プログラムPROGRAM
2018 10

連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第5回 涙とワルツ──マックス・オフュルスと『忘れじの面影』

2018年10月6日(土)
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)

このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。

13:30〜 参考上映
「忘れじの面影」
Letter from an Unknown Woman
(アメリカ/1948/87分/16mm)
監督:マックス・オフュルス
脚本:ハワード・コッホ
撮影:フランク・プラナー
出演:ジョーン・フォンテーン、ルイ・ジュールダン

15:10〜(終了予定16:40) 講座
トリュフォー、キューブリック、P・T・アンダーソンなど、様々な作家たちにリスペクトされてきた監督マックス・オフュルス。今回は、アメリカ亡命時代の最高傑作であり、彼の最も美しい作品の一つである『忘れじの面影』を取り上げる。ドイツ時代の『恋愛三昧』やフランス帰国後の『たそがれの女心』など各時代の代表作とも比較しつつ、この作品を様々な角度から仔細に見てゆきながら、絶えず移動し続けたこの映画作家の作家性の在り処を探っていくと同時に、「女性映画」や「メロドラマ」といった問題についても少し考えてみたい。

井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。訳書に『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

《参加費》 参考上映付き 1500円 学生1000円


大阪大学総合学術博物館「記憶の劇場III」
活動⑥「TELESOPHIAと芸術・文化・生活」
[貸館]『廻り神楽』『海の産屋 雄勝法印神楽』上映会
2018年10月7日(日)・8日(月・祝)

東日本大震災による甚大な被害のあった地域で、いかに芸能が人々を勇気づける力となったかを描くドキュメンタリー2作品を神戸で上映します。
また、10月7日(日)15:00には、受講生が進行役を務め、遠藤協監督とのトークイベントを行います。

「廻り神楽」
(2017年/日本/94分)
監督:遠藤協・大澤未来
製作:ヴィジュアルフォークロア

神楽が来れば、春はもうすぐなのす。
—海辺の死者と生者の通い路を今日も神楽衆は廻ります。

岩手県宮古市に根拠地をもつ黒森神楽は、江戸の初期から340年以上、三陸海岸の久慈・釜石間150㎞を巡り続けて来た。
正月になると神楽衆は、黒森山の神霊を宿した権現様と旅に出る。民家を一夜の宿として、神楽を演じ、亡き人には神楽念仏を唱える。繰り返し繰り返し津波が襲って来たこの地で、神楽衆は何百年ものあいだ、自然と人間を取り結ぶ役目を果たしてきた。
ザシキワラシやオシラサマ、神々や精霊が今も息づく豊かな三陸の海辺を巡る神楽衆。その通い路に「海の遠野物語」が紡がれる。被災から6年後の人々の願いを描くドキュメンタリー。遠藤協と大澤未来の共同監督による劇場初公開作品。
→公式サイト

 

「海の産屋 雄勝法印神楽」
(2017年/日本/75分)
監督:北村皆雄・戸谷健吾
製作:ヴィジュアルフォークロア、ネオンテトラ

海は豊穣の産屋
—この三陸の海辺、新しい命を生む母なる産屋の庭に
祈りと歓びの神楽が舞い遊ぶ。

宮城県雄勝半島、石巻市の漁村立浜(たちはま)は、東日本大震災の大津波で46軒中1戸だけを残し被災した。
その絶望の淵から立ち上がったのは、村に残ることを決めた12人の漁師たち。
「いっさい、いっさい、海を恨んでいねぇ」と、男たちは生活の再建とともに祭りの復興に乗り出した。流出した一切の神楽面と祭具を作り直し、何もない海辺の居住地跡に柱を立て、舞台を作る。
神楽に憑かれ“好き神”を自称する漁師が祈りの神楽を舞い、二人の太鼓打ちが息を合わせ600 年前と変わらぬリズムを刻む。産屋の庭に神楽が舞い遊び、笛・太鼓の音が、命の誕生を告げる産声のように響く。海辺に立てられた舞台、それは新しい命を再生し、力強く鼓動させてくれる産屋となったのだ。津波から1年後、人々を勇気づけ絆を取り結ぶ芸能の底力を描いたドキュメンタリー。『ほかいびと 伊那の井月』の北村皆雄と戸谷健吾による劇場公開作品。

《参加費》 無料

主催:大阪大学総合学術博物館
→公式サイト


第27回 くにづか月イチ上映会
2018年10月13日(土) 13:30〜

ナチスドイツ軍に占領されたユーゴスラビア人の抵抗を描く。(98分)
 

《料金》 無料
アスタくにづか3番館1階の「コミュニティハウス」で整理券を進呈

主催:くにづかリボーンプロジェクト、アスタくにづか神戸市保留床テナント会


青丘文庫研究会 NDUからNDSへ
2018年10月14日(日)14:00〜
 
布川徹郎らNDU(日本ドキュメンタリスト・ユニオン)のスタッフが竹中労の企画により1971年に韓国ロケした映画『倭奴(イエノム)へ 在韓被爆者・無告の二十六年』と、NDS(中崎町ドキュメンタリースペース)の金稔万が釜ヶ崎に密着して描いた『釜の住民票を返せ!2011』を上映する。
また、晩年の布川徹郎とともに活動した金稔万が、その後の状況を含めて報告し、参考上映も予定している。

「青丘文庫」は神戸長田のケミカル産業に従事していた韓皙曦(ハン・ソッキ)が朝鮮史関係文献を集め1969年に開設したもので、1997年に神戸市立中央図書館内に再オープン。今回の上映会は、そこで定期的に行われている「青丘文庫研究会」例会を神戸映画資料館で開催するものである。

 

『倭奴(イエノム)へ 在韓被爆者・無告の二十六年』(1971/52分/16mm)
スタッフ:井出情児、井上修、斉藤憐、布川徹郎
企画:竹中労 製作:「倭奴へ」製作推進委員会
 
1971年、佐藤栄作首相が朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の祝賀パーティ列席のために訪韓した時を得て、在韓被爆者8名は直訴状を持って日本大使館に向かった。在韓被爆者は韓国官憲によって佐藤首相の韓国滞在中拘束される。カメラはその8人の生活を追う。この1971年は、被爆者・孫振斗(ソン・ジンドゥ)さんが、日本への密航により収監された大村収容所から、在留と医療を求める“原爆手帳裁判”を闘い始めた年である。山形国際ドキュメンタリー映画祭2005の在日映画の特集「日本に生きるということ」で上映するため新たに作成したプリントを上映。
 

『釜の住民票を返せ! 2011』 (2011/50分/DVD上映)
監督・編集:NDS 金稔万(キム・イムマン)
撮影:金稔万、布川徹郎、佐藤零郎、中村葉子、梶井洋志、小田切瑞穂、川瀬俊治
製作:NDS(中崎町ドキュメンタリースペース)
 
大阪市西成区、日本最大のドヤ街であり寄せ場である、日雇い労働者が多く暮らす通称釜ヶ崎。ここにある5階建の小さなビルに、労働者や野宿者など約3,300人の住民票が登録されていた。市当局は、居住実態がないことを理由に、彼らの住民票を削除することを決定。そのことにより住民票と選挙権を剥奪されることに怒った彼らとその支援者たちが立ち上がり、カメラを通じて闘う熱気があふれだす!
 

レポート:金稔万
その他、参考上映を予定

《参加費》1500円
* どなたでもご参加いただけます

共催:青丘文庫研究会


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。