プログラムPROGRAM

陸前高田から届いた記録
『息の跡』
2016年1月23日(土)・24日(日)

1月23日(土)小森はるか・瀬尾夏美 来館
「息の跡」「波のした、土のうえ」上映後、質疑応答/17:00〜カフェコーナーでアフタートーク

「息の跡」
(2015/112分/HD[ブルーレイ上映])
監督・撮影・編集:小森はるか
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2012年より、瀬尾夏美と共に岩手県陸前高田市を拠点に制作している小森はるかの単独監督作。山形国際ドキュメンタリー映画祭2015の「ともにある Cinema with Us」で初上映され注目を集めた。
主な作品に、映画美学校修了制作『oldmaid』、『彼女と彼女たちの部屋』(2009)、桃まつり presents『the place named』(2012)がある。

この町には、津波によって失ったものと残されたものとを結ぶ痕跡を、
自身の方法でどうにか伝え残そうとする人達がたくさんいる。
私は彼らの日常を撮りためた記録を用いて、この町の記憶をとどめておくための映画をつくりたいと思う。
その第一弾として、種苗店を営みながら英語で震災の手記を綴る佐藤貞一さんの日々を追ったドキュメンタリーを制作した。(小森はるか)

 

笑いごとではないのである。
だが、いまだ復興の途上にある陸前高田で種屋を再開した活力あふれる中年男性が、独学で身につけた英語で被災体験を綴って世界に向けて発信するという無鉄砲さには誰だって頬がゆるむのを抑えられないだろう。
自分で書いた手記の一部を朗々たる節までつけて読みあげるこのドン・キホーテ的人物には、あるいは「あなたにわかる?」と男性から何度も問われ試されるキャメラの背後の若き女性監督が、寡黙なサンチョ・パンサとして寄り添っているということなのだろうか。
ところがこの笑いごとではない可笑しみを見守りつづけるうち、迂闊なわれわれにも見えるもの、撮られているものだけがすべてではないということがしだいに了解されてくる。
そのとき、英語に続いて中国語までも修めつつある現代のドン・キホーテの日々の営みは、死者の霊を鎮めるための終わりのない写経、読経のように見えはじめるのだ。
一人の人間の生が無数の死者によって支えられているように、この映画を形づくるすべての画面は見えぬものと聞こえぬもの、不在のものとともにある。
あれほどの出来事を早くも忘却しつつあるこの国に今、そっと差し出される小森はるかの『息の跡』は、その慎ましさとは裏腹に、やはり笑いごとではない。

──藤井仁子(映画評論家)

 

「波のした、土のうえ」
(2014/69分/HD[ブルーレイ上映])
制作:小森はるか+瀬尾夏美 撮影・編集:小森はるか テキスト:瀬尾夏美
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2015年11月に第7回神戸ドキュメンタリー映画祭で上映された作品を再上映。映像作家・小森はるかと画家で作家の瀬尾夏美によるアーティストデュオが、岩手県陸前高田で三年かけて制作した作品で、「置き忘れた声を聞きにいく」「まぶしさに目の慣れるまで」「花を手渡し明日も集う」の3篇から構成される。各篇、一人の被災者に焦点をあて、変化し続ける暮らしや風景へのそれぞれの思いを丁寧に写し出す。

予告編「波のした、土のうえ」神戸ドキュメンタリー映画祭ver.

小森はるか+瀬尾夏美 巡回展 波のした、土のうえ in 神戸
1月9日(土)〜31日(日)デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)

《料金》
一般:1200円 学生:1000円
会員一般:1000円 会員学生:900円

《割引》当日2本目は100円引き

これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。