プログラムPROGRAM

ドキュメンタリー映画 「鬼に訊け 宮大工西岡常一の遺言」
2012年12月1日(土)〜4日(火)

法隆寺昭和の大修理の最初から携わり、金堂・五重塔が完成するまで棟梁として修理に従事し、薬師寺金堂を復興した宮大工として有名な故・西岡常一(1908-1994)。その発言を中心に、その教えを現在に受け継ぐ若き棟梁の姿などを盛り込み完成したドキュメンタリー。今年2月に公開され、大ヒットにより全国60数館に拡大公開された。
神戸映画資料館では西岡常一生誕100年を記念し、2008年9月に宮大工志望者向けの「西岡常一 社寺建築講座」4部作を上映したが、『鬼に訊け 宮大工西岡常一の遺言』は劇場公開を前提とした作品である。今回の上映は、神戸出身の山崎佑次監督による本年の上映の締めくくりの意味を込めている。
西岡常一の教えを受けた宮大工の石井浩司氏と山崎佑次監督とのトークも聞き逃せない。

12月1日(土)14:40〜
トーク:石井浩司(薬師寺宮大工) × 山崎佑次(監督)
石井浩司=薬師寺中門建設より西岡常一棟梁に師事。現在、東塔解体修理に参加中。

「鬼に訊け 宮大工西岡常一の遺言」(2011/88分/HD[ブルーレイ上映])
製作:『鬼に訊け』製作委員会 配給:太秦
監督:山崎佑次 音楽:佐原一哉 撮影:多田修平 編集:今岡裕之 録音:平口聡 タイトル:上浦智宏
聞き手:青山茂(帝塚山短大名誉教授)、中山章(建築家)、山崎佑次
出演:西岡常一、西岡太郎、石井浩司、速水浩、安田暎胤(薬師寺長老)
ナレーター:石橋蓮司
 
そんなことしたら木が泣きよります
西岡家の床の間には今でも「不東」と書かれた軸が掛けられている。玄奘三蔵法師が経典を求めてインドに旅立、途中で危険な西方に行くのを諌められた時、「志を遂げるまで唐には帰らない」と自らに誓った言葉である。同時に法隆寺の昭和の大修理、薬師寺白鳳伽藍復興工事に携わった西岡常一が終生大事にした言葉でもある。
 
西岡常一、明治41年奈良県生まれ。木のいのちを生かし千年の建物を構築する。戦争による幾度かの応召を挟み、法輪寺三重塔、薬師寺金堂・西塔の再建を棟梁として手がけ、飛鳥時代から受け継がれていた寺院建築の技術を後世に伝え、「最後の宮大工」と称せられる。平成7年没。
技術の伝承、とりわけ宮大工の奥儀は、言葉ではなく体で覚えるもの、技術は盗むものといわれ長い時間をかけ、厳しい修練の後にごく一握りの者だけが獲得できるものである。しかし、西岡は宮大工の経験と技術、研ぎ澄まされた感覚を若い人たちに最後の力を振り絞り、残された時間と戦いながらあえて言葉で伝えようとしていた。西岡が言葉に託したものは、技術の取得の領域をはるかに超え、我々日本人の失ったものに対する警鐘と回帰ではなかったのではないか。西岡の言葉である「飛鳥に帰れ」とは、永遠なるものへの思いにほかならない。
 
「千年の檜には千年のいのちがあります。建てるからには建物のいのちを第一に考えなければならんわけです。風雪に耐えて立つ―それが建築の本来の姿やないですか。木は大自然が育てたいのちです。千年も千五百年も山で生き続けてきた、そのいのちを建物に生かす。それがわたしら宮大工の務めです」と西岡は言う。木は鉄を凌駕する、速さと量だけを競う模倣だけの技術とは根本的に異なる日本人のいにしえの叡智、そして自然への洞察、千年先へいのちを繋いでゆくという途方もない時間へ執念が、所縁ある人々へのインタビューから浮かび上がってくる…。
 
西岡の「永遠なるものへの想い」、「木との対話」を記録した本作は、我々が顧みることのなくなった根源的な日本人の有り方に再び目を向け、心の復興を願う「祈り」のドキュメンタリー映画だ。
 

西岡常一が関わった建築
「法隆寺三経院」及び「西室」(国宝) 「法隆寺東院礼堂」(重要文化財)
「法隆寺大講堂」(国宝) 「法隆寺東院舎利殿」及び「絵殿」(重要文化財)
「法隆寺東院伝法堂」(国宝) 「法隆寺金堂」(国宝) 「法隆寺五重塔」(国宝)
「法隆寺東室」(国宝) 「明王院本堂」(国宝) 「明王院五重塔」(国宝)
「法隆寺中院本堂」(重要文化財) 「唐招提寺講堂」(国宝)
「法輪寺三重塔」(旧国宝、焼失のため新築再建) 「薬師寺金堂」
「薬師寺西塔」 「玄奘三蔵院伽藍」

山崎佑次
大島渚の『東京戰争戦後秘話 』(1970)『愛の亡霊』(1978)、黒木和雄の『日本の悪霊』(1970)の助監督を務め、金井勝の『無人列島』(1969)『GOOD-BYE』(1971)の美術に携わる。ドキュメンタリー映画『アイヌ・シタッピリ』(1972)『反国家宣言 非日本列島地図完成のためのノート』(1972)を監督。その後、大阪で製作プロダクション(サンクラフト)を立ち上げテレビ番組やPR映画づくりを行う。現在は神戸に住み著述家兼映画監督として活動中。主な著書に「宮大工西岡常一の遺言」(彰国社)、「李朝白磁のふるさとを歩く」 (洋泉社)、「還暦をすぎて始めた骨董露天商という生き方 」(宝島社)、「すかたん」(神戸新聞総合出版センター、11月刊)。

公式サイト

《料金》
一般1300円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

トークイベント 1000円(映画半券持参の方は700円)

これまでのプログラム|神戸映画資料館

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