プログラムPROGRAM

連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第8回 パプストとブルックス──『パンドラの箱』を読み解く

2019年12月22日(日)

このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。

13:30〜 上映
「パンドラの箱」
Die Büchse der Pandora
(ドイツ/1929/131分/16mm)
監督:ゲオルク・ヴィルヘルム・パプスト
原作:フランク・ヴェデキント
脚本:ラディスラウス・ヴァイダ
撮影:ギュンター・クランプ
出演:ルイーズ・ブルックス、フリッツ・コルトナー、フランツ・レデラー、グスタフ・ディーズル

伴奏:塩屋楽団
(鈴木勝:guitar 山本信記:synthesizer, electronics 森本アリ:sampler, trumpet)
 

16:00〜(終了予定17:30) 講座
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)
G・W・パプストの映画『パンドラの箱』が作られてから今年で実に90年になる。しかしこの映画でルルを演じた女優ルイーズ・ブルックスはその輝きをいささかも失っていない。それどころか、彼女はその謎めいた存在感で現代のわれわれをますます魅了しつづけている。女優と登場人物が、そして作品そのものがこれほど分かち難く結びついた映画は稀である。『パンドラの箱』を語ることは、ルル=ブルックスを語ることと同じだった。しかし、それ故にこの映画のそれ以外の細部はしばしばし見過ごされてきたとも言える。今回の講座では、〈宿命の女〉ルル=ブルックスについて考えてゆく一方で、ヴェデキントの原作戯曲やワイマール文化、そしてパプストの演出などにも注目しながらこの映画を読み解いてゆく。『パンドラの箱』はブルックスという稀有な存在なしにはありえなかった。それは間違いないが、監督パプストとの運命的な出会いがなければこの作品が生まれなかったこともまた確かである。今講座では、巨匠と呼ばれながら今ではあまり語られることのない、このなんとも輪郭の曖昧な〈映画作家〉にも照明を当ててみたい。

井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。訳書に『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

《映画鑑賞料》 生演奏付き 一般1400円 学生1200円 会員1200円
《講座参加費》  一般1000円 学生500円 会員700円

これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。