プログラムPROGRAM

ルドルフ・トーメ 赤(紅)の映画特集
Rudolf Thome :  Die <rote> Trilogie

9月22日(土)・23日(日)

戦後ドイツでもっともシネフィル的な映画監督を問われたら、迷わずルドルフ・トーメの名を挙げたい。だがそのシネフィル的特性ゆえに、トーメはニュージャーマンシネマでもっとも知られざる監督の一人となった。社会批判や政治的文脈から距離を取ったトーメは、ゴダールやホークスの戯れる映画のユートピアに直接参入した。彼が描く時代や人間はリアリティと神話が混じり合い結晶化した物語的風景に変貌する。美女あり、アクションあり、死の誘惑ありの映画のユートピアだ。一方彼の作品の底流にはメランコリーが横たわっている。なぜなら映画とは現実を生きる私たちには決して叶わぬ夢だからだ。トーメ監督の描く日常的な場面の数々が奇跡の如く甘美にスクリーンに息づく。だがそれは儚い現実の影だ。そこに戦後ドイツ世代ならではのトーメの批判性があるのではなかろうか。(渋谷哲也)

ゲスト:渋谷哲也(ドイツ映画研究)
22日(土)17:00〜 レクチャー 23日(日)17:20〜 解説とQ&A
*参加無料(要当日の映画チケット半券)

 

「紅い太陽」Die rote Sonne

(西ドイツ/1970/87分/ドイツ語[日本語字幕]/ブルーレイ上映)
監督:ルドルフ・トーメ
脚本:マックス・ツィールマン
出演:マーカート・ボーム、ウシ・オバーマイヤー、シルビア・ケクレ、ガビー・ゴー、ディアナ・ケルナー

ヒッチハイクでミュンヘンを訪れたトーマスは、かつての恋人ペギーに再会し、彼女が女友達らとシェアするアパートに転がり込む。しかし彼女たちにはある誓いがあり、それはトーマスにとって致命的な展開を予測させるものだった…。68年世代の自由とアナーキーを体現した、男と女の永遠の闘争映画。

 

「赤と青」Rot und Blau

(ドイツ/2002/109分/ドイツ語[日本語字幕]/DVD上映)*日本初上映
監督・脚本:ルドルフ・トーメ
出演:ハンネローレ・エルスナー、セルピル・トゥルハン、ハンス・ツィシュラー

バーバラはベルリン郊外のかつての住居に赴き、過去を灰にしようとする。一方父を亡くしたイルゼはベルリンに赴き、20年以上前に別れた彼女の母を探す。母と娘の再会、そして新たな家族関係の構築。そのささやかなドラマが一切の感傷を排して繊細に描き出される。トーメ監督の円熟を感じさせる作品。

 

「紅い部屋」Das Rote Zimmer

(ドイツ/2010/101分/ドイツ語[日本語字幕]/ブルーレイ上映)
監督・脚本:ルドルフ・トーメ
出演:カタリーナ・ロレンツ、セイネブ・サレー、ペーター・クナーク

ベルリンの生化学研究所のキス研究家フレッドは、研究に没頭するあまり人々との付き合いから離れていた。ある日彼は魅力的な女性ルジーとその恋人ジビルと知り合う。3人は愛という不確定なものをめぐって考察し、それを手に入れようと実験的な関係を始める。ミニマルな作劇の真骨頂を見せるトーメ近年の佳作。

 

ルドルフ・トーメ Rudolf Thome
1939年11月14日生れ。ドイツの映画監督。1960年代より批評家として新聞雑誌に寄稿。また64年より自主的に映画を撮り始める。ストローブ=ユイレやクラウス・レムケらとの交流の中でいわゆる「ミュンヘン派」を形成して映像主体の感性的な映画を目指し、アレクサンダー・クルーゲを代表とする「オーバーハウゼン派」の社会批判的態度から距離を取った。直線的でシンプルな語り口を特徴とするトーメの作風は一貫し、60年代末から2011年までコンスタントに映画を発表し続けている。代表作は『ベルリン・シャミッソー広場』(1980)、『フィロソファー』(1989)など。

協力:東京ドイツ文化センター、大阪ドイツ文化センター、同志社大学今出川校地学生支援課
企画協力・解説:渋谷哲也

 

《料金》入れ替え制1本あたり
一般:1400円 学生:1000円 会員:1200円
*当日2本目からは200円引き

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