プログラムPROGRAM

転形期のインディペンデント映画
第2回 マイナー映画の方へ
3月23日(土)〜26日(火)
映画制作と上映のデジタルへの移行、そして見る環境の多様化により、いよいよ“映画”の転形期を実感する今日。とりわけインディペンデント映画の状況はダイナミックに変化していくことでしょう。
自由な環境で作られるインディペンデント映画であるからこそ、作り手はそれぞれに映画の在り方を模索しています。このシリーズでは、この転形期に誕生した作品から映画の未来を見ていきます。
今回は、「マイナー映画の方へ」と題し、三人の映画作家の作品を取り上げます。いわゆる「個人映画」に分類される作品ですが、突き詰めた個人の表現がもたらす過激さとユーモアに触れてください。
Aプログラム
「時」
(2012/サイレント/60分/DVD)
監督:木村卓司
一瞬一瞬、見えないはずの時が猛々しく発露し姿を現す。それは霧の様に実体のない幻想で意識下の深遠に降りて行く。日だまりの様にこの上なく心地のよいものだ。──木村卓司
『シネマトグラフ オブ エンパイア』(2009)、元町映画館が出来るまでを描いた『街に・映画館を・造る』(2011)で知られる木村卓司。今回が初公開となる最新作『時』は、闇と光を往還する独自の世界である。
 

触手のようなキャメラが平面像の女体をまさぐる。すると静止していたはずの被写体が一瞬息を吹き返したように動き出す。この瞬間に戦慄を覚える。この個人映画作家が自宅の納屋から発見されたという戦前のポルノグラフィーに眼差しを向けると、そこに津山三十三人殺しが実験映画と交差する時空が出現する。そして我々は思い出す。映画は3D技術など使わなくとも初めから立体映像だったのだと。
    ───葛生賢(映画批評家、映画作家)

Bプログラム2本立て
「おしゃれ29/29」
(2003/25分/8mm)
「べっぷ、たまがわ」
(2005/31分/8mm)
監督:内村茂太
8mmフィルムによる日記形式の作風で知られる内村茂太。とぼけた語り口につい気を許してしまいそうになるが、実はかなりの技巧派である。
今回上映する『べっぷ、たまがわ』は、イメージフォーラム・フェスティバル2006寺山修司賞、『おしゃれ29/29』は、調布映画祭第9回ショートフィルム・コンペティション・グランプリ、コダック8ミリフィルムワークス in ジャパン奨励賞受賞。

内村茂太氏の8ミリ日記は、日曜洋画劇場で観た『ポリスアカデミー』を明日学校でどうネタにしようかとワクワクする、そんな中坊時代の日曜・晩の気分に満ちている。コマ落し気味のスピードで展開する妻と愛猫チャコとの多摩川住宅生活、地方への旅。終わらない休日として「問わず語り」のフィルムは回り続ける。
そんな内村氏の肩書きの1つは、自主的に務める『オールナイトニッポン』のパーソナリティ。『天才バカボン』の目玉のお巡りさんが如くである。500円で販売している収録テープがどれだけ売れたのかは謎だ。カセットテープが聴けない人も多いこのご時勢、内村氏は真顔で「聴く」かどうかではなく、「買う」という行為が重要なのだと淡々と言い切るのである。
    ───デューイ松田(ライター)

 
Cプログラム
「Blessed ―祝福―」
(2001/78分/DV)
監督:崟利子
テキスト・ナレーター:高橋章代
穏やかに慎ましく、時には衝撃的なほど直裁に、愛、恐れ、親密さ、渇望、性愛のもっとも深い感情を探っていく私的ドキュメンタリー。詩的で喚起的なテキストが、即時性を感じさせる触覚的な映像と見事なバランスを成す。
本作は、山形国際ドキュメンタリー映画祭2001「アジア千波万波」で上映され、ニヨン国際映画祭にて特別賞を受賞。その他、ソウル女性映画祭、台湾ドキュメンタリー映画祭、マレンマ(イタリア)国際ドキュメンタリー映画祭に招待上映。
崟利子は関西での自主上映活動や福田克彦監督の助監督を経て、1998年から映像制作を開始。2005年より東京茅場町にあるギャラリーマキにて定期新作発表上映会「季刊タカシ」をスタートし、2009年秋から神戸映画資料館で「タカシ時間」を不定期で開催している。

《料金》
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

《割引》2プロ目は200円引き

これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。