第1回神戸ドキュメンタリー映画祭
《社会福祉への眼差し》柳澤壽男監督特集上映

2009年9月19日(土)〜23日(水・祝)、26日(土)・27日(日) 

「地域福祉」をテーマにした作品にこだわり続けた柳澤壽男監督作品を特集上映します。
自主製作の五作品『夜明け前の子どもたち』、『ぼくのなかの夜と朝』、『甘えることは許されない』、『そっちやない、こっちや コミュニティケアへの道』、『風とゆききし』を連続して見られる貴重な機会です。
一作ごとの映画作りが生み出す関係性やその動きに呼応して変化していくドキュメンタリー作家、柳澤壽男の世界を感じることができるでしょう。

厚い雲を切り開く
  柳澤監督は膨大な作品群を持ちながら、それを話すことをよしともせず、50歳を前にすっかり人生をかえてしまった人でした。私は最後の二作『そっちやない、こっちや』と『風とゆききし』に助手としてつかせてもらいました。一作一作、悩み、あらたな文体を思考し、映画の現場の人々とラッシュを共に見て話し込む監督でした。その狭間から、作品が隆起してきました。柳澤作品は、人の限りない哀しみが映りこみながら、厚い雲を切り裂いて降りてくる陽光のように、人間存在そのもののよろこびが湧きあがってくるようです。
   小林茂(映画監督)
人間の可変性を信じて
  柳澤壽男の晩年の長篇五本を見ると、映画の孕む感情の変容が強い力で迫ってくる。写っているのは障害者や難病患者の日々の姿だが、画面には動きがあふれつづけ、その積み重ねのなか、感情が析出する。そのあり方が、五本において、ゆっくりと確実に変動してゆくのである。柳澤壽男が人間の可変性を信じていることは五本を通して変わらず、だから、画面に彼ら彼女らの動きが充満する。そこから感情が出てくるのは当然として、明らかに一本一本異なっており、その微妙な違いが面白い。柳澤壽男自身、そのようにして撮りつづけ、おそらく三本目の『甘えることは許されない』を転換点に、さらに豊かな映画世界へ向かったと思われる。
   山根貞男(映画評論家)
柳澤壽男の映画 一歩先を歩みつづける<直前の過去>
  見終わったあと、登場人物の〈それから〉が気になってしかたない。これが、柳澤壽男作品の特徴だろう。あのひとたちは、エンドマークのあと、どうなっていったのだろうか。人物たちのそれからに思いを馳せたくなるのは、福祉ドキュメンタリーと呼ばれる五作品ばかりではなく、たとえば『富士山頂観測所』(1948)の気象部員にしても、東京電力のPR映画『野を越え山を越え』(1955)に出てくる水力発電所の家族にしても同様だ。フィクションとドキュメンタリーのちがいを問わず、登場人物の事後が気になる映画はあるが、柳澤作品ではことに気になる。まるで映画は、被写体の未来を想像するための助走にすぎないかのようだ。特徴のもうひとつは、映されている映像が〈現在ただいま〉ではなく、〈直前の過去〉に見えるということだ。おそらく、ふたつはひとつにつながっている。
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   鈴木一誌(グラフィックデザイナー)

「夜明け前の子どもたち」
(1968/120分/白黒/16mm[原版35mm])
監督:柳澤壽男
企画:財団法人大木会 心身障害者福祉問題総合研究所
製作:国際短篇映画社
脚本:秋浜悟史 撮影:瀬川順一 音楽構成:大野松雄、小杉武久
音楽:三木稔 録音:片山幹男 照明:久米成男
編集:高橋春子、加納宗子 解説:植田譲
1963年に開設された滋賀県野洲町の重症心身障害児療育施設「びわこ学園」。手探りの養育が始まったばかりの学園には、元気で無邪気な子どもたちと、彼らを支えるために苦悩し格闘する職員たちの姿があった。 医療と教育の両面から子どもたちに働きかけようという「びわこ学園」の試みの記録で、障害者の記録映画に取り組んだ柳澤監督の原点ともいえる作品。亀井文夫監督『戦ふ兵隊』や羽田澄子監督『薄墨の桜』などの名カメラマン瀬川順一による被写体の生き生きとした描写とともに、それまでのPR映画には見られない柳澤演出の初々しさが感じられる。

「ぼくのなかの夜と朝」
(1971年/100分/カラー/16mm)
製作:社団法人西多賀ベッドスクール後援会 製作:今野正己、浮田洋一
監督:柳澤壽男 脚本構成:大沼鉄郎 撮影:石井尋成、秋山洋、長田勇
編集:高橋春子 音楽:松村禎三 録音:大橋鉄矢
解説:伊藤惣一 監修:近藤文雄
仙台市にある国立療養所西多賀病院(現・独立行政法人国立病院機構西多賀病院)は1947年に結核療養所として開設され、進行性筋萎縮症(筋ジストロフィー)の治療を全国に先駆けて取り組んできたことでも知られる。この映画は1969年の秋から1970年の春にかけ、西多賀病院のベッドスクールで生活する130人の筋ジストロフィーに冒された子供たちを記録したものである。病弱児童による詩を字幕で挿入しながら、不治の病に冒された子供たちの生きる意味や学ぶ意味を映画を通して考える。

「甘えることは許されない」
(1975/105分/カラー/16mm)
製作・監督:柳澤壽男 脚本:厚木たか
撮影:坂本力康 音楽・録音:菊地進平
ナレーター:久米明 編集:青木千恵 監修:近藤文雄
1966年に開園した仙台市の重度身体障害者収容授産施設・西多賀ワークキャンパス。ワークキャンパスとは「働きながら学ぶ園」の意味を持ち、障害者が就労を柱にしつつ充実した生活の場を築くところで、この映画は1973年10月から1975 年5月にかけて撮影された。柳澤やスタッフは車椅子や松葉杖を頼りに働く人たちとともに、ひたすらに「働くとは一体どういうことか」を考えながら記録した。働くことに生き甲斐を見いだす障害者たちの姿を通し、私たちはもっと深く障害を受けている人の身になって物事を考えるように力を尽くさなければならないと実感する。

「そっちやない、こっちや
コミュニティケアへの道」

(1982/113分/カラー/16mm)
企画:伊藤方文
製作:記録映画 コミュニティー・ケアへの道 製作委員会
構成監督:柳澤壽男 題字:沙羅千春 撮影:塩瀬申幸
スチール:小林茂 録音:小林賢 解説:伊藤惣一
作詩:森永都子 作曲:冬木透
愛知県知多市の療育グループの記録で、障害者にとってのコミュニティ・ケア=地域福祉とは何かを考える。知的な発達に障害のある方の家族の会「知多市手をつなぐ親の会」などの協力の下、成人となった知的障害者とその親たちの交流、指導員たちと一緒に考え設計した「家」づくりの困難、借り受けた宿舎を改造し共同作業所「ポパイノイエ」と名付けるコミュニティを完成させる様子などを丹念に記録する。「撮りながら考え、考えながら撮る」原則を貫いて人々を感動させるドキュメンタリーを2年の歳月をかけて完成した。山路ふみ子文化財団福祉映画賞受賞。

「風とゆききし」
(1989年/154分/カラー/16mm)
製作:財団法人 盛岡市民福祉バンク 製作・監督:柳澤壽男
撮影:瀬川順一、瀬川浩、柳田義和
助監督・スチール:小林茂
音響:村上文朗、長島久雄 音楽プロデューサー:斉藤晃
音楽ディレクター:八木良弘 作曲:木村政巳
録音:奥井義哉 解説:伊藤惣一
盛岡市民福祉バンクは1975年にリサイクルと在宅福祉をドッキングさせた障害者福祉運動を開始し、1979年に財団法人化、1981年に盛岡市浅岸に付属農場いきいき牧場を開設して農耕型の福祉活動を始める。この牧場を中心に4年がかりで撮影した柳澤監督最後のドキュメンタリー映画。身障者がより自由に生き生きと生きるにはどうすればいいのか、福祉バンクの職員、所員、ボランティア、そして障害者の日常からさまざまな問題点が浮かび上がってくる。日本映画ペンクラブ推薦優秀作品。

参考上映
「どこかで春が」
(1959年/65分/白黒/16mm)
製作:新映画ぷろだくしょん、合資会社奥商会
監督:柳澤壽男 製作:米山彊 原作:片岡司郎 脚本:厚木たか
撮影:瀬川浩 照明:堀源吉 演出助手:間宮則夫、小島義史、馬場勇
音楽:草川啓 効果:大野松雄 解説:宇野重吉
出演:今村正一、市口淑子、真砂純忠、新居忠、東野久雄、小林一三
大阪近郊の小都市(映像では布施)にある中学校(映像では河内中学校)の演劇部は北海道冷害地救援のための生活劇の練習に励んでいた。中には新聞配達をしたり、自宅で封筒貼りなどのアルバイトをしながら通学する貧しい家庭の子供たちも多く、次第に欠席が多くなっていった。演劇部は演劇だけでなく幻灯会活動を始め、アリババ、彦市とんちばなし、原水爆などのスライドを街頭で上映し街を明るくするために頑張っていた。演劇部が優等生づらして気にくわないと暴力を振るう小泉君と、家庭が貧しくても頑張る演劇部のケイコさんの友情物語を軸に、貧乏に負けず生き抜く子供たちの生き様を描く児童向き劇映画。昭和30年代の布施の風景や大阪弁の会話が懐かしい。

参考無料上映
「神戸っ子」
(1960年/54分/カラー/16mm)
監督・脚本:柳澤寿男
製作:三井芸術プロダクション
作品提供:株式会社神戸製鋼所
車好きな卒業間近の神戸大学生、妹が洋裁店をしながら中学生の弟を養っている三人暮らしの一家。手作りのエンジンの話を中心に据え、特殊鋼をPRした劇映画。柳澤夫人の磯田充子さんが女優時代に京知子の芸名で出演している。

NEW 参考無料上映
「車大工」
(1976年/38分/カラー/16mm)
企画:京都府 製作:小坂プロ
監督:柳澤壽男 脚本:杉本浩平 撮影:山根和佳
作品提供:京都府

NEW 参考無料上映
「古典雅楽器 雲の上の音がたちのぼる」
(1977年/51分/カラー/16mm)
企画:京都府 製作:小坂プロ
監督:柳澤壽男 脚本:杉本浩平 撮影:塩瀬申幸
作品提供:京都府

柳澤壽男(1916〜1999)

1916年群馬県生まれ。松竹京都下加茂撮影所の助監督から出発。劇映画『安来ばやし』(40年)を監督するが、『小林一茶』(41年/亀井文夫)に感銘を受け、記録映画を志す。戦後の混乱から高度成長に至る時期、日本映画社、岩波映画など多くの短編映画各社を渡り歩いて記録映画やPR映画を多数手掛けた。『富士山頂観測所』(48年)や『海に生きる』(49年)などで高い評価を得るが、PR映画全盛の時代に作家が望むような仕事は困難となり企業の宣伝に加担する仕事に見切りを付けることにした。自主製作を決意し、68年の『夜明け前の子どもたち』から89年の『風とゆききし』まで、計5本の長編ドキュメンタリー映画に取り組んだ。障害者の生活とその苦悩を通 して人間が自由に生きることとは何かを問う作品群は、山形国際ドキュメンタリー映画祭や各地の福祉映画祭などで高い評価を得るなど、今も観客に感動を与える命の長い映画となっている。晩年は看護婦をテーマとした新作『ナースキャップ』に取り組んでいたが、実現しないまま1999年6月16日83歳にて急逝。

《料金》入れ替え制
1回券
一般:1300円 学生・シニア・障がい者:1000円
会員一般:1000円 会員学生・シニア・障がい者:900円

3回券
2800円(非会員共通) 2600円(会員共通)

前売り 1回券(共通):1000円

〈前売りチケットの取り扱い〉
神戸映画資料館、プラネット・プラス・ワン、
全国のチケットぴあ(Pコード461-146)ほかで発売中

主催:神戸プラネット(神戸映画資料館)
後援:長田区役所 助成:アサヒビール芸術文化財団
協力:新長田まちづくり株式会社、株式会社神戸製鋼所、京都府

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。