プログラムPROGRAM
2019 5

ハワード・ホークス特集 1930年代編
4月27日(土)〜29日(月・祝)
5月3日(金・祝)〜5日(日)

アメリカ映画の巨匠ハワード・ホークスの1930年代の監督作8本を一挙上映!
連続講座「20世紀傑作映画 再(発)見」も併せて開催します。

 

「暗黒街の顔役」Scarface
(1932/93分)
監督・製作:ハワード・ホークス
脚本:ベン・ヘクト
撮影:リー・ガームス、L・W・オコンネル
出演:ポール・ムニ、アン・ドヴォラック、ジョージ・ラフト、ボリス・カーロフ

暗黒街の帝王アル・カポネの盛衰を、チェーザレ・ボルチアとルクレツィア・ボルチアの近親相姦的な兄妹の物語と重ね合わせて描いたギャング映画の金字塔であり、以後のこのジャンルの作品に決定的な影響を与えた。ジョージ・ラフトのコイン投げやボーリング場でのボリス・カーロフの最後など、今や伝説となっている名場面も数多い。ギャングの描き方などをめぐって検閲にひっかかり改変を余儀なくされ、エンディングも複数存在する。ブライアン・デ・パルマがアル・パチーノ主演で『スカーフェイス』(83) としてリメイクした。

 

「群衆の歓呼」The Crowd Roars
(1932/85分)
監督:ハワード・ホークス
原作:シートン・I・ミラー、ハワード・ホークス
出演:ジェームズ・キャグニー、ジョーン・ブロンデル、アン・ドヴォラック、エリック・リンデン

ワーナーでホークスがジェームズ・キャグニー主演で撮った2本のうちの一つ(もう一本は『無限の青空』)。レーサーでもあったホークスが、カーレースの世界を描いた活劇である。この作品あたりから始まる早口の台詞回しは、『ヒズ・ガール・フライデー』のオーバーラップするマシンガン・トークで頂点に達する。キャグニーがアン・ドヴォラックに肩を抱かれて泣くシーンは忘れがたい。男が泣く映画としても記憶されるべき一本である。ちなみにホークスは最晩年にもカーレースの世界を描いた『レッドライン7000』を撮っている。

 

「奇傑パンチョ」Viva Villa!
(1934/115分)
監督:ジャック・コンウェイ、ハワード・ホークス(クレジットなし)
脚本:ベン・ヘクト
出演:ウォーレス・ビアリー、レオ・キャリロ、フェイ・レイ、ドナルド・クック

メキシコ革命の英雄パンチョ・ビリャをウォーレス・ビアリー主演で描いた歴史活劇。『今日限りの命』をのぞくと、ホークスがMGMで作った映画はこれしかない。『大自然の凱歌』同様、監督を途中で降板させられた作品だが、実質的な監督はホークスだったと言われている(メキシコ・ロケをホークスが行い、それ以外の室内シーンなどをJ・コンウェイがMGMの撮影所で撮った)。この映画のパンチョは、『暗黒街の顔役』のトニー・カモンテらと並んで、ホークスが描いた最も強烈なキャラクターの一人である。紛れもなくホークスの作品でありながら、上記の事情からいささか過小評価されるきらいがあり、再評価が待たれる。

 

「特急二十世紀」Twentieth Century
(1934/91分)
監督・製作:ハワード・ホークス
脚本:チャールズ・マッカーサー、ベン・ヘクト
出演:ジョン・バリモア、キャロル・ロンバード、ウォルター・コノリー、ロスコー・カーンズ

傲慢で嫉妬深い舞台演出家と、彼を捨ててハリウッドに行った女優が、偶然同じ列車に乗り合わせたことから起きる珍騒動を描いたホークス初のスクリューボール・コメディで、これを彼のコメディの頂点と考える人も少なくない。いかにもホークスらしく、心理ではなく叫びとジェスチャーによって描かれる男女の活劇に終始圧倒される。ジョン・バリモア(ドリュー・バリモアの祖父)の芝居じみたキレ芸やキャロル・ロンバードのヒステリックな演技に加えて、列車の中であらゆる物や場所に「悔改めよ」と書かれたステッカーを貼り付けていく謎の老人など、ユニークな脇役たちが大いに笑わせてくれる。

 

「バーバリー・コースト」Barbary Coast
(1936/90分)
監督:ハワード・ホークス
脚本:ベン・ヘクト、チャールズ・マッカーサー
出演:ミリアム・ホプキンス、エドワード・G・ロビンソン、ジョエル・マクリー、ブライアン・ドンレヴィ

1849年、ゴールド・ラッシュに沸くサンフランシスコの賭博場を舞台に語られる、ギャング映画のようでもあり、西部劇のようでもあるピカレスクな物語。実在した女性エレオノール・デュポンがモデルになっている。ホークス自身はあまり気に入ってなかったらしいが、エドワード・G・ロビンソンの周囲に漂うヤクザな雰囲気や、港町に立ち込める霧が醸し出すホークスらしい抑制のきいたポエジーが忘れがたい名作。ホークス作品に計6回出演することになる超個性派俳優ウォルター・ブレナンのホークス初出演作品でもあり、その型破りで愛すべきキャラクターの魅力はこの作品ですでに存分に発揮されている。

 

「永遠(とわ)の戦場」The Road to Glory
(1936/103分)
監督:ハワード・ホークス
脚本:ジョエル・セイアー、ウィリアム・フォークナー
撮影:グレッグ・トーランド
出演:フレデリック・マーチ、ワーナー・バクスター、ライオネル・バリモア、ジューン・ラング

第一次世界大戦のフランス軍の塹壕戦を描いた戦争映画。フランス人ならだれもが知っている戦争映画の古典レイモン・ベルナールの『木の十字架』に部分的にインスパイアされている。好戦的な映画であるとはとても言えないが、あからさまに反戦的なわけでもなく、命をかけて任務を遂行してゆく男たちをただ淡々と描いてゆくところがいかにもホークスらしい。 二人の男が同じ女を愛するという物語は、『港々に女あり』『虎鮫』『大自然の凱歌』などのホークス作品でも繰り返し描かれるテーマである。歳をごまかしまでして息子の指揮する部隊に入隊して戦おうとする老齢の父親を、ライオネル・バリモアが印象的に演じていて忘れがたい。

 

「大自然の凱歌」Come and Get It
(1936/99分)
監督:ウィリアム・ワイラー、ハワード・ホークス
撮影:グレッグ・トーランド、ルドルフ・マテ
出演:エドワード・アーノルド、ウォルター・ブレナン、ジョエル・マクリー、フランシス・ファーマー

ウィスコンシンの大森林を舞台にした大作ロマン。原作者のエドナ・ファーバーは、それと知らずにホークスの祖父を作品のモデルのひとりにしていた。ホークスのルーツを知る上でも見逃せない一本である。プロデューサーと対立したためにホークスが監督を途中降板し、ワイラーがその後を引き受けた。前半のホークスの豪快な演出と、後半のワイラーの文芸メロドラマ調があまりにも違いすぎていて面白い。ホークスはこの映画を、たとえばイーストウッド(!)を使って西部劇としてリメイクしたいと思っていた。悲劇的な末路をたどった伝説の女優フランシス・ファーマーを見られる数少ない作品の一つでもある。

 

「赤ちゃん教育」Bringing Up Baby
(1938/102分)
監督・製作:ハワード・ホークス
脚本:ダドリー・ニコルズ、ヘイジャー・ワイルド
撮影:ラッセル・メティ
出演:ケイリー・グラント、キャサリン・ヘプバーン、チャーリー・ラグルス、バリー・フィッツジェラルド

これ以後、ホークス的世界に欠かせない住人のひとりになっていくケイリー・グラントが、ホークスと初めてタッグを組み、キューカーの『男装』に続いてキャサリン・ヘップバーンと共演したスクリューボール・コメディ。女に免疫のない博物館主グラントが、「赤ちゃん」(ベイビー)と呼ばれる豹を連れた令嬢ヘップバーンと出会ってしまったことから、デタラメな騒動が繰り広げられてゆく。登場人物全員が奇人変人という、何度見ても抱腹絶倒、茫然自失のクレイジーな大傑作。時代に先んじすぎたためか公開当時はまるでヒットしなかったが、今や映画史に残る古典である。

 

*全作品16mmフィルム上映

解説:井上正昭
協力:プラネット・プラス・ワン
 

《料金》入れ替え制1本あたり
一般1000円 学生700円 会員900円
《割引》当日2本目は200円引き

 


連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第6回 ハワード・ホークス──〈一目瞭然の映画〉の謎

2019年4月27日(土)
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)

このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。

ジャック・リヴェットが「一目瞭然の映画」という言葉でその映画的知性を讃え、ゴダール、トリュフォー、スピルバーグ、ジョン・カーペンターなど、多くの監督たちから敬愛されてきた映画監督ハワード・ホークス。今回の「20世紀傑作映画再(発)見」は、いつもとは趣向を変えて、この稀有な映画作家の軌跡をたどる第一回目の特集上映の一環として行われる。『暗黒街の顔役』『赤ちゃん教育』『空軍』『赤い河』『遊星よりの物体X』など、あらゆるジャンルを手がけながら、ホークスは驚くべき一貫性をたもちつづけた。この機会に彼の作品をまとめて見た人は、〈作家性〉とでも呼ぶしかないものに否が応でも気付かされるに違いない。エクリチュールの透明さゆえに語り難い映画作家ではあるが、今回の講座では、一目瞭然であることがそのまま神秘でもあるようなホークス映画の魅力になんとか迫りたいと思う。

井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。訳書に『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

《参加費》  無料(要ハワード・ホークス特集のチケット半券)


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