プログラムPROGRAM

OW2015アンドレ・バザン『オーソン・ウェルズ』刊行記念
生誕100年オーソン・ウェルズ再考
2015年12月26日(土)・27日(日)

ウェルズとバザン、ふたたび
1948年のヴェネツィア映画祭。オリヴィエの『ハムレット』が金獅子賞を穫り、かたやウェルズ『マクベス』は散々な不評に見舞われる。そんな事態に義憤を覚えた者たちによって「呪われた映画祭」が開催され、『カイエ・デュ・シネマ』創刊へとつながり、やがてそこからヌーヴェル・ヴァーグが生まれることになる。その中心にいたのが批評家アンドレ・バザンだった。最初の著書『オーソン・ウェルズ』が刊行されたのは1950年、バザン31歳。その8年後に亡くなる彼よりも四半世紀ほど長く生きたウェルズの生誕100年・歿後30年である2015年を締めくくるにあたって、『市民ケーン』以降の40年代ウェルズ作品を振り返る。バザンが論じた「リアリズム」は本当にウェルズ作品に通じているのか、その後の道行きも含みつつ、ウェルズの「作家性」をめぐる議論も展開されるはずだろう。ウェルズ再見――バザンの批評とともに/に抗して。(éditions azert)

出版案内
『オーソン・ウェルズ』
アンドレ・バザン=著
堀潤之=訳
インスクリプト、2015年12月5日刊行、1700円+税
1950年フランス、毀誉褒貶の只中からウェルズを救い出すべく、若き批評家がついに筆を執る。ウェルズ作品の革新性を主題の深さから画面の深さへと論じ抜く、「作家主義」批評の先駆け。コクトーによる序文、サルトルやサドゥールらの『市民ケーン』評も収録し、ヌーヴェル・ヴァーグ前夜のウェルズ論争を再現する。
「『市民ケーン』は私たちにとって従うべき手本ではない。」――ジャン=ポール・サルトル
「オーソン・ウェルズのシークェンス・ショットは、映画言語の進化の決定的な一段階である。」――アンドレ・バザン

12月26日(土)16:50〜(終了予定18:20) 参加無料(要当日の映画チケット半券)
トーク 堀潤之(映画研究、表象文化論) × 藤井仁子(映画研究・評論)

 

Ambersons01「偉大なるアンバーソン家の人々」
The Magnificent Ambersons
(1942/88分/ブルーレイ上映)
マーキュリー・プロダクション作品
監督・脚本・製作:オーソン・ウェルズ
撮影:スタンリー・コルテズ 編集:ロバート・ワイズ
音楽:バーナード・ハーマン
出演:ティム・ホルト(ジョージ・アンバーソン・ミナファー)、アン・バクスター(ルーシー・モーガン)、アグネス・ムーアヘッド(ファニー・ミナファー)、ジョゼフ・コットン(ユージーン・モーガン)、ドロレス・コステロ(イザベル・アンバーソン・ミナファー)
 
アンバーソン家が権勢を誇っているアメリカ中西部の町に、自動車産業で財を成した男やもめのユージーン・モーガンが、一人娘ルーシーとともに20年ぶりに帰郷する。アンバーソン家の嫡子ジョージは、美しいルーシーに好意を抱くが、溺愛する母親イザベルとユージーンがかつての恋を再燃させることに強く反撥し、ルーシーとの恋を諦め、母親とともにヨーロッパに移るのだが……。全篇にわたって奥行きの深い画面とワンシーン・ワンショットが組織的に用いられ、「重苦しい魅力」(バザン)に充ちた作品である。

 

Shanghaikarakita02「上海から来た女」The Lady From Shanghai
(1947/87分/ブルーレイ上映)
コロムビア作品
監督・脚本・製作:オーソン・ウェルズ
撮影:チャールズ・ロートン・ジュニア
音楽:ハインツ・レームヘルド
出演:オーソン・ウェルズ(マイケル・オハラ)、リタ・ヘイワース(エルサ・バニスター)、エヴァレット・スローン(アーサー・バニスター)、グレン・アンダース(ジョージ・グリスビー)、テッド・デ・コルシア(シドニー・ブルーム)
 
アイルランド人水夫のマイケル・オハラは、ある夜、公園で美しいブロンド女性のエルサに出会う。悪徳弁護士バニスターの妻であるにもかかわらず彼女に惹かれたオハラは、バニスターに船員として雇われ、彼の手下のグリスビーが持ちかける陰謀に巻き込まれ、しまいには犯していない殺人の罪によって、法廷で裁かれる身となる。いったい黒幕は誰なのか? ラストの名高い鏡の迷路におけるバロック的な演出は、不条理劇のごとく目まぐるしく変転するプロットを象徴しているかのようだ。本作は、ゴダールが偏愛したウェルズ作品でもある。

 

Macbeth01「マクベス」Macbeth
(1948/107分/ブルーレイ上映)
マーキュリー・プロダクション作品
監督・脚本:オーソン・ウェルズ
撮影:ジョン・L・ラッセル 音楽:ジャック・イベール
出演:オーソン・ウェルズ(マクベス)、ジャネット・ノーラン(マクベス夫人)、ダン・オハリヒー(マクダフ)、ロディ・マクドウォール(マルコム)、エドガー・バリアー(バンクォー)、アースキン・サンフォード(ダンカン)
 
言わずと知れたシェイクスピアの四大悲劇のひとつの映画化。魔女の予言にそそのかされ、夫人の叱咤のもと、ダンカン王を殺害して王位に就いたスコットランドの将軍マクベスが、不安に苛まれるあまり、仲間の将軍バンクォーを暗殺し、マクダフの妻子をも殺害した挙げ句、王子マルカム率いる軍勢に討ち取られるという物語は原作と同じである。だが、不格好で異様なセットや衣裳、台詞の奇妙なスコットランド訛りは、「野蛮で無造作な力」(コクトー)を漲らせ、「天国と地獄の間で引き裂かれたマクベス」(バザン)という新たな解釈を提示している。

 

作品紹介:堀潤之
協力:シネマヴェーラ渋谷、éditions azert

《料金》入れ替え制
一般:1200円 学生・シニア:1100円
会員一般:1100円 会員学生・シニア:1000円

《割引》当日2本目からは200円引き

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