プログラムPROGRAM
2011 12

第3回神戸ドキュメンタリー映画祭 3.11後を生きる 早く、遅く。
2011年12月3日(土)、4日(日)

         9日(金)、10日(土)、11日(日)


  
 3月に起きた東日本大震災後、ドキュメンタリー界だけでなく、広く映像に携わる人々が厄災がもたらしたものについて考え、すぐに作品としてかたちにしました。この動きは阪神淡路大地震の時とは大きく異なるものです。
 第3回神戸ドキュメンタリー映画祭は「3.11後を生きる 早く、遅く。」をテーマに据えました。
 神戸映画資料館は、神戸でも最も震災の被害の大きかった地・長田区にあります。
 被災地の街の復興、そこに暮らす人々の心の問題……。
 迅速な対応と解決が求められると同時に、長い年月が必要な側面もあることを神戸の人たちは知っていることでしょう。映画を通して、そのことを考えたいと思います。
 
 
 
     「なみのおと」
     
     (監督:濱口竜介、酒井耕/2011/142分/ブルーレイ上映)
津波被害を受けた三陸沿岸部に暮らす人たちが、震災発生当時のことを中心に語る “口承記録” 。『PASSION』『The Depths』などで注目される濱口竜介が、同じく東京藝術大学大学院映像研究科出身の酒井耕と共同で監督した。142分の最新版での上映。
この“語り”は、実際は過去や未来のためという以上に、今まさに起こっている「復興」の活動そのものなのではないだろうか、という気がしています。それは、瓦礫をただの瓦礫にしないための、個人と共同体の歴史を取り返す作業であるからなのです。
(山形国際ドキュメンタリー映画祭・東日本大震災復興支援上映プロジェクト「Cinema with Us ともにある」カタログより、作者のことば)
 
 
     「相馬看花 奪われた土地の記憶」
     
     (監督:松林要樹/2011/111分/ブルーレイ上映)
福島第一原子力発電所から20キロ圏内の避難指示地域、福島県南相馬市の江井地区。4月3日にこの地域に入ったドキュメンタリー監督・松林要樹は、地元の市議会議員・田中京子に同行し、彼女らが震災前まで暮らしていた今は静まりかえった町、そして現在身を寄せる避難所を訪れる。そこから浮かび上がるのは人々の個人史や地域と家族の絆だが、避難所を転々とすることを余儀なくされる彼らは、土地とともにそれをも奪われてしまうのか。山形国際ドキュメンタリー映画祭での初公開時よりサブタイトルを改題。
 
 
     311仙台短篇映画祭映画制作プロジェクト作品「明日」
     
     (41人の監督たち/2011/137分/ブルーレイ上映)
仙台短篇映画祭の呼びかけにより、映画祭ゆかりの監督たちがそれぞれの3.11以降を描いた3分11秒の新作を撮りおろしたオムニバス作品。参加する監督は、今回上映する『なみのおと』の濱口竜介、『劇場版 その街のこども』の井上剛のほか、冨永昌敬(『アトムの足音が聞こえる』)、鈴木卓爾(『ゲゲゲの女房』)、瀬田なつき(『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』)、塩田明彦(『カナリア』)、河瀬直美(『朱花の月』)、佐藤央(『MISSING』)、山下敦弘(『「マイ・バック・ページ』)などの豪華メンバー。
 
 
     「東日本大震災 東北朝鮮学校の記録 2011.3.15-3.20」
     
     (制作:コマプレス/2011/67分/DVD上映)
震災で校舎が全壊した仙台市の東北朝鮮初中級学校。日本行政からの支援が皆無の中、全国同胞から救援物資が次々と送られてくる。学校はその物資で地域の日本学校に、おにぎりの差し入れや炊き出しを行う。緊迫しつつも相互扶助を実践した震災発生直後の日々。震災の破壊力が社会的状況によって何倍にも増してマイノリティを襲う日本社会の状況に問題を投げかける。制作のコマプレスは、“小さな声 低い視点”をモットーに、声なき声、不可視の葛藤、抵抗とみなされない抵抗を明るみに出し、世界に伝えることを目的に活動している。
 
 
     「劇場版 その街のこども」
     
     (監督:井上剛/2010/83分/ブルーレイ上映)
脚本:渡辺あや 音楽:大友良英 撮影:松宮拓、青木智紀
出演:佐藤江梨子、森山未來
阪神・淡路大震災からちょうど15年目にあたる2010年1月17日、NHKで放送された「その街のこども」の劇場版。こどもの頃に震災を体験し、いまは東京で暮らす勇治と美夏。彼らは「追悼のつどい」が行われる前日に神戸で偶然知り合い、震災15年目の朝を迎えるまでの時間を共に過ごすことになる。全く異なる震災体験をしたふたりの間には、大きな溝が広がっているように見えた。しかし、“ある場所”に差し掛かったとき、美夏は勇治が長年抱え込んできた過去を垣間見ることになる。復興を遂げた真夜中の神戸の街を背に、これまで語ることのできなかったふたりの想いが、不器用にあふれ出そうとしていた。
 
  
     参考上映 [鑑賞無料]
     「わたしはここにいます〜石巻・門脇小学校・夏」
     
     (監督:青池憲司/2011/29分/DVD上映)
かつて、『記憶のための連作「野田北部・鷹取の人びと」』、『阪神大震災 再生の日々を生きる』で神戸・長田地区の町の再生を記録した青池憲司監督が、現在、宮城県石巻市で長篇ドキュメンタリーに取り組んでいる。東日本大震災の復興期を活きる「こども・家族・教師・地域の人たち」の6月〜8月の記録を、2012年夏完成予定のドキュメンタリー本篇の〔予告篇〕として参考上映。
 

12月3日(土)ゲストトーク
濱口竜介、酒井耕
(「なみのおと」共同監督)
 
12月10日(土)トークセッション
コマプレス
(「東日本大震災 東北朝鮮学校の記録」制作)
金千秋(FMわぃわぃ総合プロデューサー)
 
《参加費》無料(要・当日の上映会チケット)

12月3日(土)18:30〜 交流芋煮会 in 神戸
芋煮会とは、東北地方で行われる季節の野外行事。肉や野菜を炊いた素朴な味噌鍋です。
今回は屋内ですが、仙台市出身者が仙台味噌で「仙台風芋煮」をお作りいたします。
被災地での活動報告もあります。ぜひご参加ください。
 
《参加費》500円 *ドリンクのご注文は別途お願いいたします(ビール、東北の地酒など)

《料金》入れ替え制
1回券
一般・シニア:1200円 学生:1000円
会員一般・シニア:1000円 会員学生:900円

3回券(前売り)
2800円(非会員共通) 2400円(会員共通)

〈前売りチケットの取り扱い〉 神戸映画資料館
前売りチケットは、メール連絡でも受け付けます(締め切りは12月2日18:00)。受け取り・お支払いは映画祭期間中の来館時で結構です。info@kobe-eiga.net 宛に、種類(非会員/会員)、お名前、連絡先(電話)、枚数を書いてお送りください。追って受付確認のメールを差し上げます。
 
*当日券、および整理券は、12:00からその日のすべての上映会分を販売、発行いたします。
*前売り3回券、および招待券をお持ちの方は、受付にて整理券をお求めください。

主催:神戸プラネット(神戸映画資料館)
後援:長田区役所
協力:新長田まちづくり株式会社、山形国際ドキュメンタリー映画祭、仙台短篇映画祭、東京藝術大学大学院、福興サロン和~Nagomi~
助成:芸術文化振興基金、アサヒビール芸術文化財団


ソヴィエト映画会①『嘆くな!』
2011年12月17日(土)・18日(日)

 
1991年12月25日、ソヴィエト連邦が解体して今年で20周年。ソヴィエト、ロシア映画の古典や代表作から異色作まで、不定期のシリーズとして上映していきます。
 
「嘆くな!」Не горюй!
(ソヴィエト/1969/94分/35mm)
モスフィルム、グルジアフィルム撮影所
配給:ロシア映画社
監督:ゲオルギー・ダネリヤ
脚本:レヴァス・カブリアゼ
撮影:ワジーム・ユーソフ
音楽:ギア・カンチェリ
出演:ヴァフタング・キカビッゼ、セルゴ・ザカリアッゼ、アナスタシヤ・ヴェルチンスカヤ、ソフィコ・チアウレリ
 
『不思議惑星キン・ザ・ザ』のダネリヤ監督作品。人々の営みから滲むユーモア、そして死が、歌と踊りの宴会とともに描かれる。舞台は19世紀末のグルジアの小さな町。ペテルブルグで医学を修めた主人公・ベンジャミンが故郷で開業するも患者は集まらない。それを苦にせず呑気に暮らす彼を、姉のソフィコは心配し、裕福な町医者の娘との結婚を画策する。

 ダネリヤ監督は常々、自分が喜劇監督ではないということを繰り返し言い続けています。その例として挙げるのが、『嘆くな!』では三人もの死が描かれているということ。人を笑わそうとして撮る映画には少しも興味がなく、それに似たような要素が見つかるのだとしても、それは我々が日頃感じるユーモアなのだと。
 本作の見所は、主人公の友人の医師レヴァンが自ら開く生前葬の喧噪と静寂のシーンです。
 喧噪の侘しさと別れの虚しさに涙するレヴァンが最後にレースのカーテンを摑むでもなく触るでもなくただ撫で下ろす手をじっと捉えていたカメラが、甕を遠くへ運んでいく子供たちのワンカットを挟んでから再び部屋に戻ると、いつしか静かに消えていなくなったレヴァンを追うようにして隣の部屋の暗闇を覗き込む一連のシークエンス。彼が死の床へ向かったのは確かだとしても、それはすでに映画の外の出来事となっていて、もはや覗き込むこともままならない。この映画で最も美しいシーンだと思います。
 ── 東海晃久
[関連企画] 神戸映画資料館レクチャー:映画の内/外
第6回『不思議惑星キン・ザ・ザ』と知られざるダネリヤの宇宙  講師:東海晃久

《料金》
一般1500円 学生・シニア1300円
会員1300円 会員学生・シニア1200円

《割引》
[レクチャー:第6回 『不思議惑星キン・ザ・ザ』と知られざるダネリヤの宇宙] 参加者は100円引き


ニコラス・レイ監督『孤独な場所で』
2011年12月30日(金)・31日(土)

 
ハリウッドの異端児、ニコラス・レイ監督の生誕100年を記念し、『孤独な場所で』を日本語字幕付き35ミリフィルムで特別上映。
 
「孤独な場所で」In a Lonely Place
(アメリカ/1950/93分/35mm)
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
監督:ニコラス・レイ
原作:ドロシー・B・ヒューズ
脚本:アンドリュー・ソルト
撮影:バーネット・ガフィ
音楽:ジョージ・アンセイル
出演:ハンフリー・ボガート、グロリア・ グレアム、アート・スミス、マーサ・スチュワート 、カール・ベントン・リード
 
『暗黒への転落』に続いてボガートがレイを監督に起用、自身の会社サンタナ・プロで製作した。頑固で粗暴な性向ゆえに疎まれ、長く一線から退いているハリウッドの脚本家が殺人の嫌疑をかけられる。美しい隣人の証言で男は釈放され、二人は恋に落ちるが、男の複雑な人間性を知れば知るほど女は困惑し、一度は解けた疑いが再び頭をもたげる。犯人捜し、映画界の内幕暴露で観客の興味を惹きつつ、善人とも悪人とも分類しがたい特異なキャラクターと、彼を愛しながらも受け容れられない女の苦悩を掘り下げていくレイの演出には一分の隙もない。レイ自身と否でも重なるボガートの相手役にはグロリア・グレアム。いうまでもなく当時のレイ夫人である。(藤井仁子)
[関連企画] 連続講座:映画批評_新しい映画と観客のために
第4回 ニコラス・レイ生誕100年  講師:藤井仁子

《料金》
一般1500円 学生・シニア1300円
会員1300円 会員学生・シニア1200円

《割引》
[連続講座:映画批評_新しい映画と観客のために 第4回 ニコラス・レイ生誕100年] 参加者は100円引き


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。