プログラムPROGRAM
2015 1

上映とトークセッション
新春幻灯会 幻灯の運動表現
2015年1月3日(土)13:30~(終了予定17:00/途中休憩あり)

「自転車にのってったお父ちゃん」

「自転車にのってったお父ちゃん」

 

スクリーンに静止画像を大きく映し出す映像装置としての幻灯(スライド)は、動画を映し出す映画とは異なり、しばしば「運動を欠く」とみなされてきました。しかし、今回上映する1950年代の幻灯作品は、多様な「運動」の表現を試み、もしくは観客を「運動」へと駆りたてる役割を担ったもので、それぞれにユニークな「動く/動かす」ポテンシャルを備えています。上映とトークを通じて、幻灯による「運動」を発見する機会にお立ち会いください。(鷲谷花)

トークセッション
細馬宏通
滋賀県立大学人間文化学部教授。ことばと身体動作の時間構造、視聴覚メディア史を研究。著書に『浅草十二階 塔の眺めと〈近代〉のまなざし』(青土社)『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか: アニメーションの表現史』(新潮選書)『うたのしくみ』(ぴあ)など。
鷲谷花
早稲田大学演劇博物館招聘研究員。2010年より幻灯の研究を本格的に開始し、その成果発表とともに全国各地で上映活動も行っている。『淡島千景―女優というプリズム』(青弓社)や、池田浩士編『大東亜共栄圏の文化建設』(人文書院)ほかに寄稿。

上映
My beautiful picture「松川事件 1951」
(1951年)
製作:人民幻燈協会、(日本労農救援会)
*福島大学松川資料室所蔵オリジナルプリントから複製したニュープリントを上映
1949年8月17日未明に福島県松川町付近で発生した列車転覆事故の犯人として、東芝松川工場及び国鉄の労働組合員20名が逮捕・起訴され、翌50年に死刑を含む有罪判決を受けた「松川事件」の、被告救援運動の一環として製作された。松川事件に関連する多数の映像作品の中でも最初期に作られ、事件のイメージの原型を描き出した作品といえる。

My beautiful picture「野ばら」
(1952年)
原作:小川未明 製作:人形劇団プーク
配給:光影社 脚色:高橋克雄
演出:川尻泰司 美術:田畑精一、石井マリ子
撮影:佐竹晴雄 制作:厚木たか
*神戸映画資料館所蔵
光影社の依頼により人形劇団プークが製作した「世界名作物語」シリーズの1本。人形劇の舞台の実況を撮影したものではなく、当時のプーク劇場の裏手にオープンセットを手作りして撮影され、実在する植生や本水、空を使ったリアルな空間設計が印象的な作品となっている。第4回世界青年学生祭文化コンクールで名誉賞受賞。

g-jitensha02「自転車にのってったお父ちゃん』
(1956年)
製作:東大セツルメント川崎こども会

作画・構成:加古里子(かこ さとし)

配給:日本幻灯文化社
*熊本学園大学水俣学研究センター所蔵オリジナルプリントから複製したニュープリントを上映(提供:早稲田大学演劇博物館)
東大川崎セツルメントのこども会の自主製作による幻灯作品。実際に起きた労災事故の犠牲者の遺児による作文と画をもとに、こども会による取材と討論を重ね、数年かけて完成されたという。児童画的な素朴な画風の一方、「自転車」の運動と静止の表現など、フィルム式幻灯の特性を活かした表現上の工夫の数々が精彩を放つ。
 
その他、おまけ上映あり

《料金》
予約:1800円
当日:一般2000円 学生・会員1800円 高校生以下1000円

*ご予約受付中
info@kobe-eiga.net 宛に、お名前、連絡先(電話)、参加希望日を書いてお送りください。
追って予約受付確認のメールを差し上げます。

主催:神戸映画資料館
協同企画・作品解説:鷲谷花
協力:早稲田大学演劇博物館、福島大学松川資料室、人形劇団プーク、加古里子


ダンスを撮る ──振付家・黒沢美香の世界──
1月10日(土)・11日(日)

「南郷ジャズズ jazzzzzzzzz-dance」

「南郷ジャズズ jazzzzzzzzz-dance」

日本のコンテンポラリーダンス界のゴッドマザーとも称されているダンサー・振付家の黒沢美香。2015年2月にArt Theater dB 神戸で、黒沢美香&神戸ダンサーズの「jazzzzzzzzzzzz- dance ジャズズダンス」が上演される。
これに合わせ、ここ数年黒沢美香を撮り続けている崟利子の2作品と、黒沢が講師を務めたDANCE BOXの育成プログラム「国内ダンス留学@神戸」の2013年の特別ワークショップの様子がおさめられた濱口竜介監督の『Dance for Nothing』を上映する。

1月10日(土)上映後トーク(終了予定18:00) 崟利子監督・濱口竜介監督

「南郷ジャズズ jazzzzzzzzz-dance」
(2013/32分/HD[ブルーレイ上映])
監督:崟利子
2012年11月に「黒沢美香&ダンサーズ」の青森ツアーに同行した5日間の記憶のコラージュ。同作は山形国際ドキュメンタリー映画祭2013にて審査員作品として上映された。

「横浜ジャズズ jazzzzzzzzzzz-dance」
(2015/30分[予定]/HD[ブルーレイ上映])
監督:崟利子
2014年11月横浜・中華街の同發ホールで4日間・7公演が行われた。総勢27人(ダンサー25名+バンド2名)の舞台の記録と約1年に渡る稽古のドキュメントの、今回はショートバージョン。

「jazz….-dance」初演は1992年。タイトルはジャズダンスのjazzではない。
jazz音楽の仕組みを尊敬してのタイトルである。
ダンスでjazzを泳ぐ。zの数は上演の度に増えていく。

崟は、2011年から黒沢美香の撮影を始め、現在ドキュメンタリーを製作中。また2011年以降の黒沢美香のソロ、黒沢美香&ダンサーズの全舞台記録映像の担当をしている。


dancefor「Dance for Nothing」

(2013/27分/HD[ブルーレイ上映])
製作:神戸ドキュメンタリー映画祭実行委員会
監督:濱口竜介 撮影:北川喜雄、野原位、濱口竜介
第5回神戸ドキュメンタリー映画祭(2013年10月)のオープニング作品として、神戸在住の映画監督・濱口竜介が撮り下ろした作品。ダンスという身体表現を映像化することは可能か、という問いとともに作られた本作は、ダンサーだけではなく、街、行き交う人々、そこに吹く風など、すべてのものがダンスするさまを写し出す。

 

《料金》
一般1500円 学生1300円 会員1300円 会員学生1000円
Art Theater dB 神戸の「国内ダンス留学@神戸 ショーイング公演(2015年1月10日・11日)のチケット半券か、「jazzzzzzzzzzzz- dance ジャズズダンス」(2015年2月7日〜9日)の予約番号をお持ちの方は200円割引。


「その街のこども 劇場版」
2015年1月16日(金)〜20日(火)

「その街のこども 劇場版」
(2010/83分/HD[ブルーレイ上映])
監督:井上剛
脚本:渡辺あや
音楽:大友良英
テーマ曲:阿部芙蓉美
プロデューサー:京田光広
上映企画:NHKプラネット近畿
配給:トランスフォーマー
出演:森山未來、佐藤江梨子、津田寛治

震災を体験したふたりの演技が心を揺さぶる
阪神・淡路大震災からちょうど15年目にあたる2010年1月17日、NHKで放送されたドラマ「その街のこども」は、実際に震災を体験している森山未來と佐藤江梨子の切なくリアルな演技に加え、心の傷を抱えたまま生きる若者たちを優しい眼差しで描いた渡辺あや(『天然コケッコー』、連続テレビ小説『カーネーション』)の脚本が大きな話題を呼び、放送後には視聴者から感動と絶賛の声が多数寄せられた。その後本作は第36回放送文化基金賞を受賞。さらに反響は拡がり続け、遂に『その街のこども 劇場版』として、NHKの制作したドラマとしては前代未聞の全国公開が決定。放送時にはカットせざるを得なかった未公開シーンを含む、再編集バージョンでの上映が実現した。
 
それからさらに5年が経った震災から20年の節目にあたる今年、神戸での再上映が決まりました。忘れたい、忘れられない、忘れて欲しくない…。神戸にあふれるそんな複雑な想いを描いたこの「神戸の映画」を繰り返し上映することで、この街の人々の思いを分かち合い、次の時代に引き継いでいければと思っています。

「その街」で生まれ育ったこどもたちが
新たな一歩を踏み出すために

こどもの頃に体験した震災というものに、いま改めて向き合おうとするふたりの若者に寄り添いながら、物語は進んでゆく。ロケ地の多くは実際に大きな被害を受けた地域であり、撮影には遺族を含め神戸の方々も参加した。一方、非被災者である多くのスタッフたちが、この作品を生み出す過程で悩み、苦しんだのも事実。様々な傷を抱えた被災者と、非被災者の間に存在する「溝」を見つめ、それを乗り越えることの難しさと大切さを伝える『その街のこども 劇場版』は、今を生きるすべての「こどもたち」が決して忘れてはならない未来への希望を描いている。

[公式サイト]

《料金》
一般:1200円 学生・高校生・シニア:1000円 中学生以下:700円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

サイレント映画鑑賞会 ハリー・ラングドンとその周辺

「ハリーの結婚」

「ハリーの結婚」

2015年1月24日(土)14:00〜
1920年代。第一次大戦後のバブル景気に湧くアメリカ。“狂熱の’20s”は、サイレント・コメディ映画の爛熟期でもあった。喜劇人たちは、視覚ギャグをとことんまで追求した。その結果、「そこまでやる!?」的過激アクションや、アニメーション的ハチャメチャぶりは沸点に達し、まさに爆発寸前!な状況だった。
そんなクレイジーな喜劇群へのアンチテーゼとして登場したのが、第9講コメディ学入門でとりあげるハリー・ラングドンである。彼の登場を境にして、サイレント・コメディはよりスローペースなシチュエーション喜劇へとシフトしていった。過激なスラップスティックから、ローレル&ハーディに代表されるトーキー喜劇へ。その橋渡しをしたのがハリー・ラングドンだったのだ。
ハリーの貴重な短編と、同時代の多彩なコメディアンたちの作品をまとめて観ることで、20年代アメリカ無声喜劇の変遷を感じとっていただきたい。(いいをじゅんこ)

「ラリーのウィークエンド・ドライバー」The Cloudhopper
(アメリカ/1925/8分/サウンド版/16mm)
監督:ラリー・シモン、スティーブン・ロバーツ、ノーマン・タウログ
主演:ラリー・シモン、ドロシー・ドワン
普通の青年ラリー。発明家の大事な書類が盗まれ、その娘に気のあるラリーが犯人を追いかける。自動車、バイク、列車そして飛行機を駆使した後半の追っかけシークエンスが圧巻。特撮もおもしろい。

「製材所のシモン」The Sawmill
(アメリカ/1922/26分[16コマ]/無声/16mm)
監督:ラリー・シモン、ノーマン・タウログ
主演:ラリー・シモン、オリヴァー・ハーディ
製材所で繰り広げられる恋のさやあて。文字通り命がけのスタントアクションがすごい。サイレント映画史上もっとも制作費のかかった短編と言われている。当時のラリー・シモンの人気ぶりがうかがえる。ローレル&ハーディのコンビを組む前のオリヴァー・ハーディがライバル役で出演。

「無理矢理ロッキー破り」Play Safe
(アメリカ/1927/8分[短縮版/16コマ]/無声/16mm)
監督:ジョセフ・ヘナベリー
主演:モンティ・バンクス、ヴァージニア・リー・コービン
悪漢たちに襲われた乙女が列車の貨車に逃げ込む。乙女の恋人モンティが猛スピードで走る列車を追いかける。本来は50分の長編作品。疾走する列車と自動車にはさまれるスタントアクションは、20年代喜劇の過激さを象徴する場面としてしばしば引用される。

「ターピンの向こう見ず野郎」The Dare-Devil
(アメリカ/1923/10分[18コマ]/無声/16mm)
監督:デル・ロード
主演:ベン・ターピン、ハリー・グリボン
20年代にマック・セネットがハリー・ラングドンとともに見出したスターのひとり、やぶにらみのベン・ターピン。本作は西部劇の撮影現場が舞台。スタントマンのターピンはことごとく偶然に恵まれてアクションを完璧にこなす。ヒロインに乞われ急きょ映画の主人公に抜擢されるも、ターピンには荷が重すぎて失敗ばかり。

「ハリーの結婚」His Marriage Wow
(アメリカ/1925/17分[16コマ]/無声/16mm)
監督:ハリー・エドワーズ
主演:ハリー・ラングドン、ナタリー・キングストン、ヴァーノン・デント
花婿ハリーは朝寝坊して結婚式に遅刻。教会に着くと謎の男に「花嫁は君の保険金目当てだ」と警告され戦々兢々。新婚生活もビクビクしどうし。ついに毒を盛られたと勘違いしたハリーを謎の男が逃そうとするが…。ハリーの終生の友だったヴァーノン・デントが「謎の男」役を好演。

作品解説:いいをじゅんこ

《料金》
一般1000円 学生・シニア900円
会員900円 会員学生・シニア800円

《割引》[第9講コメディ学入門] 参加者は200円引き


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。