のエリートと結婚したオーキッドは、父の入院をきっかけに、夫に裏切られているかもしれないと気づく。一方、街の反対側にある低所得者の地域では、リベラルな若いイスラム教聖職者とその妻が、近隣の娼婦たちとの問題に巻き込まれながら暮らしている。二組の夫婦を対照させながら、オーキッドの結婚生活の幸福と不幸を見据えた第3作。タイトルのGubraとは「心配」「不安」の意。「私は『グブラ』はある種の祈りだと考えています。神から与えられた愛を、私たちはこうも愚かで不器用に扱ってしまうことをお許しくださいという祈りです」(ヤスミン・アハマド)。『細い目』に続いてマレーシア版アカデミー賞グランプリを受賞。
 
 
「ムクシン」Mukhsin
(マレーシア/2006/97分/35mm)
監督:ヤスミン・アハマド
製作総指揮:ディジョジー
製作:アハマド・プアド・オナク、ロスナ・モハマド・カシム
撮影:ロウ・スン・キョン
編集:ミラジ
出演:モハマド・シャフィー、シャリファ・アルヤナ
オーキッドは10歳、ムクシンは12歳。学校の休暇中に出会った二人はすぐに親友になるが、やがて恋する季節が訪れて……。友情と恋の狭間で揺れる思春期の入り口の輝きを描いた第4作。オーキッドの年代記としては最初の物語。「私は、ありふれているけれども、居心地の悪さをおぼえるような人間の行動が持つ意味を『ムクシン』で掘り下げてみたかったのです。新しい遊びを覚えるのもいつも一緒で、一番仲良くしている親友が、いつしか自分に対して愛情を向け始めているとしたら……。(中略)こういった状況に置かれた人間を考察するのは面白いと思います。愛という美しいものが、時に、友情という別の美しいものを壊してしまいますが、それはどうしてなのでしょう。それがなぜなのか、私自身もわからないのです」(ヤスミン・アハマド)。ベルリン国際映画祭出品作。
 
 

ヤスミン・アハマド Yasmin Ahmad

1959年生まれ。英国で心理学を学んだ後、広告業界で活躍。2003年『ラブン』で映画監督デビュー。“オーキッド4部作”の後、『ムアラフ―改心』(07)や『タレンタイム』(09)を手がける。日本人祖母のルーツをたどる新作「ワスレナグサ」の製作に取りかかっていたが、2009年7月25日、51歳の若さで逝去。

 
フィルム・写真提供及び協力:国際交流基金
協力:一般社団法人コミュニティシネマセンター
 

《料金》入れ替え
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円
《割引》
2本目より200円引き

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