プログラムPROGRAM
2017 4

連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第1回 『市民ケーン』とは何だったのか

2017年4月8日(土)
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)
 
このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。
 
13:30〜 参考上映
kane01「市民ケーン」Citizen Kane
(アメリカ/1941年/119分/16mm)
製作・監督:オーソン・ウェルズ
脚本:ハーマン・J・マンキウィッツ、オーソン・ウェルズ
撮影:グレッグ・トーランド
編集:ロバート・ワイズ
音楽:バーナード・ハーマン
出演:オーソン・ウェルズ、ジョセフ・コットン 、ドロシー・カミンゴア、エヴェレット・スローン、アグネス・ムーアヘッド
 
15:45〜(終了予定17:15) 講座
『市民ケーン』とは何だったのか
映画批評家や映画雑誌が選ぶオールタイム・ベストで長らく1位を独占してきた文字通りの不朽の名作『市民ケーン』。だがしかし、今となっては、この映画がなぜ当時あれほどのスキャンダルを巻き起こしたのか、その理由さえ知らない人も少なくない。『市民ケーン』とは一体何だったのか。いまだに信じられている数々の神話を解き明かしながら、様々な角度から作品を分析してゆき、この映画の登場がなぜ、映画史における「コペルニクス的転回」とまで言われるほど、映画の様相を一変させることになったのかを再検証する。
 

井上正昭
1964年生まれ。京都大学文学部仏文科卒業。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)などの訳書がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

 

《参加費》 1500円(参考上映付き)


日本映画史上初! ロシアで撮られたSF映画
『レミニセンティア』
2017年4月14日(金)〜18日(火)

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「レミニセンティア」
(2016/89分/ロシア語/HD[ブルーレイ上映])
監督・脚本・撮影・編集:井上雅貴
プロデューサー:井上イリーナ
配給:INOUE VISUAL DESIGN

出演:アレクサンダー・ツィルコフ、井上美麗奈、ユリア・アサードバ

アレクサンドル・ソクーロフ監督『太陽』の
日本人スタッフが描くロシアSF感動作

忘れたい記憶がありますか? 取り戻したい記憶はありますか? あなたの記憶は真実ですか?
記憶をテーマに日本人監督がロシアに渡り、ロシアSF感動作を作り上げた。
記憶を消すことのできる父と絵が大好きな娘、父は悩める人々の記憶を消し、その記憶で小説を書いていた。しかし、ある日、愛する娘との思い出が消えている事に気づく。
忘れたい記憶と取り戻したい記憶、果たして記憶に翻弄される人間の存在とは何なのか?

哲学的なテーマを持つ、エンターテイメント作品
監督の井上雅貴は、アレクサンドル・ソクーロフ監督の映画『太陽』のメイキング監督を務め、その時ロシアの映画制作を学んだ。本作が初監督であるが、映画を作るならスケール感のある作品を作りたいという監督の熱意と、今まで培った映画製作のノウハウにより、商業映画に匹敵するクオリティの作品が出来上がった。自主映画ながらロシアロケを敢行、監督自ら脚本、撮影、編集を兼ね、日本の自主制作映画の限界に挑んだ。ちなみにこの作品は出資が日本の為、日本映画に分類される。

撮影場所はモスクワから300km離れた古都ヤロスラブリ。黄金の輪と呼ばれる歴史的な建造物が立ち並ぶ街でありながら、旧ソ連時代は工業地帯だった街。
主人公の娘を演じるのは監督とプロデューサーの娘、井上美麗奈。それ以外の出演者は実際にこの街に住むヤロスラブリ劇場に所属する本格的な役者達で、この映画のテーマを感じ取り出演してくれた。

ロサンゼルスシネマフェスティバル・オブ・ハリウッドで主演男優賞、監督賞、長編作品賞など主要部門を受賞、ハリウッドで評価されたことが全世界の人々に伝わる作品であることを証明している。

レミニセンティア=記憶の万華鏡
映画は現実ではなく虚構の世界、現実とは記憶による曖昧なもの。美しい映像と様々な仕掛けの物語があなたの脳を刺激する。

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4月15日(土)各回上映後 ミニトーク:井上雅貴(監督)、井上美麗奈(出演)
4月16日(日)15:30の回上映後 監督挨拶+トーク:扇千恵(ロシア語講師/ロシア映画研究)

井上雅貴(監督)
1977年、兵庫県生まれ。日本工学院専門学校映画科にて16mmの短編映画を製作し始める。卒業後、MVビデオ、CM、TV番組などのディレクターをつとめ、2005年に有限会社INOUE VISUAL DESIGNを設立。映画編集として石井岳龍監督の『DEAD END RUN』『鏡心』に参加。メイキング監督として、『スカイハイ』『最終兵器彼女』『ラフ』『ディアフレンズ』『犯人につぐ』『腑抜けども、悲しみに愛を見せろ』『シャカリキ!』『しあわせのかおり』『きみの友だち』『毎日かあさん』『深夜食堂』など数々の映画作品に参加。映画制作のノウハウを多方面から学ぶ。アレクサンドル・ソクーロフ監督のロシア映画『太陽』にメイキング監督として参加。3ヶ月ロシアに滞在し、ロシアの映画製作を学ぶ。ロシアでの撮影を決意し、映画企画を進める中、内容、撮影、共に商業映画の企画として難しい為、自主制作を決意。いままで参加した映画の知識をすべて使い初長編映画『レミニセンティア』を完成させる。

→公式サイト
→予告編

《料金》 特別鑑賞券(前売り):1400円
一般:1700円 大学・専門学校生:1500円 中高生:1200円 シニア:1100円
会員:1100円
*初日サービスDAY 一律1100円


堀禎一監督特集 part2
2017年4月22日(土)〜24日(月)

昨年末のpart1に続く今回は、堀禎一が自主製作するドキュメンタリー映画「天竜区」シリーズを一挙上映します。

4月22日(土)16:15〜
トーク 堀禎一 + 細馬宏通
(人間行動学/コミュニケーション論/滋賀県立大学教授)
*参加無料(要当日の映画チケット半券)

「天竜区」シリーズについて
cha02堀禎一が初めて手掛けるドキュメンタリー作品。堀が以前から興味を持っていた山の暮らしや風景をテーマとしている。具体的な始まりは、静岡県在住の内山丈史と知り合い、2013年の6月より大井川流域、天竜川流域を月2回程度の頻度でロケハンを始めたことである。この準備期間に山の中腹に位置する斜面集落のひとつである天竜区奥領家大沢集落に偶然辿り着く。そこで集落の眼前にそびえる麻布山の姿、道を歩く竹腰さん(『夏』の終盤でカヤを背負って歩いている女性)の姿を目にし深く心うたれたという。山々の形、端々に長い歴史をうかがわせる山の生活風景を撮影するには、4:3のスタンダードサイズ、またHDよりSDでの撮影がふさわしいと判断し、2014年の4月末までロケハンとテスト撮影を続ける。また、この準備期間にジャン=クロード・ルソー監督の作品など小規模予算、小規模スタッフ編成による“説明というより余白の多い映画”を数多く見たことが制作を始めるきっかけにもなった。 撮影は2014年の5月から1年間続けられる。大沢集落だけが持つ時間、空間、人々をあるがままに捉えている。

Aプログラム
cha01「天竜区奥領家大沢 別所製茶工場」
(2014/64分/DVD上映)
制作:内山丈史 監督:堀禎一
5月後半の、大沢での茶摘み、そして工場での製茶の様子を淡々と捉える。雨に打たれ霧に包まれた大沢の茶畑と緑に輝く茶の新芽の美しさに触発され、撮影された。

 

 

Bプログラム
gion01「天竜区旧水窪町 祇園の日、大沢釜下ノ滝」
(2014/27分/DVD上映)
制作:内山丈史 監督:堀禎一
6月、祗園祭の日に合わせ年に一度だけ花火を楽しむ「ぎおん」という風習や、町の中心部を流れる水窪川の様子を捉える。『別所製茶工場』より後に撮影されたが、「天竜区」シリーズで最初に完成した作品。

 

 

natsu02「天竜区奥領家大沢 夏」
(2014/67分/DVD上映)
話:別所賞吉 制作:内山丈史 監督:堀禎一
「別所製茶工場」の持ち主である別所賞吉さんの大沢についての話や思い出をナレーションに、大沢の夏の様子を捉える。ナレーションは夏の風景と重なって心地良いリズムを刻む。

 

 

Cプログラム
fuyu02「天竜区奥領家大沢 冬」
(2015/94分/DVD上映)
話:別所賞吉 制作:内山丈史 機材協力:葛生賢
監督:堀禎一
別所賞吉さんのナレーションとともに、山の長い冬を捉える。度々登場する写真は村人たちが自身の生活を写したもの。それはこの映画に写る大沢での営みと同様に、今まで過ごしてきた膨大な時間が刻み込まれていることを感じさせる。映画は、大沢集落の春の訪れと共に終わる。

「天竜区旧水窪町 山道商店前」
(2017/2分/DVD上映)
制作:内山丈史 監督:堀禎一
「天竜区」シリーズの最新短編。水窪町にある山道商店の駐車場にカメラを据え山々を見上げる。

 

堀禎一
1969年兵庫県たつの市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。1994年に佐藤真監督が構成・編集を担当した『おてんとうさまがほしい』の制作に参加。1996年から小林悟、北沢幸雄、サトウトシキ監督らの助監督を務める。1998年『樹海熟女狩り』(小林悟監督)の脚本を手がけ、2003年『宙ぶらりん(SEX配達人 おんな届けます)』で監督デビュー。2005年『草叢』、2006年『笑い虫(色情団地妻 ダブル失神)』とピンク映画、2007年『妄想少女オタク系』で一般映画を監督する。その後も『憐 Ren』や『魔法少女を忘れない』などのライトノベルや漫画が原作の映画や、『東京のバスガール』などのピンク映画を監督。一方、「映画芸術」、「月刊シナリオ」、「ユリイカ」、「中央評論」では映画論、映画評の執筆も行う。最新作「天竜区」シリーズは自身初となるドキュメンタリー映画である。

 
協力:アテネ・フランセ文化センター

《料金》入れ替え制1プログラムあたり
Aプログラム一般1000円 学生・シニア900円 会員900円 学生・シニア会員800円
BプログラムCプログラム一般1200円 学生・シニア1100円 会員1100円 学生・シニア会員1000円
《割引》当日に限り2本目は200円割引


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。