プログラムPROGRAM

トーマス・アルスラン監督特集
2012年4月27日(金)〜5月1日(火)
現代ドイツ映画の旗手トーマス・アルスラン。
自らの出自とベルリンに向き合った20年間の軌跡をたどる。

4月28日(土)15:45〜(終了予定16:45) 参加無料・要当日の映画鑑賞券
レクチャー:渋谷哲也(ドイツ映画研究者)
  
トーマス・アルスランは現代におけるインディペンデント映画の旗手の一人である。映像の重視と俳優のミニマルな演技を特徴とし、記録とフィクションの境界を軽やかに越える独自のスタイルで珠玉の作品を発表している。
アルスランはベルリンの記録者としても注目に値する。分断の歴史を被った都市の寂しげな相貌を収めた初期短編に始まり、この都市に生活する若者のナチュラルなまなざしを刻印した3部作を経て、21世紀における眩いばかりのメトロポールへの変化を捉えた新作まで、場所に対するアルスランの感覚の鋭さは際立っている。だが彼の映画の指し示す地平はもっと自由で幅広い。もはやトルコ系移民2世や「ベルリン派」というレッテルに囚われることなく、ヴェンダースやファスビンダーらニュージャーマンシネマ世代のインパクトを引き受けた世界市民としての映画作家に属しているといっても過言ではない。。最新作ではついにヨーロッパを離れ、アメリカ大陸を旅する移民たちを描く作品に挑む。今回の回顧上映ではグローバルな映画作家としてのアルスランに出会ってほしい。

トーマス・アルスラン Thomas Arslan
1962年、ブラウンシュヴァイク(ドイツ)生まれ。小学校時代の4年間をアンカラ(トルコ)で過ごした後、ドイツに戻る。86年にベルリンの映画テレビアカデミーに入学し、92年より映画監督・脚本家として活動。アカデミーの同窓生クリスティアン・ペッツォルトらと作風が類似していたため「ベルリン派」と称された。代表作はトルコ系移民2世の若者を取り上げた3部作『兄弟』『売人』『晴れた日』。ドキュメンタリー『彼方より』でトルコにカメラを向けた後、2006年の『休暇』からトルコとは関連のない映画製作を行っている。現在、北米のドイツ系移民の男たちが金鉱を目指して旅した実話に基づく最新作『黄金』(仮題)を準備中。

  
Aプログラム
「兄弟」Geschwister
(1996/82分/DVCAM上映)
監督・脚本・編集:トーマス・アルスラン
撮影:ミヒャエル・ヴィースヴェック
出演:タメール・イギット、サヴァシュ・ユルデリ、セルピル・トゥルハン、ヒルデガルト・クーレンベルク
ベルリン在住の移民2世3兄弟の日常を描く。兄エロルは学業を中断し、無為な日々を生きていた。弟アハメドは高校に通いながらドイツになじんでいた。父親の干渉にうんざりしている妹レイラは独立を望んでいた。そんな彼らの日常は、エロルがトルコ軍に徴兵されることになり、さらなる葛藤を生み出してゆく。
 
 
Bプログラム
「売人」Dealer
(1998/74分/DVCAM上映)
監督・脚本:トーマス・アルスラン
撮影:ミヒャエル・ヴィースヴェック
編集:ベッティーナ・ブリックヴェーデ
出演:タメール・イギット、イディル・ユネル、ビロル・ユーネル、バキ・ダヴラク
ジャンはベルリンで麻薬の売人として生計を立て、ボスに目をかけられ成り上る道を夢見ていた。恋人ジャーレとの間には幼い娘がいる。また旧知のエルダルは警察官になり、ジャンをつけ狙った。ある日ボスが路上で殺され、ジャンは決心してレストランで働くことにする。だが堅気の生活を続けられる彼ではなかった。
 
 
Cプログラム
「晴れた日」Der Schöne Tag
(2001/74分/DVCAM上映)
監督・脚本:トーマス・アルスラン
撮影:ミヒャエル・ヴィースヴェック
編集:ベッティーナ・ブリックヴェーデ
出演:セルピル・トゥルハン、ビルゲ・ビングル、フローリアン・シュテッター、ハンス・ツィッシュラー
デニスは俳優の卵として映画の吹き替えの仕事をする21歳。その日の録音の後、彼女は恋人ヤンと別れる。その後彼女は晴れたベルリンの街をあちこち歩きながら、映画のオーディションを受け、いろいろな相手と愛について会話をする。地下鉄で出会った青年ディエゴと一晩を一緒に過ごし、翌朝デニスは一人で歩み出してゆく。
 
 
Dプログラム
「彼方より」Aus der Ferne
(2005/89分/DVCAM上映)関西初上映
監督・製作・脚本・撮影:トーマス・アルスラン
録音:アンドレアス・ミュッケ=ニージトカ
編集:ベッティーナ・ブリックヴェーデ
2005年5月から6月にかけてのトルコ横断の旅の記録。イスタンブールやアンカラといった西部の大都市から、未だに紛争の絶えない東部地域を通ってイラン国境に至る。トルコという遥かな故郷に対する監督の想いが伝わってくる。ベルリン映画アカデミーで制作した、ベルリンの壁跡地のドキュメンタリー「周縁で」を同時上映。
 
同時上映
「周縁で」Am Rand(1991/24分/DVCAM上映)関西初上映
 
 
Eプログラム
「休暇」Feren
(2007/91分/DVCAM上映)関西初上映
監督・脚本:トーマス・アルスラン
撮影:ミヒャエル・ヴィースヴェック
出演:アンゲラ・ヴィンクラー、カロリーネ・アイヒホルン、ウーヴェ・ボーム
ベルリンの郊外ウッカーマルク。森に囲まれた閑静な家にアンナは夫と息子と暮らしている。ある夏の日、アンナの前夫との間の娘ラウラが恋人と子どもと共に休暇に訪れる。またアンナの母親も重病のためアンナの家で介護を受ける。そこに外国暮らしの次女ゾフィも戻って来る。これまでバラバラだった家族が集い、ぶつかり合い、お互いの関係が見つめ直される。ある者は去り、ある者は残り、夏は終わってゆく。
 
 
Fプログラム
「イン・ザ・シャドウズ」Im Schatten
(2010/82分/ブルーレイ上映)関西初上映
脚本・監督:トーマス・アルスラン
撮影:ラインホルト・フォアシュナイダー
編集:ベッティーナ・ブリックヴェーデ
音楽:ガイア・イェンゼン
出演:ミシェル・マティシェヴィチ、カロリーネ・アイヒホルン、ウーヴェ・ボーム
アルスランが初めて手がけたジャンル映画。刑務所を出所したトロヤンは、かつての強盗仲間から仕事の分け前を得ようとするが、かえって命を狙われる。独立を守りたいトロヤンはドーラの手引きによって現金輸送車襲撃を計画する。だがそこに彼を執拗につけ回す汚職刑事が絡み、事件は思いがけない方向に展開する。
 

《料金》入れ替え制1プログラムあたり 
一般1000円 学生・シニア900円
会員900円 会員学生・シニア700円

《割引》
会期中、2プログラム目は200円引き(要半券提示)

企画・協力:渋谷哲也(東京国際大学)
協力:アテネ・フランセ文化センター
 
[参考]Ustream
出演:渋谷哲也(ドイツ映画研究)、三浦哲哉(映画批評家)
映画監督トーマス・アルスラン 前篇
映画監督トーマス・アルスラン 後篇 

これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。