レポートWEBSPECIAL / REPORT

神戸映像アーカイブプロジェクト「ノンフィルム資料の保存と活用」
公開講座:映画関連資料の現在

開催日:2016年12月11日(日)
会場:神戸映画資料館
主催:神戸ドキュメンタリー映画祭実行委員会
神戸市 平成28年度まちの再生・活性化に寄与する文化芸術創造支援助成対象事業

記録② 実践報告1
講師:大矢敦子京都文化博物館学芸課)

モデレーター:板倉史明(神戸大学准教授/神戸ドキュメンタリー映画祭実行委員会委員)
板倉:ではお時間になりましたので再開させて頂きたいと思います。これから1時間40分に渡りまして4名の方々にご発表頂きます。1番目にご発表頂くのは京都文化博物館学芸課で映像専門の学芸員をされておられる大矢敦子さんです。これまで京都の映画史や特に尾上松之助のご研究をなされていますが、京都文化博物館が収蔵するノンフィルム資料の全体像やその特徴、活用についてなどお話し頂けると思います。では早速ですがよろしくお願いいたします。

 

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京都府フィルムライブラリー事業

kyoto01 初めまして、京都文化博物館学芸課映像情報室の大矢敦子と申します。このたびこのような場を作って頂きありがとうございます。
当館は京都府のフィルムライブラリー事業というものが基礎となっておりまして、大映京都撮影所の倒産後、労働組合が所有していたフィルムを京都府が引き受ける形でスタートしました。そのため大映京都撮影所の資料が多いです。その後1988年に京都文化博物館が開館したことを受けて、博物館が京都府所蔵のフィルムを保存・管理することになり、以後多方面からさまざまな寄贈を受けながら今に至っております。収集につきましては、京都で製作された作品、京都の関係者が製作した作品などを主なキーワードとしております。
フィルムに関しては重複する作品タイトルもありますが約800本を、当館内地下のフィルム収蔵庫に収蔵しています。
フィルム以外の資料に関しては、スチル写真やポスター、チラシ、直筆を含めたシナリオ、あとは映画関係の書籍や雑誌、その他機材類が計約27万点、おおよそ30万点近くの資料を当館で保存しています。
 
kyoto02 映画資料の保存として、当館では大きく分けて二つの資料管理の方法を行っています。まずひとつめは「一括管理」と呼んでいますが、たとえば映画会社や劇場また団体から寄贈を受けたもの、たとえばシナリオ作家協会から重複したシナリオを頂いたもの、松竹株式会社から寄贈を受けたポスターなどです。劇場に関しては、いま京都シネマとして四条烏丸に移転されましたが、その前身の三条河原町にあった朝日会館から、定期的に興行の終わった作品のポスターを頂いていた時期もございました。
それとは別に、たとえば個人のコレクターが持っていらっしゃったものや映画製作に関わった方、映画監督や美術監督、あとは評論家や脚本家に縁の方が、ご本人の死後に一括して資料を寄贈される場合があります。これらは「文庫形式」という方法で管理しております。雑誌であったり、図書であったり、カメラであったり、写真であったり、手紙など多種多様な形態の資料を一括してお引き受けする場合でも、図書だけを図書資料として入れてしまうということはせず、図書も雑誌も分けずにまとめて保存をしています。一番メインとなるものが伊藤大輔文庫で、これは12万点ほどあります。写真のスチル一点一点やカメラのフィルムなどを含めた場合の量です。あとは映画関係者でいえば森一生さん、結束信二さん、珍しいところでは倉嶋暢さんの資料も文庫形式で保存しています。倉嶋さんは、大映京都撮影所で音響効果を担当していらっしゃった方で、所蔵されていた音響テープ1,700点ほどを、フィルム収蔵庫の一角で収蔵しています。
ポスターについては、B2版から細長い形状のものまで多種多様な形態のポスターをこちらでも管理保存しております。
 
kyoto03 山中貞雄の『従軍記』が下に載っておりますが、こうしたノンフィルムの資料は上映に合わせて適宜展示を行ってもいます。
こういった約30万点のノンフィルム資料は、当館の地下に資料室がございまして、そちらで大体の資料は保管しております。室温が基本的に20℃前後で湿度が50%ぐらいの場所に置いている状況です。展示室内で大体室温が13℃から20℃、湿度が50%から60%の間というところです。フィルムの収蔵庫はというと、室温5℃、湿度40%の環境で収蔵しております。余談ですが、収蔵する際は必ずフィルムは洗浄し、音声テープについてはバクテリアや、黴が増えていくということがリスクとして大きいので、アルコールで拭き取る作業をしてからフィルム収蔵庫に管理しています。映画のフィルムに関しては2000年に、IMAGICAウェストさんに依頼し、一本一本状況を、フィルムの水洗や油で洗うのか、あるいは水で洗うのかといったところも含めて判断頂き、全フィルムを洗浄しております。
 
kyoto04 フィルム以外については、特に寄贈を受ける際、保存庫や寄贈者のご自宅から持ち込んだものになりますので、本来燻蒸の処理が必要かもしれません。ただ、どんな薬剤を使うのか、どんな燻蒸方法をとるのかというところも含め、たとえばスチル写真を燻蒸していいのかなど、当館ではまだ判断出来ていない部分もありまして、いまのところ、たとえばカメラが入っていた木箱やレンズの付いていない機材を燻蒸することもありますが、ノンフィルム資料としては、ほとんど燻蒸は行なっておりません。
 
kyoto05 資料の管理につきましては、紙の質、留めてあるテープやホッチキスなどをどんどん取り除くべきなのか、別に取っておくべきなのか、そういったこともまだ具体的な判断が出来ていません。いまのところはそれよりも「まずは整理をする」という観点で当館ではノンフィルム資料を保存・管理しているとお考え頂きたいと思います。ですので、今回皆さんがもしかしたら求めておられるかもしれない情報、つまり環境をどのように整えるのか、一点一点どういう袋に入れて、どういうサイズのものに入れて、こうして保存した方が良いとご提案できることは実はあまりないのですが、いまのところはポスター用とその他のアーカイブ用という2種類の当館専用の箱に分けて収蔵している状況です。

写真1

写真1

ちょっと写真を見た方がいいと思いますので切り替えます。実は継続的にノンフィルム資料の整理をする人員は当館にはおりません。予算が付いたときに人員を雇って特定の資料を整理しているという状況です。これは、実際市販の文房具屋さんでも売っているリング製のファイルですが、これは映画館のチラシを入れています(写真1)。

中を開きますとこういう風になっており、1ページに1枚ないし2枚3枚複数入っている場合もあります(写真2)。ページの右上に鉛筆でこういう番号が振ってありまして、その番号で検索を出来ることになっています(写真3)。何番のどういうファイルの37ページにたとえばコレが入っていますということが分かるようになっています。

写真2

写真2

写真3

写真3

で、こちらがノンフィルムの資料を収蔵するための、京都文化博物館特注の箱です(写真4)。たとえば伊藤大輔文庫であれば、伊藤大輔文庫のボックスの30番の1というような番号に分けて管理をしています。あと森一生さんや寿々喜多呂九平さんの自筆原稿もこのようなボックスに入れて管理しています。ボックスを開けますと封筒に番号がそれぞれ書いてありまして、たとえばこの中には内務省の検閲台本を入れていると。データベースで「あかつき」という作品名で検索すると、このボックスのこのファイルのこの封筒に入っているということが分かるようになっています(写真5)。

写真4

写真4

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写真5

写真6

写真6

これは伊藤大輔文庫の一箱ですが、伊藤大輔さんはかなり写真がお好きでプライベートで大変多くの写真を遺していらっしゃいました。とてもマメな方で、裏に何月何日にどこで撮ったかというのも大体分かるようになっていたんです。ただとても達筆で私たちが読めない場合があり、大映京都撮影所のカメラ助手をされていた青木完一さんという方に、週1回出て来て頂いて文字を読んで頂き、整理に協力して頂いた時期が長年あって、ここまで整理できました。箱の中に1枚ペラ(紙片)が入っていまして、中にどういう種類のどういうサイズの何がどれだけ入っているのかを記すようにしています(写真6)。一点一点見ていくとその封筒に、これは青木さんが手書きで書かれているのですが、たとえば文庫の名前を書いて、誰が写っているのか、ここには伊藤大輔の奥さんの朝子さんが写っていると。撮影された場所は自宅だというところも青木さんはお分かりになるので、そういうことも書いて頂き、さらに資料のコンディションが変化中で、保存は注意しないといけないというところも書いて頂いて、いま一段落している状況になっています。
写真類は全て出来る限りネガ用の保存袋に入れています。クリップも今の時点では金属ではなく、プラスチックの錆びないもので留めているということになっています(写真7)。ポスターについてはこのように特別にサイズを作ってもらったボックスの中に、大体50枚から100枚程度のポスターを入れて管理しています(写真8)。

写真7

写真7

写真8

写真8

写真9

写真9

これが良い整理方法か分かりませんが、一枚一枚実は裏の隅に、当時整理されたときに付けられた番号が振ってありまして、その鉛筆で書かれた番号と帯の中の番号を見れば、どこに何が入っているのかがわかるようになっています。いまピンクに見えているのが、資料を抜き出した場合、必ず入れておくもので、この紙を入れて、何月何日に誰が抜き出したということがわかるようになっています(写真9)。ただ、この箱のサイズに合わないポスターも出てきています。大きいポスターもたくさんありますが、残念ながら当館ではこのB2のポスターが入る箱に折った状態で収蔵しています。
書籍に関しては皆さんどこも同じかも知れませんが、タイトル毎に書架に分けている場合もありますし、貴重な雑誌に関しましてはこういうファイルボックスに入れて雑誌名、刊号、発行年月を記したものを表面に貼るという整理も一部行なっています(写真10)。

写真10

写真10

こちらがシナリオです。これはシナリオ作家協会で重複したものを寄贈頂いたシナリオです(写真11)。これは伊藤大輔の資料ですが、ITと書いて伊藤さんだと分かるようにして、図書として一部まとめて管理しているものです(写真12)。

写真11

写真11

写真12

写真12

 

写真13

写真13

スチルに関してはこういうキャビネットに入れていまして、年代ごとに分け、どこからの寄贈のものか分かるようにしています(写真13)。中を開けると袋に入っておりまして、袋の上にタイトルなどを書いて、その中に作品ごとにスナップとスチルをなるべく分けるようにしているという状況です。ちょっと駆け足で申し訳ありません。
こういった資料を当館では月に1回特集上映に合わせて展示をロビーでしております。その時に、作品タイトルや監督の名前から探し出さないといけないのですが、それはファイルメーカーで作ったリストがありまして、それを頼りに検索して抽出しています。先ほどもお伝えしましたが、資料整理やデータの入力作業に関しては今のところ継続的なものではなく、単発的な資料整理の形をとらざるを得ない状況があります。

資料収集、研究にまつわる状況ですが、資料購入費や調査費というのは基本的にはございません。数年前までフィルムの購入費は充てられていたのですが、今は打ち切られている状況です。また当館が文科省に科研費が申請できるよう認可された機関となっていないため、科研費の研究者番号の取得が難しい状況です。ただ、博物館が支給する博物館研究費というものが、申請を通れば獲得できる状況で、この研究費を使って学芸員が調査を行い、博物館の紀要に報告するという環境が守られているとはお伝えしておきます。
 
kyoto06 最後に資料の展示についてです。当館では月曜日以外は映画の上映を基本的にしておりまして、1日2回の上映ですが、基本的に月に一度の周期で特集が変わっていきます。これに関しましては、基本的には京都府所蔵の当館で管理している映画を上映することになっておりますので、併せてシアター前のロビーに、ポスターやスチルなどを含めたノンフィルムの資料を展示しております。それに加えて、主に学生さんや研究者の方に対してなるべくたくさんの資料を調査研究のために閲覧して頂くこともしております。ただこれも学芸員が個別に対応する必要がありまして、なかなか希望通りに見て頂くことが難しい状況も中にはございますが、なるべく調整努力をしています。資料の貸出に関しては、いまのところ主に美術館ならびに博物館施設に貸出しています。利用に関してはそれ以外に記者さんの取材や雑誌・書籍の掲載用に、当館にしかない写真資料の提供など対応しております。当館は、歴史・文化・映画の3本立てで成り立っている博物館でして、今後歴史や美術の学芸員と共に、歴史展示や美術展示と併せて、映画の資料を展示していくことも考えられるところが、当館の特徴とも言えるだろうと思います。
概要だけで終ってしまいましたが、わたしからの報告は以上になります。どうもありがとうございました。

 

板倉:大矢さん、どうもありがとうございました。京都文化博物館、“ぶんぱく” のノンフィルム資料の概要や整理の方法、保存環境をご説明頂きましたし、学芸員の方々の研究環境の生々しい情報も頂いてちょっとビックリいたしました(笑)。どうもありがとうございました。


→記録① 基調講演

順次公開を予定しています。
記録② 実践報告2・3・4
記録③ ディスカッション


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