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2009 4

井上陽一の活弁映画シリーズ4
4月11日(土)
井上陽一の活弁実演も回を重ねて4回目。今回は阪妻の「坂本龍馬」と、上映の機会が少ない浪曲映画「召集令」の二本立て。幕末と明治の激動の時代を描いた作品を弁士の名調子でお楽しみください。
 

井上陽一(弁士)
いのうえよういち。1938年、姫路市生まれ。浜星波に師事。60年から活動写真弁士として活躍。02年「OSAKA映像フェスティバル」で『雄呂血』、04年の京都映画祭では『特急三百哩』『からくり蝶』、08年には『実録忠臣蔵』を名調子で活弁するなど、各地の映画祭等で活躍。関西唯一の現役弁士である。

「召集令」
(1935/約60分/16mm)
監督・脚色:渡辺邦男 原作・口演:東家楽燕 撮影:横田達之、渡辺五郎
出演:中田弘二、中野かほる、高木永二、広瀬恒美
 
明治の日露戦争時、病床の妻と幼い二人の子供をかかえる夫の元に召集令が届いた。突然の事態に家族の運命は一変、残された家族には貧苦の悲劇が待っていた。戦時における家族の愛情を描いた感動的な作品。本来は原作者である東家楽燕が口演する浪曲映画でパートトーキーだが、音声欠落につき全編活弁を付して上映。
 
 
「坂本龍馬」
(1928/26分[18fps](部分)/16mm)
監督:枝正義郎 脚本:冬島泰三 撮影:友成達雄
出演:阪東妻三郎、森静子、泉春子、中村琴之助、志賀靖郎
 
大政奉還に大きな役割を果たした幕末の英雄、坂本龍馬を時代劇の大スター阪東妻三郎が熱演。慶応3年、京都の近江屋で龍馬が暗殺されるクライマックスを中心にした残存部を上映。現在は太秦の東映京都撮影所となっている場所にあった「阪妻プロダクション」の珍しい映画。
 

《料金》
一般1800円 学生・シニア1500円
会員1500円 学生会員・シニア会員1300円


映画講座「生誕100+1年 マキノ雅弘(正博)」
講師:山根貞男

2009年4月18日(土)
 
マキノ雅弘生誕101年を祝うために
           山根貞男
 神戸映画資料館で4月下旬、マキノ雅弘(当時は正博)の『肉体の門』と『幽霊暁に死す』が上映される。声を大にして断言するが、必見の2本である。
 第1の理由としては、この2本はめったに見られない。『肉体の門』は散逸したと見なされていた作品で、近年、国立フィルムセンターによりフィルムが発見された。『幽霊暁に死す』は、マキノ監督自身の会社の作品ゆえ、マキノ家の秘蔵フィルム(16ミリの改題版『生きてゐた幽霊』)しか存在しない。むろんビデオもDVDもない。そんな貴重な2本が特別上映される。
 第2に、この2本は面白い。見ないと損をするくらいに。というと、テキ屋の口上みたいだが、そこにはマキノ監督個人の事情が関わっており、それが必見の第3の理由となる。
 マキノ正博は1948年から50年にかけて、ヒロポン中毒でスランプ状態にあったといわれる。ヒロポンは覚醒剤のひとつで、それを常用したことは自伝『映画渡世』で語られている。注目すべきことに、1948年の『肉体の門』『幽霊暁に死す』はまさにその真只中で撮られた映画なのである。
 そこで、ぜひ2本を自分の目で見ていただきたい。この普通に面白い映画、いや、普通以上に楽しく見応えのある映画を、薬物中毒で再起不能といわれたことと結びつけ、軽んじることなど出来ようか。2本には、歌と笑いがあふれ、キャメラが軽妙に動き、この監督ならではの映画的醍醐味を楽しませてくれる。
 マキノ正博は1950年に雅弘に改名したが、作品歴が一変するわけはない。そのことは、全フィルモグラフィの真ん中に位置する問題の2本が魅惑たっぷりに体現している。詳しくは4月18日の講座で。マキノ雅弘生誕101年を祝うために。
 
 

山根貞男(映画評論家)
1939年大阪生まれ。映画批評誌「シネマ69」(1969-71)を編集・発行。蓮實重彦とともに海外の映画祭で加藤泰、鈴木清順、成瀬巳喜男の特集に関わる。1986年より始めた「キネマ旬報」での日本映画時評は現在も連載中である。主な著書に『映画狩り』、『映画の貌』、『現代映画の旅1994-2000』などがあり、『映画渡世』(山田宏一との共編)、『加藤泰、映画を語る』(安井喜雄との共編)、『成瀬巳喜男の世界へ』(蓮實重彦との共著編)などのインタビューや編著も多数。最新刊は『マキノ雅弘 映画という祭り』

 

《料金》(16ミリフィルム参考上映付き)
一般:1500円 学生・シニア:1200円
会員一般:1200円 会員学生・シニア:1000円

 
[関連特集上映] [生誕100+1年 マキノ正博](特集上映は4/17金〜4/19日です)


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