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神戸映画資料館レクチャー:映画の内/外
第7回 ロバート・スミッソンのフィルム《スパイラル・ジェティ》について

 
2012年2月26日(日)16:00〜(終了予定18:00)
レクチャー:小西信之(美術批評家)
対談:小西信之 × 丹生谷貴志
 
「神戸映画資料館レクチャー:映画の内/外」では、1、2ヶ月に1回程度のペースで、さまざまな講師をお招きし、幅広いテーマで講座を開いています。
 今回は、アメリカの現代美術家ロバート・スミッソンについて小西信之氏によるレクチャーと、丹生谷貴志氏との対談、そしてスミッソンの代表作『スパイラル・ジェティ(Spiral Jetty)』の映像作品を参考上映します。
[参考上映]
『スパイラル・ジェティ(Spiral Jetty)』
 (1970/35分/DVD上映)DVD提供:Electronic Arts Intermix
 
ロバート・スミッソンのフィルム《スパイラル・ジェティ》について   小西信之
 「巨大な太陽を一心に見ていると、とうとうその見慣れぬ感じの謎が解けた。燃えているのは1つの星ではなかった。何百万という数の星たちが、分厚いクラスターとなって、群れをなす蜂たちのように、ひとつになってひしめいて密集していた。それによって、分ちがたい一つの炎だと欺かれていたのだ。本当はそれは、無数の太陽の、巨大な螺旋状の星雲だったのである。」(ジョン・テーン『時の流れ』1931年)
 ──ロバート・スミッソンのフィルム《スパイラル・ジェティ》に引用

 1973年に、飛行機事故で34歳の若さで帰らぬ人となったロバート・スミッソン(1938-1973)は、アメリカの現代アートにおけるアースワークの代表的なアーティストである。しかし彼はアースワークという言葉だけでくくるにはあまりにも多様な活動を残した。そのひとつが彼の著述であり、友人だったアーティスト、ソル・ルゥィットは彼の残した最大の作品はこれらの著述であるとさえ述べている。そこでは、恐竜から地質学、心理学から物理学、SFやポップ・カルチャーから古代マヤの神々、庭園論とエントロピー、産業社会とモニュメント、写真とセザンヌ、バロウズからポロックやジャッドに至る同時代の現代アートといった、領域横断的な様々な題材がちりばめられており、きわめて独創的な批評的エッセイあるいは魅惑的なトラヴェローグとなっている。それらは作品と連動しつつ、まさに彼の創造的世界を切り開くモーターの一つだったのだ。
 そして彼の残したもう一つの重要なジャンルがフィルムである。アースワークの記録としての役割も大きいが、スミッソン自身の世界観や批評を純粋に映像にしたものもあり、共作も含め少なくとも5点は制作され、制作されずに構想や絵コンテの状態で終わったものも多数存在する。冒頭に引用したSF作家ジョン・テーヌの文章は、この中でも最も有名なフィルム《スパイラル・ジェティ》の後半のクライマックスで、作家自身が読み上げる部分だ。このフィルムは同名の有名なアースワークの制作後に、制作中の映像に様々なイメージのコラージュを組み合わせ、そこに種々の引用テキストの作家自身によるナレーションがかぶせられた、約30分の映像作品であり、彼が残した映像作品の中でも最も完成度が高く、まさにスミッソン的表現の頂点をなすものと言っていいだろう。
 今回のレクチャーでは、この映像作品《スパイラル・ジェティ》を見、その理解に向けて、映像やテキストのディテールを明らかにしつつ、ロバート・スミッソンという作家の全体像に迫ってみたい。
 スパイラル・ジェティは米国のユタ州グレート・ソルト・レークに、湖面の増減とともに浮沈を繰り返しつつ、塩湖故にこびりつく塩の結晶によってときに真白となり、いわば現代アートの「遺跡」として現在も存在しているのである。
 なお、フィルム《スパイラル・ジェティ》は国内で見ることはできない(美術館での展覧会で2度紹介されたことがある)。今回は、このレクチャーのために米国からレンタルして上映するものである。
 

小西信之
美術批評家、愛知県立芸術大学准教授。訳書にロザリンド・クラウス著『オリジナリティと反復』(リブロポート)、主な論文に彫刻の森美術館開館25周年記念彫刻評論大賞受賞論文「Wasting Sculpture」の再録である「廃棄される彫刻」(『芸術理論の現在』所収)、「アースワークを訪ねて――ロバート・スミッソンのスパイラル・ジェティを中心に」(愛知県立芸術大学紀要No.29)、「スタン・ダグラス――アイデンティティとメディア」(同前、No.32)がある。『Innocent Minds』展(1998、愛知県美術館と共同)、『ベリー ベリー ヒューマン』展(2005、豊田市美術館と共同)などの展覧会企画も行う。『あいちトリエンナーレ2010プレイヴェント 現代美術の発見VI 渡辺豪「白い話 黒い話」』展(愛知県美術館 展示室6、2010年1月6日~3月22日)を監修。

 

丹生谷貴志
思想、映画、文学と幅広い分野で批評活動を行う。神戸市外国語大学教授。著書に『死体は窓から投げ捨てよ』、『死者の挨拶で夜がはじまる』、『家事と城砦』、(河出書房新社)、『ドゥルーズ・映画・フーコー』、『天皇と倒錯 現代文学と共同体』『女と男の帝国 グローバリゼーション下の哲学・芸術』『三島由紀夫とフーコー“不在”の思考』『〈真理〉への勇気 現代作家たちの闘いの轟き』(青土社)、など。近刊予定に、ジャン・ルイ・シェフェール『映画を見に行く普通の男 映画の夜と戦争』(エートル叢書/現代思潮新社、翻訳)がある。

 

《参加費》 1500円
*ご予約受付中 
info@kobe-eiga.net 宛に、お名前、連絡先(電話)、参加希望日を書いてお送りください。
追って予約受付確認のメールを差し上げます。

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