神戸映像アーカイブ実行委員会

神戸発掘映画祭 神戸発掘映画祭

外国無声映画 女優レジェンド

女性が主人公の2作品。日本映画史におけるジェンダーやセクシュアリティ研究で知られる木下千花氏によるトークも実施。

21日(土)16:00 |22日(日)16:15

『愚者ありき』

『愚者ありき』 A Fool There Was

アメリカ/1914年/67分[18fps]/デジタル(元素材16mm)/無声
作品提供:神戸映画資料館(玉岡忠大コレクション)
監督:フランク・パウエル
出演:セダ・バラ、エドワード・ホセ

音楽:余田有希子

「フランスから来たアラブ人」という触れ込みで登場した、黒髪で派手なメイクの女優セダ・バラが、吸血鬼のごとく、男たちからすべてを吸い取って破滅させてゆく悪女を演じ、「ヴァンプ」の呼び名を得るきっかけとなった名高い作品。「愚者」とはあくまでも男(たち)のことであり、「キスしてよ、私のおバカさん」は映画史上最も有名なセリフの一つ。

 

10月22日(日)15:15
トーク:木下千花(京都大学教授)
前説:石原香絵(映画保存協会代表)
無料(同日の『女ハムレット』または『愚者ありき』の鑑賞者が対象)

22日(日)13:00

『女ハムレット』

『女ハムレット』 Hamlet

ドイツ/1921年/122分[18fps]/デジタル(元素材35mm)/無声
作品提供:ジョージ・イーストマン博物館
監督:スヴェント・ガーデ、ハインツ・シャール
出演:アスタ・ニールセン

伴奏:鳥飼りょう(ピアノ)

「女であるべきか男であるべきか」。女として生まれながら男として生きることになったハムレットを描く異色作。この設定が物語にもたらす変化も興味深いが、何よりも、その中性的なハムレットを怪しくも繊細に演じるデンマーク出身の女優、アスタ・ニールセンの圧倒的な存在感に目を奪われる。欧州では誰もが知るこの伝説の女優を発見する絶好の機会。

映画を追え 山根貞男追悼

映画評論家の山根貞男氏が今年2月20日に逝去された。1975年にシネマ自由区(フリーク)との共催で開催したシギノ大劇での加藤泰監督オールナイト上映以来、親しくお付き合いいただき、神戸映画資料館が開館してからも機会ある毎にトークをお願いしてきた。今年出版された最後の著書「映画を追え フィルムコレクター歴訪の旅」(草思社)で取り上げられた映画を主に、最近発掘された映画や生前の絶妙なるトーク映像などを上映し、その偉業を振り返る。

企画担当:安井喜雄(神戸映画資料館館長)

27日(金)13:00

『江戸怪賊伝 影法師』+山根貞男トーク記録映像①

『江戸怪賊伝 影法師』
1925年/53分[24fps]/16mm/無声(活弁・伴奏録音テープ同時再生[1987年録音])
東亜マキノ等持院
監督:二川文太郎 原作・脚色:寿々喜多呂九平 撮影:田中重次郎
主演:阪東妻三郎、マキノ輝子
弁士:浜星波 伴奏:大野政夫と和洋合奏団

+山根貞男トーク記録映像①(1996年2月1日のプラネットプラスワン・オープン記念講演を録画した8mmテープ/62分)

「映画を追え」第一章で紹介される映画で、安井が初めて入手した阪東妻三郎主演の剣戟時代劇フィルム。今回はトーキー用24コマ映写機で上映した時に録音した活弁・伴奏テープに合わせて上映のため、動きが速くなるがご了承のほどを。山根のトーク映像は大阪堂山町にプラネットプラスワンがオープンした3ヶ月後に収録されたもの。東京国際映画祭やロシアでの映画発掘について熱く語る。

28日(土)11:00

発掘作品集

『当世新世帯』
1927年/18分[16fps](部分)/デジタル(元素材9.5mm)/無声
阪妻・立花・ユニヴァーサル聯合映画
監督:小沢得二 原作、脚色:宮本一八 撮影:高樹泰策
出演:堀川浪之助、泉春子

『魂(たま)を投げろ』
1935年/26分(部分)/35mm(元素材16mm)/音声欠落
日活(多摩川撮影所)
監督:田口晢 原作・脚本:玉川映二 撮影:福田寅次郎
出演:井沢一郎、原節子、中村英雄

『教訓童話 花咲爺』新発掘版
1924年/16 36分[16fps]/デジタル(元素材35mm染色)/無声
マキノ・プロダクション(等持院撮影所)
監督:衣笠貞之助 脚色:衣笠貞之助、宮崎安吉
出演:関操、別所益枝、横山運平、森静子

伴奏:天宮遥(ピアノ)

これまでに神戸映画資料館が発掘した映画の中から珍しいものを選んで上映。『当世新世帯』は阪妻・立花・ユニヴァーサル聯合映画の数少ない現存作品。『魂を投げろ』は原節子主演で最古の作品。『花咲爺』は衣笠貞之助監督の初期作品で、前回の映画祭で上映した16mm版ではなく、今回新たに発掘した35mm染色プリントからデジタル化したもの。

28日(土)14:50

『突貫小僧』+山根貞男トーク記録映像②

『突貫小僧』
1929年/21分[16fps](部分)/35mm(元素材9.5mm)/無声
作品提供:国立映画アーカイブ
松竹キネマ(蒲田撮影所)
監督:小津安二郎 脚本:池田忠雄 撮影:野村昊
出演:斎藤達雄、青木富夫、坂本武

伴奏:天宮遥(ピアノ)

+山根貞男トーク記録映像②(2015年6月20日、神戸映画資料館で「没後30年 加藤泰監督の幻の映画特別上映」時に収録したDVcamテープ/53分)

「映画を追え」で何度も言及される山根が最初に発見した小津安二郎監督の幻の映画。9.5mm短縮版をコレクターの岡部純一氏が所有しており、ニュースにも取り上げられて話題となった。今回の上映は最近発見された16mm長尺版ではなく、山根が発見した9.5mmを元素材とした国立映画アーカイブ所蔵の35mmブローアップ版。山根のトークは神戸映画資料館で『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』の上映後に収録。ネガ発掘の苦労話や渋谷での初上映時の話題などを語る。

28日(土)16:25

『明治俠客伝 三代目襲名』

『明治俠客伝 三代目襲名』
1965年/90分/35mm 作品提供:東映
東映(京都撮影所)
監督:加藤泰 脚本:村尾昭、鈴木則文 撮影:わし尾元也
出演:鶴田浩二、藤純子、嵐寛寿郎、藤山寛美、津川雅彦

山根のかつてのペンネームである菊地浅次郎はこの映画の主人公、鶴田浩二の役名だった。明治の大阪を舞台に、任俠のしがらみに生きる男と廓にしばられた娼妓との恋愛物語。ヤクザ路線の東映系映画館や名画座だけでなく、各地の自主上映グループも盛んに上映し加藤泰ファンを熱狂させた。

29日(日)13:00

『海を渡る祭礼』

『海を渡る祭礼』
1941年/24分(部分)/35mm 作品提供:国立映画アーカイブ
日活(京都撮影所)
監督:稲垣浩 脚本:三村伸太郎 撮影:石本秀雄
出演:市川春代、月宮乙女、戸上城太郎、香川良介、志村喬、上田吉二郎

トーク:佐伯知紀(映画史研究/NPO法人映像産業振興機構顧問)

山根が蓮實重彦、冨田三起子とともにロシアのゴスフィルモフォンドでフィルム調査して発見したフィルム。『北鮮の羊は語る』を編集卓で見ていた時、途中から突如時代劇になり、山根が大好きな市川春代が出てきて題名を特定した作品。東京国立近代美術館フィルムセンター(現・国立フィルムアーカイブ)に在籍し二度目の調査に同行した佐伯知紀氏を招いて当時の様子をお話しいただく。

神戸映画資料館 新発掘

最近発掘した珍しいフィルムに加え、これまで上映できず倉庫に眠っていたフィルムを集めて上映。神戸映画資料館に寄贈されるフィルムは近年増加の一途を辿っていて倉庫の収納限界を超えてきた。フィルム保存の重要性を広く訴える目的での上映でもある。
企画担当:安井喜雄

27日(金)15:15

震災実写映画

『関東大震災実況』
1923年/20分[16fps]/35mm 染色/無声
日活(向島撮影所)
撮影:髙阪利光、伊佐山三郎

『東京関東地方大震災惨害実況』
1923年/26分[16fps]/16mm /無声
兵阪新聞社

『但馬地方大 震災 地震実況(第一報)』
1925年/12分[16fps]/デジタル(元素材35mm)/無声
藤谷教育映画製作所

『丹後大地震』
1927年/8分[16fps]/16mm /無声
制作会社不明

今年は関東大震災から100年、再来年は北但馬大地震から100年となる。かつて山形の映画館跡から救い出した『関東大震災実況』や、最近入手した『但馬地方大震災実況』など神戸映画資料館が保存する貴重な地震の記録を一挙上映。来るべき大地震に備えて防災意識を高めるために過去の映像が役立つかもしれない。

28日(土)13:00 |29日(日)16:00

『深川美談 孝女てい子』『石童丸』

『深川美談 孝女てい子』
1920年/28分[16fps]/デジタル(元素材35mm)/無声
国際活映(巣鴨撮影所)
監督:田村宇一郎 撮影:青島順一郎
出演:立花清、双葉かほる、葛木香一

『石童丸』 『筑紫の太刀風 石童丸』
調査中 1925年/24分[16fps]/16mm/無声
旭キネマ製作所
出演:片岡仁引(片岡左衛門)

解説:佐崎順昭(映画史研究)

「映画を追え」のあとがきに「長野県の人から大量のフィルムを譲ってもらった」とある高橋正人氏旧蔵フィルムから2本を紹介。『深川美談 孝女てい子』が製作された1920年は、松竹キネマや大正活映が設立された日本映画史における革新の年である。天活の流れをくむ国際活映(国活)が創立されたのは前年で、撮影技師の枝正義郎らが従来の旧劇映画や新派映画の改革に乗り出したことでも知られている。新聞の社会面を題材に、実際の場所で撮影されたこの映画には、貧困の実相が記録されており、実写と映画劇の融合という新たな位相に気づかせてくれる稀有な作品でもある。

29日(日)14:50

『唄入り観音経(吉五郎発端之巻、吉五郎雲水之巻)』

『唄入り観音経(吉五郎発端之巻、吉五郎雲水之巻)』
1949年頃/53分/デジタル(元素材35mm)
木村映画製作所
監督:川出秀治 原作:畑喜代治 撮影:小野隆司、岩岡千里 浪曲:三門博 曲師:鈴木りう子
出演:三門博、三谷野譲、山崎長之助

浪曲師の三門(みかど)博の代表作「唄入り観音経」は、戦時下にキングレコードより売り出され百万枚を超えるヒットを記録した。物語は、掏摸の親分・木鼡吉五郎が金に困った農民を助け、その農民が親分の功徳をお経にして広めるという人情もの。この映画は戦後の占領期に三門が中心となって映画化された浪曲映画だが、通常の興行とは異なる形態で公開された。三門はこの時期、山田五十鈴が瀧の白糸を演じた『恋狼火』(1949年)にも浪曲師の役で出演した。

単独プログラム

21日(土)13:30 参加無料

ホームムービーの日 in 神戸

ちいさなフィルムのためのちいさな祭典! 世界各地で同時開催
みなさんのホームムービーを見せてください!

フィルム上映:みなさんからお寄せいただいたホームムービー
司会:金千秋(FMわぃわぃ)

上映フィルム募集中

地域や家庭に眠るフィルムを持ち寄る上映会です。
個人的な記録(映像)が、地域の、そして時代の記憶を呼び覚まします。
この機会に、みなさんの思い出を映像とともに甦らせてください。

フィルムをお持ちのかたは、事前に事務局(神戸映画資料館内)までご連絡ください。
お寄せいただいたフィルムは、傷みや内容を確認後、持ち主の方と上映のご相談をします。上映させていただいたフィルムは、その後も内容を簡単に見られるようDVD化してお渡しいたします。

21日(土)17:25 連携企画(神戸大学) 参加無料

サイレントアニメーション × 現代のサウンド
〜時を超えた饗宴〜

『ジラフの首はなぜ長い』How the Giraffe Got His Long Neck
音楽:藤本咲名
1926年米国オリジナル版(ブレイ・スタジオ)、1929年日本版(横浜シネマ商会)/3分[16fps]/元素材16mm
日本版作画:村田安司

『千鳥の曲』 音楽:村田祥大
1930年代/ 3分[16fps]/元素材9.5mm 作者:森紅

『漫画レヴュー 春』 音楽:豊田佳奈
1931年/10分[16fps]/元素材16mm
横浜シネマ商会 作画:村田安司

『教育お伽漫画 兎と亀』 音楽:東野成美
1924年/6分[16fps]/元素材35mm
ナカジマ活動写真部(文献では北山映画製作所) 作画:山本早苗

『動物オリムピック大会』 音楽:岡田美鈴
1928年/6分[16fps]/元素材16mm 横浜シネマ商会
原案:青地忠三 作画:村田安司

『太郎さんの汽車』 音楽:村松佑美
1929年/ 6分[24fps]/元素材16mm 横浜シネマ商会
原案・脚色:青地忠三 作画:村田安司

*デジタル素材で上映

神戸大学の学生が日本のサイレントアニメーションの音作りに挑戦しました。100年の時を超え、ボカロや電子音など、現代のサウンドによって新たな息吹が吹き込まれたサイレントアニメーションをこの機会にぜひご覧ください。

共催:神戸大学大学院人間発達環境学研究科・国際人間科学部 発達コミュニティ学科 音楽音響制作ゼミ(担当教員:余田有希子)

22日(日)10:30 連携企画 参加無料

〈ワークショップ〉
見てはいけない映画のアーカイブを考える

ブルーフィルムは露骨な性表現ゆえに刑法第175条で上映などが禁じられています。神戸映画資料館から発掘された作品などを取り上げながら、その収集や保存の意義や公開の可能性を探ります。

報告者
河原梓水(福岡女子大学)、吉川孝(甲南大学)

コメンテーター
板倉史明(神戸大学)、常石史子(獨協大学)

司会:石原香絵(映画保存協会代表)

*未成年者の入場をお断りします。

共催
科学研究費補助金・基盤研究(B)「デジタル映像アーカイブの未来研究」(研究代表者ワダ・マルシアーノ・ミツヨ)
科学研究費補助金・基盤研究(C)「ポルノグラフィのアーカイブに関する倫理学的研究」(研究代表者吉川孝)

27日(金)16:40

『あざみ寮・もみじ寮 今日もみんな元気です』

『あざみ寮・もみじ寮 今日もみんな元気です』
1974年/86分/デジタル(元素材16mm)
作品提供:社会福祉法人大木会
監督:大野松雄
製作:進歩における極微の会(大野松雄、梅田克己、田村俊樹、山打寛侾、吉国秀幸、桜田純弘、米本尚之助)

トーク:玉村公二彦(京都女子大学発達教育学部教授)
企画担当・聞き手:田中晋平(神戸映画資料館研究員)

テレビアニメ『鉄腕アトム』のサウンドや、数多くのドキュメンタリー映画で音響デザインを担当した大野松雄氏が、2022年12月19日に亡くなられた。大野氏は、重症心身障害児施設びわこ学園を撮影した『夜明け前の子どもたち』(柳澤寿男監督、1968年)に参加したことが契機となり、大津から移転後に知的障害者更生施設として再スタートするあざみ寮と、授産施設もみじ寮の人々を映画で記録している。施設外では上映されたことがないこの貴重なドキュメンタリーを介して、大野氏を回顧したい。

29日(日)11:00 連携企画 参加無料

アニメーション調査研究

『魔法使と王子』
1930年代/2分[6fps]/元素材:紙フィルム/無声
東海映画第一回作品 作者:北村量太郎

『百合若大臣』
1930年代/12分[6fps]/元素材:紙フィルム/無声
東洋映画製作所 作者:北村量太郎

『漫画 雲雀の宿替』
1933年/13分[24fps]/元素材16mm/無声
横浜シネマ商会
脚色:青地忠三 漫画:村田安司

『お天氣学校』
1952年/18分/元素材35mm
東宝教育映画、日本動画 製作:山本早苗
脚本:薮下泰司 漫画:古沢日出夫 線画:市野正二
指導:日本氣象台

『月の宮の王女様』
1934年/12分/元素材16mm
横浜シネマ商会
作画:村田安司

*デジタル素材で上映

解説:佐崎順昭(映画史研究)、安井喜雄

文化庁メディア芸術アーカイブ推進支援事業の助成を受け、今年度にデジタル化した日本のアニメーションを上映。中でもアマチュアの北村量太郎氏が中・高生時代に作った紙フィルム・アニメは唯一無二のものであり、当時のアニメーション熱が偲ばれる。
アニメーション映画は劇映画や記録映画以上に、同一作品のさまざまなバージョンが作られた。トーキー作品の無声版や、サイレント作品の発声版、長さの異なる複数の小型映画版、さらには戦後の新版など。このように複数化したことで、逆に作品自体の残存率を高める結果にもなった。調査報告では『お天氣学校』などを手掛かりに、そのような幾つかの版を比較します。

共催:NPO法人プラネット映画保存ネットワーク
令和5年度文化庁メディア芸術アーカイブ推進支援事業「神戸映画資料館所蔵アニメーションフィルムのデジタルアーカイブ事業」

*特に記載のないものは神戸映画資料館提供

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