神戸映画資料館

PROGRAM プログラム

2024年8月30日(金)〜9月1日(日)

「桃色じかけのフィルム」刊行記念! 桃色映画・パンデミック!! 2024夏

失われつつあるピンク映画、桃色映画のフィルム発掘と伝説の数々を追った、鈴木義昭『桃色じかけのフィルム 失われた映画を探せ』(ちくま文庫)の刊行を記念して、近年の神戸映画資料館の発掘フィルムから状態も良く劣化の始まる前に映写機に掛けておきたい作品を選りすぐり、この夏、一挙大公開。ファンや研究者はもとより、多くの観客に「桃色映画の再発見」を迫ることになるだろう。失われつつあり、失われてしまうかもしれない映画たちに、出会って貰いたい。(鈴木義昭)

8月30日(金)

『情怨の渦』(1964/88分/16mm)
製作:三協 製作:田中利夫
監督:大橋秀夫 原作:木谷健一、川崎一夫 脚本:秋山海蔵 撮影:白山正夫 技闘:今清水一
出演:扇町京子、有川二郎、小高優、泉田洋志
若く美しいミチ(扇町京子)は、海女として活躍していたが家が火災に遭い、流転の人生が始まる。三原葉子らの出演で新東宝のドル箱だった「海女映画」を新東宝最後の肉体女優だった扇町京子を主演に、泉田洋志、岬洋二ら旧新東宝勢が出演し盛り立てる。物語は、浅草のストリップ劇場「海女ショー」の人気者となった扇町とともに、活劇スタイルへ!


『覗かれた個室』(1964/70分/16mm)
製作:三協 製作:田中利男
監督:加戸野五郎 脚本:芳賀呉雄 撮影:須藤登 音楽:平山正夫
出演:扇町京子、水原浩、並木一路、田中淳一
加戸野五郎は、戦前時代劇の名匠石田民三の弟で、東宝から独立した新東宝撮影所で、やはり時代劇を中心に活躍。本作は最後の監督作品。恋焦がれる女がどこかの「トルコ風呂」にいると聞いた男は、サンドイッチマンの仕事の傍ら彼女を探して回るが、行く先々でトラブルが。追いつ追われつ堂々巡りの展開は、サイレント時代のドタバタ喜劇を彷彿させる。


『狂った女神』(1966/72分/16mm)
製作:オリジナル映画 制作企画:千葉実
監督:山本晋也 脚本:五代道夫 撮影:伊東英男 照明:佐藤良造
出演:津崎公平、若尾礼子、山本昌平、浜祐子、水城リカ、左京未知子、木南清、藤純子
山本晋也カントクの知られざる名作が発掘された! 大胆な演出と繊細な描写で展開するブラックユーモアの世界。ある朝、目覚めると知らない女の部屋にいて、隣で女は死んでいた。「おい、これはどういうことなんだ!」異能の名優・津崎公平が叫ぶ。泥酔した夜の記憶を辿っていくと……。アップの多用、スケベ心を刺激する画面、異様な音楽と笑い声。

 

8月31日(土)

『漁色』(1965/84分/16mm)
製作:三協 企画:田中利夫 配給:センチュリー
監督・脚本:沢賢介 撮影:阿蘇功、大熊克昌
出演:桂奈美、佐伯秀男、武藤周作、島靖子、吉田道紀、南たまき、中村幹次郎、扇町京子
荒波を越え、港に着いた漁船。下船した男らは女を求め夜の街へ。「海女には手を出すな」といわれたが、逆効果。若いヒロインで海女役の桂奈美は、60年代中期の人気ピンク女優。美しい肢体で潜って見せる。新東宝で内川清一郎に師事した沢賢介は、新東宝で監督デビューし、62年『新婚の悶え』以後はピンク映画界に定着してコンスタントに長く活躍した。


『京娘の初夜』(1972/55分/16mm)
製作:ワールド映画 総指揮:奈穂俊一 企画:菜穂登
監督:佐々木元 撮影:内田一郎 方言指導:小池正 衣装:京都衣装
出演:小川マリア、杉村久美、富士さゆり、志野原千恵、宝井京子
伝説的な作品『肌のもつれ』(69年)『悶え狂い』(同)などを遺し、業界を去った佐々木元は、9年足らずで120本以上を撮った。小川マリア、志野原千恵ら新人女優を起用して京都祇園を舞台にピンク映画を撮る。果敢に京都ロケを行い、大手文芸作品に負けない骨格と物語を造形して見せる。初夜が大切な売り物になる祇園の少女たちの赤裸々な物語。


『愛欲の果て』(1966/60分/16mm)
製作:葵映画 製作:後藤充弘
監督:西原儀一 原作:後藤充弘 脚本:中原朗(石森史郎) 撮影:池田清二
出演:新高恵子、椙山拳一郎、鶴岡八郎、平山雄三、松井康子、関根純子、松山美代子
青春映画の脚本家として知られる石森史郎は、求められるままに独立プロにも変名で脚本を書いた。本作は長く上映フィルムが喪失したが、16ミリで発見。現存が少ない新高恵子主演作品の貴重な発見だ。老舗温泉ホテルの女将・須崎光子(新高恵子)は夫と死別、三十代の若さで家業を継いだ。忌まわしい過去を秘めた光子の身体に、男たちが襲いかかる。

 

9月1日(日)

『欲情の河』(1967/64分/ブルーレイ上映)
製作:プロダクション鷹
監督:木俣堯喬 撮影:荒井誠 音楽:河原淳 編集:沢本完
出演:水城リカ、団徳麿、上田明美、佐藤洋、湊武雄
関西発エロダクションの草分けとしてプロ鷹を設立。『肉体の河』(65年)で監督デビューした木俣堯喬が、関西時代に撮った少ない現存作品のひとつ。マダガスカルから航海を終え神戸港に帰った船員と高級娼婦(水城リカ)との出会いと恋愛を軸に描く。神戸、大阪、奈良、京都など多様な関西ロケ。怪優・団徳麿が優しい父親役で回想シーンに登場。


『好色坊主・四十八手斬り』(1969/55分/16mm)
製作:上松プロ 監督:東元薫(梅沢薫)
出演:酒巻輝男、長岡丈二、芹沢正、二階堂浩、鶴岡八郎、森誠一郎、千曲守夫、里見孝二、司乱子、林美樹、清水世津、白川和子、一星ケミ
座頭市のそっくりさんとしてテレビ「スターそっくりショー」で評判を呼び、タレントになった酒巻輝男を主演に撮られた異色ピンク映画。圧倒的人気の座頭市のお株を奪うチャンバラシーンはもちろん、本家を上回る好色シーンが見せ場だ。早大中退、若松プロを経て向井寛に師事した梅沢薫監督の出世作となった。若き日の白川和子、一星ケミにも注目。


『幻日』(1966/78分[欠落あり]/35mm)
※「夏目漱石生誕百年記念映画『夢十夜』より(公開告知の文章より)
製作:長島豊次郎 第三プロ 監督・脚本:武智鉄二 撮影:高田昭
出演:柴田恒子、内田良平、川口秀子、津崎公平
2016年夏、映画史を書き換えるべき幻の未公開作品が発見された。『黒い雪』(65年)で猥褻裁判の被告にもなった性の巨匠・武智鉄二の過激な作品群の中で、行方不明とされた『幻日』。能面師の見た淫らな夢の中に、何が隠されているのか。「女は真珠貝で自分の墓を掘り能面師は砂丘に女を埋める」。眠りから覚めた数奇な運命を旅したフィルムを検証。

 

作品解説:鈴木義昭

*『幻日』以外は成人映画

◉ 上映後トーク(3日とも)  ゲスト:鈴木義昭(ルポライター、映画史研究家)

鈴木義昭『桃色じかけのフィルム 失われた映画を探せ』ちくま文庫
日本映画界が観客動員数激減に直面していた昭和30年代後半から、弱小プロダクション製作の成人指定映画が量産される。所謂「ピンク映画」である。世のヒンシュクを買いながらも、熱気溢れる現場からは山本晋也、若松孝二、高橋伴明、和泉聖治など名監督も生まれている。しかし、現在、その作品の多くが失われてしまった。今や忘れ去られた映画人や作品を追う傑作ルポ。 解説・安井喜雄

《料金》 1本あたり(当日2本目以降は200円割引)
一般:1600円 ユース(25歳以下):1200円 会員:1400円
トーク:参加無料(要当日鑑賞チケット半券)
予約受付
メールと電話によるご予約を承ります。鑑賞を希望される日時と作品名、お名前、電話番号をお知らせください。予約で満席でなければ、当日に予約無しでもご入場いただけます。
info@kobe-eiga.net 078-754-8039

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