神戸映画資料館

PROGRAM プログラム

2025年3月28日(金)

[貸館]少女趣味+メロドラマ——吉屋信子、水木洋子、女同士の絆

「日本映画における女性パイオニア」プロジェクト上映会

『福壽草』国立映画アーカイブ所蔵

戦前からポスト占領期にかけて圧倒的な人気を誇った吉屋信子の小説を原作とした『福壽草』(川手二郎監督、新興キネマ、1935)、『母の曲』(総集編、山本薩夫監督、東宝、1937)、水木洋子のオリジナル脚本による『せきれいの曲』(豊田四郎監督、東宝、1950)は、上映機会が少なく、現在のところ配信やDVDでの視聴もできません。さらに、「少女趣味」「メロドラマ」として映画批評のメインストリームからはほぼ無視され、監督の作家論の文脈で取り上げられることもありませんでした。本イベントでは、これら3作を国立映画アーカイブから蔵出し上映し、「日本映画における女性パイオニア」プロジェクトメンバーによる座談会・質疑応答を行います。原作者、脚本家、俳優、スクリプターなどの役割を務めた女性映画人のクリエイティブな貢献、女性同士の親密さなど、忘れられた作品の今日的な可能性に光を当て、「少女趣味」「メロドラマ」の力の再評価を目指します。

【スケジュール】
13:00 ご挨拶+『福壽草』上映(〜14:10)
14:30 『母の曲』上映(〜16:01)
16:20 『せきれいの曲』上映(〜17:59)
18:20 座談会(~19:30)

 

【上映作品】
『福壽草』(1935年、新興キネマ、67分)作品提供:国立映画アーカイブ
監督:川手二郎 原作:吉屋信子 脚色:川手二郎、荻野賴三 撮影:中井朝一
配光:横田正雄 舞台設計:久光五郎
吉屋信子の『花物語』の一篇である同名少女小説を原作に、女学生・薫(江川ほなみ)が兄(岡崎光彦)のもとに嫁いできた美代子(久松美津江)との間に育む濃やかな愛情を田園風景のなかに描く。川手の大胆なデクパージュと中井朝一の撮影も素晴らしい。サウンド版として作られたが現存プリントはサイレント。

『母の曲』(1937年、東宝、91分)作品提供:国立映画アーカイブ
監督:山本薩夫 原作:吉屋信子 撮影:友成達雄 編集:今泉善珠 音楽:伊藤昇
録音:片岡造 製作主任:澤田浩 装置:中古智
原作はオリーヴ・ヒギンズ・プラウティの小説『ステラ・ダラス』(1922年)とその1回目の映画化(ヘンリ−・キング監督、1925年)を吉屋が翻案して『婦人倶楽部』に連載した同名小説。労働者階級出身の母の自己犠牲を描き母物映画の起源のひとつとも言われるが、ヒロインお稲(英百合子)、娘・桂子(原節子)、元夫の現妻・薫(入江たか子)の愛情の物語と読むことも可能だ。現存するのは総集編のみ。

せきれいの曲』(1951年、東宝、99分)作品提供:国立映画アーカイブ
監督:豊田四郎 脚本:水木洋子 製作:加藤譲、板谷良一 製作主任:森本朴
撮影:三浦光雄 照明:石川緑郎 美術:北川恵司 編集:坂東良治 音楽:大木正夫 録音:藤好昌生
水木洋子のオリジナル脚本は『母の曲』をフェミニズムと戦後民主主義によって換骨奪胎し、シングルマザーのソプラノ歌手ユキ(轟夕起子)が娘ゆり(宝塚所属時代の有馬稲子)と愛に満ちた家庭を育みつつ、利己的な作曲家で元夫の島田(山村聰)や軍国主義の抑圧にも負けず自立して芸術の道をゆくさまを描く。名匠・三浦光雄の撮影も冴える。

 

【座談会】
登壇者:菅野優香、木下千花、鷲谷花

その他の「日本映画における女性パイオニア」プロジェクトメンバーもディスカッションに参加します。
メンバーについて

 

本企画はJSPS科研費共同研究「日本における女性映画パイオニア:フェミニスト映画史の国際的研究基盤形成」(20H01200)の助成を受けています。

企画内容についてのお問い合わせ

《参加費》 無料(要予約)
予約受付
メールと電話によるご予約を承ります。参加を希望される日時と作品名、お名前、電話番号をお知らせください。
info@kobe-eiga.net 078-754-8039

PageTop