サイレント映画鑑賞会 「溝口健二著作集」刊行記念
2013年6月9日(日)
日本が生んだ世界映画界の巨匠溝口健二が、生前に自身の署名で発表した記事を出来る限りすべて、重要と思われる発言を網羅した「溝口健二著作集」(溝口健二著 佐相勉編/発行オムロ 発売キネマ旬報社/6月上旬発売予定)刊行記念の一環として、神戸映画資料館で上映会を行います。
今回は、溝口初期の貴重なサイレント作品と、溝口と比較されるシュトロハイムの名作を、国内はもとより海外でも活躍中の演奏家、柳下美恵さんのピアノ伴奏付きでお楽しみいただきます。
15:00〜 第一部
「愚なる妻」Foolish Wives
(アメリカ/1921/110分[18コマ]/16mm)
監督・原作・脚本:エリッヒ・フォン・シュトロハイム 撮影:ベン・レイノルズ
出演:エリッヒ・フォン・シュトロハイム、ルドルフ・クリスティアンズ、ミス・デュポン、モード・ジョーンズ、メエ・ブッシュハリソン・フォード
ユニヴァーサルでこの映画を監督したシュトロハイムは、巨額の製作費、5時間を超える長さのためにスキャンダルとなり、短縮を余儀なくされた。欧州大戦直後のモンテカルロ。ロシアの亡命貴族カラムジン伯爵(シュトロハイム)は、ヒューズ夫妻の妻ヘレン(ミス・デュボン)に接近し、金を巻き上げようと企む。ミシェル・メニルはその著書「溝口健二」(三一書房)にてシュトロハイムの「すべてを語り、すべてを示す」点などで溝口との類似を見ている。
17:10〜 第二部
トーク:柳下美恵+西田宣善(「溝口健二著作集」編集・発行者)
「ふるさとの歌」
(1925/50分[20コマ]/35mm)
東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
監督:溝口健二 原作:松居張二 脚本:清水龍之介 撮影:横田達之 美術:亀原嘉明
出演:木藤茂、髙木枡二郎、伊藤寿栄子、辻峯子、川又賢太郎、加藤司郎
サイレント期の作品が殆ど失われた溝口健二の作品の中で、最古の現存作品である。欠落した部分も殆どない貴重な作品。東京から故郷に戻ってきた貧しい青年(木藤茂)が、学問を捨てて農業に従事する。日活が文部省の委嘱で製作した教育劇映画で、農本主義的プロパガンダ臭は露骨にあるが、何度も見ていると、その軽快なカッティング、水辺のシーンの美しさ、当時の溝口作品の常連だった横田達之のキャメラが見られるところなど、美点は多く感じられてくる。
演奏:柳下美恵 写真:スズキマサミ
サイレント映画ピアニスト。武蔵野音楽大学ピアノ専攻卒業。1995年、朝日新聞社主催の映画生誕100年記念上映会でデビュー。以来、国内では東京国立近代美術館フィルムセンターや映画館、各地の映画祭等、海外はポルデノーネ無声映画祭やボローニャ復元映画祭(イタリア)、ボン無声映画祭(ドイツ)、韓国映像資料院などで伴奏した。イギリスのユリイカレーベル、㈱紀伊國屋書店から『裁かるるジャンヌ』『魔女』のブルーレイ、DVDで音楽を担当。日本映画ペンクラブ奨励賞受賞。国やジャンルを越えた作品をこれまでに600以上伴奏した。
《料金》
一般1800円 学生・シニア1600円
会員一般1600円 学生会員・シニア会員1400円
*招待券のご利用不可
共催:神戸映画資料館、オムロ 協力:東京国立近代美術館フィルムセンター
サイレント映画鑑賞会 マック・セネットのキーストン喜劇②
2013年6月22日(土)・23日(日)
サイレント喜劇の大プロデューサー、マック・セネットが作った「キーストン社」で製作した3本を上映。加えて、ハル・ローチ・スタジオの人気者「ちびっこギャング(アワー・ギャング)」の1本をおまけ上映します。
いいをじゅんこさんの第4講コメディ学入門「続・3ばか大将」とあわせてお楽しみください。
「まずゐもの屋(小料理屋の欺瞞)」A Hash House Fraud
(アメリカ/1915/16mm/無声/20分[16コマ])
製作:マック・セネット 監督:チャーリー・チェイス
出演:ヒュー・フェイ、ルイーズ・ファゼンダ、フリッツ・シャーデ、チェスター・コンクリン
「愛と速力と戦ひ」Love, Speed and Thrills
(アメリカ/1915/16mm/無声/20分[16コマ])
製作:マック・セネット 監督:ウォルター・ライト
出演:マック・スウェイン、ミンタ・ダーフィー、チェスター・コンクリン
「追駈砲弾(破弾)」The Cannon Ball
(アメリカ/1915/16mm/無声/33分[16コマ])
製作:マック・セネット 監督:ウォルター・ライト
出演:チェスター・コンクリン、ハリー・ブッカー、チャールズ・アーリング
「アワーギャング喜劇 突貫がらくた列車」The Sun Down Limited
(アメリカ/1924/16mm/無声/15分[一部欠落/16コマ])
製作:ハル・ローチ 監督:ロバート・F・マッゴーワン
出演:アワーギャング
《料金》
一般1000円 学生・シニア900円
会員900円 会員学生・シニア800円
《割引》[第4講コメディ学入門] 参加者は200円引き
濱口竜介プロスペクティヴ in 関西
6月29日(土)〜7月8日(月)[水・木休館]
神戸・大阪・京都のミニシアター5館で同時開催する「濱口竜介プロスペクティヴ in 関西」。神戸映画資料館では、4時間を超える大作『親密さ』と、東北ドキュメンタリー三部作を上映。関西に拠点を移した濱口竜介の「これから」の「はじまり」にお立ち会いください。
トーク
6月29日(土)『なみのこえ 気仙沼』上映後
芹沢高志(『なみのこえ』『うたうひと』プロデューサー、デザイン・クリエイティブセンター神戸センター長)
酒井耕(映画監督/東北三部作共同監督)
濱口竜介(映画監督)
6月30日(日)『親密さ』上映後
丹生谷貴志(神戸市外国語大学 教授)
濱口竜介(映画監督)
7月7日(日)『なみのこえ 気仙沼』上映後
酒井耕(映画監督/東北三部作共同監督)
濱口竜介(映画監督)
「親密さ」
(2012/255分[途中休憩あり]/HD[ブルーレイ上映])
製作:ENBUゼミナール
監督・脚本:濱口竜介
撮影:北川喜雄 編集:鈴木宏
整音:黄永昌 助監督:佐々木亮介
制作:工藤渉 劇中歌:岡本英之
出演:平野鈴、佐藤亮、伊藤綾子、田山幹雄 ほか
ともに演出家であり、恋人同士でもある令子と良平は互いに傷つけ合いながら舞台劇『親密さ』初演を迎える。
4時間を越える大作だが、ENBゼミナールの演技コースの修了作品としてスタートした企画である。映画と映画内の舞台劇の関係においてだけでなく、それぞれの中でも、現実と虚構が複雑、微妙に交錯し続け、虚実の彼岸にあるリアリティーの核心が胸を揺さぶる。美し過ぎるラストが、岡本英之の音楽とともに脳裡に焼き付く。
「なみのおと」
(2011/142分/HD[ブルーレイ上映])
製作:東京藝術大学大学院映像研究科
プロデューサー:藤幡正樹、堀越謙三
監督:濱口竜介、酒井耕
撮影:北川喜雄 整音:黄永昌
2011年7〜8月に撮影された岩手県から福島県沿岸部の、津波被災者6組11人への対話形式インタビューの記録
酒井耕と共同監督で、東日本大震災についてのドキュメンタリー。濱口と酒井は、震災の爪痕を撮影したり、地震発生時の記録映像を引用したりはせずに、被災者の証言を記録することに集中する。その際二人は、ドキュメンタリーでは掟破りともされかねないある方法を用いるが、これは被災者の表情により迫るための真摯な試みだ。
「なみのこえ 新地町」
(2013/103分/HD[ブルーレイ上映])
製作:サイレントヴォイス
プロデューサー:芹沢高志、相澤久美
監督:濱口竜介、酒井耕
実景撮影:佐々木靖之 整音:鈴木昭彦
2012年1月から2013年3月に行われた福島県新地町に暮らす6組10名への対話形式インタビューの記録。
震災後約一年、原発事故後の不安と海の汚染や海産物の風評被害の下にある福島県新地町という、被災地の中でも相当に微妙な状況の下で、濱口と酒井は、『なみのおと』の特異な方法論を先鋭化・徹底化させながら、複雑なものを単純化せず、分かり易くせずに提示し、観客に共有させようと、あるいは共有の困難さを示そうとする。
「なみのこえ 気仙沼」
(2013/103分/HD[ブルーレイ上映])
製作:サイレントヴォイス
プロデューサー:芹沢高志、相澤久美
監督:濱口竜介、酒井耕
実景撮影:佐々木靖之 整音:鈴木昭彦
2012年1月から2013年3月に行われた宮城県気仙沼市に暮らす7組11名への対話形式インタビューの記録。
人口が減り続け復興の未来の見えない気仙沼だが、未来への希望を人々は微かに見ようとしている。濱口と酒井は『なみのおと』の方法論を受け継ぎながらもそこに着目し、震災に直接関わる内容を超えて、被災者の過去をも掘り起こそうとする。喋るのが苦手な人にあえてカメラの前で語らせることで、確かに見えてくるものがある。
「うたうひと」
(2013/120分/HD[ブルーレイ上映])
製作:サイレントヴォイス
プロデューサー:芹沢高志、相澤久美
監督:濱口竜介、酒井耕
撮影:飯岡幸子、北川喜雄、佐々木靖之
整音:黄永昌
宮城県に暮らす語り手による東北地方伝承の民話語り。これは同時に彼らを訪ね続けた聞き手の記録でもある。
酒井耕との共同監督作品で被災地に取材しながら、ここで濱口と酒井が取り上げるのは民話(昔話)を語る老人達である。取材やインタビューの経験から触発されたこの作品では、語りは聞き手の反応があってのコミュニケーションであることが浮き彫りにされ、さらには映画とは何かの根源さえも問われることになるだろう。
*作品解説:木村建哉(映画研究者)
→公式サイト
→ウェブ・スペシャル 寄稿
「〈言葉〉を撮るドキュメンタリー──濱口竜介・酒井耕の東北三部作について」
井上正昭(翻訳・映画雑文)
→ウェブ・スペシャル 映画時評[一年の十二本]
第十二回 たどり着くことから解き放たれてすべては「はじまり」となる──『親密さ』
藤井仁子(映画評論家)
《料金》
[親密さ]
一般2000円 会員1800円
[その他作品]
一般1300円 会員1200円
3回券3300円(前売・当日あり/数に限りがあります/他会場と共通/複数人での利用可/『親密さ』にはご利用いただけません)
*招待券のご利用不可
*上映館により、各種料金の設定が異なりますのでご注意ください。
企画:fictive 後援:LOAD SHOW