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神戸映画資料館レクチャー:映画の内/外
第10回 ハルーン・ファロッキ、あるいは映像の「読解」――『猶予期間』(2007)を見る

 
2012年9月23日(日) 13:30(終了予定15:50)
参考上映 『猶予期間』
レクチャー 堀 潤之(映画研究・表象文化論)
 
「神戸映画資料館レクチャー:映画の内/外」では、1、2ヶ月に1回程度のペースで、さまざまな講師をお招きし、幅広いテーマで講座を開いています。
 
[参考上映]                           ”Respite” © Harun Farocki, 2007
『猶予期間』
Aufschub / Respite / En sursis
(2007/40分/DVD上映)
提供:HARUN FAROCKI FILMPRODUKTION
ナチス・ドイツ占領下のオランダのヴェステルボルク通過収容所で1944年に撮影された16ミリの無声のフッテージが存在することは、早くから知られていた。ハルーン・ファロッキの中編『猶予期間』は、アウシュヴィッツなどの絶滅収容所への中継地点として使われていた収容所における「日常生活」をとらえたこの貴重なラッシュを丹念に読み解き、映像に残されたかすかな手がかりを掘り下げ、覆い隠されていた歴史の真実に到達しようとする作品である。もともとのフッテージに中間字幕(インタータイトル)を加えるだけというファロッキの慎ましやかな手つきには、映像の「読解」をめぐる唯物論的にして真に倫理的な思考が宿っている。
 
 
ハルーン・ファロッキ、あるいは映像の「読解」――『猶予期間』(2007)を見る
                                 堀 潤之

 映像による収容所の表象には、長い歴史がある。連合軍による解放直後に撮られた夥しい量の写真。ジョージ・スティーヴンスやサミュエル・フラーの手によって撮られたフッテージ。ワンダ・ヤクボフスカの『最後の停泊地』(邦題『アウシュヴィッツの女囚』、1947)にはじまる収容所を舞台とした無数の劇映画。そして、アラン・レネの『夜と霧』(1955)やクロード・ランズマンの『ショアー』(1985)といったドキュメンタリー作品。本講座ではまず、ファロッキがこうした先行例のどのような側面に抗って『猶予期間』を構想したのかを紹介したい。
 また、1944年生まれのファロッキは、主に実験的なドキュメンタリー作品の領域で、すでに90本以上の作品を撮っている。ハルトムート・ビトムスキーとほぼ同世代で、ゴダールとストローブ=ユイレの方法論を独自に引き継ぎ、近年は美術館におけるインスタレーション作品でも注目を浴びているファロッキは、現在の映像芸術の地平を考えるにあたって最重要の人物の一人といってよい。本講座では、彼の方法論の一端が明晰に示されている『猶予期間』をとっかかりとして、ファロッキの他の作品群――とくに、アウシュヴィッツの空撮映像をめぐる考察ともいえる『世界の映像と戦争の刻印』(1988)――にもできる限り目を向けてみたい。

堀 潤之(ほり じゅんじ)
1976年生まれ。映画研究・表象文化論。関西大学文学部准教授。主な著訳書に、四方田犬彦との編著書『ゴダール・映像・歴史』(産業図書、2001)、コリン・マッケイブ『ゴダール伝』(みすず書房、2007)、ジャック・ランシエール『イメージの運命』(平凡社、2010)などがある。

ハルーン・ファロッキ公式サイト

《参加費》 1500円
*ご予約受付中 
info@kobe-eiga.net 宛に、お名前、連絡先(電話)、参加希望日を書いてお送りください。
追って予約受付確認のメールを差し上げます。

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