第2回神戸ドキュメンタリー映画祭
記録映画に生きる 土本典昭の軌跡

2010年9月18日(土)〜26日(日)

「水俣」シリーズなどを通して世界に大きな衝撃を与えた、日本ドキュメンタリー界を代表する監督・土本典昭(1928-2008)。第2回神戸ドキュメンタリー映画祭では、土本典昭の初期作品から晩年にいたる24作品を上映し、偉大なる映画作家の歩みを回顧します。
あわせて、土本と同時代の仲間たちを招いたトークイベント、ゆかりの映画人を招いた座談会も開き、ゲストが関係する作品を参考上映します。
いま生きているものの記録として映画を撮り続けた土本は「いつもそこには考えることの快楽があった」と述べています。現実を見て、魅了されて、考え続けた土本典昭の作品は、いつまでも生き続けており、あらゆるものに開かれて、われわれを魅了し続けています。

2010年9月19日(日)ゲストトーク
大津幸四郎
(監督/撮影監督)、小林茂(監督/撮影監督) 聞き手:山根貞男(映画評論家)

2010年9月20日(月・祝)ゲストトーク
松本俊夫
(映像作家) 聞き手:山根貞男

2010年9月25日(土)座談会
土本基子
(土本典昭夫人)、伏屋博雄(プロデューサー)、水野祥子(映画研究者)、安井喜雄(神戸映画資料館館長)
参考上映「天皇即位の日の記録」(1990/約10分/16mm)

《料金》無料(要・当日の上映会チケット)

カフェ・ロビースペース
2009年、東京国立近代美術館フィルムセンター展示室で開催された展覧会「ドキュメンタリー作家 土本典昭」の記録映像を、神戸ドキュメンタリー映画祭会期中ご覧いただけます。
制作:映画同人シネ・アソシエ

2010年9月18日(土)13:00
「ドキュメント路上」
(1964/54分/35mm/FC所蔵ニュープリント)
東洋シネマ 撮影:鈴木達夫
高度経済成長の只中、都市整備の工事が急ピッチで進んでいた東京は日々交通戦争の状態であった。タクシー運転手を主人公に、違反や危険なしには働けない労働環境、そして交通事故が必然的に起こる実情を描き出す。警視庁の交通PR映画として作られたが、「映画青年の遊びの映画」と一蹴され、活用されずお蔵入りした作品。

2010年9月18日(土)14:15
「留学生チュア スイ リン」
(1965/51分/16mm)
藤プロ 撮影:瀬川順一
文部省国費留学生として千葉大に学ぶチュア・スイ・リン君は、本国の英領マラヤがマレーシア連邦として独立することを知り、イギリスの特殊権益が続く限り本当の独立はないとして抗議の声を上げていた。本国は即刻チュア君に帰国命令を出し、文部省も彼の国費留学生としての身分を剥奪、大学も彼を除籍にした。帰国すれば投獄となるチュア君は、抗議行動と裁判に起ち上がる。

2010年9月18日(土)15:30 / 24日(金)13:00
「パルチザン前史」
(1969/120分/16mm)
小川プロダクション 撮影:大津幸四郎、一之瀬正史
関西小川プロが製作参加した作品。京都大学全共闘のノンセクト学生を組織する京都大学助手の滝田修の革命運動を追う。軍事訓練の様子のほか、家庭を持ち、予備校の教壇に立ちながら大学解体を唱えることの矛盾について率直に語る滝田の姿。60年代末の学生運動の空気を伝える歴史的作品。

2010年9月19日(日)13:00 / 25日(土)16:20
「水俣 患者さんとその世界」
(1971/完全版167分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
東プロダクション 撮影:大津幸四郎
1968年、政府は水俣病を公害病として認定し、原因はチッソの工場廃水との見解を示した。チッソを相手に裁判を起した29世帯を中心に潜在患者の発掘の過程までを描いた記録映画の記念碑的名作。大阪でのチッソ株主総会における患者の怒りの爆発で、この映画は劇的なピークをむかえる。土本監督の水俣第1作で、これを契機に水俣病が世界に知られることになった。

2010年9月20日(月・祝)16:20
「水俣一揆 一生を問う人々」
(1973/108分/16mm)
青林舎 撮影:大津幸四郎、高岩仁
1973年3月20日、熊本地裁は患者の訴えを認め、チッソに慰謝料の支払いを命じた。その後、ひきつづきチッソ本社で直接交渉がくりひろげられる。「死ぬまで面倒をみてくれろ」と誓約書への署名を求める患者とつっぱねる会社側の対立の様子が、初めて同時録音で記録された。

2010年9月22日(水)13:00
「医学としての水俣病 第一部 資料・証言篇」
(1974/82分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
青林舎 撮影:大津幸四郎
1956年、50名余の「奇病」患者発見から始まる医学者チームの研究と記録をたどる3部作の第1部。水俣病の原因を膨大な研究映像を用いて病理学的に解明していく。さらに、水俣病が「社会病」でもあることを患者の医療補償を求める闘いの歴史によって示し、今日のヘドロ未処理の現状までを描いている。

2010年9月22日(水)14:40
「医学としての水俣病 第二部 病理・病像篇」
(1974/103分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
青林舎 撮影:大津幸四郎
有機水銀がいかに人体に侵入するかを、病理解剖などを用いて示す。長年、新潟水俣病を追跡してきた新潟大学の調査が熊本の水俣病研究を補強。不知火海漁民の食生活に対する警告を発しつつ、水俣病患者認定のための患者負担など、医学のかかえる矛盾を明らかにする。

2010年9月22日(水)16:40
「医学としての水俣病 第三部 臨床・疫学篇」
(1975/91分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
青林舎 撮影:大津幸四郎
現地での数十年間の臨床体験をもつ精神神経学者の活動と意見を軸に、今日の水俣病の臨床上の問題点と疫学的側面が描かれる。ここでは医学的判断がつかないとされる例、水俣病の認定を却下された例を取り上げ、水俣病研究が第二段階にさしかかったことを示唆する。

2010年9月21日(火)13:00
「不知火海」
(1975/153分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
青林舎 撮影:大津幸四郎
水俣が悲劇の土地として滅びてはならない、「ここで生き続ける人がある限り、ここは甦るのだ」との思いで制作された作品。「脳を手術したら治らないか」と初めて治療の可能性を尋ねる胎児性の少女に答えることのできない医師。水俣湾の対岸の島には、いまだ救済の手が届かない漁師たちの暮らしがあった。

2010年9月20日(月・祝)13:00
「しばられた手の祈り」
(1977/40分/スライド)火種プロダクション
共同構成:前田勝弘、小池征人
自主制作のための火種工房を主宰する富山妙子は、新しい芸術運動として、詩と絵と音楽によるスライドを製作。これは政治犯釈放を訴えるために、金芝河の原作をもとに土本監督が構成したもの。音楽を高橋悠治が担当。

2010年9月21日(火)16:00
「わが街わが青春 石川さゆり水俣熱唱」
(1978/43分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
青林舎 撮影:一之瀬正史
水俣病の公式発見から20年、胎児性水俣病の患者たちも20歳を迎えた。「何かデッカイことをやりたい!」一人の青年が石川さゆりショーを考えついた。身体の痛みをひと時忘れ、一人前の大人として仕事を果たそうと奮闘する若い患者たち。

2010年9月23日(木・祝)13:00
「偲ぶ・中野重治 葬儀・告別式の記録 1979年9月8日」
(1979/55分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
中野重治を偲ぶ映画人有志の会
プロレタリア文学作家、中野重治の葬儀と告別式の記録。知人、友人が思い出を語り、会葬者の流れに代表作「雨の降る品川駅」「わたしは嘆かずにはいられない」の朗読が重ねられる。

2010年9月26日(日)15:20
「海とお月さまたち」
(1980/50分/16mm)
日本記録映画研究所 撮影:瀬川順一
海の潮の流れを支配する月と、その潮の流れをよんで漁をする漁師たち、そして不知火海に生きる様々な魚たちを詩的に描いた児童向き映像ファンタジー。

2010年9月21日(火)17:00
「水俣の図 物語」
(1981/111分/16mm)
青林舎 撮影:瀬川順一、一之瀬正史
丸木位里、丸木俊夫妻が、巨大壁画「水俣の図」の制作に取り組む。彼らを絵に向かわせていく不知火海の美しさと、裏腹な人間の受難の問題。瀬川順一のキャメラ、武満徹の音楽、石牟礼道子による詩が「絵の記録映画」を構成する。

2010年9月23日(木・祝)14:10
「原発切抜帖」
(1982/45分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
青林舎 撮影:渡辺重治
世界唯一の原爆被爆体験国から原子力大国へかけ進む日本の戦後史を、新聞記事の早めくりで一息に見直す試み。主役は土本による新聞記事のスクラップブックで、小沢昭一が軽妙なナレーションを付けている。

2010年9月23日(木・祝)15:10
「海盗り 下北半島・浜関根」
(1984/103分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
青林舎 撮影:清水良雄
横なぐりのヤマセふぶく下北半島の小さな漁村、浜関根。1981年、ここに原子力船「むつ」の新母港を建設するという話がにわかに降ってわいた。この映画は浜関根の漁業権をめぐる攻防を漁民の側から見た記録である。プルトニウム半島化する下北半島での漁民の「海盗リ」に対する死闘を描く。

2010年9月23日(木・祝)17:10
「はじけ鳳仙花 わが筑豊わが朝鮮」
(1984/48分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
幻燈社 撮影:清水良雄
戦時下の旧満州で過ごした植民地体験から、加害者としての日本人を描くことを模索する画家・富山妙子。彼女の作品に高橋悠治の音楽、李礼仙の語りが加わり、劇中劇のように身の上ばなし「身世打鈴(シンセタリョン)」が展開する。

2010年9月26日(日)16:30
「ひろしまを見たひと 原爆の図丸木美術館」
(1985/25分/スライド)
原爆の図丸木美術館、青林舎 撮影:本橋成一
丸木位里、丸木俊夫妻の共同制作の原点は、1945年8月6日に原爆が落とされた広島の惨状である。この悲劇を繰り返さないよう平和への祈りを込めて描かれたのが、超大作「原爆の図」。夫妻の40年に及ぶ共同制作の足跡をたどり、作品を解説したスライド作品。

2010年9月20日(月・祝)13:55 [参考上映「銀輪」と2本立て]
「日本一ぶりの里訪問記」
(1986/27分/ビデオ)青林舎 撮影:清水良雄
日本一の養殖ぶりの産地、鹿児島県長島町・東町漁協のPR映画。限られた漁場、僻地・離島という条件の下、東町漁協は養殖ぶり日本最大の産地として成長した。沿岸漁業と養殖漁業の両立、網元制度の廃止、漁協中心の新しい協同性の確立など、その軌跡を探る。

2010年9月26日(日)13:00
「よみがえれカレーズ」
(1989/116分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
記録社、シグロ 共同監督:熊谷博子、アブドゥル・ラティーフ 撮影:一之瀬正史 他
土本がアフガニスタンに取材した第1作。1988年5月15日のソ連軍撤退開始から同年12月までの約5ヶ月間、現地撮影が行われた。内戦の爪あとが残る中、帰国した難民、地下水脈 “カレーズ” を守る民衆らの姿を見つめる。

2010年9月24日(金)15:20
「回想・川本輝夫 ミナマタ 井戸を掘ったひと」
(1999/42分/DVCAM)
土本典昭仕事部屋
長く水俣病運動の先頭に立ち、1999年12月に急逝した川本輝夫。その生前の姿を土本の水俣作品に見る。市会議員になって活動を続けたが、彼の「井戸を掘った者はおいてきぼりです」の言葉から運動の複雑さを浮かび上がらせる。追悼集会で上映された土本典昭による「私家版」ビデオである。

2010年9月24日(金)16:20
「もうひとつのアフガニスタン カーブル日記1985年」
(2003/42分/DVCAM)
映画同人シネ・アソシエ 撮影:高岩仁、一之瀬正史
1985年のアフガニスタン初訪問時に撮影された内戦下の首都カーブルが記録されている。新しい祝日・革命記念日の20万市民の素顔など「民主共和国」時代の日常を描く。

2010年9月24日(金)17:20
「在りし日のカーブル博物館1988年」
(2003/32分/DVCAM)
映画同人シネ・アソシエ 撮影:高岩仁、一之瀬正史
アフガニスタンの文化財は、1992年民主共和国の崩壊以後、その7割が破壊されたり、略奪されて海外に流出して失われた。しかし、カーブル博物館が1993年に破壊される前の88年、土本らは幸運にも代表的文化財を撮影していた。世界唯一の在りし日の博物館の記録である。『よみがえれカレーズ』の未使用ネガから復元し、将来のアフガニスタンの資料映像となるように「私家版」として完成させた。

2010年9月26日(日)17:15
「みなまた日記 甦える魂を訪ねて」
(2004/100分/DVCAM)
映画同人シネ・アソシエ
1996年「水俣・東京展」に掲げる水俣病犠牲者の遺影を集めるため、土本が約1年間水俣に滞在した時にビデオキャメラにおさめた素材を2004年にまとめた。撮影の数年後、改めて仮編集のままのビデオを見た土本がまず再発見したのは「“墓場”(埋立地)を『水俣病を記憶する場』(聖地)に作りかえていった」患者自らの働きかけだった。水俣最終作にして土本の遺作となった、水俣の甦りを訪ねる旅の記録。

参考上映
2010年9月20日(月・祝)13:55
[「日本一ぶりの里訪問記」と2本立て]
「銀輪」
(1956/12分/35mm/FC所蔵ニュープリント)
新理研 監督:矢部正男、松本俊夫、樋口源一郎 撮影:荒木秀三郎
のちに実験映画作家として活躍する松本俊夫が中心になって制作した、日本自転車工業会の海外PR用映画。少年の自転車へのあこがれを幻想的に表現している。松本が前衛芸術グループの実験工房とともに構想をまとめ、武満徹が音楽を、円谷英二が特殊撮影を担当。幻の映画だったがフィルムセンターがオリジナルネガをもとにデジタル復元した。
参考上映
2010年9月19日(日)17:30
「阿賀に生きる」
(1992/115分/16mm)
阿賀に生きる製作委員会 監督:佐藤真 撮影:小林茂
80年代の水俣を描いた『無辜なる海』(1983/香取直孝監督)のスタッフだった佐藤真が、水俣と同様の問題を抱える新潟県・阿賀野川に着目、川筋に生きる人々の暮らしや公害の事実を、3年にわたる長期滞在で撮影した作品。福祉ドキュメンタリーで知られ、作り手と被写体の人たちがともに考えながら映画をつくった柳澤壽男監督に師事した小林茂カメラマンの影響が強く感じられる。

参考上映
2010年9月25日(土)13:00
「映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事」
(2006/94分/DVCAM)
ビジュアルトラックス 企画・製作: 伏屋博雄 監督:藤原敏史 撮影: 加藤孝信
これまでの作品のファイルや新聞切抜帖、スティンベック(フィルム編集机)やビデオ編集機の置かれた土本の仕事部屋。伏屋博雄、藤原敏史、石坂健治らは何度も仕事部屋を訪ね、土本が長年追い続けてきた「水俣」や『ある機関助士』『ドキュメント路上』『不知火海』など自作への思いを聞く。そこに各作品の名シーンを挿入し、土本作品初体験の観客にも理解しやすく構成されている。さらに、久しぶりに水俣へ出向いた土本の姿をカメラは追う。

参考上映
2010年9月18日(土)17:50
「大野一雄 ひとりごとのように」
(2007/100分/DVCAM)
クエスト 監督・撮影:大津幸四郎
平野克己監督の『魂の風景・大野一雄の世界』(1991)で撮影を担当した大津幸四郎が、腰を打ち歩行不能になり、言葉も不自由になりながらも、100歳を超えてなお舞台に立ち続ける舞踏家・大野一雄の姿を描く。今年6月1日、惜しまれつつ103歳で亡くなった大野を偲ぶ上映でもある。

《料金》入れ替え制
1回券
一般:1200円 学生・シニア・障がい者:1000円
会員一般:1000円 会員学生・シニア・障がい者:900円

3回券(前売り)
2600円(非会員共通) 2300円(会員共通)

期間中フリーパス券(限定10枚/取扱は神戸映画資料館のみ)
*3×3.5cm程度の顔写真(モノクロコピー可)をご用意ください。
12000円(会員共通)

〈前売りチケットの取り扱い〉
神戸映画資料館、プラネット・プラス・ワン

*当日券、および整理券は、12:00からその日のすべての上映会分を販売、発行いたします。
*前売り3回券、フリーパス券、および招待券をお持ちの方は、受付にて整理券をお求めください。

主催:神戸プラネット(神戸映画資料館)
後援:長田区役所
助成:しみん基金KOBE、アサヒビール芸術文化財団、芸術文化振興基金
協力:新長田まちづくり株式会社
上映素材・写真提供および協力:東京国立近代美術館フィルムセンター、シグロ、映画同人シネ・アソシエ、自由工房、アテネ・フランセ文化センター、火種プロダクション、東町漁業協同組合、モンタージュ、徳間書店、クエスト、大津幸四郎、伏屋博雄、「阿賀に生きる」製作委員会、小林茂、高岩純子

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。