神戸映画資料館

PROGRAM プログラム

2024年12月28日(土)13:30〜16:30

[貸館]上映と講座:映画と事件、『怒りの孤島』/「社会派・良心作」か、センセーショナリズムか

『怒りの孤島』

戦後の日本映画の「黄金時代」を代表するシナリオライターとして名高い水木洋子は、映画業界に本格的に関わる前から、劇作家、放送作家として活動してきた。実際に起きた人身売買・児童労働・虐待事件の取材に基づき、1954年8月に放送された水木作のラジオドラマ(放送劇)『舵子』を、水木当人が脚色し、久松静児が監督して映画化した『怒りの孤島』は、シナリオライターのみならず、放送作家、ルポルタージュ作家としての水木の資質を伝える作品といえる。
『舵子』はNHKラジオ「婦人の時間」(プロデューサーは小島凡子)枠で放送され、『怒りの孤島』の完成に際しては朝日新聞社が女性向けの試写会を開催したことにみるように、両作とも、特に女性の聴取者及び観客の興味を引くポテンシャルが意識されていた。ロニー・シャイブは1940~50年代のアイダ・ルピノ監督作品を「低予算・ロケーション撮影中心の「社会問題映画」」と総括している(Ronnie Scheib “Ida Lupino: Auteuress,” 1980)。女性の作り手による、女性の受け手を意識したセンセーショナルな「社会問題映画」への共通する志向を、『怒りの孤島』にも見出すことができ、その意味でも、本作は共同研究「日本における女性映画パイオニア」の関心の対象にふさわしい。

神戸映画資料館所蔵の『怒りの孤島』フィルムを上映し、また、木下千花(京都大学教授、「日本における女性映画パイオニア」研究代表者)、荒木裕子(らんたん・そさえて主宰、映画系zine『りんどう』編集長)の発表により、「劇映画のシナリオライター」の枠のみに収まらない水木洋子の創造性を探る。

 
13:30~(終了予定16:30)

前説
「舵子事件」と「日映事件」
鷲谷花
(大阪国際児童文学振興財団特別専門員)

映画上映
『怒りの孤島』

(日映-松竹/1958/90分/16mm)*経年劣化により著しく褪色しています
監督:久松静児 脚本:水木洋子 製作:曾我正史 撮影:木塚誠一 音楽:芥川也寸志 美術:平川透徹
出演:鈴木和夫、手塚茂雄、織田政雄、岸旗江、二木てるみ

発表
『舵子』から『怒りの孤島』へ
木下千花
(京都大学教授、「日本における女性映画パイオニア」研究代表者)

脚本家・水木洋子を知りたくて
荒木裕子
(らんたん・そさえて主宰、映画系zine『りんどう』編集長)

全体討議

《参加費》 無料(要予約)
予約受付
メールと電話によるご予約を承ります。参加を希望される日時と作品名、お名前、電話番号をお知らせください。
info@kobe-eiga.net 078-754-8039

主催:「日本における女性映画パイオニア:フェミニスト映画史の国際的研究基盤形成」(JSPS科研費番号20H01200)

PageTop