プログラムPROGRAM

特別篇
日本映画名画鑑賞会
+映画講座 「山中貞雄 論」藤井仁子
(映画評論家)
2009年9月6日(日)
13:30〜上映 15:15〜映画講座

  
あまりにも多くの映画を撮ったために明確な作家像を結びにくい作家の代表がマキノ雅弘だとすれば、マキノの手引きで映画界入りを果たした1歳年下の山中貞雄は、あまりにも少ない映画しか残されていないために語ることが困難な作家の代表だろう。
優に20本を超える監督作品のうち今日まとまったかたちで見られるものがたったの3本しかないという事実は、どのような釈明によっても許されることのない日本映画史の恥である。その無念さが、山中貞雄その人が30歳にも満たない若さで戦病死しなければならなかったというもう一つの無念さと重なるとき、山中を語ることの困難もまた二重化されることになる。山中の映画を満たすあらゆる細部が、まるでガス・ヴァン・サントの『エレファント』か何かのように、間近に迫った山中自身の死の予感で震えているという錯覚をどうにも禁じえなくなるのだ(実際、「遺作」である『人情紙風船』をそのようにではなく見ることが誰にできよう?)。
この二重の困難に対するしかるべき戦略なしに山中貞雄の生誕100年を真に記念することはできないのだが、そのためにまずは山中作品に絶えずつきまとう死の影を山中自身の個人的な悲劇から解放したいと思う。観客の視線を撥ねつけるかのような不吉な背中のイメージと、人物が傍らの物を懸命に模倣する特権的な瞬間とがとりあえずの手がかりとなる。
  藤井仁子
 
山中貞雄 生誕100年記念。おまけ作品のほか、講座に合わせて山中貞雄作品を上映しますので、どうぞご期待ください。
 
おまけ上映
「海鳴り街道」
(1936/断片約1分/染色版/35mm/)監督:山中貞雄  
 
 

藤井仁子(ふじい・じんし/映画評論家)
1973年生まれ。映画評論家。早稲田大学文学学術院専任講師。映画批評サイト『テアトル・オブリーク』主宰。編著に『入門・現代ハリウッド映画講義』(人文書院)、共著に『成瀬巳喜男の世界へ』(筑摩書房)など。単著『スピルバーグ 孤児の歴史学』と『日本文化映画批判』(ともに仮題)をインスクリプトと日本経済評論社から刊行準備中。

(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、上映1週間前より電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)
 

《料金》
映画鑑賞
一律:500円

映画鑑賞+講座
一般:1200円 学生・シニア:1000円
会員一般:1000円 会員学生・シニア:900円

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※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。