2026年6月28日(日)
[貸館]ツネモト×4 人のヒロイン プラスワン

大阪で制作された長編映画が、13年ぶりに関西へ
再編集版『蒼白者 A Pale Woman』上映
2012年に大阪で撮影し、2013年に関西で上映された長編映画『蒼白者 A Pale Woman』が、再編集版として13年ぶりに関西で上映されます。
本上映は、監督・常本琢招がこれまで描いてきたヒロイン像に焦点を当て、過去作を現在の視点で再構成する上映企画「ツネモト×4人のヒロイン」の特別プログラムとして実施されます。
同企画は去年と今年、東京で上映され、満席の好評をいただくとともに、過去作を「現在の文脈で見直す試み」として複数の媒体で紹介されました。
満を持しての関西上映では、その流れの中で、2012年に全編大阪ロケで制作されながら、13年の公開以来13年間封印されていた、『蒼白者 A Pale Woman』が重要な位置づけの一本として組み込まれています。『蒼白者』は初公開時、全体の構成に関して拭えない違和感が残っていましたが、当時は明確な解決策を見出すことができませんでした。2025年になってようやくその答えに辿り着き、シーンの順序を見直す形で全体構成を再設計。13年越しの再編集によって完成した新たなバージョンが、今回上映されるものです。
【上映作品】
『みつかるまで』
(2002年/16mm 45分)※16mmフィルムでの上映
監督:常本琢招 脚本:藤田一朗 撮影:志賀葉一
【cast】板谷由夏 水橋研二 奈良坂篤 諏訪太朗
【ストーリー】
かつて持っていた夢が挫折し、漂うように生きる女性の話。
「ぽたん、と水滴が落ちて波紋が広がる……。そんなふうに世界が震えて生き生きしてくる特別な瞬間を表現したい」。
高い理想を抱いて絵を描いてきた画家・芳美(板谷由夏)は挫折して自分を見失い、今は電車で盗みを働く日々を送っていた。
そんな彼女の前に現れた謎の青年・哲史(水橋研二)。「夜の町を走って逃げるあんたの姿、カッコよかった。流れ星みたいで」。
哲史は人懐っこい笑みを浮かべて芳美につきまといだすが…
水橋研二は気弱な笑みを浮かべ、女の肩にもたれかかり目を閉じる。
板谷由夏は挑戦的な視線を世界に向けてまっすぐ投げかける。
男らしさ・女らしさから脱した演技を通して、新たな愛の形を探る作品。
【解説】
後半、モノレ一ルに板谷•水橋の二人が乗るシ一ンがあるが、途方に暮れた水橋研二は思わず板谷由夏の肩に頭を預けてもたれかかる。その仕草は何とも少女っぽいものだ。しかし、二人の間に性的な要素がないために、ごく自然な仕草に見えてしまう。そして、この世界の中に居場所をみつけらない者たちが、つかの間、幻の居場所を見出したかのような歓びとも悲しみともつかない複雑な感情をにじませるのである。エッチVシネの枠内にいたために見えづらかったが、常本琢招の根っこにあるのは、誰かと関わり合いたいという無垢な欲望なのだろう。
〈井川耕一郎/映画作家・脚本家〉
『蜘蛛の国の女王』
(2009年撮影 2023年再編集 53分・モノクロ)
監督・脚本:常本琢招 撮影・照明:志賀葉一
【cast】久遠さやか(『深呼吸の必要』)
西山朱子(『INAZUMA稲妻』)
粕谷美枝 佐藤五郎 佐藤幹雄 山崎和如 クマガイコウキ
【ストーリー】
気鋭の女性建築家・映子は、憧れだった先輩女性建築家・美子と再会した。
今は職もなく生きている美子を、自分の事務所に雇う映子。そこから、美子の仕掛けた恐るべき罠が展開していく・・・
【解説】
「見ていたのは主人公の心の中だった」という『カリガリ博士』の系譜に連なる映画である。いや「見ていた」ではない、心の中を「見ている」ことは、スキャンダルで憧れの上司が失踪する導入から示される。ところでこのスキャンダルは現実なのだろうか? 再び現れてヒロインを追い詰める上司は? 心の中を見ている以上、ここに信頼できる語り手はいるはずもなく、すべてのシーンが消失点であるような異様な劇が展開してゆく。翌年公開された『ブラック・スワン』よりもはるかに過激だ。
〈高橋洋/脚本家・映画監督〉
『アナボウ』
(2010年/20分 ゆうばりファンタ2011オフシアターコンペティション出品)
監督:常本琢招 脚本:香川まさひと(「羊の木」脚本 「監察医 朝顔」「前科者」原作)
【cast】吉谷彩子(「ビズリーチ」CM 『グランメゾン・パリ』) 池永亜美 金井隆 中原翔子
【ストーリー】
「アナボウ部」に青春を賭けているヒロイン・一子は、最近なぜかイライラしている。
一子の親友、「みく」がまるでストーカーのような同級生の男子に付け回されていること。もうひとつは、一子の指導が厳しすぎるため、アナボウ部の生徒が一子を残して全員退部してしまったからだ。
さらに、思春期特有のイライラ感も加わって、一子の不機嫌は増していくばかり。
はたして、この精神的危機から、一子はどうやって脱出するのか?そして一子は、「アナボウ」を通してどのような精神的成長を経験するのだろうか?
【解説】
出来上がった作品を見てとても驚いた。自分が監督したらこうは撮らないだろうものだった。お笑いの感覚の違いか、性に対する考え方の差か、運動(アクション)への興味の異なりか、あるいは監督が楽しい青春時代を過ごしたせいなのか。今『穴棒』(作画・ 月島冬二)という同じ設定の作品(ビッグコミックオリジナル増刊、あるいはネットのビッコミで)を作っている。以前と違い利他がテーマになっている。今、三話目の原作を書いているのだが、一、二話目の脚本に疑問を感じてしまい、困っているところだ。た ぶんそれはメジャーとマイナーについての問題かもしれない。監督と私の資質もそこにある気がする。
※『穴棒』は完結、現在単行本発売中(小学館)
〈香川まさひと/脚本家・漫画原作者(本作脚本)〉
『何もない部屋』
(2023年/27分 新作)
監督・脚本:常本琢招
原作:望月明美 制作:佐倉萌 撮影:前川和久
【cast】川添野愛(『Chime』) 木原勝利(『東京遭難』) 春風亭伝枝 奈良坂篤
【ストーリー】
銀座のホステス(川添野愛)に惚れた男(木原勝利)が、別居中の妻と二兎を追おうと思ったが、結局振り回されて、自分で自分を壊してしまった、という話。
【解説】
日本の昔話、民話には「異類婚譚」が多い。『鶴女房』『蛤女房』怪談なら『雪女』。『何もない部屋』もその系譜といえる。ピンク映画やエッチVシネで多くの傑作を生んだ常本琢招は、ジャンルムービー(大衆娯楽)の根幹にある昔話や民話の骨法に沿った映画の語り部だ。本作は滑稽話の「馬鹿されもの」でもある。ヒロインの儚さとしたたかさ。彼女に翻弄される男の哀れさと可笑しさ。「異類婚譚」は総じて悲恋に終わるが、常本民話はあっけらかんとした楽しさに満ちている。ヒロイン初め、登場人物達は皆、昔話の妖怪みたいな不可思議な魅力を纏っている。もし銀座のナイトクラブで鶴女房と浦島太郎が出会ったら、こんなお話が生まれるかもしれない。
〈にいやなおゆき/アニメーション作家〉
『蒼白者 A Pale Woman』
(2013年/87分 ※新編集版 2012年度CO2助成作品)
原案・監督:常本琢招 脚本:木田紀生 撮影:福本淳 照明:木村匡博 音楽:竹内一弘 録音:光地拓郎 美術:宇山隆之 助監督:黒川幸則 制作進行:加藤綾佳
【cast】キム・コッビ、忍成修吾、木村啓介、長宗我部陽子、宮田亜紀、木原勝利、大山果、渡辺護、中川安奈
【ストーリー】
韓国人の若い娘・キムが大阪に戻ってきた。幼いころ一緒に育った最愛の男・シュウを暗黒世界から救い出すために。彼を救うため、危険な計画をためらうことなく進めていくキム。しかしその行く手には、大きな試練が待ち受けていた…
【解説】
2011年『アナボウ』出品のゆうばりファンタスティック映画祭で、キム・コッビ氏と出会った常本監督が、「モンスターのような強烈さを持って自分が手に入れたい“愛”を追求していく女性を描きたい」とのアイデアをこの人だったら演じられると確信して作った、メロドラマとノワールのハイブリッド。
2013年の初公開時、構成としてどうしても引っかかる部分があるも解決策を見出せず、2025年、ようやく正解を発見し、再編集したバージョンでの上映。
監督登壇トーク
ゲスト:西田博至(批評家・『映画の閾穴』著者)
■上映スケジュール
13:30〜14:45 『アナボウ』『蜘蛛の国の女王』(Blu-ray)
15:05〜16:20 『何もない部屋』(Blu-ray) 『みつかるまで』(16mm)
16:40〜18:10 『蒼白者 A Pale Woman』(Blu-ray)
18:10〜18:40 トーク
《料金》
1プログラム1000円 『蒼白者』のみ1500円 全プログラム通し券3000円
主催:常本琢招 問い合わせ
