プログラムPROGRAM

ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第9回 キラ・ムラートワ

2014年6月28日(土)・29日(日)
旧ソ連とルーマニア間で領土争いが繰り返されていたベッサラビア(現モルドバ共和国)生まれで、ウクライナを中心に活動するキラ・ムラートワ監督の2作品を上映する。2013年のロッテルダム国際映画祭では最新作が上映され特集が組まれるなど、約50年にわたり活躍する女性監督。

「長い見送り」
Долгие проводы
(1971/95分/35mm)
オデッサフィルム(ウクライナ)
監督:キラ・ムラートワ
脚本:ナタリア・リャザンツェワ
撮影:ゲンナジー・カリューク
音楽:オレーグ・カラワイチューク
出演:オレグ・ウラジーミルスキー、ジナイーダ・シャルコ
離婚した母親と、思春期の多感な息子のあいだの葛藤を、瑞々しくも大胆なタッチで描いたムラートワの監督第2作。「ロング・グッドバイ」を意味する原題を持つこの作品と、これとは真逆のタイトルを持つ単独監督デビュー作『短い出会い』の初期2作はアイロニカルにも「地方メロドラマ」と称される。キャメラの繊細な動き、突飛なモンタージュ、音とイメージのずれなど、その斬新な映像センスがすでに比類ない才能を感じさせる驚くべき傑作。党の要請に部分的に従わなかったために、この作品は16年間お蔵入りとなり、ムラートワは以後長きにわたって映画を撮れなくなる。次第に壊れてゆく母親を演じるジナイーダ・シャルコの、ジーナ・ローランズを彷彿とさせる神経症的な演技がすばらしい。

「灰色の石の中で」
Среди серых камней
(1983年/83分/35mm)
オデッサフィルム(ウクライナ)
監督・脚本:キラ・ムラートワ
原作:ウラディミール・コロレンコ
撮影:アレクセイ・ロジオーノフ
出演:イーゴリ・シャラーポフ、スタニスラフ・ゴヴォルーヒン
舞台はおそらく19世紀のロシア。母を亡くしたばかりの少年ワーシャは、妻の想い出に浸って自分を見てくれない父親を避けるようにひとり街を遊び歩くうちに、同い年ぐらいの兄妹と知り合い、奇妙な浮浪者たちが隠れすむ教会の地下に入り浸るようになる。子供向けの物語を借りた大人のための寓話。『長い見送り』の直後からすでにシナリオが書き始められていたが、度重なる検閲によって細部の改変を強いられ、ムラートワはついには完成作から自分の名前を外してしまう。絶えず動き回り、いっせいに話し始める人物たち。理解しがたい行動と、反復される支離滅裂な言葉。混沌としたイメージは、これ以後の作品に共通するものであり、むしろ『長い見送り』以上にムラートワ作品の特徴が現れていると言ってもいい。

作品解説:井上正昭

主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:ロシア映画社

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター会員1000円

《割引》
当日に限り2本目は200円引き

これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。