プログラムPROGRAM

ニュー・インディペンデント・シネマ vol.1
『オーファンズ・ブルース』『海抜』

2020年3月20日(金・祝)〜22日(日)

若手の注目作を紹介する新シリーズ「ニュー・インディペンデント・シネマ」。

デジタル化により、続々と制作、公開されるようになった自主製作映画。しかし、本数が激増し、熱心な観客でもすべてを追いかけることは不可能な状態です。そして公開期間が長くないため、評価する声が聴こえてきたとしてもその時には上映が終わっていて、見逃してしまうことも多いのではないでしょうか。

そこでこのシリーズでは、神戸初上映の作品に加え、近年の話題作を取り上げて上映していきます。

 

「オーファンズ・ブルース」
(2018/89分/デジタル)
監督・脚本:工藤梨穂 撮影:谷村咲貴
録音:佐古瑞季 照明:大﨑和
美術:柳芽似、プロムムアン・ソムチャイ
衣装:西田伸子 メイク:岡本まりの
助監督:遠藤海里、小森ちひろ
制作担当:池田有宇真、谷澤亮
配給・宣伝:アルミード
 
出演:村上由規乃、上川拓郎、辻凪子、佐々木詩音、窪瀬環、吉井優

夏が永遠のように続く世界で生きるエマ。最近、物忘れがひどい彼女はノートを手放さず、家にもあらゆるメモを貼っている。そんなある日、彼女の元に、孤児院時代の幼馴染であり 現在行方不明のヤンから象の絵が届く。エマはその消印を手掛かりに彼を探す旅に出た。道中で彼女は、ヤンと同様に幼馴染であったバンに邂逅し、その恋人であるユリとも知り合う。タヒチへ高飛びする計画が失敗した彼らは、ずるずるとエマの旅についていくこととなる。その一方で、エマはヤンへの思いを募らせ、また自らの記憶の喪失が加速していることを恐れ始めていた…。

終わらない夏に終末感が漂う中で、
誰もが誰かの背中を追い、誰かを待っている。
カセットテープを巻き戻していくかのような旅が今、始まる。

異常な高温が続き、誰もが汗ばむある夏の日々を描いた本作は、寺山修司著書の一節から着想された、当時22歳の女性監督が手掛けた渾身のロードムービーである。アジアの異国を思わせる中華街や市場、そして鮮やかな新緑の草原など彼らの旅路を彩る様々なロケーションの移ろいは、観る人を日常からどこかへと連れ出してゆく。日本の見慣れた街並みから外れた“無国籍”な雰囲気が取り巻くこの世界で、私たちは彼らの愛、そして希望を目撃するだろう。
第40回ぴあフィルムフェスティバルにてグランプリ・ひかりTV賞を獲得後、なら国際映画祭学生部門NARA-waveではゴールデンKOJIKA賞と観客賞をダブル受賞など、数々の映画祭を席巻した珠玉の作品。
ひとつの季節に閉じ込められ、やがて明瞭になっていく彼らの孤独を独特の世界観で描き出した本作。 “忘れゆく”、あるいは“忘れられてしまう”という絶望の中に、この映画は、ある光を映しだした。
スクリーンの中で生き続けていく彼らの姿は決して忘れられない。

『オーファンズ・ブルース』は撮りながらもう次回作のことを考えているようなさもしさとは無縁の、退路を断った厳しさに貫かれている。その未来のなさが全篇を現在形できらめかせるのだ。私が褒めるのではない。すべてを肯定せよとこの映画が私の胸ぐらをつかんで迫ってくるのである。
藤井仁子(映画評論家)
「2019年 第93回キネマ旬報ベスト・テン 日本映画ベスト・テン 選評」より

→「オーファンズ・ブルース」公式サイト

 

「海抜」
(2018/80分/デジタル)
監督・製作・脚本・編集:高橋賢成
製作・監督補:田村太一、名取佳輝
撮影:伊藤はるか 照明:渡邉知里 録音:窪田りかこ
美術監督:田村太一 共同編集:鵜野澤まみ
スクリプター:菅谷光津子 プロデューサー:秋山涼子
製作顧問:金田克美 配給・宣伝:アルミード
 
出演:阿部倫士、松﨑岬、佐藤有紗、奥田誠也、三森晟十朗

高校時代、“事件”を目撃しながら何もできなかった男。
12年間に及ぶ贖罪のドラマ。

高校時代、中学校の同窓生同士で起きた強姦事件を目の当たりにしながら、何もできなかった男・浩。忘れてはならない過去から目を背けたまま、大人になってしまった浩や当事者たち。しかし事件から数十年後、忘れたかった過去が、再生し始めていた浩の人生に重く覆いかぶさってゆく──。

第31回東京国際映画祭正式招待!
ドイツ日本映画祭ニッポン・コネクションで最高賞受賞!!

『愛がなんだ』の今泉力哉監督をはじめ、新進気鋭の映画作家を数々紹介してきた東京国際映画祭・日本映画スプラッシュ部門に、史上最年少の22歳で招待された高橋賢成監督の鮮烈なデビュー作。ひとつの強姦事件で壊されたいくつもの人生を、断片的かつ突き放した視点で描く重厚な人間ドラマ。
主人公・浩を演じる阿部倫士をはじめ、メインキャストおよびスタッフは撮影当時全員大学生。大学の卒業制作として制作されたにも関わらず、荒くもストレートに題材にぶつかる骨太な物語が高く評価され、各国の映画祭で絶賛を浴びた。

→「海抜」公式サイト

 

《料金》 入れ替え制1本あたり
一般1700円 シニア(65歳以上)1100円
ユース(25歳以下)・会員1000円

これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。