プログラムPROGRAM
2016 4

ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第16回 メドヴェトキンをめぐって

2016年4月2日(土)・3日(日)
『アレクサンドルの墓』でクリス・マルケル監督からオマージュを捧げられたロシアの映画作家アレクサンドル・ メドヴェトキン(1900-1989)。その代表作『幸福』とマルケルの『アレクサンドルの墓』の上映、そしてクリスティアン・ フェゲルソンによるトークを急遽開催します。

4月2日(土)17:40〜 参加無料(要当日の映画チケット半券)
トーク「クリス・マルケルとロシア」:クリスティアン・ フェゲルソン
共催:神戸大学大学院国際文化学研究科 メディア文化研究センター
*ご予約受付中
info@kobe-eiga.net まで、イベント名、日時、参加者様のお名前・ご連絡先(メールアドレスまたはお電話番号)をお知らせください。

クリス・マルケル(1921-2012)は8つの映画を制作し、観客だけでなく、ドキュメンタリー映画を志すものの多くを魅了している。1950年代に映画製作に携わるようになって以来、ドキュメンタリー映画のジャンルを刷新し、控えめながらも重要な影響を与えた。マルケルは『シベリアからの手紙』(1958)の制作のためにロシアを訪れ、従来とは異なる視点からソ連を調査、検証している。この時の体験をもとに『動き出す列車』(1971)、『アレクサンドルの墓:最後のボルシェヴィキ』(1993)、『アンドレイ・アルセニエヴィッチの1日』(1999)も制作された。
講演では、映画エッセイのジャンルの先駆け的作品として『シベリアからの手紙』を取り上げるとともに、ロシアを題材にしたマルケルの作品において、歴史と記憶の問題がどのように描かれているのかを考える。マルケルは『アレクサンドルの墓』の中で複数のアーカイヴ映像を参照しながら、ベルリンの壁崩壊後、メドヴェトキン監督の『幸福』(1934)にみられるようなソ連という特異な経験を、そして今日における映画のあり方を再検証している。ドキュメンタリー映画と劇映画が交差する場において、マルケルは旅する映画、記述する映画という独自のアプローチを試み、1958年から1993年までの自らの主体性をノスタルジックに振り返りながら肯定的に捉えようとしている。

──クリスティアン・ フェゲルソン

クリスティアン・ フェゲルソン Kristian Feigelson
パリ第三大学(ソルボンヌ・ヌーヴォ)映画学科准教授。映画社会学者。ロシア・ソ連文化論。現在、クリス・マルケルとロシアとの関わりをテーマに著書を準備中。クリス・マルケル論「東/西のまなざし:映画史再考」(“Recherches sur Chris Marker”, Théorème 6, Presse Sorbonne Nouvelle Paris, 20002)等。
 

「幸福」Счастье
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(1934年/95分[予定]/サイレント/35mm)ボストークフィルム
監督・脚本:アレクサンドル・メドヴェトキン
出演:エレーナ・エゴロワ、ピョートル・ジノヴィエフ
貧農フムィリの「幸福」の探求を通じて、農村における新旧勢力の対立を描いた寓話的コメディ。煽動宣伝映画の枠に収まらない綺想にあふれ、「最後のボリシェヴィキ」 アレクサンドル・メドヴェトキンの代表作となった。

 

「アレクサンドルの墓:最後のボルシェヴィキ」
Le Tombeau d’Alexandre le dernier bolchevik
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(フランス/1993/117分/ブルーレイ上映)
監督・撮影・脚本・編集:クリス・マルケル
『幸福』を1971年にフランスで初めて紹介し、自ら組織した労働者映画団体を「メドヴェトキン集団」と名付けたクリス・マルケルが、敬愛するメドヴェトキンを追悼したビデオ・エッセイ。メドヴェトキンの作品をはじめ、エイゼンシュテインやヴェルトフ、ドヴジェンコの作品の映像の引用、さらに写真やニュース映像、関係者たちへのインタビューから構成されている。

 

主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:ロシア映画社

《料金》入れ替え制1本あたり
一般1200円 学生・シニア1100円
神戸プラネットシネマ倶楽部会員1100円 学生・シニア会員1000円
アテネ・フランセ文化センター会員1100円
*招待券のご利用不可


小学校で見た世界の名作アニメーション
2016年4月9日(土)・10日(日)
戦前から学校教育の一環として発展してきた学校映画会は、戦後アメリカ占領下の民主主義啓蒙体制からさらに発展して、全国の小学校で1970年代まで盛んに行われてきた。今回は戦後世代が学校で鑑賞したと思われる漫画映画の中からソ連と韓国の代表的な作品を上映する。中でも『せむしのこうま』は旧版と新版を比較研究できる稀に見る機会である。

semushi_o「せむしのこうま(旧版)」
Конёк-Горбунок (ソ連/1947/57分/16mm/日本語版)
ソ連モスクワ漫画スタジオ
製作:イワン・イワノフ・ワノ
監督:A・スネーシコ・ブロツカヤ、V・グローモフ
原作:ピョートル・エルショフ
19世紀のソビエトの詩人であるピョートル・エルショフが19歳の時に書き、今でも世界中で愛読されている幻想的なロマン溢れる物語が原作。カンヌ国際映画祭特別賞を受賞するなど世界中で大きな反響を呼び、プリントの焼増注文が殺到したため、オリジナル・ネガが痛んで使用不能となってしまったそうだ。ソビエト・アニメの創始者ともいうべきイワン・イワノフ・ワノはこの作品の再生を念じ続け1975年に新版を完成した。残念ながら今回上映するプリントは経年変化で褪色している。

 

semushi_n「せむしの仔馬(新版)」
Конёк-Горбунок (ソ連/1976/74分/16mm/日本語版)
製作:ソユーズムリトフィルム
監督:イワン・イワノフ・ワノ
原作:ピョートル・エルショフ
脚本:イワン・イワノフ・ワノ、アナトリー・ウィルコフ
1976年に完成された新版で、旧版には無いいくつかのエピソードが追加されている。イワンは畠を荒らす金色の馬を捕えて、二頭の黒馬とせむしの仔馬をもらう。火の鳥の羽根を拾った事から、王様に次々と難題をもち出されるが、せむしの仔馬に助けられる。

 

girudon01「少年勇者ギルドン」홍길동
(韓国/1967/75分/16mm/日本語版)
企画:曹奎鎮 監督:申東憲(シン・ドンホン)
脚本:申東雨 動画:白洪起 撮影:朴声勤
音楽:全定根 効果:崔形来
監督の実弟シン・ドンウが描いた漫画「風雲児ホン・ギルドン」をアニメ化した韓国初の長編劇場アニメ。韓国では長らく「幻の作品」となっていたが、神戸映画資料館に残っていた日本語吹替版16mmフィルムと韓国映像資料院が入手した韓国語サウンド・フィルムをもとに韓国語版35mmフィルムが復元され、2008年の資料院新館オープン時にお披露目された。今回の上映はその元になった日本語版。朝鮮王朝時代、名門の一族だったギルドンが義賊となって、不正をはたらく役人を懲らしめる物語。

 

《料金》入れ替え無し(1日通し)
一般1500円 学生・シニア1300円 会員1300円 学生・シニア会員1200円
小学生・中学生・高校生500円 未就学児無料


「シネ砦」創刊記念 上映&トーク
シネ砦の人々
2016年4月16日(土)・17日(日)

hyousi-cinetoride2015年末に、映画批評雑誌「シネ砦」を出版した。
ひとつの映画作品や特定の映画作家に注目し特集を組むわけでなく、あくまでわたしたちシネ砦集団の興味、「この人のこの映画についての批評が読みたい」という思いだけで作った雑誌なため、一見するとまとまりのないものに見えるかもしれない。しかし、現在に”映画批評”を目指したとき、こうなることは間違いでなかったと確信している。
東京では二月に稲川方人氏、佐々木敦氏、樋口泰人氏等をゲストに、シネ砦集団からは川口力、安井豊作が登壇し、「映画批評と何か、とは何か……」というイベントを開催し、そこでは「映画批評の場所としての雑誌、徒党としての批評と映画作家」について討論が交わされた。
今回、神戸では執筆者である丹生谷貴志氏をお迎えし、安井豊作が、自身の初監督作品『Rocks Off』と共に、また別の角度から「シネ砦」を読み直していけたらと思う。
(編集長 渥美喜子)

4月16日(土)17:35〜(終了予定18:35) 参加無料(要当日の映画チケット半券)
トーク 丹生谷貴志 × 安井豊作 × 青山真治
*ご予約受付中
info@kobe-eiga.net まで、イベント名、日時、参加者様のお名前・ご連絡先(メールアドレスまたはお電話番号)をお知らせください。

 

関西初上映
rocksoff_piano「Rocks Off」
(2014/92分/ブルーレイ上映)
配給:boid
監督:安井豊作
ピアノ演奏・出演:灰野敬二

2004年4月に取り壊しが決定した法政大学学生会館。もはや廃墟にも似たこの建物でカメラがとらえるのは、関係者のインタビューや抵抗運動ではなく、ゲバ文字やビラが塗り重なったコンクリートの壁、粛々と解体作業を進める重機と作業員、そして暗闇で初のピアノ演奏に臨む灰野敬二である。ほぼそれだけをこつこつと並列させる構成は、74年に学生自主管理を獲得し、数多くの特異なイベントを行ってきた過去の「学館」や、あるいは30年という時間で衰弱したいまの「学館」ではない、この映画固有の「学館」とでもいうべき時空間を実現している。
→ 予告編

rocksoff_haino『第二砦の人々』の監督である小川紳介は、撮影の現場にほとんど姿を現さなかったという。彼は何をしていたのか。彼は現像されたフィルムを見ることによって、ただ見ることによってのみ、思考していたのではないかというのが私の推測である。したがって、小川プロの映画を見ることは、小川の思考の記録(ドキュメント)を見ることと同義である。記憶をたどってみると、私もまた、解体されんとする学生会館と、そこで畏敬するギタリスト灰野敬二の解体せんばかりのピアノ演奏とを被写体とすることに決めただけで、撮影中はほとんど何もしていない。小川の緻密かつ広大な思考には及ぶべくもないが、私もまた撮影されたデジタル映像をくりかえし見ることによって思考した。スローガンが幾重にも塗り重ねられ判読不能となった学生会館の壁は、三里塚の大地と同じように歴史が刻み込まれている。灰野によって連打される鍵盤の音と椅子のきしみは、学生のゲバ棒と機動隊の盾がぶつかりあう音に反響する。この世界を肯定するのか、それとも憎悪するのか。
今回、関西初上映となる『Rocks Off』を見ることによって、ただ見ることによってのみ各人各様の思考を紡ぎ出してもらえれば幸いである。

──安井豊作

 

dainitoride01「三里塚 第二砦の人々」
(1971/143分/モノクロ/16mm)
製作:小川プロダクション
監督:小川紳介 助監督:福田克彦、湯本希生
撮影:田村正毅 整音:浅沼幸一

新空港建設に反対する農民運動を記録した三里塚シリーズの第4作。「三里塚反対同盟の人々は、砦の背後に身を隠すのではなく、己の身体を砦に鎖で巻き付け、自ら「砦になること」で、機動隊に対峙した」(シネ砦)。この「砦」の存在が『第二砦の人々』の特異さを決定づけているのは確かだが、そこに農民の悲壮な決意や自己犠牲を読みとるだけではなく、「砦」がどのように撮られているかを見る必要があるだろう。映画監督・小川紳介がとらえようとしているのは、それ自体は画面に映らない”視線”と”権力”をめぐる闘争である。

 

作品紹介:「シネ砦」編集部

《料金》入れ替え制
一般:1400円 学生:1200円 会員一般:1200円 会員学生:1000円
《割引》当日2本目は200円引き


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。