プログラムPROGRAM

年別アーカイブ: 2015

上映とトークセッション
新春幻灯会 幻灯の運動表現
2015年1月3日(土)13:30~(終了予定17:00/途中休憩あり)

「自転車にのってったお父ちゃん」

「自転車にのってったお父ちゃん」

 

スクリーンに静止画像を大きく映し出す映像装置としての幻灯(スライド)は、動画を映し出す映画とは異なり、しばしば「運動を欠く」とみなされてきました。しかし、今回上映する1950年代の幻灯作品は、多様な「運動」の表現を試み、もしくは観客を「運動」へと駆りたてる役割を担ったもので、それぞれにユニークな「動く/動かす」ポテンシャルを備えています。上映とトークを通じて、幻灯による「運動」を発見する機会にお立ち会いください。(鷲谷花)

トークセッション
細馬宏通
滋賀県立大学人間文化学部教授。ことばと身体動作の時間構造、視聴覚メディア史を研究。著書に『浅草十二階 塔の眺めと〈近代〉のまなざし』(青土社)『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか: アニメーションの表現史』(新潮選書)『うたのしくみ』(ぴあ)など。
鷲谷花
早稲田大学演劇博物館招聘研究員。2010年より幻灯の研究を本格的に開始し、その成果発表とともに全国各地で上映活動も行っている。『淡島千景―女優というプリズム』(青弓社)や、池田浩士編『大東亜共栄圏の文化建設』(人文書院)ほかに寄稿。

上映
My beautiful picture「松川事件 1951」
(1951年)
製作:人民幻燈協会、(日本労農救援会)
*福島大学松川資料室所蔵オリジナルプリントから複製したニュープリントを上映
1949年8月17日未明に福島県松川町付近で発生した列車転覆事故の犯人として、東芝松川工場及び国鉄の労働組合員20名が逮捕・起訴され、翌50年に死刑を含む有罪判決を受けた「松川事件」の、被告救援運動の一環として製作された。松川事件に関連する多数の映像作品の中でも最初期に作られ、事件のイメージの原型を描き出した作品といえる。

My beautiful picture「野ばら」
(1952年)
原作:小川未明 製作:人形劇団プーク
配給:光影社 脚色:高橋克雄
演出:川尻泰司 美術:田畑精一、石井マリ子
撮影:佐竹晴雄 制作:厚木たか
*神戸映画資料館所蔵
光影社の依頼により人形劇団プークが製作した「世界名作物語」シリーズの1本。人形劇の舞台の実況を撮影したものではなく、当時のプーク劇場の裏手にオープンセットを手作りして撮影され、実在する植生や本水、空を使ったリアルな空間設計が印象的な作品となっている。第4回世界青年学生祭文化コンクールで名誉賞受賞。

g-jitensha02「自転車にのってったお父ちゃん』
(1956年)
製作:東大セツルメント川崎こども会

作画・構成:加古里子(かこ さとし)

配給:日本幻灯文化社
*熊本学園大学水俣学研究センター所蔵オリジナルプリントから複製したニュープリントを上映(提供:早稲田大学演劇博物館)
東大川崎セツルメントのこども会の自主製作による幻灯作品。実際に起きた労災事故の犠牲者の遺児による作文と画をもとに、こども会による取材と討論を重ね、数年かけて完成されたという。児童画的な素朴な画風の一方、「自転車」の運動と静止の表現など、フィルム式幻灯の特性を活かした表現上の工夫の数々が精彩を放つ。
 
その他、おまけ上映あり

《料金》
予約:1800円
当日:一般2000円 学生・会員1800円 高校生以下1000円

*ご予約受付中
info@kobe-eiga.net 宛に、お名前、連絡先(電話)、参加希望日を書いてお送りください。
追って予約受付確認のメールを差し上げます。

主催:神戸映画資料館
協同企画・作品解説:鷲谷花
協力:早稲田大学演劇博物館、福島大学松川資料室、人形劇団プーク、加古里子


ダンスを撮る ──振付家・黒沢美香の世界──
1月10日(土)・11日(日)

「南郷ジャズズ jazzzzzzzzz-dance」

「南郷ジャズズ jazzzzzzzzz-dance」

日本のコンテンポラリーダンス界のゴッドマザーとも称されているダンサー・振付家の黒沢美香。2015年2月にArt Theater dB 神戸で、黒沢美香&神戸ダンサーズの「jazzzzzzzzzzzz- dance ジャズズダンス」が上演される。
これに合わせ、ここ数年黒沢美香を撮り続けている崟利子の2作品と、黒沢が講師を務めたDANCE BOXの育成プログラム「国内ダンス留学@神戸」の2013年の特別ワークショップの様子がおさめられた濱口竜介監督の『Dance for Nothing』を上映する。

1月10日(土)上映後トーク(終了予定18:00) 崟利子監督・濱口竜介監督

「南郷ジャズズ jazzzzzzzzz-dance」
(2013/32分/HD[ブルーレイ上映])
監督:崟利子
2012年11月に「黒沢美香&ダンサーズ」の青森ツアーに同行した5日間の記憶のコラージュ。同作は山形国際ドキュメンタリー映画祭2013にて審査員作品として上映された。

「横浜ジャズズ jazzzzzzzzzzz-dance」
(2015/30分[予定]/HD[ブルーレイ上映])
監督:崟利子
2014年11月横浜・中華街の同發ホールで4日間・7公演が行われた。総勢27人(ダンサー25名+バンド2名)の舞台の記録と約1年に渡る稽古のドキュメントの、今回はショートバージョン。

「jazz….-dance」初演は1992年。タイトルはジャズダンスのjazzではない。
jazz音楽の仕組みを尊敬してのタイトルである。
ダンスでjazzを泳ぐ。zの数は上演の度に増えていく。

崟は、2011年から黒沢美香の撮影を始め、現在ドキュメンタリーを製作中。また2011年以降の黒沢美香のソロ、黒沢美香&ダンサーズの全舞台記録映像の担当をしている。


dancefor「Dance for Nothing」

(2013/27分/HD[ブルーレイ上映])
製作:神戸ドキュメンタリー映画祭実行委員会
監督:濱口竜介 撮影:北川喜雄、野原位、濱口竜介
第5回神戸ドキュメンタリー映画祭(2013年10月)のオープニング作品として、神戸在住の映画監督・濱口竜介が撮り下ろした作品。ダンスという身体表現を映像化することは可能か、という問いとともに作られた本作は、ダンサーだけではなく、街、行き交う人々、そこに吹く風など、すべてのものがダンスするさまを写し出す。

 

《料金》
一般1500円 学生1300円 会員1300円 会員学生1000円
Art Theater dB 神戸の「国内ダンス留学@神戸 ショーイング公演(2015年1月10日・11日)のチケット半券か、「jazzzzzzzzzzzz- dance ジャズズダンス」(2015年2月7日〜9日)の予約番号をお持ちの方は200円割引。


「その街のこども 劇場版」
2015年1月16日(金)〜20日(火)

「その街のこども 劇場版」
(2010/83分/HD[ブルーレイ上映])
監督:井上剛
脚本:渡辺あや
音楽:大友良英
テーマ曲:阿部芙蓉美
プロデューサー:京田光広
上映企画:NHKプラネット近畿
配給:トランスフォーマー
出演:森山未來、佐藤江梨子、津田寛治

震災を体験したふたりの演技が心を揺さぶる
阪神・淡路大震災からちょうど15年目にあたる2010年1月17日、NHKで放送されたドラマ「その街のこども」は、実際に震災を体験している森山未來と佐藤江梨子の切なくリアルな演技に加え、心の傷を抱えたまま生きる若者たちを優しい眼差しで描いた渡辺あや(『天然コケッコー』、連続テレビ小説『カーネーション』)の脚本が大きな話題を呼び、放送後には視聴者から感動と絶賛の声が多数寄せられた。その後本作は第36回放送文化基金賞を受賞。さらに反響は拡がり続け、遂に『その街のこども 劇場版』として、NHKの制作したドラマとしては前代未聞の全国公開が決定。放送時にはカットせざるを得なかった未公開シーンを含む、再編集バージョンでの上映が実現した。
 
それからさらに5年が経った震災から20年の節目にあたる今年、神戸での再上映が決まりました。忘れたい、忘れられない、忘れて欲しくない…。神戸にあふれるそんな複雑な想いを描いたこの「神戸の映画」を繰り返し上映することで、この街の人々の思いを分かち合い、次の時代に引き継いでいければと思っています。

「その街」で生まれ育ったこどもたちが
新たな一歩を踏み出すために

こどもの頃に体験した震災というものに、いま改めて向き合おうとするふたりの若者に寄り添いながら、物語は進んでゆく。ロケ地の多くは実際に大きな被害を受けた地域であり、撮影には遺族を含め神戸の方々も参加した。一方、非被災者である多くのスタッフたちが、この作品を生み出す過程で悩み、苦しんだのも事実。様々な傷を抱えた被災者と、非被災者の間に存在する「溝」を見つめ、それを乗り越えることの難しさと大切さを伝える『その街のこども 劇場版』は、今を生きるすべての「こどもたち」が決して忘れてはならない未来への希望を描いている。

[公式サイト]

《料金》
一般:1200円 学生・高校生・シニア:1000円 中学生以下:700円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

サイレント映画鑑賞会 ハリー・ラングドンとその周辺

「ハリーの結婚」

「ハリーの結婚」

2015年1月24日(土)14:00〜
1920年代。第一次大戦後のバブル景気に湧くアメリカ。“狂熱の’20s”は、サイレント・コメディ映画の爛熟期でもあった。喜劇人たちは、視覚ギャグをとことんまで追求した。その結果、「そこまでやる!?」的過激アクションや、アニメーション的ハチャメチャぶりは沸点に達し、まさに爆発寸前!な状況だった。
そんなクレイジーな喜劇群へのアンチテーゼとして登場したのが、第9講コメディ学入門でとりあげるハリー・ラングドンである。彼の登場を境にして、サイレント・コメディはよりスローペースなシチュエーション喜劇へとシフトしていった。過激なスラップスティックから、ローレル&ハーディに代表されるトーキー喜劇へ。その橋渡しをしたのがハリー・ラングドンだったのだ。
ハリーの貴重な短編と、同時代の多彩なコメディアンたちの作品をまとめて観ることで、20年代アメリカ無声喜劇の変遷を感じとっていただきたい。(いいをじゅんこ)

「ラリーのウィークエンド・ドライバー」The Cloudhopper
(アメリカ/1925/8分/サウンド版/16mm)
監督:ラリー・シモン、スティーブン・ロバーツ、ノーマン・タウログ
主演:ラリー・シモン、ドロシー・ドワン
普通の青年ラリー。発明家の大事な書類が盗まれ、その娘に気のあるラリーが犯人を追いかける。自動車、バイク、列車そして飛行機を駆使した後半の追っかけシークエンスが圧巻。特撮もおもしろい。

「製材所のシモン」The Sawmill
(アメリカ/1922/26分[16コマ]/無声/16mm)
監督:ラリー・シモン、ノーマン・タウログ
主演:ラリー・シモン、オリヴァー・ハーディ
製材所で繰り広げられる恋のさやあて。文字通り命がけのスタントアクションがすごい。サイレント映画史上もっとも制作費のかかった短編と言われている。当時のラリー・シモンの人気ぶりがうかがえる。ローレル&ハーディのコンビを組む前のオリヴァー・ハーディがライバル役で出演。

「無理矢理ロッキー破り」Play Safe
(アメリカ/1927/8分[短縮版/16コマ]/無声/16mm)
監督:ジョセフ・ヘナベリー
主演:モンティ・バンクス、ヴァージニア・リー・コービン
悪漢たちに襲われた乙女が列車の貨車に逃げ込む。乙女の恋人モンティが猛スピードで走る列車を追いかける。本来は50分の長編作品。疾走する列車と自動車にはさまれるスタントアクションは、20年代喜劇の過激さを象徴する場面としてしばしば引用される。

「ターピンの向こう見ず野郎」The Dare-Devil
(アメリカ/1923/10分[18コマ]/無声/16mm)
監督:デル・ロード
主演:ベン・ターピン、ハリー・グリボン
20年代にマック・セネットがハリー・ラングドンとともに見出したスターのひとり、やぶにらみのベン・ターピン。本作は西部劇の撮影現場が舞台。スタントマンのターピンはことごとく偶然に恵まれてアクションを完璧にこなす。ヒロインに乞われ急きょ映画の主人公に抜擢されるも、ターピンには荷が重すぎて失敗ばかり。

「ハリーの結婚」His Marriage Wow
(アメリカ/1925/17分[16コマ]/無声/16mm)
監督:ハリー・エドワーズ
主演:ハリー・ラングドン、ナタリー・キングストン、ヴァーノン・デント
花婿ハリーは朝寝坊して結婚式に遅刻。教会に着くと謎の男に「花嫁は君の保険金目当てだ」と警告され戦々兢々。新婚生活もビクビクしどうし。ついに毒を盛られたと勘違いしたハリーを謎の男が逃そうとするが…。ハリーの終生の友だったヴァーノン・デントが「謎の男」役を好演。

作品解説:いいをじゅんこ

《料金》
一般1000円 学生・シニア900円
会員900円 会員学生・シニア800円

《割引》[第9講コメディ学入門] 参加者は200円引き


チャンバラ=剣劇の魅力
1月31日(土)・2月1日(日)
daisatsujin01Aプログラム
「大殺陣 にっぽん剣優列伝」
(1976/75分/16mm)羅針盤
製作:伊藤公一 監督・脚本・原作:夢野京太郎
撮影・編集:井上修 ナレーション:西村晃
*早稲田大学演劇博物館研究事業への協力による特別上映
竹中労(夢野京太郎)が情熱を傾けた「浪人街」リメイクの予告篇的意味合いで、映像ルポの一環として作ったチャンバラ映画のアンソロジー。大正から昭和初期にかけて隆盛したチャンバラ活動写真36本の名場面を集め、夢野京太郎の斬新な脚本によって新たな生命が吹き込まれた。銀幕の剣豪たちとともに、マキノ映画を始め映画黄金時代の青春が甦る。だが、76年に公開されて以後、さまざまな理由で忘れられた幻の映画となった。この映画のプロデューサー・伊藤公一は、週刊誌時代から竹中の同志だったが、2010年2月1日に永眠。撮影・編集の井上修はNDU(日本ドキュメンタリスト・ユニオン)のスタッフで、2005年に台湾原住民の靖国合祀問題を追いかけた『出草之歌 台湾原住民の吶喊 背山一戦』で健在ぶりを示した。『浪人街』リメイクで竹中と協働中のマキノ雅弘と稲垣浩が監修に当たり、ナレーションには「二代目水戸黄門」、昭和の名優・西村晃が名調子を披露している。

 

Bプログラム2本立て
kageboushitorimono01「影法師捕物帖」
(1926-27/49分 56分[16コマ 14コマ]部分/35mm/無声/染色)マキノ御室
総指揮:牧野省三 監督:二川文太郎
原作・脚本:壽々喜多呂九平 撮影:松浦しげる
出演:市川右太衛門、鈴木澄子、武井龍三、中根龍太郎
二川文太郎監督でバンツマ(阪東妻三郎)主演の有名な無声映画『江戸怪賊伝 影法師』(1925)の続篇で、市川右太衛門主演で映画化したもの。前篇12巻は元号が昭和に改まった1926年末公開の正月映画。後篇12巻も翌年4月に公開。今回の上映フィルムは、後に前篇、後篇を10巻に縮尺して再公開された中の前篇と後篇の各2巻分のみ。東京国立近代美術館フィルムセンターの「発掘された映画たち2014」で初上映された新発掘フィルム。冒頭には台湾の検閲刻印が入っているので、台湾での公開後、内地に配給されたフィルムと思われる。

kengekijyoyu01「剣劇女優とストリッパー 」
(1953/26分/35mm)
新大都映画
監督:平澤譲二 撮影:富澤恒夫
美術:古川健一 音楽:志村道三
出演:大都あけみ、奥山紗代、三島百合子、空飛小助、キャロル都
当時人気のあった女剣劇とストリップを組み合わせた客受け狙いの際物映画。田舎の芝居小屋で歌舞伎芝居が不入りだったが、東京から呼び寄せたストリップと歌舞伎の二本立て興行をしたところ大成功。映画スターに出世した女座長の回想として描く。無声映画の弁士として知られる加藤柳美が画面を説明。フィルムセンターの「発掘された映画たち2009」で上映されたもの。

 

[関連企画]1月31日(土)・2月1日(日)企画展『寄らば斬るぞ! 新国劇と剣劇の世界』の世界
講師:羽鳥隆英(早稲田大学演劇博物館助手)

《料金》入れ替え制
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

《割引》当日に限り2プログラム目は200円引き

「劇場版 神戸在住」
2015年1月31日(土)〜2月15日(日)11:00[水・木 休館]

ミニトーク 11:00の回上映終了後
1月31日(土) 白羽弥仁(監督)
2月1日(日) 安田真奈(脚本)・大西昭彦(企画プロデュース)
2月7日(土) 白羽弥仁(監督)

KOBE_MOVIE_poster01
「劇場版 神戸在住」
(2014/97分/HD[ブルーレイ上映])
監督:白羽弥仁 原作:木村紺「神戸在住」(講談社刊)
脚本:安田真奈 撮影:豊浦律子 照明:鈴村真琴
美術:嶋田良一 編集:渋谷陽一 音楽:妹尾武
製作:サンテレビジョン
配給・制作:アイエス・フィールド

出演:藤本泉、菅原永二、浦浜アリサ、松永渚、柳田小百合、松尾貴史、田中美里、仁科貴、愛華みれ、竹下景子

美しい神戸の風景… 海風のような心地よさと、新緑のような鮮やかさ!

震災を街の記憶としてどこかに感じつつ、
いまを生きる彼女たちを描く。

神戸の大学に通う東京出身の辰木桂。ナイーブかつ関西気質の違和感も手伝ってなかなか心を開くことができない彼女はある日、車椅子のイラストレーター、日和洋次と出会うことで心境に変化が生じる。しかし、桂は日和が命の砂時計を刻んでいることを知ってしまい…。

兵庫県・大阪府を放送対象地域とするサンテレビジョンは2014年に開局45周年を迎え、その記念事業として、また2015年1月17日が阪神・淡路大震災から20年目を迎えるにあたり、同局が制作したのがこの『神戸在住』です。
テレビ放送版となる『神戸在住』は主人公の辰木桂の視線から神戸を捉えるように描かれ、その20年目にあたる2015年1月17日に同局でオンエア。更に、桂と友人たち3人を加えた4人の視線で神戸を捉えるように描かれた『劇場版 神戸在住』が同じく2015年1月17日に劇場公開。劇場公開とCS放送やBS放送などが連動される試みは今までも何度もありましたが、『神戸在住』は劇場公開と地上波が同日に展開されるという日本のメディア史上初の試みというビッグプロジェクトなのです。再生のメッセージも込め、“震災の記憶”と“いまを生きる”というメッセージを現代から未来へと神戸から全国に伝えます。

kobezaiju01撮影は、三宮、元町、旧居留地、南京町、メリケンパークなどの名所を中心にオール神戸、阪神間でロケが行われ、神戸に深く関わる人々の姿を、街の景観や匂いと共に映像に収めました。神戸の大学に通う19歳の女子大生たちが20年前に起きた震災の記憶を街の中のどこかに感じつつ、この街で“いま”を生きる彼女たちの青春が描かれています。

原作は講談社の「月刊アフタヌーン」で1998年から2006年まで連載され、日本漫画家協会賞新人賞を受賞した木村紺の『神戸在住』。監督は『She’s Rain』で同じく神戸の街を舞台に高校生の淡い青春の刻を描いた白羽弥仁。主演の辰木桂役には、『神様のカルテ2』、『小川町セレナーデ』での演技が好評だった藤本泉。桂が真に心の扉を開く日和洋次役には小演劇の世界を中心に活躍している菅原永二。桂の友人・泉海洋子役には「神戸コレクション」でも活躍する人気モデル浦浜アリサ。生きる事の辛さと喜びを伝える武内真弓役に1999年から2012年まで震災をテーマとした詩の朗読コンサートに参加するなど神戸にゆかりの深い竹下景子。その他、個性溢れる豪華キャスト陣が脇を固め作品を盛り上げます。

 

[公式サイト]

《料金》
一般:1500円 学生:1300円 シニア:1100円 高校生以下:1000円
会員一般:1300円 会員学生・シニア:1000円

ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第12回 グルジア特集3

2015年3月7日(土)・8日(日)

ミニトーク「入門:グルジアの歴史と文化」
3月8日(日)「青い山/本当らしくない本当の話」上映終了後
 ゲスト:伊藤順二(コーカサス近代史/京都大学准教授)
 聞き手:楯岡求美(ロシア文化史/神戸大学准教授)
 
「グルジアは、大国ロシアと中東・イスラム地域とのはざまで独自の文字や文化を維持し続けています。多くの苦難を経たからこそ、涙と笑いのないまぜになったグルジア映画の世界が醸造されたのでしょう。日本ではあまり語られることの少ないグルジアの歴史と文化について、グルジア近代史をご専門とする伊藤順二さんにお話を伺います。ケフィヤ・ヨーグルトと黒海だけではないグルジアの豊かな文化の一端をご紹介したいと思います。
 
共催:神戸大学大学院国際文化学研究科 研究プロジェクト「映像におけるタブーと美の相克」

「インタビュアー」
Несколько интервью по личным вопросам
interviewer01 interviewer02
(1978/95分/35mm)グルジアフィルム
監督:ラナ・ゴゴベリーゼ
脚本:ザイラ・アルセニシヴィリ、エルロム・アフヴレジアニ、ラナ・ゴゴベリーゼ
撮影:ヌグザル・エルコマイシヴィリ 音楽:ギア・カンチェーリ
出演:ソフィコ・チアウレリ、ギア・バドリーゼ、カテワン・オハヘラシヴィリ、ジャンリ・ロラシヴィリ

仕事にも家族にも恵まれ、幸せな人生を送っていると信じている女性が、夫に裏切られて途方に暮れる。グルジアの女性監督が、日常の中で女性たちが直面する問題を繊細に描く。主役の新聞記者を演じるのはパラジャーノフの『ざくろの色』などで知られるソフィコ・チアウレリ。

 

「転回」
Круговорот
tenkai01 tenkai02
(1986/100分/35mm)グルジアフィルム
監督:ラナ・ゴゴベリーゼ
脚本:ザイラ・アルセニシヴィリ、ラナ・ゴゴベリーゼ
撮影:ヌグザル・エルコマイシヴィリ 音楽:ギア・カンチェーリ
出演:レイラ・アバシーゼ、リヤ・エリアワ

二人の初老の女性——元スタア女優と言語学者が久しぶりに再会して起こる二人の人生の急転回。女性の生き方に焦点を当てた作品を発表し続けたグルジアの女性監督の代表作。第2回東京国際映画祭(1987)最優秀監督賞受賞。

 

「青い山/本当らしくない本当の話」
Голубые горы, или Неправдоподобная история
blueM01 blueM02
(1984/95分/35mm)グルジアフィルム
監督:エリダル・シェンゲラーヤ
脚本:レゾ・チェイシヴィリ 撮影:レヴァン・パータシヴィリ 音楽:ギア・カンチェーリ
出演:ラマーズ・ギオルゴビアーニ、ヴァシーリイ・カフリアシヴィリ

作家ソソは「青い山」という小説を書き上げ、出版社に持ち込む。ソソは何度も足を運んで結果を聞こうとするが、出版社の誰もが本来の仕事以外の何事かで忙しい。秋が過ぎ、冬も過ぎ、春になっても、まだ誰も原稿を読んでくれていない。やがて、原稿の行方もわからなくなり……。官僚社会を皮肉ったエキセントリック・コメディー。

 

主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:ロシア映画社

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター会員1000円
《割引》
当日に限り2本目は200円引き

[貸館]『さよなら、ダディ』上映会
2015年3月22日(日)14:00 / 15:10
takenaka2015
ストーリー
七年前に離婚した元妻が、再婚して新婚旅行に行く間、七日間だけ娘を預かる事になった税理士の男。
そこへ、男の愛人や娘のボーイフレンドが乱入して来て、父娘の関係はギクシャクし始める。
七年ぶりに再会した父娘の姿を、喜劇タッチで描くホームドラマ。

「さよなら、ダディ」(2015年制作/カラー/47分/ハイビジョン[ブルーレイ上映])
出演:内藤和也 山本弥侑 中谷章子 藤原数基 熊橋穣  森下隆貢 神山明人 八幡泰久
音楽:Bitch Lunch Box 録音:竹中賢一 照明:合田美生璃
脚本・監督:竹中哲也

料金 500円
主催・お問い合せ:竹中哲也 label-66k@hb.tp1.jp


[貸館]知られざるロシア映画 上映とトーク
第一次・第二次世界大戦と映画

2015年3月27日(金)

二つの大戦下、ロシアでは時代がどのように映像化されたのだろうか。
三本の戦争映画を手掛かりに、戦争と映画について考えてみたい。

blily16:30〜『ベルギーの百合』
ヴワジスワフ・スタレーヴィチ(1916/DVD上映/日本語字幕付き)
映画黎明期に、生きているかのような昆虫の動きで人々を驚かせた鬼才のアニメーター、ヴワジスワフ・スタレーヴィチ。代表作昆虫アニメ『カメラマンの復讐』(1912)が有名だが、本作でも、第一次対戦下、ドイツによるベルギー侵攻によって引き起こされた残虐な事件を、森の昆虫の世界に移して描いている。物語の前後に孫娘が祖父から物語を聞く場面が実写で描かれる。

squeen16:45〜『スペードのクイーン』
ヤーコフ・プロタザーノフ(1916/DVD上映/日本語字幕付き)
1910年代にロシア映画の一時代を築いたプロタザーノフが、プーシキンの幻想小説『スペードのクイーン』(『スペードの女王』)の映画化。原作の隠れた背景には戦勝体験として頻繁に想起されたナポレオンとの戦争がある。移動カメラや実験的な照明効果、二重露出などが実験的に取り入れられている。革命後フランスに亡命。のちに帰国し、ソ連SF映画の金字塔『アエリータ』(1924)を制作した。
 
 

shurai18:00〜『襲来』
アブラーム・ローム(1944/DVD上映/日本語字幕付き)
シクロフスキーやオレーシャなど、ソ連文学の巨匠と協働したアブラム・ローム監督が、レオニード・レオーノフの同名戯曲を映画化。
ナチス軍がソ連領土に侵攻、次々占領されていった独ソ戦初期の凄惨な戦争体験を描く。主人公は刑務所から出たばかりの若者フョードル。家族からも仲間からも受け入れられない苦悩を抱えるというソ連文化表象では類を見ない稀有な人物である。
 
 
Pavlov19:50~20:50講演「ふたつの大戦下のロシア・ソヴィエト映画」
講師 マクシム・パヴロフ
(ロシア国立映画博物館元副館長/国際エイゼンシュテイン・センター財団キュレーター)
 
 
 
 
 

参加無料
主催:国際交流基金
   神戸大学大学院国際文化学研究科 研究プロジェクト「映像におけるタブーと美の相克」
連絡先:楯岡 kumi3@kobe-u.ac.jp
協力:神戸映画資料館


関連上映 ストローブ=ユイレ、ブレヒト、ワイマール期の音楽劇
2015年3月28日(土)・29日(日)

vonheute01「今日から明日へ」

Von heute auf morgen(1996/62分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ 撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ

ストローブ=ユイレによるシェーンベルクの同名時事オペラの完全映画化。ある夜の夫婦の諍いを描きつつ当世流行りの「モダンな人々」とは何か、時代を超えて残るものとは何かを問う。

 

 

DieDreigroschen01「三文オペラ」
Die Dreigroschen Oper(1931/112分/35mm)
フィルム提供:東京国立近代美術館フィルムセンター
監督:ゲオルグ・ヴィルヘルム・パプスト
原作:ベルトルト・ブレヒト
撮影:フリッツ・アルノ・ヴァグナー
美術:アンドレイ・アンドレイエフ
音楽:クルト・ヴァイル
出演:ルドルフ・フォルスター、カローラ・ネーヘル、ラインホルト・シュンツェル

DieDreigroschen02ブレヒトとクルト・ヴァイルによる代表的な舞台劇の映画化。トーキー初期の音楽映画として原作を換骨奪胎した楽しいミュージカルに仕上がっている。映画の内容を不服としたブレヒトとの間で訴訟沙汰になったことでも有名。

 

作品解説:渋谷哲也
協力:神戸ファッション美術館、東京国立近代美術館フィルムセンター
[関連企画]
3月28日(土)
ストローブ=ユイレ、ブレヒト、ワイマール期の音楽劇
講師:渋谷哲也(ドイツ映画研究)
ゲスト:大田美佐子(西洋音楽史,音楽美学)

《料金》入れ替え制 *招待券のご利用不可
一般:1400円 学生・シニア:1300円
会員一般:1300円 会員学生・シニア:1200円

《割引》
当日2本目は100円引き

筒井武文監督特集 part2
2015年4月11日(土)・12日(日)

筒井武文監督 来館!
監督挨拶 4月11日(土)「オーバードライヴ」の上映前
トーク 4月12日(日)「学習図鑑」「ヒカリ」の上映終了後
聞き手:吉野大地(ラジオ関西『シネマキネマ』ディレクター)

gakushu_zukan01「学習図鑑」
(1987-89/50分/16mm)
監督:筒井武文 撮影:宮武嘉昭 録音:浅利公治
音楽:太田恵資 製作:西村朗、菅安映
出演:高泉淳子、白井晃、篠崎はるく、遊◉機械/全自動シアター
高泉淳子と白井晃たちが1983年に旗揚げした劇団、遊◎機械/全自動シアターが87年に初演をおこなった『学習図鑑』をもとにした作品。テレビ番組『ポンキッキーズ』でも知られる、高泉演じる小学生「山田のぼる君」のひと夏の出来事を中心に描く。ロケ撮影パートも織り交ぜた構成で、公演記録をキャメラで収めるのではなく、「舞台を使ったフィクション映画を撮る」野心が全編にみなぎる。子供、ノスタルジー、奇想、無垢と無意味の交錯というモチーフには、初期作品『レディメイド』(82)や『ゆめこの大冒険』(86)との親和性も見出せるだろう。

hikari01「ヒカリ」
(2006/8分/HD-CAM[HDV上映])
監督:筒井武文 脚本:小林美香 撮影:宮武嘉昭
照明:箕輪栄一 美術:磯見俊裕
出演:長島良江、本間幸子、熊本野映
教鞭を執る東京藝術大学映像研究科が制作した短篇。和室に集まった三姉妹。長女の突然の告白に動揺する次女と三女。影が三人を覆うが、三女のあるアクションをきっかけに映画は光を獲得する。間取りを見失うキャメラ位置、風鈴の音色と対を成すように鳴る氷の音など、細部に趣向を凝らし、不思議な味わいを湛えた点描に仕上げている。

 

overdrive02「オーバードライヴ」
(2004/127分/35mm)
監督:筒井武文 脚本:EN 撮影:芦澤明子
照明:白石成一 美術:磯見俊裕 製作:榎本憲男
出演:柏原収史、鈴木蘭々、杏さゆり、ミッキー・カーチス、小倉一郎、諏訪太郎、石橋蓮司

overdrive01『ゆめこの大冒険』から約20年ぶりに取り組んだフィクション長篇は、サイレント/活劇/ミュージカル/アニメ/CGなど、映画の歴史を横断するかのごとく数多のスタイルで繰り広げられるエンターテインメント。音楽ユニット「ゼロデシベル」をクビになった主人公の弦が拉致同然に連行された先は下北半島。津軽三味線の修行を積み、己の再生と恋を賭けて強者たちとのバトルに火花を散らす。荒唐無稽な物語に、ハードロック/ラップとこれまた多種な音楽を絡めて束ねる手さばきは、それまでの映画制作・批評活動で培った確かなもの。当時の筒井武文の集大成と言える一作である。歌姫を語り手に据えた話の運びも軽妙。芦澤明子がHDカムで撮り上げた映像をもとに様々な加工が施された画面から、フィルムを至上のものとする筒井監督がデジタルの可能性を探求するさまが窺える。またそこには、映画をつくる悦びも息づいている。サイレントの様式で描かれたシーンは、「アタマじゃなくてからだで撮っている感じで、もしかしたら僕の生理が一番出ているかもしれない」(劇場パンフレットより)。

 

kodokuwakusei02「孤独な惑星」
(2010/94分/35mm)
監督:筒井武文 脚本:宮崎大祐 撮影:芦澤明子
照明:御木茂則 サウンドデザイン:森永泰弘
出演:竹厚綾、綾野剛、三村恭代、水橋研二、ヒカルド、市山貴章、ミッキー・カーチス

kodokuwakusei01原点である16ミリフィルム撮影に立ち返って生み出したモダンなラブ・コメディ。隣室から追い出された哲男を招き入れ、ベランダに居候させることになったOLの真里。ガラス越しに心を通わせはじめるが、その透明な扉はふたりを隔てる「見えない境界線」でもあった。真里のほのかな恋ごころの行き着く先は……? 戸や壁を使った巧みな空間設計とシュールな音響デザインにより、ありふれた都市風景が異世界へと変容。『オーバードライヴ』に続く芦澤明子の撮影とミッキー・カーチスの怪演も筒井作品ならではの虚構性を飛躍させる。ファッションモデルとしても活躍する竹厚綾が都会の片隅に暮らすヒロインをたおやかに演じ、ラストに訪れる彼女の「解放」は切なくも清々しい。身体性を生かした綾野剛のコミカルな演技も魅力。公開が待たれる新作『自由なファンシィ』へ連なる「筒井武文・愛の三部作」第一作。ヌーヴェル・ヴァーグ作品群の「部屋の映画」の記憶を呼び起こす珠玉の一本。
 
作品解説:吉野大地

●筒井武文監督インタビュー ──『筒井武文監督特集Part2』によせて──
『学習図鑑』『オーバードライヴ』『ヒカリ』『孤独な惑星』(取材・文/ラジオ関西『シネマキネマ』吉野大地)
筒井武文監督ロング・インタビュー(取材・文/ラジオ関西『シネマキネマ』吉野大地)

筒井武文
東京造形大学在学中より映画を撮り始める。フリーの助監督、フィルム編集者を経て、自主制作映画『ゆめこの大冒険』(1986)を完成させ劇場公開。映画制作と並行して、東京藝術大学大学院映像研究科、映画美学校などで後進の育成につとめるほか、映画批評を執筆。現在、「キネマ旬報」のレビューコーナーを担当している。最新監督作は、映画美学校第10期高等科生とのコラボレーション作品『孤独な惑星』(2011)。

 

《料金》入れ替え制1プログラムあたり
一般1200円 学生1000円 会員1000円 学生会員900円
《割引》
当日に限り2プログラム目は200円割引

サイレント映画鑑賞会 バスター・キートン蔵出し上映会
2015年4月18日(土)・19日(日)

Aプログラム
キートン晩年の異色作2本(16mm/計80分)

Bプログラム
キートンの伝記映画(16mm/91分)

*すべて日本語字幕無し

《料金》入れ替え制
700円(1プログラム)
《割引》
当日2プログラム目は200円引き
[第10講コメディ学入門] 参加者は1プログラム目から200円引き


[貸館]おコメダーズの映画まつりin神戸 -誰も教えてくれないアイノカタチ-
2015年4月25日(土)・26日(日)

oyaji01

4月25日(土)・26日(日)
『おやじ男優Z』(池島ゆたか監督/105分)

4月25日(土)
『川下さんは何度もやってくる』
(いまおかしんじ監督/82分)

『恋のプロトタイプ』(中村公彦監督/87分)

4月26日(日)
『もうひとりのルームメイト』(中村公彦監督/30分)

『そして鬼になる』(田代尚也監督/22分)

『背徳の海 情炎に溺れて』(竹洞哲也監督/60分)

○おコメダーズのトークショー
ゲスト 25日=櫻井拓也さん、堀 有里さん 26日=田代尚也監督

○上映後、池島ゆたか監督、出演キャストらによるトークショー

○トークショー終了後、池島ゆたか監督、出演キャストらによる映画資料館ロビーでの簡単な懇親会あり(飲み物別料金/21時終了予定)

kawashimo01koinoprojyoen01

soshiteoni

★物販
「おやじ男優Z」公式パンフレット
「おやじ男優Z」原作者・有末剛/著書「緊縛師A 恍惚と憂鬱の日々」
「恋のプロトタイプ」DVD
「川下さんは何度もやってくる」DVD※特典としてレンタル用ジャケット

一日通し券1500円
問合せ先 090-1670-6547(担当・三輪)


三里塚特集
2015年5月2日(土)〜6日(水・祝)
土本典昭や小川紳介など日本のドキュメンタリー映画を支えた名キャメラマン、大津幸四郎氏が昨年11月に亡くなられ遺作となった『三里塚に生きる』が公開された。ここにその背景を探るべく三里塚映画の主要作をまとめて上映する。一般劇場では上映の機会が少ない貴重な作品の数々。お見逃しなく。

トークイベント
5月3日(日)17:20〜 参加無料(要当日の映画チケット半券)
鈴木卓爾(映画監督)× 藤井仁子(映画評論家)
『私は猫ストーカー』(2009)、『ゲゲゲの女房』(2010)で元小川プロのたむらまさきキャメラマンと組み、『ポッポー町の人々』(2012)などで独自の闘争映画を作り出してきた鈴木卓爾監督と、2014年の「キネマ旬報ベスト・テン」で『三里塚に生きる』を一位に選出した映画評論家の藤井仁子による対談。

苦労して耕した自分の土地から、ある日突然、出て行けと告げられる。無茶な話だと抵抗すれば、金目当てにごねる気かと責められる。そんなカフカ的ともいうべき理不尽な状況に突き落とされれば、どんな昔気質の百姓でも怒りに燃えて立ちあがらずにはいられまい。仕事に旅行に誰もが気軽に飛行機を利用する今日、われわれが享受している便利な生活がどれほどの犠牲と引き換えに得られたものであるか。「3・11」すら経験した今のわれわれなら、その事実に党派やイデオロギーの色眼鏡を通すことなく、虚心に向きあえるはずだろう。去った者がいる。残った者もいる。もはや大津幸四郎のいない2015年、震災から20年を経た神戸の地で、いま一度「三里塚」を見るためのまたとない道づれとして鈴木卓爾監督をお迎えしたい。なぜ鈴木氏なのか。すぐにピンときた年季の入った小川プロのファンにも、釈然としない「三里塚」初心者にも、この催しはもちろん等しく開かれている。

──藤井仁子(映画評論家)

 

summer_in_Narita01「日本解放戦線 三里塚の夏」

(1968/108分/モノクロ/16mm)
製作:小川プロダクション
 演出:小川紳介
撮影:大津幸四郎、田村正毅 録音:久保田幸雄
1978年に開港した成田国際空港は地元農民の猛烈な反対を無視し国家の政策で建設された。この映画は1968年4月から7月、条件付き売却賛成の農家の土地立入り調査をする空港公団職員、護衛する機動隊と、阻止しようとする農民・学生を、「三里塚映画班」として農民側についた小川プロがとらえた記録で、その後も続く「三里塚」シリーズの第1作。撮影中の大津幸四郎カメラマンが公務執行妨害罪で逮捕された。

 

dainitoride01「三里塚 第二砦の人々」
(1971/143分/モノクロ/16mm)
製作:小川プロダクション
監督:小川紳介 助監督:福田克彦、湯本希生
撮影:田村正毅 整音:浅沼幸一
海外での評価も高いシリーズ第4作。地元農民に事前説明なく、新空港建設用地を測量しようとした国と公団は、機動隊を引き連れ強制収用を強行。農民側は徹底抗戦し砦を築く。鎖で自らの体を木にくくりつけ、一歩も動かない女性。助けようとスクラムを組む人々。農民、学生たちは公団、機動隊の乱入に対し、投石、竹槍、火炎瓶で応戦。カメラは砦に密着して一ヶ月に及ぶ闘いを記録した。マンハイム国際映画祭にてジョセフ・フォン・スタンバーグ賞を受賞。

 

 

hetaburaku01「三里塚 辺田部落」
(1973/146分/モノクロ/16mm)
製作:小川プロダクション 監督:小川紳介
撮影:田村正毅 録音:久保田幸雄
スタッフ:福田克彦、湯本希生、白石洋子、飯塚俊男、野坂治雄、伏屋博雄、他
シリーズ第6作。1971年に三里塚青年行動隊・三ノ宮文男さんが22歳の若さで自死して以来、小川プロでも激しいスタッフ討議が重ねられてきたが、その文男さんが生まれ育った辺田部落の歴史や人々の日常を見つめた作品。それまでの闘争映画ではないため、活動家からは不満の声が上がった。小川が稲作りに傾斜して行く記念碑的な作品。

 

tsuchinokoshin01「土の行進 三里塚14年、青年たちはいま」
(1981/50分/カラー/8mm)
製作:三里塚ノートフィルム
製作・構成・撮影・編集:福田克彦
撮影:瓜生敏彦 音楽:高橋悠治と水牛楽団
小川プロの助監督だった福田克彦は小川が山形に移った後、78年に三里塚に移住して地元の人々と共に行動することを選んだ。1966年に農民が「三里塚芝山連合空港反対同盟」を発足させ三里塚闘争を初めてから14年、青年たちが独自の方法で田圃を改良していく姿を追った。三里塚の少年行動隊の一員で幼少期から小川プロの現場に出入りし、黒沢清や四ノ宮浩作品でも知られる瓜生敏彦が撮影を担当。

kusatori01「草とり草紙」
(1985/82分/カラー/8mmから16mmブローアップ)
製作:波多野ゆき枝 監督:福田克彦
撮影:瓜生敏彦、福田克彦 ナレーション:清水絋治
音楽:小向京子 題字:石毛博道 整音:浅沼幸一
写真・絵:波多野ゆき枝
空港二期工事に反対し家族と離れて一人で生活する反対派農民・染谷の婆ちゃんの農作業などを軽便な
8mmカメラで淡々と追い、愚痴めいた独り語りを重ねて福田ならではの味わいある作品に仕上げた。小川プロのような集団製作を止めた個人的な自伝映画で、自主上映のために16ミリにブローアップして上映展開を図った。

 

sanrizuka02c「三里塚に生きる」
(2014/140分/カラー・モノクロ/ブルーレイ上映)
企画・製作:三里塚に生きる製作委員会
監督・撮影:大津幸四郎 監督・編集:代島治彦
朗読:吉行和子、井浦新 音楽:大友良英
写真:北井一夫 題字・筆文字:山田麻子 整音:滝澤 修
プロデューサー:赤松立太、代島治彦
制作・配給:スコブル工房
昨年逝去された大津幸四郎キャメラマンが、『日本解放戦線 三里塚の夏』(1968)以来45年を経て三里塚の農民にキャメラを向け撮影し、共同監督を努めた作品。現在の三里塚の人々の姿から、空港闘争とは何だったかのか、国家権力に振り回されてきた人々のくらしや考えが静かに浮かび上がる。

 

《料金》入れ替え制1本あたり
一般1400円 学生1200円 会員1200円 学生会員1000円
《割引》
当日に限り2本目は200円割引

11064437_808784835868190_12595994_o[貸館]映画侠区 presents
渡辺シン映画祭
真心英雄編:ジョン・ジェイク監督特集

2015年5月10日(日)
 
 
地元関西の重要な自主映画監督である渡辺真の作品と、その恩師や友人達周辺作家やミューズ女優達を半年強に渡ってご紹介するプログラム。第一回目の「真心英雄編」は韓国からの留学生、ジョン・ジェイクが三年間で撮り上げた三本の作品を上映する。最新作『接触警戒混乱 必殺の一発』には渡辺真が主演しており、二人の友情が結実したこれは、稀な傑作である。また渡辺真監督が今年、撮る予定の『水面のあかり』に関する決意表明の履歴書作品も上映する。
 
 
 

ジョン・ジェイク Jae IK Jung
韓国・浦項出身。15歳より短編映画を作りはじめ、2001年「第3回ソウル国際青少年映画祭」、2003年「全州映画祭」のオンゴウルセクション映画17部門へ進出。2010年「第9回ミジャンセン短編映画祭」での上映、ほか多数。韓国陸軍本部・文化映像の製作にも携わり、KBS2TVドキュメンタリーやVJプログラムなど幅広く活動する。来日し、京都精華大学映像コースでの留学中、「Silver Smith」と「パパゲーノ エフェクト」を制作。卒業制作としてB級ノワール・アクション「接触警戒混乱~必殺の一発~」を制作。同校卒業後、クァク・ジェヨン監督の日韓合作映画「風の色」に参加した。

『Silver Smith』
(2013/13min カラー/ブルー・レイ上映)
監督:Jae Ik Jung
キャスト:森田晋源、津村秀樹、作田宏平、谷口功
【作品概要】
銀細工の技術を持った一人の男がいた。彼は自分が作ったアクセサリーで相手の喜ぶ笑顔を見るのが幸せだった。しかし、若い年齢で癌と判定される。 彼はその後、死ぬ前に自分のために必ずしたいことは何か考えてみた。それは、総合 格闘技であった。異種格闘技を始めて時間が流れ、がんの判定は医師の間違った判定であることが明らかとなった。彼は今、二つの夢を追い続けている。一つは、総合格闘技の選手として。もう一つは 銀細工職人として。私は彼と一緒に総合格闘技の試合の準備をする。
→トレーラー
 
『パパゲーノ エフェクト』
(2014/20min カラー/ブルー・レイ上映)
監督:Jae Ik Jung
キャスト:ハナムラチカヒロ、南野佳嗣、キタノ万里(dracom)、吉田 徹、森嶌正紀
【作品概要】
パパゲーノエフェクトを主題とし、他人の命を大切にする人間の本性と、それに対する信頼を希望的に表現する。他者を助ける人間の思いやりは伝染し、伝達されることを示したい。吹雪が打つ冬、自殺スポットで有名なある山の中で、仮面をかぶった男が自殺願望者を改心させようと苦労する。仮面をかぶった男は彼の失望と諦観に対し、自らの命をかけて立ち向かう。しかし、彼は死に向かう信念をなかなか放棄しようとしない。
→トレーラー
 
『接触警戒混乱 ~ 必殺の一発 ~ 』
(2015年・日本・韓国 47min ブルー・レイ上映)
監督:Jae Ik Jung
プロデュース:藤井健太 プロダクション・デザイナー:細谷周平
撮影補:石原毅 助監督:磯部鉄平 美術:So Sang Young、斉 岳、南野凪沙
ストーリーボード:Kim Jung Ha 音響:稲津定晃、藤井健太
音楽:Kim Jae Gon、Ha Jung Wo 脚本:Jae Ik Jung ほか
キャスト:渡辺 真、木下聖浩、須藤誠一、新宮風香、新谷智史、藤居裕紀、中田達幸 明 音 ほか
【作品概要】
在日韓国人である森谷は過去、軍人として殺人を犯した罪悪感から、心理学者・津村によるカウンセリングを受けている。自殺未遂を重ねる森谷を救う津村だが、津村にもまた、一人娘を殺害された忘れがたい記憶があった。森谷にその犯人を殺害させることで、トラウマからの開放を求める津村。津村は孤独な少年・駿介をメンバーに加え、森谷をマインド・コントロールしていく。
→トレーラー
 
準備中『「水面のあかり」のための履歴書』

《料金》入れ替え制
1プログラム 1000円  2プログラム 1500円

これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。