プログラムPROGRAM
2011 5

ストローブ=ユイレの21世紀
2011年4月29日(金・祝)〜5月8日(日)[期間中休館日無し]
最初の長編『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』で国際的に知られるようになって以来、その独自の制作姿勢により、孤高の映画作家と称され、ゴダールと同様、特別の注目を浴びてきたストローブ=ユイレ。“撮るたびに映画を発明しなおしている” と賞賛され、その作品は映画の自由と厳格さを同時に持つ。2006年にユイレが没した後も、ストローブは制作を続けている。今回は、 彼らの2000年以降の作品を特集上映する。

ジャン=マリー・ストローブ Jean-Marie Straub  ダニエル・ユイレ Danièle Huillet
ジャン=マリー・ストローブ(1936‐)とダニエル・ユイレ(1936‐2006)は、40年以上にわたって共同で映画製作を行い、私生活におけるパートナーでもあった。フランスからドイツを経てイタリアに行き、つねに異邦人として映画を撮り続けた。2000年以前の作品に、『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』(1968)、『モーゼとアロン』(1974)、『すべての革命はのるかそるかである』(1977)、『アメリカ(階級関係)』(1984)、『シチリア!』(1998)などがある。

  
Aプログラム
「労働者たち、農民たち」
Ouvriers, paysans(Operai, contadini)
(2000/123分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:レナート・ベルタ
原作はヴィットリーニの長編小説「メッシーナの女たち」の独白体で構成された第44章から第47章。映画に登場し証言するのは、社会的混乱の中、行き場をなくし、山中で新たな村を再建しつつある戦争難民たち12名であり、彼らがそれぞれ微妙に食い違う固有の観点から報告するのは、前年の秋からその年の初春にかけての苦難や対立とそれを乗り越えた喜びである。ただし、農民と労働者を演じる人々は撮影が行なわれた時代の服装のまま定点を動かず、「冬の出来事」の回想は具体的に映像化されることはない。
 
 
Bプログラム
「放蕩息子の帰還/辱められた人々」
Il ritorno del figlio prodigo/Umiliati
(2003/64分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:レナート・ベルタ
『労働者たち、農民たち』の挿話を再利用した「放蕩息子の帰還」と、その後日譚「辱められた人々」の二部構成。後者では、山中の共同体に地主代行や元パルチザンらが訪れ、土地所有権を侵害する違法性、自給自足経済の割りの悪さを説き、共同体を崩壊させる。
撮影のレナート・ベルタは、ダニエル・シュミット、ゴダール、オリヴェイラ監督作品も多く手がけている。
Cプログラム
「ルーブル美術館訪問」Une visite au Louvre
(2004/48分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ レナート・ベルタ
映画『セザンヌ』(1989)に続き、ジョアシャン・ガスケの創作的回想録「セザンヌ」のガスケとの対話の一部を参照しつつ、セザンヌが見たであろうルーヴル美術館所蔵の美術作品を注視する。対話の形で語られるセザンヌの思弁的な絵画論が女性の声で画面外で語られる。
Dプログラム
「あの彼らの出会い」Quei loro incontri
(2006/68分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:レナート・ベルタ
パヴェーゼの神話的対話詩篇「レウコとの対話」の最後の5篇「人類」「神秘」「洪水」「ムーサたち」「神々」を映画化。古代ギリシャの神々、半神半人、森の精、死すべき運命を持つ人間らの間で交わされる対話がオリュンポスに見立てた山腹で演じられる。
Eプログラム 4作品
「ヨーロッパ2005年、10月27日」Europa 2005 27 octobre
(2006/12分/デジタルベータカム)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
ストローブ=ユイレが初めてDVを用いたシネトラクト(アジビラ映画)。イタリア国営放送の委嘱により2006年春に撮られた。警察に追われ変電所に隠れていた15歳と17歳の移民少年が感電死したクリシー=ス=ボワの事故現場を撮影する。この事故が各地の暴動のきっかけとなった。
 
「アルテミスの膝」Il Ginocchio di Artemide/Le Genou d’Artemide
(2007/26分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ
『あの彼らの出会い』に引き続きパヴェーゼの「レウコとの対話」の一篇、エンデュミオンと見知らぬ者の対話「野獣」を映画化。監督名義はストローブ単独である。パヴェーゼ生誕100周年の2008年に公開予定だったが、2009年に延期された。出演は『あの彼らの出会い』のダリオ・マルコンチーニとアンドレア・バッチ。
 
「ジャン・ブリカールの道程」Itineraire de Jean Bricard
(2008/40分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ
ジャン・ブリカールは1932年にロワール河近辺で生まれ、その地域で暮らし、92年に引退するまでヴェルト島の砂質採取事業の責任者だった。ドイツ占領期などの過去を振り返る彼の談話は、1994年2月24日に社会学者ジャン=イヴ・プチトーが録音したものである。
撮影は、リヴェット、イオセリアーニ、ガレル監督作品などでも知られるウィリアム・ルプシャンスキで、残念ながら2010年に逝去した。
 
「ジョアシャン・ガッティ」Joachim Gatti
(2009/2分/デジタルベータカム)関西初上映
監督:ジャン=マリー・ストローブ
2009年7月8日、34歳の活動家、映画作家ジョアシャン・ガッティはモントルイユでデモ活動中、警官にフラッシュボールのゴム弾で撃たれ、片目が破裂し、視力を失った。本作では、事故以前の彼の写真にルソーのテクストがかぶさる。
Fプログラム 3作品
「魔女-女だけで」Le streghe, femmes entre elles
(2009/21分/35mm)関西初上映
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ
『あの彼らの出会い』『アルテミスの膝』に引き続きパヴェーゼの「レウコとの対話」の一篇、魔女キルケーと女神レウコテアーの対話「魔女」を映画化。仏語題「女だけで」は同じパヴェーゼ原作のアントニオーニ『女ともだち』(1955)の仏語題。ジョヴァンナ・ダッディ、ジョヴァネッラ・ジュリアーニ出演。
 
「コルネイユ=ブレヒト」Corneille – Brecht
(2009/78分[26分×3バージョン]/デジタルベータカム)関西初上映
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:クリストフ・クラヴェール
副題「ローマ、私が恨む唯一のもの」。コルネリア・ガイサーがコルネイユの「オラース」第4幕第5場と「オトン」の短い一節を読む。その後、ブレヒトのラジオ劇「ルクルスの審問」が読まれる。編集の異なる3ヴァージョン上映。
 
「おお至高の光」O somma luce
(2009/17分/HDV)関西初上映
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ
ダンテ「神曲」天国篇・最終第33歌、第67節「おお至高の光」から最後までを、ジョルジョ・パッセローネが朗読する。冒頭の黒味にシェルヒェン指揮、エドガー・ヴァレーズ「砂漠」初演ライブ演奏(1954)が流れる。
 
 
協力:アテネ・フランセ文化センター 
  

《料金》入れ替え制
1プログラムあたり 
一般1500円 学生・シニア1200円
会員1200円 会員学生・シニア1000円

《割引》
2プログラム目は200円引き


日本映画名画鑑賞会
2011年5月22日(日)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
 
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、上映1週間前より電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)

《料金》
一律500円


外国映画名画鑑賞会
2011年5月28日(土)・29日(日)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
今回は、ジャン・ルノワールのアメリカ時代の2作品。
 
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)
  

《料金》入れ替え制
1本あたり 
会員900円 学生会員・シニア会員700円
《割引》
2本目は200円引き
*非会員のかたは、1日会員(登録料100円)のご登録でご覧いただけます。


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。