プログラムPROGRAM

年別アーカイブ: 2014

サイレント映画鑑賞会 新春ニコニコ大会 動物篇
2014年1月4日(土)・5日(日) 13:30〜
いいをじゅんこさんの第6講コメディ学入門とあわせてお楽しみください。

「チータは一年生」School Pals
(アメリカ/1924/16分[16コマ]/無声/16mm)
監督:ルイス・セラー
主演:チンパンジー (コダック・シネグラフ4505番)
チンパンジーが扮した3人の子供たち。朝食を終えそれぞれロバ、ヤギ、自転車で登校。授業が始まるや、やんちゃなチンパンジーが学校の先生に意地悪のし放題。動物が主演、人間が脇役の最初期の短編コメディー。

 

「獅子は吼え人は泣き騒ぐ」Roars and Uproars
(アメリカ/1922/27分[16コマ]/無声/16mm)
監督:ウィリアム・キャンベル
出演:ジャック・クーパー、ボビー・レイ、エルネスト・シールズ (コダック・シネグラフ4010番)
金持ち家族の5百万ドルを継承する娘と、正気でない求婚者たちによる大騒動。ホテルで獰猛な3頭のライオンに追いかけられ、ぬいぐるみのライオンまで登場する目茶苦茶な物語。

 

「桃太郎さんお供をつれて」
(製作年不明/16分[16コマ]/無声/16mm)
桃太郎が、お婆さんからきび団子を貰って、イヌ、サル、キジを従えて鬼ヶ島まで鬼を退治しに行くお馴染みのお伽噺。かなり古い時代の桃太郎映画で、桃太郎は人間、その従者は実際の動物が扮している。題名は再版時に改題されている可能性が高い。

 

 

「お猿の大漁」
(1933/10分[24コマ]/無声/16mm)
製作:横浜シネマ商会 原案、脚色:青地忠三 作画:村田安司
凍った湖面に穴をあけ猿公が魚釣り。かかったナマズのような怪魚を追って水中に。猿公と怪魚の愉快な戦いを描く日本の漫画映画。村田安司の本格トーキー第一作だが上映は無声版。

 

《料金》新春サービス料金
一般:500円
シネマ倶楽部会員・支える会員:無料


井上陽一の活弁映画シリーズ 9
2014年1月12日(日)13:30〜
新春は、活動写真弁士・井上陽一さんの語りをお楽しみください。
「ストトン節」
(1924/34分[18コマ]/16mm)
松竹キネマ蒲田
監督・脚本:池田義信 撮影:長井信一
出演:新井淳、飯田蝶子、小藤田正一、東栄子、伊志井寛、若林廣雄
 
牛原虚彦監督「鈴蘭」、池田義信監督「ストトン」、島津保次郎監督「最新籠の鳥」の三篇をまとめた「小唄集」として大正13年に封切られた中から第二篇のみを独立改題したもの。二村定一が歌って大ヒットした流行歌の歌詞に沿って物語が展開。女房がありながら洋食屋の若い女に入れ込んだ男の悲哀を描く。
 
 
「鞍馬天狗 恐怖時代」
(1928/40分[18コマ]/16mm)
嵐寛寿郎プロダクション
監督:山口哲平 原作:大仏次郎
撮影:石川東橘
出演:嵐寛寿郎、尾上松緑、市川小文治、五味国枝
 
マキノから独立し嵐長三郎から改名した嵐寛寿郎が、京都双ヶ岡に嵐寛寿郎プロダクション(寛プロ)を興し、第一作「鞍馬天狗」、第二作「安政巷談 黄総の十手」に続いて製作した第三作。幕末の江戸に偽の鞍馬天狗が現れ、本物の鞍馬天狗が捜査。偽天狗の隠れ家である化物屋敷にその一味を見つけて退治する。

井上陽一(弁士)
いのうえよういち。1938年、姫路市生まれ。浜星波に師事。60年から活動写真弁士として活躍。02年「OSAKA映像フェスティバル」で『雄呂血』、04年の京都映画祭では『特急三百哩』『からくり蝶』、08年には『実録忠臣蔵』、11年大阪歴史博物館の「浪花の映画事始め」で『僕らの弟』を名調子で活弁するなど、各地の映画祭等で活躍。関西随一のベテラン弁士である。

《料金》2本立て
一般1800円 学生・シニア1500円
会員1500円 学生会員・シニア会員1300円


アメリカを撃つ———孤高の映画作家ロバート・クレイマー
『アイス』『マイルストーンズ』

2014年1月25日(土)〜28日(火)

ヴェトナム戦争、反戦、ウッドストック、フラワームーブメント、
ドラッグ、サイケデリック、ヒッピー
アメリカが最も熱く、刺激に満ちていた時代――

アメリカを、世界を、見つめ続けた映画作家ロバート・クレイマー。
その幻の傑作2本が40年の時を経て、オリジナル16ミリフィルムで劇場初公開!!

 

SF活劇としての政治闘争をざらついたモノクロ画面に展開させて全ショット冴えに冴える『アイス』。黙って見せられればきっとあなたもドキュメンタリーだと騙されるに違いない驚異の『マイルストーンズ』。これまで日本の映画ファンから不当に遠ざけられてきたロバート・クレイマーに接近遭遇するための、申し分ない2本である。
その挫折の苦さの歴史的な意味を学ぶのは後回しでいい。過激で大胆で力強くて愛おしくて、つまり圧倒的におもしろいクレイマー作品の魅力に触れれば、この映画的な豊かさは今どこへ行ってしまったのかと誰もが問わずにはいられないはずだから。
    ──藤井仁子(映画評論家)

 
「アイス」ICE
(アメリカ/1969/132分/16mm)
製作:モニュメント・フィルム(デヴィッド・C・ストーン)、
アメリカン・フィルム・インステュート、ニューズリール
監督:ロバート・クレイマー
撮影:ロバート・マコーヴァー
編集:ロバート・マコーヴァー、ノーマン・フラクター
録音:ノーマン・フラクター
出演:トム・グリフィン、ポール・マクアイザック、ロバート・クレイマー、   
ハワード=ローブ・ハブーフ、ブレッド・アンド・パペット、ダン・タルボット、デヴィッド・C・ストーン、バーバラ・ストーン、ジョナス・メカスほか
 
近未来、若き革命家たち――革命組織全国委員会のメンバーが潜伏状態から抜け出すためにゲリラ活動を開始する。その頃メキシコでは解放戦線がアメリカ政府相手に抗争を続けている。目標は白人の革命家たちが黒人、プエルトリコ人、メキシコ人と同盟することだが、同じように搾取された犠牲者たちでありながら、彼らは互いを理解し合うことができない。委員会のリーダーは革命家たちは自らの自信のなさや疑い、恐怖に直面しなければならないことに気づく。そして革命的な攻撃活動が勃発。さまざまな行動がエスカレートしていく——— 体制批判の新聞が発刊される。陸軍の大佐が暗殺される。製油所が爆破される。刑務所やラジオ・テレビの放送局が襲撃される。———警察がグループのリーダーを抹殺し、ジムという名の人物が後を継ぐ。彼は電話で同志のひとりに指令を出す。次なる決定的な闘いが始まると・・・
69年のヴェトナム戦争が泥沼化する時代状況を鮮烈なフィクションとして描いた。
 
 
 
「マイルストーンズ」MILESTONES
(アメリカ/1975/206分/16mm)
製作:バーバラ・ストーン、デヴィッド・C・ストーン、ニューヨーク・シネマ
監督・脚本・撮影・編集:ロバート・クレイマー
共同監督:ジョン・ダグラス
照明:フィリップ・スピネッリ
録音:ジェーン・シュウォーツ、フィリップ・スピネッリ
記録・整音:マリリン・マルフォード
出演:G・W・アボット、アンバー・アン、ローレル・バーガー、ノア・バーガー、デヴィッド・バーンスタイン、ボビー・ビークラー、カーター・キャンプ、メリー・チャペル、ポーラ・チャペル、エリザベス・ディア、ジョン・ダグラスほか
 
ひとつの時代が終わり、そこに新しい誕生の可能性が示唆される、“運動”の世代の自画像。50人を超える登場人物からなる6つの物語が互いに干渉を繰り返しつつ巨大なモザイクを作り出す。背景に広がるのは「ユタの雪を被った山々から、自然がモニュメント・ヴァレーに作り出した彫刻まで、ホピ・インディアンの洞窟からニューヨーク・シティの汚れと埃まで」の壮大なキャンヴァス。アメリカの左翼ラディカルの生き残りたちの生活と生きざまが、政治的にも個人としても変化に直面した人々の社会の質感の中に入り込み、複雑にからみ合う、1970年代を代表する傑作。ロバート・クレイマー後期の代表作「ルート1/USA」は『マイルストーンズ』の続編とみなされている。
「『マイルストーンズ』は火=空気=土=人間だ。それは70年代のアメリカを見つめると同時に、過去へ、そして未来へと旅する。これは再び誕生することについての映画だ―思想が、顔が、映像が、そして音が再び誕生することについての映画である。」———ロバート・クレイマー、ジョン・ダグラス(トリノ映画祭’97 カタログより転載)
 
 
公式サイト
 

《料金》入れ替え制
一般1500円 学生・シニア1200円
会員1200円 会員学生・シニア1000円 
*会期中の半券提示で200円割引
*招待券のご利用不可


ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第7回 アレクセイ・ゲルマン特集

2014年2月7日(金)〜9日(日)
「道中の点検」
ПРОВЕРКА НА ДОРОГАХ
(1971/97分/35mm)
レンフィルム
原作:ユーリー・ゲルマン
脚本:エドゥアルド・ヴォロダルスキー
監督:アレクセイ・ゲルマン
撮影監督:ワディム・ガウズネル
出演:ウラジーミル・ザマンスキー、ローラン・ビーコフ、アナトーリー・ソロニーツィン、オレグ・ボリソフ
父親ユーリーの小説を映画化したゲルマン初の単独監督作品。1942年の冬、ドイツ軍に占領された北西地方で戦っているパルチザン部隊のもとに、独軍に協力していたロシア人が投降してくる。裏切り者のスパイ扱いをされても男は多くを語らず、ただ行動を通して自分が卑怯者でないことを証明してゆく。ゲルマンの演出もまた寡黙で、その緊張感みなぎる画面は、この作品を見事な活劇たらしめている。〈裏切り者〉と〈英雄〉のテーマをリアルかつ曖昧に描くこの映画は、ソ連の英雄神話を深く傷つけ、15年間お蔵入りにされた。
 
 
「戦争のない20日間」
ДВАДЦАТЬ ДНЕЙ БЕЗ ВОЙНЫ
(1976年/102分/35mm)
レンフィルム
原作・脚本:コンスタンチン・シーモノフ
監督:アレクセイ・ゲルマン
撮影監督:ワレリー・フェドーソフ
出演:ユーリー・ニクーリン、リュドミーラ・グルチェンコ
シーモノフの自伝的小説を映画化した、戦争のない戦争映画。1942年から43年にかけての20日間、従軍記者ロパーチンは、休暇をもらって列車で故郷タシケントを訪れる。前線から遠く離れたここにも戦争の影は色濃い。ロパーチンが自分の手記を映画化しているスタジオを訪れ、戦争の現実を無視していると怒鳴る場面に、ゲルマンの考えるリアルな戦争映画が垣間見える。夢のような戦場のフラッシュバック、列車の窓から一瞬切り取られる幻想的風景。銃後の生活をリアルに映し出しながら、この映画には終始メランコリックな雰囲気が漂う。
 
 
「わが友イワン・ラプシン」
МОЙ ДРУГ ИВАН ЛАПШИН
(1982年/98分/35mm)
レンフィルム
原作:ユーリー・ゲルマン
脚本:エドゥアルド・ヴォロダルスキー
監督:アレクセイ・ゲルマン
撮影監督:ワレリー・フェドーソフ
出演:アンドレイ・ボルトネフ、ニーナ・ルスラーノワ、アンドレイ・ミローノフ
ペレストロイカ直前に、ゲルマンが父親の短篇小説を映画化した作品。架空の港町ウンチャンスクを舞台に、ソ連史の空白と言われる1930年代、スターリンによる粛清〈前夜〉の荒涼とした雰囲気が、なにかが壊れゆく予感とともに、ざらざらとしたモノクロ画面と不意に挿入されるカラー画面によって見事に描き出される。『戦争のない20日間』以上に物語の線は細くなり、キャメラワークの自由度は増しているが、ラストの警察による殺人鬼の逮捕シーンなど、奇妙で不条理な犯罪活劇の一面も持つ。
 
 
作品解説:井上正昭
 
主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:ロシア映画社
[関連企画] 2月8日(土)
連続講座:映画批評 第6回 崩壊する国家と崩壊する映画──アレクセイ・ゲルマン
講師:井上 正昭(翻訳・映画雑文)

 

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター会員1000円

《割引》
当日に限り2本目、あるいは講座参加者は200円引き


アンコール上映
木村卓司監督作『時』
2月22日(土)・23日(日)18:20〜

21世紀の異端映画作家・木村卓司。
2013年3月の特集「転形期のインディペンデント映画 第2回 マイナー映画の方へ」の一本として上映した『時』を再上映します。
 
「時」(2012/サイレント/60分/DVD)監督:木村卓司
一瞬一瞬、見えないはずの時が猛々しく発露し姿を現す。それは霧の様に実体のない幻想で意識下の深遠に降りて行く。日だまりの様にこの上なく心地のよいものだ。──木村卓司
『シネマトグラフ オブ エンパイア』(2009)、元町映画館が出来るまでを描いた『街に・映画館を・造る』(2011)で知られる木村卓司。その最新作『時』は、闇と光を往還する独自の世界である。
作品に寄せられたコメント

作者の「気持ちはよくわかる」という反応は、決して誉め言葉ではない。ただ、「気持ちはよくわかる」という反応が積極的な意味を持つケースも、ごく稀に存在する。木村卓司の『時』がそれにあたる。この作品を撮った監督の「気持ち」は、とめどもなく「高貴」なものだからである。
    ──蓮實重彦(映画評論家)
 
手で覆われた女の胸。平面の画面のはずが一瞬、たゆやかな膨らみの感触を漲らせる。そんなバカなと画面を凝視する頃には、「時は後戻りするはずないだろう」と笑うかの如く画面が呆けていく。そんな一瞬と流れと集約を、戯れ事としてではなく、作り手の過剰な激しさとして画面に焼き付けていく。実は、私が見たときは画面が一度フリーズを起こしたのだが、監督の呪いにも似た念に呼応しているかのようだった。
    ──家久智宏(「劇場分子」No.33 より)
 
ふわりと風に揺れるカーテンの影の向こうに横たわる女性の絵がどうしてこんなにもなまめかしくみえるのか。世界が垣間見せてくれる美しい一瞬が切り取られてゆく……。
    ──伊藤久美子(シネルフレ ライター)
 
過去への痛いほどのあこがれと欲望を満たしてくれるのは映画だけ。うまれたての映画が持っていたあの卑俗さと野蛮と高貴と可笑しさが、無声映画『時』には満ち満ちてる。
    ──いいをじゅんこ(クラシック喜劇研究家、ライター)
 
映画の中で、男は女(女体?)を渇望しているように見えました。石像や写真、絵画の女に対して男は倒錯した欲望をぶつけています。『さらばズゴック』では感じられなかった人間的なモチーフが『時』には感じられたのです。それも、極めて激しい形で。
人間のいない世界をひたすら追求した『さらばズゴック』から、人間のいる世界(女のいる世界?)を作り手は求め始めている。
    ──井土紀州(映画監督)
 
いやまあなんとも前衛的な……。ビデオカメラのレンズ性能を確認する実証実験のような……。サイレントで60分もあるのに眠くはならなかったです。ともかく一度観てもらうしかないと思います。
    ──太田耕耘キ(ぴんくりんく編集部)
 
『ラ・ジュテ』は静止画の連続の中に動画がワンカット入っていたが、今から考えると映画的に素朴である。がしかし、本作は静止している映像が、映画表現の命そのものである編集という躍動を得た幸福に満ちている。編集点が次から次へと圧倒的な間隔/感覚で放たれる時、そこに観客は別次元のゆらぎを得るのである。人はそれを時間と呼ぶのであろう。まさしく映画が司れるもの、時である。私は確かにこのスクリーンで映画の時間が醸造される瞬間を見た。
    ──金子光亮(「劇場分子」No.33 より)
 
木村卓司の映画は孤独だ。滅び行くものの大いなる黄昏の僻地に立っている。滅び行くものの絶壁のしかし明確にある、縁(エッヂ)に立っている。いま数多くの映画が生まれ上映を終えていくが木村卓司の『時』はいま立たされている絶壁の縁(エッヂ)が幻などではなくくっきりそこに存在することを知らしめてくれる時間である。
    ──木村文洋(映画監督)
 
触手のようなキャメラが平面像の女体をまさぐる。すると静止していたはずの被写体が一瞬息を吹き返したように動き出す。この瞬間に戦慄を覚える。この個人映画作家が自宅の納屋から発見されたという戦前のポルノグラフィーに眼差しを向けると、そこに津山三十三人殺しが実験映画と交差する時空が出現する。そして我々は思い出す。映画は3D技術など使わなくとも初めから立体映像だったのだと。
    ──葛生賢(映画批評家、映画作家)
 
普通、人が「時」を感じているものを接写で破壊している映画だと思いました。
    ──高橋洋(映画監督)
 
木村卓司さんは膨大な量の映画を観る。ふつうそれだけ観る人の撮る映画は自分の好きな映画を再現─更新する方向に向かうと思うが木村さんはそうはしない。『時』は膨大な数の触覚性に満ちたカットをつるべ打ちし観る者に眩暈を強いる映画だ。リビドーに満ちてつるべ打ちされる膨大なカットは一つ一つが木村さんの射精だ。なんと絶倫な人だろうか。自分が撮れる映画を撮る。木村さんは映画ファンだけではなく映画作家だったのだ。
    ──常本琢招(映画監督)
 
物質の肌理(きめ)がいずれ時間の肌理を浮き立たせる。それは禁欲とは無縁の激しい欲望の結実した姿でもある。日本の同時代でそのように感じることは少ないが、嗚呼自分もこのように撮ることができたなら、と思わずにはいられなかった。
    ──濱口竜介(映画監督)
 
60分のサイレントの自主映画と聞けば、はっきりいって悪い予感しかしない。だが、勧められて渋々『時』を見た私にもいくつかのことは断言できる。この作家が、無声映画を「音を差し引かれた映画」だとはまったく考えていないということ。長くキャメラを回していれば「時」が映るなどというおめでたい発想とはまるで無縁だということ。そして、映画館の暗闇でみんなして息を凝らしてスクリーンを見つめつづけるという経験を絶対に必要としている映画だということ。最後に、これがもっとも肝腎なことだが、めっちゃエロいです。
    ──藤井仁子(映画評論家)

《料金》
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円


NYインディーズの良質な才能 ハル・ハートリー監督、待望の4作品公開!
 
2014年2月14日(金)〜18日(火)
『アンビリーバブル・トゥルース』『シンプルメン』
2014年2月21日(金)〜25日(火)
『はなしかわって』『愛・アマチュア』
 
最新作『はなしかわって』(2011)の日本初公開ほか、劇場初公開の長編デビュー作『アンビリーバブル・トゥルース』(1989)、カンヌ国際映画祭出品作『シンプルメン』(1992)、東京国際映画祭ヤングシネマ・シルバー賞受賞作『愛・アマチュア』(1994)の4作品を連続公開
 
 
劇場初公開
「アンビリーバブル・トゥルース」
The Unbelievable Truth
(アメリカ/1989/97分/ブルーレイ上映)
監督・脚本・編集:ハル・ハートリー
撮影:マイケル・スピラー
音楽:ジム・コールマン
出演:エイドリアン・シェリー、ロバート・ジョン・バーク、クリストファー・クック
 
ニューヨーク州の平凡な住宅地、リンデンハーストに”ジョシュ”(ロバート・バーク)が戻ってきた。彼は恋人の父親を殺し刑務所に服役していたのだ。町の人々は「大量殺人者」の噂でもちきりだが、腕をかわれたジョシュは町の車整備工場で働き口を得る。工場経営者ヴィクの娘オードリー(エイドリアン・シェリー)はミステリアスな雰囲気のジョシュに夢中になってしまう。オードリーは「この世は明日にでも核戦争や環境破壊で滅んでしまう」と信じている。しかし満たされぬ恋をしたオードリーは次第に変わっていく。
オードリー役のエイドリアン・シェリーのキュートかつ複雑な感情を表現する演技力にまず驚かされる。その才能はNY大学で演技や脚本についての講義をしたり、みずからも監督作『ウェイトレス〜おいしい人生のつくりかた』でも発揮されたが、惜しくも2006年、NYの自宅で殺人事件に巻き込まれ亡くなった。まさに”信じられない事実”である。
 
 
「シンプルメン」Simple Men
(アメリカ/1992/106分/ブルーレイ上映)
監督・脚本:ハル・ハートリー
製作:ハル・ハートリー、テッド・ホープ
撮影:マイケル・スピラー
美術:ダニエル・オウレット
音楽:ネッド・ライフル
編集:スティーブ・ハミルトン
出演:ロバート・バーク、ウィリアム・セイジ、カレン・サイラス、エリナ・レーヴェンソン、マーティン・ドノヴァン、ジョン・マッケイ
 
兄のビル(ロバート・バーク)は泥棒家業をしているが恋人に裏切られ逃亡の身、弟のデニス(ウィリアム・セイジ)は大学生だが内気な性格。2人の父親はかつて伝説的な野球選手だった。しかしその父はなぜかテロリストとして刑務所に収監中という。面会に行くが既に父は脱走。ロングアイランドの何処かの電話番号と”TARA/タラ”というキーワードのみの乏しい手がかりを頼りに、父親探しの旅がはじまった。小さな町で出会ったケイトとエリナ(エリナ・レーヴェンソン)は兄弟同様、人生に対するいらだち、愛への渇望、疾走と停滞の中で新しい希望を模索する女性達だった。クールで思慮深い”シンプルメン”を気取るビルもいつしかケイトに恋心を抱く。デニスは不思議な存在感を漂わせる可愛いエリナに心惹かれる。そんなとき、謎多き父親の影が見え隠れしてきた。
エリナ役、ルーマニア出身のエキゾチックな魅力が印象的なエリナ・レーヴェンソンは1991年にNYでハル・ハートリーの短編作に出演したことを機に、ハルの作品には欠かせない存在となった。兄弟の旅、エディプス・コンプレックス、様々な問題を抱えた男女、アンビバレントな愛の寓話を結びつける説得力を持つ女優だ。
 
 
日本初公開 
「はなしかわって」Meanwhile
(アメリカ/2011/59分/ブルーレイ上映)
監督・脚本・製作・音楽 :ハル・ハートリー
編集:カイル・ギルマン
出演:D・J・メンデル、ダニエル・マイヤー、二階堂美穂
 
マンハッタンに暮らすジョセフ・フルトン(D.J.メンデル)は、ジャズ・ドラマーが本来の仕事ではあるが、多くの友人や器用な性格で様々なプロジェクトに手を染めている。エコ窓の輸入、小説を書いたり、広告用ビデオを制作したり、はたまたちょっとした修理はいつも携えているブリーフケースの工具でたちまち直してしまうといった具合。恋愛事情も目まぐるしく、今日も彼は都会の片隅の人間模様に巻き込まれたり巻き込んだり。彼にとっての成功とは、社会に認められることだが、大きな成功はなかなか手が届かない。しかし、彼の持つ優しさは、様々な人との一瞬のふれ合いを繰り返中で、微妙に人間と人間の距離を縮めていくのだった。
オフ・ブロードウェイで確かな演技力を培った主演俳優D.J.メンデルの存在感、ニューヨークの街と人々の情景、”話の接ぎ穂”を彩る音楽、美しく豊かな人間の希望を描き出している。
 
 
「愛・アマチュア」Amateur
(アメリカ/1992/106分/ブルーレイ上映)
監督・脚本:ハル・ハートリー
製作:テッド・ホープ、ハル・ハートリー
撮影:マイケル・スピラー
音楽:ジェフ・テイラー、ネッド・ライフル
編集:ティーブ・ハミルトン
出演:イザベル・ユペール、マーティン・ドノヴァン、エリナ・レーヴェンソン、ダミアン・ヤング、チャック・モンゴメリー、デヴィッド・シモンズ
 
ニューヨークの裏通りで男(マーティン・ドノヴァン)が倒れている。ソフィア(エリナ・レーヴェンソン)は死んだと思われる男の様子を見るとその場から逃げた。しかしその男、トーマスは記憶喪失でカフェで出会ったイザベル(イザベル・ユペール)に助けられる。イザベルは尼僧として神に仕えていたが現在は売れないポルノ小説作家をしている。イザベルはトーマスに興味を持ち、自分のアパートで世話をする事に。イザベルは性に対してのコンプレックスをトーマスに打ち明け2人の間には愛情とも友情ともつかない不思議な関係が出来上がっていく。一方ソフィアはひどい仕打ちを受けたトーマスを殺したと思い込んでいた。実はトーマスは国際的な犯罪組織の一員で秘密を握っており、追っ手は今やソフィアを狙っていた。
フランスを代表する大女優、イザベル・ユペールが主演女優を務め、『シンプルメン』に続いてエリナ・レーヴェンソン、またハル作品の常連俳優達が脇を固めることによって演出も冴え、非常に完成度の高い作品となった。ハル作品の根底に流れるキリスト教的な原罪と贖罪の関係性が、社会と個人の愛の対称性にいかなる矛盾と影響を与えるか。作家性と娯楽性が調和した傑作だ。
 
予告編
公式サイト
 

《料金》入れ替え制
一般1800円 学生1200円 シニア1000円
会員1500円
 
前売
4回券4000円
※ 4回セット券をお買い求めの方はオリジナルポストカードをプレゼント(数量限定)


1928・日本の前衛映画『十字路』
2014年3月8日(土)・9日(日)

「十字路」
(1928/98分[16コマ]/無声/16mm/英語字幕版・日本語投影字幕付)
製作:衣笠映画聯盟、松竹京都撮影所
製作・監督・脚本:衣笠貞之助
撮影:杉山公平 助監督:稲垣浩
照明:内田昌夫 美術:友成用三
出演:千早晶子、阪東寿之助、小川雪子、相馬一平、中川芳江、関操
 
『狂った一頁』を皮切りに1926年から28年にかけ『照る日くもる日』『稚児の剣法』『海国記』『風雲城史』など多数の映画を生み出した衣笠映画聯盟の最後の作品で、チャンバラのない時代劇を目指して作られた画期的な実験映画。衣笠はソヴィエト連邦経由でドイツへフィルムを持参、日本映画で初めてヨーロッパへ輸出された映画として知られるが、今回の上映フィルムは英国映画協会(BFI)が保存する英語字幕付きプリントからの16ミリ・コピーである。
 

《料金》
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円


ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第8回 サイレント黄金時代とエルムレル

2014年3月22日(土)・23日(日)


写真提供:国立中央映画博物館
(Museum of Сinema, Moscow)

「帝国の破片」ОбломокИмперии
(1929/100分[18コマ]112分[16コマ]/無声/35mm)
ソフキノ・レニングラード
東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
監督:フリードリヒ・エルムレル
脚本:フリードリヒ・エルムレル、カテリーナ・ヴィノグラーツカヤ
撮影:エヴゲニー・シネイデル、グレープ・ブシュトゥエフ
出演:フョードル・ニキーチン、リュドミラ・セミョーノワ
 
第一次世界大戦で記憶を失った男が、意識を取り戻すと目の前に現れたのは、全く見知らぬ革命政権後の世界であった。ソヴィエト版浦島太郎とも言える物語で、フロイトの精神分析の影響も見られる。ソヴィエト映画サイレント時代の転換期の作品。
 
 
 


写真提供:国立中央映画博物館
(Museum of Сinema, Moscow)

「新バビロン」НОВЫЙ ВАВИЛОН
(1929/102分[18コマ]115分[16コマ]/無声/35mm)
ソフキノ・レニングラード
東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
監督・脚本:グリゴリー・コージンツェフ、レオニード・トラウベルグ
撮影:アンドレイ・モスクヴィン
出演:エレーナ・クジミナ、ピョートル・ソボレフスキー
 
アメリカ文化の影響を受けた前衛的劇団「フェクス」から映画界に転じ、その後のレンフィルムを担ったコージンツェフとトラウベルグの初期作品。1871年、民衆の蜂起によるパリ・コミューンを舞台に、バリケードを挟んで引き裂かれる恋人たちを描く。
 
 
 
「呼応計画」Встречный
(1932/110分/35mm)
ロスフィルム
監督:フリードリヒ・エルムレル、セルゲイ・ユトケーヴィチ
脚本:レオ・アルンシタム、レオニード・リユバシェフスキー、フリードリヒ・エルムレル、セルゲイ・ユトケーヴィチ
撮影:アレクサンドル・ギンツブルグ、ジョゼフ・マルトス、ウラジーミル・ラポポルト
音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィチ
出演:ウラジーミル・ガルジン、マリア・プリュメンターリ=タマーリナ、タチヤーナ・グレーツカヤ
 
国が掲げる第1次五カ年計画の早期遂行のため、労働者によって自発的に立てられた高い目標計画(呼応計画)のもと、タービン建設に取り組む労働者たちを、社会主義建設に燃える若者と旧世代の熟練労働者の断絶とともに描くトーキー初期作品。
 
* 「帝国の破片」と「新バビロン」の上映スピードは18コマ(1秒間に進むコマ数)を予定していましたが、試写の結果16コマが適切であると判断しました。それにより上映分数が予定より長くなります。
休憩時間の短縮等の処置でタイムテーブルに大きな変更は無い予定ですが、ご了承ください。
 
主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:東京国立近代美術館フィルムセンター、ロシア映画社、国立中央映画博物館、国際交流基金
[関連企画] 3月22日(土)
講演:フリードリヒ・エルムレルとソ連無声映画の黄金時代(1925-1930)
講師:マクシム・パヴロフ(国立中央映画博物館 副館長)
主催:国際交流基金

 

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター会員1000円

《割引》
当日に限り2本目は200円引き


サイレント映画鑑賞会 活弁・生演奏付き バスター・キートン!
2014年3月30日(日) 17:00〜

 
 
 
 
キートンの名作を、活動弁士・大森くみこさんの語りと深海無声團の演奏でお楽しみください。
 
 
 
 
 
 
 
「海底王キートン」The Navigator
(アメリカ/1925/70分/16mm)
監督:バスター・キートン、ドナルド・クリスプ
原作・脚本:ジーン・ハヴェッツ、ジョセフ・A・ミッチェル、クライド・ブルックマン
撮影:バイロン・フーク、エルジン・ レスリー
出演:バスター・キートン、キャサリン・マクガイア、フレデリック・ブルーム、ノーブル・ジョンソン
 
キートンの映画には、船がしょっちゅう登場する。そして、キートンの船はたいてい沈む。順風満帆なんて言葉とは、まるで縁がない。
『海底王キートン』の主役は、漂流する大型船である。映画は、本物の廃船を使って撮影された。キートンの手にかかれば、舞台装置である無機質な船も、立派な「役者」になる。甲板、ボイラー室、デッキなどなど、大型船の「身体」を、笑わぬキートンが縦横無尽にかけまわる。当時としては前代未聞の、決死の水中撮影も見逃せない。船という「役者」からひきだせる最大限の魅力を、キートンは全精力をかたむけて笑いに結びつけたのだ。
大森くみこさんの活弁は、はつらつとしたヒロインとキートンのやりとりが特に面白く、この映画のラブコメ的魅力をも引き出してくれる。進化をつづける《深海無声團》の生演奏も必聴だ。(いいをじゅんこ)
「キートンの鍛冶屋」The Blacksmith
(アメリカ/1922/25分[18コマ]/16mm)
監督:バスター・キートン
出演:バスター・キートン、ヴァージニア・フォックス
鍛冶屋の丁稚キートンは失敗続きで親方に怒られっぱなし。そんな彼が一人留守番をすることになり、馬や車を相手に騒動を巻き起こす。

大森くみこ と《深海無声團》
プラネット+1にて 定期活弁上映会が好評のグループ。
 
弁士:大森くみこ
司会、TV、ラジオのリポーターやナレーションに加え、2012年より活動弁士としての活動をスタート。
 
演奏:深海無声團
   藤代 敦(キーボード)
   Momee(パーカッション/トイピアノ)
構成・台本:中崎静秋

 
いいをじゅんこさんの「第7講コメディ学入門 バスター・キートン入門」(3月8日)に続けてお楽しみください。 
 

《料金》2本立て
一般1500円 学生・シニア1300円
会員1200円 学生会員・シニア会員1000円


35ミリニュープリントで甦る「トパーズ」
2014年4月4日(金)〜8日(火)
「トパーズ」
(1991/113分/35mm)
原作・脚本・監督:村上龍
エクゼクティブ・プロデューサー:多賀英典
プロデューサー:永田陽介、平尾忠信、鈴木愛孝
テーマ音楽:坂本龍一(ヴェルディ『ドン・カルロ』より)
撮影・照明:青木優、長井和久
配給:ジェイ・ブイ・ディー
 
出演:二階堂ミホ、天野小夜子、加納典明、島田雅彦、三上寛、瀬間千恵、草間弥生
 
23年ぶりに甦る
漂流のSMハードコア

  
デビュー作『限りなく透明に近いブルー』(1979)など自作の映画化に取り組んできた ”異業種監督” のはしりとも言える村上龍。大所帯のスタッフ編成によるこれまでの映画制作に困難さを感じ、監督第4作にあたる『トパーズ』では、16mmキャメラを使ったコンパクトな制作方法に挑戦した(上映用に35mmプリントに変換)。
バブル期をむかえた沈みゆく日本=東京を背景に、主人公のコールガールを通して、現代社会の欲=情報・金・過剰な快楽が映しだされる。
出演は、大野一雄舞踏研究所で舞踏を学び、後にハル・ハートリー監督夫人となった二階堂ミホ、写真家・加納典明、ポストモダン小説の旗手・島田雅彦、現代美術作家・草間彌生と、今では不可能なキャスティングで異常な輝きを放っている。
テーマ曲のアレンジ演奏を坂本龍一が手がけるほか、この作品の制作中にキューバとの運命的な出会いをした村上監督は、当時、一部の愛好家のものであったキューバ音楽をサウンドトラックとして採用している。
 
アイはSMクラブで客の求めに応じてホテルに出向くコールガール。ある日、地下道で出会った占い師に薦められるままトパーズの指輪を買う。毎夜、歪んだような世界の中で様々な男達の間を彷徨うアイ。そんな中、美しくプライド髙いサキというSM嬢に出会う。「スーパーマンのようになれる」という不思議なクスリを手渡され、アイはかつて憧れ、恋をした男に会いに行く決心をする。高級住宅街の公園にたどりついた彼女ははかない幻を見る。
 
[公式サイト]
 

《料金》
一般1500円 学生・シニア1200円
会員一般1200円 学生会員・シニア会員1000円

*18歳未満の方は入場できません


大阪朝高ラグビー部・長編ドキュメンタリー
「60万回のトライ」
2014年4月11日(金)〜15日(火)

監督(朴思柔・朴敦史)来館決定
4月11日(金)・13日(日)各回上映終了後、ミニトーク

「60万回のトライ」
(2013/106分/HD[ブルーレイ上映])
監督・撮影:朴思柔、朴敦史
ブロデューサー:岡本有佳、永田浩三
編集:村本勝 整音:滝澤修
音楽:大友良英
ナレーション:根岸季衣
製作:コマブレス、60万回のトライ製作委員会
後援:日本ラグビーフットボール協会
協賛:ジェイ・スポーツ
配給:浦安ドキュメンタリーオフィス
 
朝鮮半島の北と南、日本──
3つの社会をつなぐ大切な存在
在日朝鮮人高校生の“いま”を映し出す

  
大阪生まれ、大阪育ち。見た目は日本人と変わらない。そんな彼らが通うのは大阪朝高(オーサカチョーコー)。高校ラグビーの激戦地で強豪校の仲間入りを果たし、日本一を目指して闘っている彼らの胸には、いったいどんな想いがあるのか? J-POPも、K-POPも、朝鮮の大衆歌謡もこよなく愛する、いまどきの彼らの素顔を描いたドキュメンタリー映画、ここに完成!
彼らが目指す「ノーサイド」(No Side)。ラグビーで試合が終了する時に使うことばだが、この言葉には国籍や民族を越えてお互いを讃え合うという精神が込められている。近隣情勢の緊迫化、ヘイトスピーチや高校授業料無償化の問題などに注目が集まる中、ひたむきにまっすぐに生きる彼らにとっての「ノーサイド」は一体何なのか?
 
本作は、ソウル出身の女性監督・朴思柔(ぱく・さゆ)が大阪朝高ラグビー部を3年間密着取材し、在日朝鮮人3世の朴敦史(ぱく・とんさ)が共同監督を務めた初の劇場公開向け作品となる。音楽は、前衛的かつ多彩な音楽活動で海外でも評価の高い大友良英。昨年、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の音楽を担当し脚光を浴びた。ナレーションは、朗読劇でも定評のある俳優の根岸季衣が務め、脇を固めている。
 
[公式サイト]
 

大阪朝鮮高級学校(大阪朝高)
1952年創立。所在地は東大阪市。大阪一円、広くは和歌山、奈良、三重から在日朝鮮人の生徒約350名が通う。ラグビー部をはじめ、全国区のスポーツ強豪校として知られている。しかし、ラグビー部が公式戦に参加することができるようになったのは1991年。創部から20年近くが経っていた。全国大会初出場は2003年。以来、着実に力をつけ、ベスト4を二度、ベスト8を一度経験している。
朝鮮学校の歴史は、日本の敗戦直後、日本に残ることになった朝鮮人が民族の言葉を学ぶため、「国語講習所」をつくったことに始まる。現在、全国に64校。近年、高校授業料無償化からの排除、自治体の補助金停止など、学校をとりまく日本社会の状況が生徒たちを脅かしている。

《料金》
一般1500円 学生・シニア1200円 高校生以下1000円
会員一般1200円 学生会員・シニア会員1000円
特別鑑賞券1000円(劇場窓口にて4/8まで販売)
*ラガー割
ラガーシャツ着用、もしくはラグビーボール持参のお客様は当日1000円


日本映画の黄金時代
2014年4月26日(土)・27日(日)Aプログラム
2014年4月28日(月)・29日(火・祝)Bプログラム

4月27日(日)15:10「忠治活殺剱」の上映後
解説:山根貞男(映画評論家)

Aプログラム
「河内山宗俊」
(1936 / 81分 / 16mm)
監督:山中貞雄 脚本:三村伸太郎
撮影:町井春美 音楽:西梧郎
出演:河原崎長十郎、中村翫右衛門、市川扇升、原節子、山岸しづ江、助高屋助蔵、清川荘司、高勢実乗、鳥羽陽之助、衣笠淳子、三好文江
情婦お静のヒモになりさがった河内山宗俊と、守銭奴森田屋の用心棒である金子市之丞が、三百両の金のため女郎に売られようとするお浪さん(16歳の原節子)の危機を知って怒り、命を張って防ごうとする。山中はこの年『怪盗白頭巾』『海鳴り街道』を作るなど意気盛んな27歳だった。
 
「忠治活殺剱」
(1936/ 45分 / 35mm)
監督:久保爲義、マキノ正博 原作:伊藤大輔
脚本:比佐芳武 撮影:大森伊八
出演:淸水英太朗、大内弘、原駒子、大倉千代子、大久保淸子、葉山純之輔、光岡龍三郎、浅野進二郎、大倉文男、島津勝二
忠治は偽名を使って居酒屋に住み込んでいたが、山城屋勝蔵に娘を売りにきた父親が、勝蔵の計略で身包みを剥がされるにおよんで、忠治は義侠心から山城屋へ殴り込む。伊藤大輔の『忠次旅日記』の脚本をマキノが借りて製作したと言われる。今回上映するのはプラネット映画資料館所蔵の35mmプリント。後にフィルムセンターが無声版16mmをこれに補完し作成した58分版が現存する最長版(初公開時75分)である。
 
Bプログラム
「人情紙風船」
(1937/ 86分 / 16mm)
監督:山中貞雄 脚本:三村伸太郎
撮影:三村明 美術:久保一雄 音楽:太田忠
出演:河原崎長十郎、中村鶴藏、中村翫右衛門、霧立のぼる、御橋公、坂東調右衛門、市川樂三郎、市川菊之助、岬たか子、原緋紗子、山岸しづ江
江戸の貧乏長屋を舞台に、髪結いの新三や浪人の海野又十郎らが繰り広げる人情劇。日中戦争の泥沼へと突っ走る情勢下、撮影期間1ヵ月の厳しいスケジュールの中、28歳の山中は「ナカ抜き」で撮影時間を短縮、予定通り仕上げて封切りの日、撮影所内で召集礼状を受け取り出征、中国で戦病死し、帰らぬ人となった。映画は興行的にもヒットし、日本映画史上の名作と言われている。
「春秋一刀流」
(1939/ 74分 / 16mm)
監督、脚本:丸根賛太郎 撮影:谷本精史
美術:鈴木孝俊 音楽:高橋半
出演:片岡千恵蔵、沢村国太郎、市川小文治、原健作、仁礼功太郎、轟夕起子
博徒の親分笹川繁蔵と知り合い、飯岡助五郎との大利根河原の決闘に笹川方の助っ人として参加し闘死した幕末の剣客平手造酒を主人公に描く。山中貞雄亡き後、その再来かと言われた丸根賛太郎のデビュー作。巻頭から始まるチャンバラに次ぐチャンバラ。テンポの良い画面編集、高橋半による力強い音楽、字幕が随時挿入され、まるで和洋合奏で観る無声映画のようだ。
 

《料金》2本立て
一般1400円 学生・シニア1200円
会員1200円 会員学生・シニア1000円

*ラスト1本のみ:900円


福島の3年間──消せない記憶のものがたり
「遺言 原発さえなければ」
2014年5月2日(金)〜4日(日)13:00〜

5月2日(金)上映終了後
初日舞台挨拶:豊田直巳監督
※舞台挨拶後、ロビーカフェでミニトーク
※ロビーカフェのミニトークは1ドリンクをご注文ください

第一章 汚染

第二章 決断

三章 避難

第四章 故郷

五章 遺言
ⓒTOYODA Naomi

「遺言 原発さえなければ」
(2013/225分/HD[ブルーレイ上映])
*途中15分の休憩あり
共同監督:豊田直巳、野田雅也
編集:安岡卓治 編集助手:吉田拓史
編集協力:濵口文幸記念スタジオ
製作助手:片岡和志 音楽:任キョンア
音楽協力:大瀧統丈 ㈱オリホトーン・ミュージック エンターテイメント
助成:高木仁三郎市民科学基金
製作協力:日本ビジュアル・ジャーナリスト協会/国際交流NGO ピースボート/フォーラム平和・人権・環境/原水爆禁止日本国民会議/全日本自治団体労働組合/全日本自治団体労働組合 関東甲地連/生活クラブ生活協同組合
製作:映画『遺言』プロジェクト
劇場宣伝協力:ウッキー・プロダクション
山形国際ドキュメンタリー映画祭 正式出品作品
 
一章 汚染 取り残された住民たち
二章 決断 酪農家人生の崩壊
三章 避難 ご先祖さまを残して
四章 故郷 つなぐ想い
五章 遺言 原発さえなければ

 
福島を描いた
ドキュメンタリー映画の決定版
3時間45分 800日間の記録
苦しみをのり越えて
新たな挑戦が始まる

  
2011年3月12日…
福島第一原発事故の取材現場に駆けつけた二人のフォトジャーナリストは、いち早く撮影を開始。以来、2013年4月まで、その土地の人々とともに過ごした日々を記録し続けた。絶望の淵からの試行錯誤、もがきの中で気づいた家族、仲間、奪われた故郷への思い、そして見えてきた本当に守るべきものの存在…
3年にわたり記録された250時間の映像が、3.11後の今を生きる私たちに問いかけるものとは ──
 
私たちもこの映画を応援しています。
 鎌田慧(ルポライター)
 落合恵子(作家)
 森達也(映画監督/作家)
 高橋哲哉(東大大学院教授)
 吉岡達也(ピースボート共同代表)
 吉岡淳(カフェスロー代表)
 渡辺一枝(作家)
 
[公式サイト]
 
豊田直巳(共同監督/取材・撮影)
1956年生まれ。イラクやパレスチナなどの紛争地を巡り、劣化ウラン弾問題やチェルノブイリを取材。新聞、雑誌やテレビで報道。平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞。近著に『フクシマ元年』(毎日新聞社)、『フォトルポルタージュ 福島 原発震災のまち』(岩波書店)他。
 
野田雅也(共同監督/取材・撮影)
1974年生まれ。チベットの核実験場をはじめアジアの紛争地や災害現場を取材。『正しい報道ヘリの会』では官邸前デモなどを空撮。DAYS JAPAN国際ジャーナリズム大賞特別賞。共著に『3•11 メルトダウン』(凱風社)他。共に日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)会員。

《料金》
一般2000円 学生・シニア1800円 会員1500円
*招待券のご利用不可
*特別鑑賞引換券はご利用になれます

転形期のインディペンデント映画
第3回 キャメラマン・四宮秀俊 小特集
 
5月5日(月・祝)・6日(火・祝)AプログラムBプログラム
5月5日(月・祝)〜11日(日)[水・木休映]Cプログラム
『へんげ』(2011/大畑創監督)、『Playback』(2012/三宅唱監督)、『Dressing Up』(2012/安川有果監督)など、注目のインディペンデント映画を次々と手がけているキャメラマン四宮秀俊。その魅力と幅の広さを存分に感じさせる4作品を上映。

5月5日(月・祝)13:30Aプロ終了後
 トーク:四宮秀俊(予定)・佐藤央

特別上映 5月5日(月・祝)13:00〜
*同日13:30からのAプログラムと併せてご覧になれます。
 
「キャメラマン 玉井正夫」
(2005/22分/DVCAM)
監督・構成・編集:佐藤央
撮影:芦澤明子
企画・制作:玉井正夫さんを記録する会
 
『晩菊』『浮雲』『流れる』などの撮影監督として知られる玉井正夫。2005年の成瀬巳喜男生誕100年に合わせて制作された記録映画。

Aプログラム2本立て
「MISSING」
(2011/55分/HD[ブルーレイ上映])
監督・編集:佐藤央
脚本:小出豊 撮影・照明:四宮秀俊
録音:新垣一平 音楽:近藤清明
美術: 大石佳奈 制作:唐津正樹
製作:神戸映画資料館
出演:土田愛恵、きく夏海、信國輝彦、昌本あつむ、八尾寛将、堀尾貞治
夫と1人息子のヒロと幸せな生活を送っていた清瀬晧子は、軽い気持ちからヒロとの約束を破ってしまう。その日以来、ヒロは二度と帰ってこず、「自分のせいだ」と自らを責める晧子は夫と別れ1人ヒロを待ち続ける。それから5年の月日が過ぎ…。とても大事なものを失ってしまった人々の、その後の物語。
 
 
「わたしたちがうたうとき」
(2010/15分/HD[ブルーレイ上映])
監督・脚本:木村有理子
プロデューサー:田中深雪 撮影:四宮秀俊
録音:黄永昌 編集:平田竜馬
衣装:篠塚奈美 美術:出井奈保
制作:毛塚俊太
製作:経済産業省、公益財団法人ユニジャパン
出演:増田璃子、宇野愛海、利重剛、鈴木卓爾、川崎桜
2012年ソウル国際女性映画祭/あいち国際女性映画祭 正式上映
 
外見も歌声も似たさやかと輝夏。放課後の音楽室で偶然に合唱することで気持ちを通じ合わせる。ある日、さやかは、精神科医の父親の患者が持つ停滞感と社会性の無さに、強い印象を受ける。しかしその患者は、実は輝夏の父親で…。思春期の少女2人の痛々しくも瑞々しい関係を描いた作品。
 
Bプログラム
「Sweet Sickness
 ~スウィート・シックネス~」

(2013/90分/HD[ブルーレイ上映])
監督・脚本・編集:西村晋也
製作:松下順一、沼尻 孝 企画:高﨑正年
プロデューサー:小貫英樹、奥野邦洋
撮影:四宮秀俊 音楽:入江陽 美術:堀内浩一
制作プロダクション:東京レイダース
製作:娯楽TV、ひかりTV
出演:小林ユウキチ、細江祐子、綾見ひかる、片宮あやか、斉藤陽一郎
ロッテルダムCamera Japan Festival 2013正式出品
 
2013年4月に青春Hシリーズ第29弾として公開、レイトショー1週間の小規模公開ながらシリーズ中屈指の傑作と高く評価され、今年2月に渋谷アップリンクで再上映された。
哲哉(小林ユウキチ)と姉の凛(細江祐子)は、両親が亡くなって以来、2人で助け合いながら暮らしていた。ずっとこんな日が続くと哲哉は信じていた。ある日、姉に『結婚して家を出て行く』と告げられるまでは……。
切り詰められた台詞と、研ぎ澄まされた演出。静謐さの中に秘めた熱情を感じさせる演技。そしてすべてを包み込む、柔らかくも冷徹な光を見事に捉えた撮影。低予算映画の過酷な条件下、奇跡的とも言える三位一体が、ここに新たな傑作を誕生させた。これは誰の身にも起りうる普遍的な「愛着と別離」についての映画である。
 
 
関西初上映
Cプログラム
「WHO IS THAT MAN!? あの男は誰だ!?」
(2013/88分/HD[ブルーレイ上映])
制作・脚本・監督:沖島勲 
プロデューサー:横手三佐子
監督補・プロデューサー:西山洋市 
撮影:四宮秀俊 録音・整音:光地拓郎
編集:平田竜馬 音楽:宇波拓
アニメーション:新谷尚之
制作:YYKプロダクション
宣伝・配給:ポレポレ東中野
出演:蒲田哲、内木英二、黒澤正義、石塚義高、植松敦巳、外波山文明、愛奏、中原翔子、岡村多加江、井上カオリ、ほたる、古川真司
 
沖島勲が贈る震災以降の寓話
“自由民主共産あっかんべぇー”政権は、夫の性行為が不足した場合、妻が2人目の夫を持つ事を許可した。続く“お前等アホちゃうか”政権は、これを一気に8人まで引き上げた。放り出された社会的劣者の男達。あわれですねぇ~。更に“何さらしとんねん”政権は、またまた身も蓋もない法案を用意しているらしい・・・解き放たれた女の「性」はどこまで強くなり、置いてけぼりをくらった男の「性」はどこに向かうのか?そんな人間の実在が大きく揺れたとき、荒唐無稽な現実から、アナタは還って来られるか。

WHO IS THAT MAN!? 沖島勲って誰だ!?
1940年生まれ。日本大学芸術学部映画学科在学中より足立正生らと『椀』『鎖陰』を製作。若松孝二や吉田喜重の助監督を務める。若松プロから『ニュー・ジャック・アンド・ヴェティ(モダン夫婦生活讀本)』(1969)で監督デビュー後、TVアニメ『まんが日本昔ばなし』のメインシナリオライターとして約1230本の脚本を担当。映画監督作品には他に『出張』(1989)、『したくて、したくて、たまらない、女。』(1996)、『YYK論争 永遠の”誤解”』(1999)、『一万年、後‥‥。』(2007)、『怒る西行 これで、いーのかしら(井の頭)』(2009)がある。寡作ながらも、常識にはとらわれない革新的な映画作りで、コアな映画ファンは勿論、新進気鋭の若手芸術家からも賞賛を集める。条理を越えたフィクションで私たちの現実世界を根底から脅かす沖島勲の映画は、最新作『WHO IS THAT MAN!? あの男は誰だ!?』で更なる困惑と過激を極める。
《料金》
一般1400円 学生・シニア1200円
会員1200円 学生会員・シニア会員1000円

《割引》2プロ目は200円引き

ストローブ=ユイレ初期2作品
2014年5月10日(土)・11日(日)
[関連企画] 5月10日(土)
ニュージャーマンシネマと文学──映像とテクスト新たな関係性を探る
講師:渋谷哲也(ドイツ映画研究)

 
「妥協せざる人々(和解せず)」
Nicht versöhnt oder Es hilft nur Gewalt, wo Gewalt herrscht
(西ドイツ/1965/55分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ヴァンデリン・ザハトラー
 
ストローブ=ユイレの監督第2作。副題「暴力が支配するところ、暴力のみが助けとなる」はブレヒトの戯曲『屠殺場の聖ヨハンナ』の一節から取られた。本編はハインリヒ・ベルの長編小説『9時半の玉突き』を原作とし、フェーメル家3代の家族物語の中に20世紀前半ドイツの激動の歴史を描き出す。映画は主にドイツに巣食うファシズムの暴力と市民の抵抗を過激に描き出す。場面や台詞は全てベルの原作から取られたが、この映画化が小説にとってプラスにならぬと判断した著作権者からは映画の破棄を要請されるという騒ぎに発展した。
「花婿、女優そしてヒモ」
Der Bräutigam, die komödiantin und der Zuhälter
(西ドイツ/1968/23分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ヴァンデリン・ザハトラー
 
ストローブ=ユイレがドイツ滞在中に製作した最後の映画。この後彼らはローマに拠点を移す。本作は3つの部分からなる。最初はランズベルガー通りを移動する車窓の眺めのワンカット。第二にフェルディナント・ブルックナーの戯曲『青年の病気』をストローブが10分間に短縮して演出したアクションテアターの上演。最後は女優とアメリカ人の結婚式と彼女に追いすがるヒモ(俳優)を彼女が厄介払いするまでをフアン・デラ・クルスのテクストによって演じるドラマ。ストローブ=ユイレによる脚色映画の手法のエッセンスを示す一本。
 
作品解説:渋谷哲也
協力:神戸ファッション美術館

《料金》2本立て
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。