2024年7月13日(土)
連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見 第20回
「だれの言うことも間違ってはいない」世界
──ジャン・ルノワール『ゲームの規則』を読み解く
このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。
14:00〜 上映
『ゲームの規則』
La règle du jeu
(フランス/1939/106分/16mm/英語字幕付き)
監督・脚本:ジャン・ルノワール
撮影:ジャン・バシュレ
出演:マルセル・ダリオ、ジャン・ルノワール、ノラ・グレゴール、ローラン・トゥータン、ポーレット・デュボスト、ミラ・パレリ、オデット・タラザク、ジュリアン・カレット
16:00〜 講座(終了予定17:30)
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)
公開当時は観客からも批評家からも憎悪に近い迎えられ方をし、「呪われた映画」とまで言われた映画『ゲームの規則』は、いまでは、ジャン・ルノワールの最高傑作の一つにとどまらず、映画史のカノンの一つとして不動の地位を獲得している。しかし、今の観客にとって、この映画は、公開当時の観客以上に、分かりづらいものになっていはしないだろうか。『ゲームの規則』は、一見すると、他愛もない恋愛のドタバタを描いただけの作品に見えるが、この映画ほど、歴史的・文化的(さらには政治的な?)コンテクストを把握することなしに、十全に理解することがむづかしい作品もないだろう。今回の講座では、この映画をもう一度きちんと文脈の中に置き直して、そこに描かれる上流社会の風刺や、ちらつく戦争の影、反ユダヤ主義や植民地主義へのほのめかし等々を、丁寧に読み解いてゆく。それと同時に、ディープ・フォーカスと長回しによる撮影、即興演技と綿密な計算、芝居と見世物、あるいは人物同士の鏡像関係といった、他のルノワール作品にも共通する部分も多いスタイルや諸テーマを通して、このちぐはぐで、とらえどころのない、複雑で厄介な作品にできうる限り迫りたいと思う。
井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。訳書に『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」
《参加費》 上映+講座
一般:2000円 ユース(25歳以下):1400円 会員:1700円
予約受付
メールと電話によるご予約を承ります。鑑賞を希望される日時と作品名、お名前、電話番号をお知らせください。予約で満席でなければ、当日に予約無しでもご入場いただけます。
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