2022年9月10日(土)・11日(日)
知られざるドキュメンタリスト ペーター・ネストラー
ドイツ出身だがスウェーデンで活動するペーター・ネストラーは、ニュージャーマンシネマの一員と見なされることなく、現在でもさほど知名度は高くない。だがネストラー監督が半世紀以上に渡って撮り続けてきたドキュメンタリー映画はナレーションの多用など独自の美学を確立し、内容においてもささやかな人間へのまなざしや反ファシズムの理念に貫かれている。ネストラーが戦後ドイツのもっとも重要な映画作家の一人であることは疑う余地がない。今回は彼のキャリアを代表する2本の長編作品を紹介する。
渋谷哲也(企画協力/ドイツ映画研究)
「北の冠」
Die Nordkalotte
(1991/90分/ブルーレイ)
監督・脚本:ペーター・ネストラー
撮影:マンフレート・シュミット
スカンジナヴィア半島の北端一帯は「北の冠(ノールカロッテン)」と呼ばれ独自の植生を誇っていた。映画はこの地域の歴史ある文化を捉えるとともに、その豊かな土壌が産業化の波によって次第に浸食され、1986年のチェルノブイリ原発事故では甚大な放射能汚染を被ったことを伝える。地球環境をめぐる普遍的な問いを投げかける本作はストローブ=ユイレに捧げられている。
「良き隣人の変節」
Die Verwandlung des guten Nachbarn
(2002/84分/ブルーレイ)
脚本・監督・製作:ペーター・ネストラー
撮影:ペーター・ネストラー、ライナー・コマース
1943年、ナチスドイツにより15歳でポーランド東部のソビブル絶滅収容所に送られたトーマス・ブラットは、ソビブルの蜂起を体験して生き延びた53人のうちの一人である。彼はカメラと共に収容所跡地とかつての逃亡経路を辿る。その穏やかな口調からユダヤ人迫害の苛烈な現実が明らかになる。クロード・ランズマンによる『ソビブル、1943年10月14日午後4時』(2001)の対極をなす作品。
9月10日(土) 参加無料(要当日鑑賞チケット半券)
レクチャー 講師:渋谷哲也(ドイツ映画研究/日本大学文理学部教授)
《料金》
一般:1500円 ユース(25歳以下):1100円 会員:1300円
《割引》当日2本目は200円引き
予約受付
メールと電話によるご予約を承ります。鑑賞を希望される日時と作品名、お名前、電話番号をお知らせください。予約で満席でなければ、当日に予約無しでもご入場いただけます。
info@kobe-eiga.net 078-754-8039
協力:アテネ・フランセ文化センター
企画協力・解説:渋谷哲也
文化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業