プログラムPROGRAM

ストローブ=ユイレ

ストローブ=ユイレ 回顧から新地平へ
2018年4月28日(土)〜30日(月・祝)

渋谷哲也編『ストローブ=ユイレ シネマの絶対に向けて』(森話社)の刊行を記念し、ストローブ=ユイレの代表作品の上映と映画研究者堀潤之氏のレクチャーを開催し、映画史上稀に見る妥協なき映画作家たちの片鱗に今一度触れてみたい。2006年にダニエル・ユイレが死去しその共同製作は終わりを告げたが、彼らの遺した作品は時代の中に埋もれるどころかむしろその孤高性をさらに高らかに示しつつある。映画の政治性とは抽象的な概念の戯れではなく、映画の本質を画面に定着しようとする営為に他ならない。彼らの闘争の具体的な記録をフィルム作品から跡付けつつ、ストローブ=ユイレに向ける新たなまなざしの可能性を探ってみたい。(渋谷哲也)

 

「アンナ・マグダレーナ・バッハの日記」
Chronik der Anna Magdalena Bach
(1967-68/93分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウーゴ・ピッコーネ
出演:グスタフ・レオンハルト、クリスティアーネ・ラング
作曲家・宮廷楽長としてのバッハの後半生を2番目の妻の語りによって綴ってゆく伝記映画。楽曲の演奏シーンが大半をなす構成ではあるが、そこにバッハの職業上の苦境、アンナ・マクダレーナとの絆、死の予感などが運命の波のように打ち寄せる。

 

「モーゼとアロン」
Moses und Aron
(1974-75/105分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウーゴ・ピッコーネ、サヴェーリオ・ディアマンティ、レナート・ベルタ
出演:ギュンター・ライヒ、ルイ・ドヴォス
シェーンベルク未完の大作オペラをイタリアの円形劇場にて上演した歴史巨編。エジプトのファラオ支配を逃れてイスラエルの民を率いるモーセとアロン、目に見えない神のための偶像を禁止された彼らはいかに民と向かい合えるのか?

 

「アンティゴネー」
Die Antigone des Sophokles nach der Hölderlinschen Übertragung für die Bühne bearbeitet von Brecht 1948(1991-1992/100分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ
ソポクレスの古代ギリシャ悲劇を近代ドイツ語に翻訳したヘルダーリンの戯曲をブレヒトの大胆な翻案で戯曲化した作品の上映版。クレオン王はファシズムの独裁者に見立てられ、アンティゴネーは家族愛に殉じる抵抗と闘士として際立つ。

 

「マホルカ=ムフ」
Machorka-Muff
(1962/18分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ヴァンデリン・ザハトラー
ストローブ=ユイレの監督デビュー作となった短編。戦後西ドイツが再武装してゆく過程を極めて辛辣な風刺劇で表現した。当時の彼らは「若いドイツ映画」として戦後ドイツの新世代映画の体現者と見なされた。

 

「シチリア!」
Sicilia!
(1998/66分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ
イタリアのネオリアリズム小説であるヴィットリーニの『シチリアでの対話』を映画化した。15年ぶりに帰郷した男が目撃するのは打ち捨てられたオレンジの山。そうして故郷の貧しい状況と両親の抑圧的な関係に改めて直面させられる。

 

作品解説:渋谷哲也
協力:神戸ファッション美術館、アテネ・フランセ文化センター

レクチャー 4月29日(日)15:05〜
 講師:堀 潤之(映画研究・表象文化論) 参加無料(当日の映画鑑賞者対象)
カフェトーク 4月30日(月・祝)17:20〜
 ゲスト:渋谷哲也(ドイツ映画研究) 参加費:500円(1ドリンクとスナック付き)

《料金》入れ替え制
一般:1400円 学生:1200円 会員:1200円
《割引》当日2プログラム目は200円引き
*招待券のご利用不可

 

「ストローブ=ユイレ──シネマの絶対に向けて」
渋谷哲也編 森話社
執筆:赤坂太輔、伊藤はに子、小澤京子、金子遊、サリー・シャフトウ、渋谷哲也、筒井武文、竹峰義和、千葉文夫、中尾拓哉、中島裕昭、細川晋、堀潤之、持田睦


ストローブ=ユイレ
音楽+映画、絵画+映画、そして歴史
2017年2月4日(土)・5日(日)
bach01

レクチャー:音楽+映画、絵画+映画、そして歴史
2月4日(土)16:50〜18:20 参加無料
渋谷哲也(ドイツ映画研究)
ストローブ=ユイレ映画の中でもっともよく知られている『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』の大胆な構成はどれだけ言葉を尽くしても称賛しきれない。歴史の再現ドラマを排しながらバッハという人物の芸術と愛と生涯を見事に浮き彫りにしてゆくからだ。映画(シネマトグラフ)が捉えられるのは事物に過ぎない。ストローブ=ユイレにおいて音楽と絵画は決して映画の中に浸透しない。そして歴史は現在形においてのみ痕跡を示す。そこに秘められた精神性を見出すのはひたすら観客の眼力と聴力に委ねられる。

bach02「アンナ・マグダレーナ・バッハの日記」
Chronik der Anna Magdalena Bach
(1967-68/93分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウーゴ・ピッコーネ
出演:グスタフ・レオンハルト、クリスティアーネ・ラング
ストローブ=ユイレが最初に映画化しようとした作品。作曲家J・S・バッハの後半生を二番目の妻の視線から語る。出演者自身によるライブ演奏場面、バッハの自筆譜や手紙、教会や家庭のドラマ場面が交錯し、ドキュメンタリーとファミリーメロドラマの極めてユニークな融合を果たしている。

 

cezanne01「セザンヌ」
Cézanne
(1989/50分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:アンリ・アルカン
詩人ジョワシャン・ガスケによる『セザンヌとの対話』第1章と第3章からセザンヌの言葉が朗読される。映像はセザンヌの絵画が動かぬフレームの中に提示される。そこにジャン・ルノワール監督の『ボヴァリー夫人』と自作『エンペドクレスの死』からの抜粋映像が挟まれる。

 

lothringen01「ロートリンゲン!」
Lothringen!
(1994/21分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:クリストフ・ポロック、エマニュエル・コリノ
「ロートリンゲン」とは「ロレーヌ」のドイツ名である。本作はストローブの生地であるこの地方を巡りながら、様々な風景や歴史的記念碑を捉え、国粋主義的なフランス作家モーリス・バレスの小説『コレット・ボドッシュ』を引用しつつ、決して宥和できないフランスとドイツの関係を語る。

 

作品解説:渋谷哲也
協力:神戸ファッション美術館、アテネ・フランセ文化センター

《料金》入れ替え制
一般:1400円 学生・シニア:1300円
会員一般:1300円 会員学生・シニア:1200円

《割引》当日2プログラム目は200円引き
*招待券のご利用不可


ストローブ監督近作特集
2016年8月13日(土)・14日(日)

レクチャー:ストローブ映画から照射する「ストローブ=ユイレ」
8月13日(土)16:45〜 参加無料
渋谷哲也(ドイツ映画研究)
2006年ダニエル・ユイレが亡くなった後、ジャン=マリー・ストローブは単独監督として次々と短編映画を発表している。それは最高にユニークな映画作家夫妻の創作活動の後奏曲かと思いきや、まったく新しい作家映画の始まりを告げるものだった。今回の上映作品では彼らの旧作の自己引用が、まったくアクチュアルな文脈を獲得している。歴史の位相と現代性との弁証法に徹底的にこだわったストローブの『共産主義者たち』は、ストローブ=ユイレの集大成であると同時に、今までにない若々しい輝きを放つ傑作となっている。

Aプログラム
statue01「ミッシェル・ド・モンテーニュのある話」
Un conte de Michel de Montaigne
(フランス/2013/33分/デジタル[ブルーレイ上映])
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:クリストフ・クラヴェール
ソルボンヌ大学北のポール・パンルヴェ小公園にあるポール・ランドフスキ作のモンテーニュの坐像を捉えながら、『エセー』第2巻第6章「実習について」が朗読される。一度しか体験できない生から死への移行を省察する。

 


Normandie01「影たちの対話」

Dialogue d’ombres
(フランス/2014/28分/デジタル[ブルーレイ上映])
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ
ストローブ=ユイレが1954年に映画化を構想したという、ベルナノスの1928年の同名小説の一部を映像化した。一組の男女が川辺の木陰で愛の対話を展開する。ノルマンディのフレール近郊で撮影された。フランソワーズ役はコルネリア・ガイサー、ジャック役はベルトラン・ブルデール。


VENISE01「ヴェネツィアについて(歴史の授業)」

À propos de Venise
(スイス/2014/24分/デジタル[ブルーレイ上映])
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:クリストフ・クラヴェール
河岸の波と木の枝を映した長廻し2ショットに重ねて、バレスの旅行記「愛と悲しみの聖地」(1903)の一篇「ヴェネツィアの死」第3章「アドリア海の水平線上に漂う影たち」一節が朗読される。最後に『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』(1968)よりカンタータ BWV205のアリア「いかに楽しく笑うや」が引用される。

 

Bプログラム
KOMMUNISTEN01「共産主義者たち」
Kommunisten
(フランス、スイス/2014/70分/デジタル[ブルーレイ上映])
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:クリストフ・クラヴェール
マルローの同名小説(1935)に基づく「侮蔑の時代」で始まり、続けてストローブ=ユイレの旧作5本『労働者たち、農民たち』『フォルティーニ/シナイの犬たち』『早すぎる、遅すぎる』『エンペドクレスの死』『黒い罪』からの抜粋で構成される。


Algerie01「アルジェリア戦争!」

La guerre d’Algérie!
(フランス/2014/2分/デジタル[ブルーレイ上映])
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:クリストフ・クラヴェール
ある男がもう一人の男を銃で脅しながら、かつてアルジェリア戦争で上官の殺人命令を拒否して上官を殺害し逃亡した顛末を話す。精神分析医ジャン・サンドレットのテクストに基づくシネトラクト(政治ビラ映画)。

 

作品解説:渋谷哲也
協力:アテネ・フランセ文化センター

《料金》入れ替え制
一般:1400円 学生・シニア:1300円
会員一般:1300円 会員学生・シニア:1200円

《割引》当日2プログラム目は200円引き


ストローブ=ユイレにおける永続的闘争論
2016年1月30日(土)・31日(日)

レクチャー:荒野への出奔、革命の連鎖
1月30日(土)17:20〜 参加無料
渋谷哲也(ドイツ映画研究)
今回上映する4作品は、過去と現在における様々な階級闘争の位相をモンタージュする作品である。20世紀初頭のユダヤ人排斥とシオニズム台頭の中でシェーンベルクが作曲した楽曲は、ストローブ=ユイレによって現代社会における火急の問題として読み解かれる。また18世紀のフランス革命、19世紀のパリ・コミューン、そして20世紀エジプトの階級闘争という様々な革命の顛末を辿ることにより、現代の我々の立ち位置が問い直される。それは切り詰められた映像から遥かなる未来の地平を見出すための映画的レッスンでもある。

Aプログラム
Schoenbergs01「アーノルト・シェーンベルクの《映画の一場面のための伴奏音楽》入門」
Einleitung zu Arnold Schoenbergs “Begleitmusik zu einer Lichtspielscene”
(1972/15分/16mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:レナート・ベルタ
1923年に作曲家シェーンベルクが、反ユダヤ主義に抗して友人の画家カンディンスキーに宛てた激烈な絶縁状が朗読され、シェーンベルクが架空の映画音楽として作曲した題名曲が重なる。1935年のブレヒトによるファシズムと資本主義の関連を指摘する演説も引用され、映画は黙示録的な未来を予感させて終わる。

moses01「モーゼとアロン」
Moses und Aron
(1974-75/105分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウーゴ・ピッコーネ、サヴェーリオ・ディアマンティ、レナート・ベルタ
出演:ギュンター・ライヒ(モーゼ)、ルイ・ドヴォス(アロン)
聖書の「出エジプト記」に想を得たシェーンベルクのオペラ「モーゼとアロン」を、未完の第3幕も含めて完全に映画化した。指揮はミヒャエル・ギーレン、演奏はオーストリア放送交響楽団。偶像崇拝禁止の中での民の信仰心をめぐって思索する預言者モーゼと弁舌豊かな兄アロンの思想的対決が展開する。

 

Bプログラム
subetenokakumei01「すべての革命はのるかそるかである」
Toute révolution est un coup de dés
(1977/11分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ
ステファヌ・マラルメの革命的な詩「賽のひと振りは決して偶然を廃棄しないであろう」を、1871年のパリ・コミューンの闘士の最後の拠点となったペール・ラシェーズ墓地の芝生に座った九人の男女が朗唱する。様々な言語を母語とする彼らが頁上に散りばめられた星座のような詩の言葉が未来的な音楽となる。

trop01「早すぎる、遅すぎる」
Trop tôt, Trop tard
(1980-81/101分/16mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ(第一部)、ロベール・アラズラキ(第二部)
第一部ではエンゲルスのカウツキー宛て書簡に基づき、18世紀末の農村の貧困状況が分析され、現在のフランスの村々が映し出される。第二部ではマフムード・フセインによる『エジプトにおける階級闘争』の近現代エジプトにおける農民蜂起の歴史が朗読され、それぞれの地域の現状が示される。革命は早すぎたのか、遅すぎたのか。

 

作品解説:渋谷哲也
協力:神戸ファッション美術館、アテネ・フランセ文化センター

《料金》入れ替え制
一般:1400円 学生・シニア:1300円
会員一般:1300円 会員学生・シニア:1200円

《割引》当日2プログラム目は200円引き
*招待券のご利用不可


ストローブ=ユイレによるブレヒト映画
2015年8月14日(金)〜16日(日)

レクチャー:時空を超えるブレヒトの旅
8月16日(日)16:45〜 参加無料
渋谷哲也(ドイツ映画研究)
「ブレヒト主義者」を自称していたストローブ=ユイレはブレヒトのテクストを用いて2本の映画を製作した。どちらも彼の亡命中に執筆したテクストを用いて、限りなく挑発的な技法を特徴としつつ、それ以上に映画的な快楽を溢れさせた傑作である。『歴史の授業』の長大なトラヴェリングとカエサル神話の資本主義的読み替え、『アンティゴネー』での円形劇場に限定された空間での言葉の果たし合い。限りなく禁欲的でありながら、心の奥底を揺さぶるような映画体験をもたらしてくれる。

rekishino01「歴史の授業」
Geschichtsunterricht(1972/85分/16mm 35mm
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:レナート・ベルタ

ベルトルト・ブレヒトの未完の小説『ユリウス・カエサル氏の商売』を基にローマの古代と現代を交差させたエッセイ風劇映画。カエサルの死後40年目にして伝記を執筆しようとする歴史家青年の前で、生前のカエサルを知る者たちの証言が、世紀の英雄の真実の姿を次第に浮き彫りにしてゆく。

 

antigone01「アンティゴネー」
Die Antigone des Sophokles nach der Hölderlinschen Übertragung für die Bühne bearbeitet von Brecht 1948(1991-1992/100分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ

ソフォクレス作の古典ギリシャ悲劇をヘルダーリンがドイツ語に翻訳した草稿を基に、ブレヒトが大胆に加筆改稿した戯曲を映画化した。戦争のさなかで国の裏切り者となって死んだ兄の遺骸を弔うアンティゴネ—と、それを反逆行為として糾弾する叔父クレオン王との対決。ブレヒトはそこに戦争とファシズムへの批判を読み込んだ。

 

作品解説:渋谷哲也
協力:神戸ファッション美術館、アテネ・フランセ文化センター

《料金》入れ替え制
一般:1300円 学生・シニア:1200円
会員一般:1200円 会員学生・シニア:1100円

《割引》当日2本目は200円引き


関連上映 ストローブ=ユイレ、ブレヒト、ワイマール期の音楽劇
2015年3月28日(土)・29日(日)

vonheute01「今日から明日へ」

Von heute auf morgen(1996/62分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ 撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ

ストローブ=ユイレによるシェーンベルクの同名時事オペラの完全映画化。ある夜の夫婦の諍いを描きつつ当世流行りの「モダンな人々」とは何か、時代を超えて残るものとは何かを問う。

 

 

DieDreigroschen01「三文オペラ」
Die Dreigroschen Oper(1931/112分/35mm)
フィルム提供:東京国立近代美術館フィルムセンター
監督:ゲオルグ・ヴィルヘルム・パプスト
原作:ベルトルト・ブレヒト
撮影:フリッツ・アルノ・ヴァグナー
美術:アンドレイ・アンドレイエフ
音楽:クルト・ヴァイル
出演:ルドルフ・フォルスター、カローラ・ネーヘル、ラインホルト・シュンツェル

DieDreigroschen02ブレヒトとクルト・ヴァイルによる代表的な舞台劇の映画化。トーキー初期の音楽映画として原作を換骨奪胎した楽しいミュージカルに仕上がっている。映画の内容を不服としたブレヒトとの間で訴訟沙汰になったことでも有名。

 

作品解説:渋谷哲也
協力:神戸ファッション美術館、東京国立近代美術館フィルムセンター
[関連企画]
3月28日(土)
ストローブ=ユイレ、ブレヒト、ワイマール期の音楽劇
講師:渋谷哲也(ドイツ映画研究)
ゲスト:大田美佐子(西洋音楽史,音楽美学)

《料金》入れ替え制 *招待券のご利用不可
一般:1400円 学生・シニア:1300円
会員一般:1300円 会員学生・シニア:1200円

《割引》
当日2本目は100円引き

『アメリカ(階級関係)』とストローブ近作集
2014年12月20日(土)・12月21日(日)

渋谷哲也氏の講座「カフカを読むストローブ(とユイレ)」の関連企画として、カフカ原作「アメリカ(階級関係)」と「ジャッカルとアラブ人」、及びジャン=マリー・ストローブ監督の近作短編を上映します。


Klassen01「アメリカ(階級関係)」

Klassenverhältnisse
(1983-84/126分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ
カフカの未完の長編小説「失踪者」(旧題「アメリカ」)の映画化。故郷を追われ、船で単身アメリカにやってきたドイツ人青年カール・ロスマンが様々な階級関係の中で挫折と抵抗を繰り返す。主要場面はハンブルクとブレーメンで撮影された。

 

ストローブ近作集
Un-hSitier01「ある相続人」
Un héritier
(2011/22分/デジタル[ブルーレイ上映])
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ、クリストフ・クラヴェール
バレスの「東方の砦」三部作の第一作「ドイツに仕えて」の抜粋に基づき、アルザス守護聖人の修道院がある聖オディル山でデジタル撮影。ストローブ自らロレーヌ人に扮し、ジョゼフ・ロトネール扮するアルザス人青年と対話する。

 

Schakale-und-Araber01「ジャッカルとアラブ人」
Schakale und Araber
(2011/11分/デジタル[ブルーレイ上映])
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:クリストフ・クラヴェール
フランツ・カフカの寓話短編の映画化。音楽は、ジェルジュ・クルターグ「カフカ断章」作品24(1986)第四部第39曲「またもや、またもや」。出演は、バルバラ・ウルリヒとジョルジョ・パッセローニ。ストローブが声のみ出演。

 

L'inconsolable01「慰めようのない者」
L’inconsolable
(2011/15分/デジタル[ブルーレイ上映])
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ クリストフ・クラヴェール
「レウコとの対話」の一篇の映画化。吟遊詩人オルペウスを八つ裂きにする運命にあるバッケー(酩酊する狂暴なトラーキアの女)の一人にジョヴァンナ・ダッディ、最愛の妻エウリュディケーを亡くしたオルペウスにアンドレーア・バッチ。

 

LA-MADRE01「母」
La madre
(2012/20分/デジタル[ブルーレイ上映])
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:クリストフ・クラヴェール
「レウコとの対話」の一篇に基づく。女狩人アタランテーを含む勇士らと猪狩りに参加した、王の息子メレアグロスは、母親アルタイアーの呪いで殺された。ヘルメースにジョヴァンナ・ダッディ、メレアグロスにダリオ・マルコンチーニ。

 

主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:神戸ファッション美術館

[関連企画]12月20日(土)カフカを読むストローブ(とユイレ)
講師:渋谷哲也(ドイツ映画研究)

《料金》入れ替え制1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター会員1000円
《割引》
当日に限り2プログラム目は200円引き

「文学映画化の諸相 チェザレ・パヴェーゼの場合」関連上映
ストローブ=ユイレとレナーテ・ザミ
2014年8月16日(土)・17日(日)

kumokara01「雲から抵抗へ」
Dalla nube alla resistenza
(1978/105分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:サヴェーリオ・ディアマンティ
イタリアの作家チェザレ・パヴェーゼ(1908-1950)の未完の神話的対話篇集「レウコとの対話」の6篇「雲」「キマイラ」「盲人たち」「狼人間」「客」「火」を映画化した第一部と、パヴェーゼ最後の長編小説「月と篝火」を圧縮再構成した第二部からなる。
 
Pavese01「チェザレ・パヴェーゼ
トリノ‐サント・ステファノ・ベルボ」

Cesare Pavese Turin – Santo Stefano Belbo
(1985/64分/デジタル[ブルーレイ上映])
監督:レナーテ・ザミ、ペトラ・ゼーガー
チェザレ・パヴェーゼの生地サント・ステファノ・ベルボと、彼が自ら命を絶ったトリノの街をカメラは訪れる。彼の最後の2つの小説『孤独な女たちと』と『月と篝火』のテクストやパヴェーゼの手紙・日記・写真を頼りに、この作家の生と創作を辿る。また彼と親交のあった人物達が生前のエピソードを物語る。

 

レナーテ・ザミ Renate Sami
1935年、ベルリン生まれ。1975年にドイツ赤軍派に属した映画作家ホルガー・マインスの獄中死を契機に、監督第一作『いずれ誰もが死ぬ、ただ問題はいかに死ぬか、そしていかに生きたかだ』(1975)を撮り上げる。それまでは映画製作とは無縁だった。
『チェザレ・パヴェーゼ トリノ—サント・ステファノ・ベルボ』(1985)では、作家パヴェーゼの小説を基にこの作家ゆかりの地を訪れる。また彼女が18歳で初めて訪れたエジプトを題材に『ピラミッドと共に』(1990)を制作。その他の作品に、『ブロードウェイ 95年5月』(1996)、スーパー8で撮りためられた映像にパヴェーゼの詩や音楽を重ねた『映画日記1975‐85』(2005)、『リアーネ・ビルンベルクの工房と彼女の父ダーヴィット・バルフ・ビルンベルクの物語』(2007)など。最新作は自宅の窓の外の壁から時間の流れを捉えた『一年』(2011)。

作品解説:渋谷哲也
協力:レナーテ・ザミ、アテネ・フランセ文化センター、神戸ファッション美術館

[関連企画] 8月16日(土)文学映画化の諸相 チェザレ・パヴェーゼの場合
講師:渋谷哲也(ドイツ映画研究)

《料金》入れ替え制1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

《割引》
当日に限り2本目は200円引き

ストローブ=ユイレ初期2作品
2014年5月10日(土)・11日(日)
[関連企画] 5月10日(土)
ニュージャーマンシネマと文学──映像とテクスト新たな関係性を探る
講師:渋谷哲也(ドイツ映画研究)

 
「妥協せざる人々(和解せず)」
Nicht versöhnt oder Es hilft nur Gewalt, wo Gewalt herrscht
(西ドイツ/1965/55分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ヴァンデリン・ザハトラー
 
ストローブ=ユイレの監督第2作。副題「暴力が支配するところ、暴力のみが助けとなる」はブレヒトの戯曲『屠殺場の聖ヨハンナ』の一節から取られた。本編はハインリヒ・ベルの長編小説『9時半の玉突き』を原作とし、フェーメル家3代の家族物語の中に20世紀前半ドイツの激動の歴史を描き出す。映画は主にドイツに巣食うファシズムの暴力と市民の抵抗を過激に描き出す。場面や台詞は全てベルの原作から取られたが、この映画化が小説にとってプラスにならぬと判断した著作権者からは映画の破棄を要請されるという騒ぎに発展した。
「花婿、女優そしてヒモ」
Der Bräutigam, die komödiantin und der Zuhälter
(西ドイツ/1968/23分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ヴァンデリン・ザハトラー
 
ストローブ=ユイレがドイツ滞在中に製作した最後の映画。この後彼らはローマに拠点を移す。本作は3つの部分からなる。最初はランズベルガー通りを移動する車窓の眺めのワンカット。第二にフェルディナント・ブルックナーの戯曲『青年の病気』をストローブが10分間に短縮して演出したアクションテアターの上演。最後は女優とアメリカ人の結婚式と彼女に追いすがるヒモ(俳優)を彼女が厄介払いするまでをフアン・デラ・クルスのテクストによって演じるドラマ。ストローブ=ユイレによる脚色映画の手法のエッセンスを示す一本。
 
作品解説:渋谷哲也
協力:神戸ファッション美術館

《料金》2本立て
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

ストローブ=ユイレの21世紀
2011年4月29日(金・祝)〜5月8日(日)[期間中休館日無し]
最初の長編『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』で国際的に知られるようになって以来、その独自の制作姿勢により、孤高の映画作家と称され、ゴダールと同様、特別の注目を浴びてきたストローブ=ユイレ。“撮るたびに映画を発明しなおしている” と賞賛され、その作品は映画の自由と厳格さを同時に持つ。2006年にユイレが没した後も、ストローブは制作を続けている。今回は、 彼らの2000年以降の作品を特集上映する。

ジャン=マリー・ストローブ Jean-Marie Straub  ダニエル・ユイレ Danièle Huillet
ジャン=マリー・ストローブ(1936‐)とダニエル・ユイレ(1936‐2006)は、40年以上にわたって共同で映画製作を行い、私生活におけるパートナーでもあった。フランスからドイツを経てイタリアに行き、つねに異邦人として映画を撮り続けた。2000年以前の作品に、『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』(1968)、『モーゼとアロン』(1974)、『すべての革命はのるかそるかである』(1977)、『アメリカ(階級関係)』(1984)、『シチリア!』(1998)などがある。

  
Aプログラム
「労働者たち、農民たち」
Ouvriers, paysans(Operai, contadini)
(2000/123分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:レナート・ベルタ
原作はヴィットリーニの長編小説「メッシーナの女たち」の独白体で構成された第44章から第47章。映画に登場し証言するのは、社会的混乱の中、行き場をなくし、山中で新たな村を再建しつつある戦争難民たち12名であり、彼らがそれぞれ微妙に食い違う固有の観点から報告するのは、前年の秋からその年の初春にかけての苦難や対立とそれを乗り越えた喜びである。ただし、農民と労働者を演じる人々は撮影が行なわれた時代の服装のまま定点を動かず、「冬の出来事」の回想は具体的に映像化されることはない。
 
 
Bプログラム
「放蕩息子の帰還/辱められた人々」
Il ritorno del figlio prodigo/Umiliati
(2003/64分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:レナート・ベルタ
『労働者たち、農民たち』の挿話を再利用した「放蕩息子の帰還」と、その後日譚「辱められた人々」の二部構成。後者では、山中の共同体に地主代行や元パルチザンらが訪れ、土地所有権を侵害する違法性、自給自足経済の割りの悪さを説き、共同体を崩壊させる。
撮影のレナート・ベルタは、ダニエル・シュミット、ゴダール、オリヴェイラ監督作品も多く手がけている。
Cプログラム
「ルーブル美術館訪問」Une visite au Louvre
(2004/48分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ レナート・ベルタ
映画『セザンヌ』(1989)に続き、ジョアシャン・ガスケの創作的回想録「セザンヌ」のガスケとの対話の一部を参照しつつ、セザンヌが見たであろうルーヴル美術館所蔵の美術作品を注視する。対話の形で語られるセザンヌの思弁的な絵画論が女性の声で画面外で語られる。
Dプログラム
「あの彼らの出会い」Quei loro incontri
(2006/68分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:レナート・ベルタ
パヴェーゼの神話的対話詩篇「レウコとの対話」の最後の5篇「人類」「神秘」「洪水」「ムーサたち」「神々」を映画化。古代ギリシャの神々、半神半人、森の精、死すべき運命を持つ人間らの間で交わされる対話がオリュンポスに見立てた山腹で演じられる。
Eプログラム 4作品
「ヨーロッパ2005年、10月27日」Europa 2005 27 octobre
(2006/12分/デジタルベータカム)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
ストローブ=ユイレが初めてDVを用いたシネトラクト(アジビラ映画)。イタリア国営放送の委嘱により2006年春に撮られた。警察に追われ変電所に隠れていた15歳と17歳の移民少年が感電死したクリシー=ス=ボワの事故現場を撮影する。この事故が各地の暴動のきっかけとなった。
 
「アルテミスの膝」Il Ginocchio di Artemide/Le Genou d’Artemide
(2007/26分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ
『あの彼らの出会い』に引き続きパヴェーゼの「レウコとの対話」の一篇、エンデュミオンと見知らぬ者の対話「野獣」を映画化。監督名義はストローブ単独である。パヴェーゼ生誕100周年の2008年に公開予定だったが、2009年に延期された。出演は『あの彼らの出会い』のダリオ・マルコンチーニとアンドレア・バッチ。
 
「ジャン・ブリカールの道程」Itineraire de Jean Bricard
(2008/40分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ
ジャン・ブリカールは1932年にロワール河近辺で生まれ、その地域で暮らし、92年に引退するまでヴェルト島の砂質採取事業の責任者だった。ドイツ占領期などの過去を振り返る彼の談話は、1994年2月24日に社会学者ジャン=イヴ・プチトーが録音したものである。
撮影は、リヴェット、イオセリアーニ、ガレル監督作品などでも知られるウィリアム・ルプシャンスキで、残念ながら2010年に逝去した。
 
「ジョアシャン・ガッティ」Joachim Gatti
(2009/2分/デジタルベータカム)関西初上映
監督:ジャン=マリー・ストローブ
2009年7月8日、34歳の活動家、映画作家ジョアシャン・ガッティはモントルイユでデモ活動中、警官にフラッシュボールのゴム弾で撃たれ、片目が破裂し、視力を失った。本作では、事故以前の彼の写真にルソーのテクストがかぶさる。
Fプログラム 3作品
「魔女-女だけで」Le streghe, femmes entre elles
(2009/21分/35mm)関西初上映
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ
『あの彼らの出会い』『アルテミスの膝』に引き続きパヴェーゼの「レウコとの対話」の一篇、魔女キルケーと女神レウコテアーの対話「魔女」を映画化。仏語題「女だけで」は同じパヴェーゼ原作のアントニオーニ『女ともだち』(1955)の仏語題。ジョヴァンナ・ダッディ、ジョヴァネッラ・ジュリアーニ出演。
 
「コルネイユ=ブレヒト」Corneille – Brecht
(2009/78分[26分×3バージョン]/デジタルベータカム)関西初上映
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:クリストフ・クラヴェール
副題「ローマ、私が恨む唯一のもの」。コルネリア・ガイサーがコルネイユの「オラース」第4幕第5場と「オトン」の短い一節を読む。その後、ブレヒトのラジオ劇「ルクルスの審問」が読まれる。編集の異なる3ヴァージョン上映。
 
「おお至高の光」O somma luce
(2009/17分/HDV)関西初上映
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ
ダンテ「神曲」天国篇・最終第33歌、第67節「おお至高の光」から最後までを、ジョルジョ・パッセローネが朗読する。冒頭の黒味にシェルヒェン指揮、エドガー・ヴァレーズ「砂漠」初演ライブ演奏(1954)が流れる。
 
 
協力:アテネ・フランセ文化センター 
  

《料金》入れ替え制
1プログラムあたり 
一般1500円 学生・シニア1200円
会員1200円 会員学生・シニア1000円

《割引》
2プログラム目は200円引き


これまでのプログラム|神戸映画資料館

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