プログラムPROGRAM
2016 5

satomakoto_flyer01ドキュメンタリー映画作家、佐藤真の不在を見つめて
2016年4月29日(金・祝)~5月3日(火・祝)

 

90~00年代、《日常》と《不在》にこだわり、潜む闇をじっくりとあぶり出したドキュメンタリー映画作家、佐藤真。公害問題と日常、「障害」とは、アートとは何か、グローバリゼーションに抗うこと、そして映像のもつ根源的な力とは───。不穏な時代のうねりを前に「世の中を批判的に見る目を持て」と、佐藤は映像と文章で、私たちの眠った感覚を刺激しました。
佐藤が世を去って9年。書籍『日常と不在を見つめて ドキュメンタリー映画作家 佐藤真の哲学』の刊行を記念して東京で3月に開催される企画の巡回上映を神戸で開催します。

 

佐藤真
1957年、青森県生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。1981年、『無辜なる海』(監督:香取直孝)に助監督として参加。1989年から新潟県阿賀野川流域の民家に住みこみながら撮影を始め、1992年、『阿賀に生きる』を完成。国内外で高い評価を受ける。以降、映画監督として数々の作品を発表。他に映画やテレビ作品の編集・構成、映画論の執筆など多方面に活躍。京都造形芸術大学教授、映画美学校主任講師として後進の指導にも尽力。2007年9月4日逝去。享年49。

イベント
4月29日(金・祝) 参加無料(要当日の映画チケット半券)
15:15~ トーク:山根貞男(映画評論家)
17:30~ 座談会:山根貞男、秦岳志(映画編集)、清田麻衣子(書籍編集)
司会:吉野大地(ラジオ関西「シネマキネマ」ディレクター)
5月1日(日)16:50〜 カフェトーク(ドリンクをご注文ください)
会期中盤、全プログラムの1回目の上映が一周するこの日、観客/作り手/関係者等の垣根を越えて佐藤真作品について語り合いましょう。
モデレーター:秦岳志 出席予定:木村光、和田泰典、家久智宏ほか

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*ご予約受付中
info@kobe-eiga.net まで、イベント名、日時、参加者様のお名前・ご連絡先(メールアドレスまたはお電話番号)をお知らせください。

 

©阿賀に生きる製作委員会

©阿賀に生きる製作委員会

「阿賀に生きる」
(1992/115分/16mm)阿賀に生きる製作委員会
監督:佐藤真 撮影:小林茂 録音:鈴木彰二

新潟水俣病の舞台ともなった阿賀野川流域に暮らす人々を、三年間撮影。社会的なテーマを根底に据えながらも、そこからはみ出す人間の命の賛歌をまるごとフィルムに感光させた傑作。
→予告篇

 

 

©「まひるのほし」製作委員会

©「まひるのほし」製作委員会

「まひるのほし」
(1998/93分/35mm)
「まひるのほし」製作委員会
監督:佐藤真 撮影監督:田島征三 撮影:大津幸四郎 録音:久保田幸雄

登場するのは7人のアーティストたち。彼らは知的障害者と呼ばれる人たちである。創作に取り組む彼らの活動を通し、芸術表現の根底に迫る。

 

 

©牛腸茂雄

©牛腸茂雄

「SELF AND OTHERS」
(2000/53分/16mm)ユーロスペース
監督:佐藤真 撮影:田村正毅 録音:菊池信之
編集:宮城重夫
声:西島秀俊、牛腸茂雄

1983年、3冊の作品集を残し36歳で夭逝した写真家、牛腸茂雄。残された草稿や手紙と写真、肉声をコラージュし、写真家の評伝でも作家論でもない、新しい映像のイメージを提示する。

 

©シグロ2001年

©シグロ2001年

「花子」
(2001/60分/35mm)シグロ
監督:佐藤真 撮影:大津幸四郎 録音:弦巻裕
編集:秦岳志

京都に暮らす花子は知的障害者のためのデイセンターに通う一方、夕食後、畳をキャンバスに食べ物を並べ、母はその「たべものアート」を写真に撮る。花子と彼女をとりまく家族の物語。

 

 

aganokioku01「阿賀の記憶」
(2004/55分/16mm)カサマフィルム
監督:佐藤真 撮影:小林茂 録音:菊池信之
編集:秦岳志

『阿賀に生きる』から10年。かつて映画に登場した人々や土地に再びカメラを向ける。人々と土地をめぐる記憶と痕跡に向き合い、過去と現在を繊細かつ大胆に見つめた詩的作品。
→予告篇

 

©シグロ2005年

©シグロ2005年

「エドワード・サイード OUT OF PLACE」
(2005/137分/35mm)シグロ
監督:佐藤真 撮影:大津幸四郎、栗原朗、佐藤真
編集:秦岳志

2003年、パレスチナ出身の世界的知識人、エドワード・サイードが亡くなった。イスラエル・アラブ双方の知識人たちの証言を道標に、サイードの遺志と記憶を辿る。
→予告篇

 

 

 

©おてんとうさまがほしい制作委員会

©おてんとうさまがほしい制作委員会

「おてんとうさまがほしい」
(1994/47分/DVD上映[16mm])
おてんとうさまがほしい制作委員会
撮影・照明:渡辺生 構成・編集:佐藤真

照明技師の渡辺生がアルツハイマーを患う妻にカメラを向け、自分と病の妻と向き合った日々を記録した。編集の佐藤真は白とびしたフィルムを使い、溢れる妻への思いを表現する。

 

「星の文人 野尻抱影」
(2002/48分/DVCAM上映[ビデオ])
紀伊國屋書店学問と情熱シリーズ
演出:佐藤真 撮影:柳田義和

星の文人、あるいは天文文筆家として知られる野尻抱影。特殊撮影で捉えた星空の映像とともに、星空の魅力を語ることに生涯をかけた類稀なる文人を浮き彫りにしていく。

 

写真提供:日本映像記録センター

写真提供:日本映像記録センター

「テレビに挑戦した男 牛山純一」
(2011/82分/ブルーレイ上映[DVCAM])
NPO法人映画美学校 牛山純一研究委員会
企画:佐藤真 監督:畠山容平

2001年、映画美学校で佐藤真が始めた「牛山純一研究」のゼミ生が佐藤の遺志を引き継ぐ。2400本近いTVドキュメンタリーを制作した名プロデューサー・牛山純一の生涯とその仕事に迫る。

 

 

satobook01書籍『日常と不在を見つめて ドキュメンタリー映画作家 佐藤真の哲学』
里山社刊 3月15日発売 定価3,500円(税別)
32人の書き下ろし原稿とインタビュー、そして佐藤真の単行本未収録原稿を含む傑作選や佐藤真と小林茂の往復書簡、佐藤真の東京スナップをミニ写真集として収録。
寄稿:赤坂憲雄、阿部マーク・ノーネス、飯沢耕太郎、石田優子、大倉宏、奥谷洋一郎、香取直孝、小林三四郎、小林茂、笹岡啓子、佐藤丹路、佐藤澪、佐藤萌、椹木野衣、諏訪敦彦、想田和弘、萩野亮、秦岳志、旗野秀人、林海象、原一男、平田オリザ、松江哲明、港千尋、村川拓也、森達也、森まゆみ、八角聡仁、山上徹二郎、山本草介、ジャン・ユンカーマン、四方田犬彦

主催:神戸映画資料館、佐藤真の映画を観る会

《料金》入れ替え制1プログラムあたり
一般1400円 学生1200円 会員1200円 学生会員1100円
《割引》当日に限り2プログラム目から200円割引


「溝口健二論:映画の美学と政治学」出版記念 上映&講演
溝口健二監督『折鶴お千』
2016年5月4日(水・祝)・5日(木・祝)

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5月4日(水・祝)17:15〜 参加無料(要当日の映画チケット半券)
講演:溝口健二と映画史──『折鶴お千』を中心に
木下千花
[京都大学大学院人間・環境学研究科准教授(映画学)]
『折鶴お千』はサイレントかトーキーか? という問いから始まり、神戸映画資料館所蔵のプリントをはじめ、スクリプター資料、検閲台本などのアーカイヴ資料から、溝口映画の形式とテクノロジー、映画産業、政治との密接な関わりを明らかにします。
*ご予約受付中
info@kobe-eiga.net まで、イベント名、日時、参加者様のお名前・ご連絡先(メールアドレスまたはお電話番号)をお知らせください。

「溝口健二論:映画の美学と政治学」 著者:木下千花 法政大学出版局 2016年5月刊行予定

 
oriduru02「折鶴お千」
(1935/90分/サウンド版/35mm)第一映画
監督:溝口健二 原作:泉鏡花 脚色:高島達之助
撮影:三木稔 選曲、解説:松井翠聲
出演:山田五十鈴、夏川大二郎、羅門光三郎、芝田新

神田明神近くの悪徳商人に食い物にされている女・お千が、愛する男・宗吉のために尽くすが、貧しさのあまり次々に悲劇が襲う。泉鏡花の「売色鴨南蛮」を基に、運命に弄ばれた男女の物語を描く溝口健二演出の芸が見どころ。弁士説明用に黒バックに白字の字幕が多数出る無声映画だが、従来のフル・フレームではなくサウンド・トラックに松井翠聲による活弁が入るサウンド版。トーキー映写機のある映画館ではサウンドを出し、サイレント映写機だけの映画館では弁士と楽団付きで上映できるようになっている。サイレントとトーキーの狭間でよく見られる上下に広いトーキー初期フレームはメイン・タイトル部だけで、本編はトーキー・フレームとなっているので今回はトーキー・フレームで上映。上映フィルムは市販されているVHSやDVDとは若干異なるバージョンで、1970年代にプラネット映画資料図書館が大阪で入手し2000年代に国立近代美術館フィルムセンターにより復元されたものである。それぞれのバージョンの違いなど詳細は木下千花さんの著書をご覧ください。

参考上映(124分/16mm)

 

《料金》入れ替え制
一般:1200円 学生:1000円 会員一般:1000円 会員学生:900円
参考上映:700円


Wyborny_omote_01クラウス・ウィボニー レトロスペクティヴ
2016年5月15日(日)

物理学者・数学者・音楽家でもある映画作家クラウス・ウィボニーは、映像とは抽象的で時空間に出現し消滅する何ものかであり、現実を記録するイメージではないと言っている。ウィボニーは自作を「時間における印象主義的」作品と呼ぶ。ポール・シャリッツに捧げた『西洋の没落のためのエチュード』を始めとする『大地の歌シリーズ」や劇映画『オープン・ユニバース』で使われるフィルム断片の加工(赤青のフィルター、オーバーラップ、フェードアウト、ネガ反転等)と音楽的モンタージュにズレを伴う変調リズムの自作曲のコンビネーション、デジタル映像とドイツを代表する詩人ドリュス・グリューンバインとのコラボレーション作は、観客を尋常でない視聴覚体験に耽溺させる。(赤坂太輔)

 

クラウス・ウィボニー Klaus Wyborny
映像作家、1945年生まれ、ハンブルクとニューヨークで物理学を専攻。大学在学中に実験映画制作を始め、1968年に映画監督であるヘルムート・コスタールやウェルナー・ネーケス、ドーレ・Oらとフィルムメーカー・コーペラティブを創設する。その作品は「語りへの戦い」(ハルトムート・ビトムスキー/映画監督、批評家)と称され、ジョナス・メカスに絶賛された初期の話法的実験映画からティルダ・スウィントンやハンス・ツィシュラーら俳優と組んだ実験的な劇映画、近年の音楽構造的ランドスケープ・フィルム、詩人ドゥルス・グリューンバインとのコラボレーション、映画史へのアプローチ作品やインスタレーションまで多岐にわたる活動で知られる。
近作としてベートーヴェンへのオマージュ『ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェンへのオマージュ』、シュペングラーの書に想を得た『西洋の没落のためのエチュード』、友人である映画監督ハルーン・ファロッキ(2014年没)に捧げられた『想像の美術館-モネのためのエチュード』、自作上映を見る観客を撮影した『世の光』などがある。またシカゴ、ニューヨーク、バルセロナ、リスボン等で作品が上映され、国際的評価が高まっている。
また、ニューヨーク州立大学、オハイオ州立大学、ベルリン芸術大学、マンハイム専門大学等で教鞭をとっている。

クラウス・ウィボニー監督トーク
聞き手:赤坂太輔(映画評論家) 通訳:高木繁光(同志社大学教授)
各回上映終了後 参加無料(要当日の映画チケット半券)
*ご予約受付中
info@kobe-eiga.net まで、イベント名、日時、参加者様のお名前・ご連絡先(メールアドレスまたはお電話番号)をお知らせください。

 

13:30〜
「西洋の没落のためのエチュード」
STUDIEN ZUM UNTERGANG DES ABENDLANDS

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(1979-2010年/80分/ブルーレイ上映[スーパー8→デジベータ] /台詞なし)
制作・監督・撮影・録音・編集・音楽:クラウス・ウィボニー
オズワルド・シュペングラーの著書「西洋の没落」に想を得て、ニューヨーク、ルール、ハンブルグ、東アフリカ、リミニにおいてスーパー8カメラで撮影した6299カットの映像で作られた5部構成のインダストリアル・ランドスケープ・ムービー。工業地帯、都市、荒廃した自然の風景が赤青溶暗のうちに現れては消えていく映像を自作の曲が彩る。

 

15:50〜
「シラクサ」
SYRAKUS
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(2004-2012年/77分/ブルーレイ上映[デジベータ])
制作・監督・撮影・録音・編集:クラウス・ウィボニー
朗読:ドゥルス・グリューンバイン
2004年以来続いている詩人ドゥルス・グリューンバインとのコラボレーション作品。古代と現在を重ね合わせる詩人自身による朗読と、ローマ、ペルージャ、クーマエ、シラクサ、マルティニー、リミニ、ファノ、スニオン岬、アテネの風景で構成された作品。

 

作品・監督解説:赤坂太輔
共催:アテネ・フランセ文化センター、同志社大学図書館、同志社大学今出川校地学生支援課

《料金》入れ替え制1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生・シニア会員900円
《割引》2本目は200円割引
*神戸プラネットシネマ倶楽部会員は、5月17日の同志社大学寒椿館クローバーホールでも会員割引があります

→京都 5月17日(火) 同志社大学寒梅館クローバーホール
→東京 5月21日(土) アテネ・フランセ文化センター


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。