日本映画の新しい地平02「PASSION」
12月25日(金)〜29日(火)
急遽決定
26日(土)濱口竜介監督来館
上映後トーク
「PASSION」
(2008/115分/HDCAM[上映DVCAM])
監督・脚本:濱口竜介 製作:藤井智 撮影:湯澤祐一 照明:佐々木靖之
美術:安宅紀史、岩本浩典 録音:草刈悠子 編集:山本良子 助監督:野原位 制作担当:渡辺裕子
出演:河井青葉、岡本竜汰、占部房子、岡部尚、渋川清彦
[紹介サイト]
結婚を間近に控えた一組のカップル。仲間の祝うパーティーの席上で、期せずして男の過去の浮気が発覚する。男と女は別れ、それぞれの夜を過ごす。等身大の20代男女が、夜の横浜を舞台に繰り広げる軽佻浮薄な恋模様、にも形而上学的な愛に関する考察、にも見える。彼らの辿り着いた結論に対して起こるのは感動か、嘲笑か。
コメント
群像劇を仕組んでそのなかから関係の劇を浮かび上がらせ転変させてゆく手並みに目を瞠り、流動的なキャメラワークやタテの構図における長回しの強度に舌を巻く。と同時に、新人がこんなことでいいのかと思う。何もかも達者すぎるからである。
山根貞男(映画評論家) 特別寄稿
かすかに口の端から漏れてくる一語が、一発の銃声のように、突然伸ばされる右手の握り拳のように、表面的には平穏に見える関係に確実に亀裂を入れていく現場に、ぼくらは作品の間、つきあっていくことになります。人間のアクションばかりが「活劇」を生んでいくわけではありません。
梅本洋一(映画評論家) 「nobody」28号より
そのダイアローグのセリフに唸った。俺はこんな映画を書きたかったのだ、と思った。
荒井晴彦(脚本家) 「映画芸術」426号より
濱口竜介の『PASSION』は、厖大かつ必ずしも「自然」ではない台詞の応酬を通じて「日本映画」の通念を爽快に破壊する。それでいてお仕着せの企画も難なくこなすであろうと予想させる演出力が頼もしい。俳優たちがみな過去の出演作とは比較にならぬほどいい顔をしているという事実に世間はもっと驚くべきだ。
藤井仁子(映画評論家) 「映画芸術」426号より
20代の終わりを迎えた若者たちの精神的危機を、デプレシャンを思わせる辛辣な台詞の応酬で描き切った傑作。短いカット・バックによる終盤の男女の「本音ゲーム」を断ち切るように、工場の白煙を背景にした超ロング・テイクの最後で決定的な言葉が漏れるとき、映画の神が降りて来る(としか言えない瞬間が訪れる)。精神を象徴するヒロイン河井青葉が圧倒的に素晴らしい。肉体を象徴する占部房子との間で、男たち(岡本竜汰、岡部尚)は、その二点間を往復することになる。単純なパートナーの取替え劇を混乱させる道化役としての渋川清彦も見逃せない。とにかく役者のすべてが胸を打つ好演である。タルコフスキー、ソダバーグよりいいという声もあがる前作『ソラリス』と続けて観れば、濱口竜介が現代日本映画の中核を担うべき作家であることを疑う者はいないだろう。
筒井武文(映画監督)
協力:東京藝術大学
《当日料金》
一般:1500円 学生・シニア:1000円
会員一般:1000円 会員学生・シニア:900円
『TOCHKA』とのセット券:1800円