知られざるモンゴル映画特集
2019年2月23日(土)・24日(日)
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「聖なる山」
モンゴル国と内モンゴルの近代映画について
1921年に社会主義革命が起こり、民族の独立を果たしたモンゴルでは、上映作品はソヴィエト制作の教育映画であった。1960年代から1990年代にかけて、歴史と革命を主題とする映画が主流となった。1992年に民主化に進み、2000年まで西部映画、例えばアメリカ映画が圧倒的に多く、国産映画はあまり見られない状況にある。
一方、中国・内モンゴル自治区でのモンゴル映画の制作開始は最近のことである。1947年に中国の自治区として成立して以来、1990年代までは革命映画が中心であり、モンゴル人主題の映画はほとんどなかった。2000年ごろから、内モンゴルで遊牧民の生活を主題とする映画の制作が盛んになり始めた。監督は映画撮影の経験がないモンゴル人であり、ほぼすべての出演者が演技経験のない遊牧民であり、資金は私費で集めている。ストーリーは、内モンゴルの草原破壊、モンゴル文化の劣化と草原や人間関係を主題とする映画である。
モンゴル国と内モンゴルでは、上述のように、それまでに革命と歴史を題材にする映画が主流であった。グローバル化の進展により、遊牧生活から都市化が進んでいる。草原破壊は社会問題となって浮上し、生活に苦しむモンゴル人は伝統文化を再認識し、自然環境と人間の調和を描く映画が登場している。
── スチンゴワ(チンギスハーン国際映画祭実行委員)
「聖なる山」(中国・内モンゴル/2009/91分/デジタル)
監督:ハスバイヤル 撮影:アサラバイ、ドグリン 音楽:エンフバヤル、ジェリシン プロデューサー:ブリワ
出演:バインイルゲル、オドンゴー
香港国際映画祭招待作品
アバガ草原には偉大なるチンギス・ハーンと似ていると言われる山があった。遊牧民のバヤンドゥレンは、裕福になりたいという夢を抱いていたが、生活は次第に困窮し、息子の学費すら払えずにいる。ある日、一念発起し育てていた羊の商売を始めたものの、騙されてすべてを失ってしまう。そんなバヤンドゥレンを見かねた友人のムンケは彼を助けようとするが、自尊心の強いバヤンドウレンは頑に受け入れようとしない。やがて、バヤンドゥレンは所有していた放牧地まで売ろうとする。ムンケは彼を必死に受け止めようとするが……。
「バトの物語」(中国・内モンゴル/2016/88分/デジタル)
監督:ダイチン 脚本:ヒンアン 撮影:ダイチン 録音:フチェルグ
プロデューサー:バダラングイ ヒンアン ゼネラルプロデューサー:セルグレン
出演:バダラングイ、ウユンチェチェグ、アルバンタブ
遊牧民のバドは、内モンゴル自治区の東部でのどかな生活を送っていた。バドは現代の情報化社会とは縁遠く、興味すら持ってはいなかった。ある日、小学校の時の幼馴染みで、今は映画監督となった友人と再会する。彼は怪我をして実家で静養していた。意気投合した二人は、一緒に酒盛りや釣りなど楽しんでいたが、ある日、監督のもとをソリナという女性が訪れると、二人の静かな生活は一変してしまう…。
短篇集+トーク
「オボー」
(中国・内モンゴル/2015/20分/デジタル)
監督:セルグレン
もともとは方角を見失わないための目印として作られた聖なる石の山「オボー」をめぐる家族の物語。
「黒い馬」
(中国・内モンゴル/2015/20分/デジタル)
監督:ボインヘシゲ
孫の結婚資金のために、おじいさんが大切に育てた黒い馬が売られようとする。
「器」
(中国・内モンゴル/2017/15分/デジタル)
監督:ノ・ビル
水を求めて荒野をさまよい歩く男。そしてついに井戸を見つけるが…。
トーク「モンゴルの歴史と文化」
冨田敬大(立命館大学助教)
《料金》
一般:1200円 学生・シニア:1100円 会員:1000円
*当日2プログラム目は200円引き
主催:チンギスハーン国際映画祭実行委員会
共催:神戸映画資料館