プログラムPROGRAM
2018 4

公開研究会
[貸館]ゾンビ研究の最前線 ── “恐怖”の見方と考え方
2018年3月31日(土) 13:00〜19:00

13:00〜
「食人ゾンビの誕生とその時代背景──アメリカ映画『私はゾンビと歩いた』と 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の比較から」

小澤卓也(神戸大学)
ゾンビはなぜ人を喰らうようになったのでしょうか。今回上映される2作品を例に、激動のアメリカ社会と発展し続けるホラー映画の歴史的な互換関係からその起源について考えてみましょう。

14:10〜15:13
映画上映『私はゾンビと歩いた』

(I Walked with a Zombie、1943年、63 分、16mm)日本語字幕付

15:25〜16:10
「ゾンビの性質の変化から見る現代社会──喰らう!感染する!!ダッシュする!!!」

岡本健(奈良県立大学)
ハイチのヴードゥー教に端を発した「ゾンビ」。映画に音楽、ゲームにと、様々なメディアで描かれるにつれ、その性質は変化してきました。人を食べ、感染し、今や全速力で走りだす「ゾンビ」。そこから現代社会のどのような特徴が見てとれるか、解説します。

16:20〜17:56
映画上映『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』

(Night of the Living Dead、1968年、96 分、16mm)日本語字幕付

18:10〜19:00
ディスカッション

《参加費》無料   《会場》神戸映画資料館

主催:神戸大学国際文化学研究推進センター研究プロジェクト「映像メディアにおける注意と情動に関する領域横断的研究」(研究代表者:板倉史明)


[貸館]中国の人権を考えるドキュメンタリー映画
『709の人たち』上映会
2018年4月14日(土)13:30開演(13:00受付、13:15開場)

東京・大阪・伊丹に続き神戸で!

「弁護士の人権が守られずに、法治などありうるか?」

『709の人たち』709人們(香港維權律師關注組呈獻)
盧敬華監督(香港/2016/92分)

一党独裁体制の権力集中が強まる中国。社会的弱者の訴訟の弁護を引き受ける人権派弁護士とその家族が、当局の弾圧にさらされています。2015年7月9日の一斉取り締まり(「709」の由来)で拘留された弁護士たちの家族たちが静かに闘う姿を、香港人の盧敬華監督がとらえます。

上映後、盧監督の友人の阿古智子・日野みどりが解説とトークを行います。

阿古智子(東京大学准教授/日本語字幕)
他人事だと思わず、中国の弁護士やご家族、支援者の声を聞いてみませんか。中国の人権問題の合わせ鏡の向こう側には、日本の、私たちの姿も映し出されるはずです。

日野みどり(愛知大学国際問題研究所客員研究員)
中国の人権状況は香港の人々にとっても切実な問題、というのが盧監督の考え。では、日本の私たちには無関係なの? そうではないと思うよ!

《料金》 1000円
予約をお受けします。
予約・お問い合わせ: 709atkobe@gmail.com

主催:D&Mインスティテュート


サイレント映画鑑賞会 コメディ学入門連携プログラム

2018年4月15日(日)13:30〜

同日開催の「第14講コメディ学入門」とあわせてお楽しみください。

「極楽発展倶楽部」Sons of the Desert
(アメリカ/1933/58分/トーキー/16mm)
監督:ウィリアム・A・サイター
出演:ローレル&ハーディ、メイ・ブッシュ、チャーリー・チェイス

秘密結社「砂漠の息子たち」に所属するローレルとハーディは定例会と称した宴会旅行に参加したくてたまらないが妻たちは許さない。そこで妙案を思いつくがこれが惨事を招くことに…。
ローレル&ハーディの結婚喜劇では常に夫と妻の戦争が描かれる。尻に敷かれた夫の悲哀と結託が巻き起こす騒動はまさにバディ喜劇の最高峰。ハル・ローチスタジオの盟友チャーリー・チェイスも友情出演している。原題「砂漠の息子たち」は現在ローレル&ハーディ公式ファンクラブの名称になっている。

 

「警官騒動」Cops
(アメリカ/1922/24分/無声/16mm)
監督:エディ・クライン、バスター・キートン
出演:バスター・キートン、ヴァージニア・フォックス

気のいい青年が爆弾テロと間違われ、警官の大群に追いかけられるキートン喜劇真骨頂の1本。ハリウッド中心部のいくつかの通りを使ってロケ撮影された。逃げるキートンが自動車の後部につかまり水平に飛ぶ超人的スタントを撮影した場所は、ファンや研究者の間で「聖地」と呼ばれている。上映後の講座《コメディ学入門》では、クラシック喜劇研究家いいをじゅんこが今年2月にロケ地を訪れた際のレポートを行う。
 
 
解説:いいをじゅんこ

《料金》2本立て(入替無し)
一般1200円 学生1000円 会員900円
《割引》[第14講コメディ学入門] 参加者は200円引き

 

 

クラシックコメディの素晴らしい世界をみんなで楽しむ会
第14講コメディ学入門
いいをじゅんこのアメリカ珍道中〜クラシック喜劇巡礼の旅・大報告会〜

2018年4月15日(日)15:20〜(終了予定17:20)

クラシック喜劇映画にはいくつかの「聖地」がある。有名なロケ地、映画でよく見る風景、喜劇王たちが眠る場所、etc,etc…。ファンや研究者にとって、それらの聖地を巡礼するのはひとつの大きな夢である。2018年2月、その巡礼者の列に加わるというわたしの長年の夢が、とうとう叶った。2週間にわたってアメリカの三都市を訪れ、クラシック喜劇の聖地を巡るという、無謀にして壮大(?)な旅を敢行したのである。

30年振りの渡米、十余年ぶりの海外で、時差ボケと苦闘し聞き取れない英語に悩まされながらの珍道中。だがそこには、夢にまで見た場所に遂に身をおいた感動や、喜劇をこよなく愛する人々との出会い、心躍る映画館体験が待っていた。

さらに、アカデミーの研究施設で超一級の一次資料に直接ふれたり、ニューヨーク近代美術館ではレアなフィルムコレクションを鑑賞するという得難い経験もできた。米国で映画が産業としてだけでなく文化財として入念に保護されている現状や、研究者への手厚いサポートなど、実際に体験して考えることも多くあった。

今回の講座は、この旅の成果の報告会となる。現地で撮影した写真や動画をまじえながら、旅で得た収穫を皆さんと共有したい。クラシック喜劇に興味のある方はもちろん、米国での映画資料の調査に関心がある方にも役立つ情報を提供できればと思っている。講座の前に行われる関連作品の上映もあわせてご参加いただければ、より深い作品理解につながるだろう。

いいをじゅんこ
クラシック喜劇研究家、ライター。バスター・キートンと運命の出会いをして以来、サイレント喜劇の世界に魅了される。無声~トーキー初期のいわゆる「喜劇の黄金時代」に作られたアメリカを中心としたクラシック喜劇を研究。映画史の鉱脈に埋もれた優れたコメディを紹介する講座《コメディ学入門》を企画し、2012年より神戸映画資料館にて不定期開催している。2016年1月には喜劇映画研究会・神戸映画資料館と共同で古典喜劇映画上映委員会を立ち上げ、《新春コメディ宝箱》を開催。その後《神戸クラシックコメディ映画祭》へと発展し現在に至る。ライターとして映画評、書評などをさまざまな媒体に執筆している。
「サイレント喜劇のすばらしき世界(The Wonderful World of Silent Comedy and more)」

「極楽発展倶楽部」

《参加費》 1000円
*予約受付中
info@kobe-eiga.net まで、参加者様のお名前・ご連絡先(メールアドレスまたはお電話番号)をお知らせください。


ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第23回 早世の女性監督ラリーサ・シェピチコ

2018年4月21日(土)・22日(日)

「別れ」

全ソ国立映画大学で学び、アレクサンドル・ドヴジェンコに師事したラリーサ・シェピチコ(1938〜1979)。その死により夫であるエレム・クリモフが完成させた『別れ』と、遺作となった『処刑の丘』を上映する。

 

「処刑の丘」Восхождение
(1976/110分/35mm)モスフィルム

監督:ラリーサ・シェピチコ
原作:ヴァシーリィ・ブィーコフ
脚本:ラリーサ・シェピチコ、ユーリィ・クレピコフ
撮影:ウラヂーミル・チュフノーフ
出演:ボリース・プロートニコフ、ウラヂーミル・ゴスチューヒン、アナトリィ・ソロニーツィン

第二次世界大戦中、ナチス・ドイツ軍に占領されたベラルーシ。パルチザン部隊は食料調達のため、占領下の集落に二人の若い男を派遣する。良心をめぐる葛藤の心理を巧みに描くシェピチコの代表作でベルリン国際映画祭金熊賞受賞。

 

「別れ」Прощание
(1981/121分/35mm)モスフィルム

監督:エレム・クリモフ
原作:ヴァレンチン・ラスプーチン
脚本:ラリーサ・シェピチコ
撮影:アレクセイ・ロディオノフ
出演:ステファーニャ・スタニュータ、レフ・ドゥーロフ、アレクセイ・ペトレンコ、レオニート・クリューク、ヴァヂム・ヤコヴェンコ

シェピチコは本作のロケハン中に自動車事故により死去、その後、夫であるエレム・クリモフ監督(代表作『炎628』)が完成させた。ダム建設計画による水没のため、立ち退きを余儀なくされる小さな島の村人たち、それぞれの別れを描く。投影方式の日本語字幕を付して今回が初上映。

 

主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:ロシア映画社、東海晃久

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター会員1000円
《割引》
当日2本目は200円引き


ストローブ=ユイレ 回顧から新地平へ
2018年4月28日(土)〜30日(月・祝)

渋谷哲也編『ストローブ=ユイレ シネマの絶対に向けて』(森話社)の刊行を記念し、ストローブ=ユイレの代表作品の上映と映画研究者堀潤之氏のレクチャーを開催し、映画史上稀に見る妥協なき映画作家たちの片鱗に今一度触れてみたい。2006年にダニエル・ユイレが死去しその共同製作は終わりを告げたが、彼らの遺した作品は時代の中に埋もれるどころかむしろその孤高性をさらに高らかに示しつつある。映画の政治性とは抽象的な概念の戯れではなく、映画の本質を画面に定着しようとする営為に他ならない。彼らの闘争の具体的な記録をフィルム作品から跡付けつつ、ストローブ=ユイレに向ける新たなまなざしの可能性を探ってみたい。(渋谷哲也)

 

「アンナ・マグダレーナ・バッハの日記」
Chronik der Anna Magdalena Bach
(1967-68/93分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウーゴ・ピッコーネ
出演:グスタフ・レオンハルト、クリスティアーネ・ラング
作曲家・宮廷楽長としてのバッハの後半生を2番目の妻の語りによって綴ってゆく伝記映画。楽曲の演奏シーンが大半をなす構成ではあるが、そこにバッハの職業上の苦境、アンナ・マクダレーナとの絆、死の予感などが運命の波のように打ち寄せる。

 

「モーゼとアロン」
Moses und Aron
(1974-75/105分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウーゴ・ピッコーネ、サヴェーリオ・ディアマンティ、レナート・ベルタ
出演:ギュンター・ライヒ、ルイ・ドヴォス
シェーンベルク未完の大作オペラをイタリアの円形劇場にて上演した歴史巨編。エジプトのファラオ支配を逃れてイスラエルの民を率いるモーセとアロン、目に見えない神のための偶像を禁止された彼らはいかに民と向かい合えるのか?

 

「アンティゴネー」
Die Antigone des Sophokles nach der Hölderlinschen Übertragung für die Bühne bearbeitet von Brecht 1948(1991-1992/100分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ
ソポクレスの古代ギリシャ悲劇を近代ドイツ語に翻訳したヘルダーリンの戯曲をブレヒトの大胆な翻案で戯曲化した作品の上映版。クレオン王はファシズムの独裁者に見立てられ、アンティゴネーは家族愛に殉じる抵抗と闘士として際立つ。

 

「マホルカ=ムフ」
Machorka-Muff
(1962/18分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ヴァンデリン・ザハトラー
ストローブ=ユイレの監督デビュー作となった短編。戦後西ドイツが再武装してゆく過程を極めて辛辣な風刺劇で表現した。当時の彼らは「若いドイツ映画」として戦後ドイツの新世代映画の体現者と見なされた。

 

「シチリア!」
Sicilia!
(1998/66分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ
イタリアのネオリアリズム小説であるヴィットリーニの『シチリアでの対話』を映画化した。15年ぶりに帰郷した男が目撃するのは打ち捨てられたオレンジの山。そうして故郷の貧しい状況と両親の抑圧的な関係に改めて直面させられる。

 

作品解説:渋谷哲也
協力:神戸ファッション美術館、アテネ・フランセ文化センター

レクチャー 4月29日(日)15:05〜
 講師:堀 潤之(映画研究・表象文化論) 参加無料(当日の映画鑑賞者対象)
カフェトーク 4月30日(月・祝)17:20〜
 ゲスト:渋谷哲也(ドイツ映画研究) 参加費:500円(1ドリンクとスナック付き)

《料金》入れ替え制
一般:1400円 学生:1200円 会員:1200円
《割引》当日2プログラム目は200円引き
*招待券のご利用不可

 

「ストローブ=ユイレ──シネマの絶対に向けて」
渋谷哲也編 森話社
執筆:赤坂太輔、伊藤はに子、小澤京子、金子遊、サリー・シャフトウ、渋谷哲也、筒井武文、竹峰義和、千葉文夫、中尾拓哉、中島裕昭、細川晋、堀潤之、持田睦


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。