プログラムPROGRAM
2011 4

日本映画名画鑑賞会
2011年4月3日(日)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
 
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、上映1週間前より電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)

《料金》
一律500円


忘れられた映画の再発見 収蔵作品より
2011年4月9日(土)・10日(日)
第3回恵比寿映像祭(2月18日〜27日)で【忘れられた映画の再発見 神戸映画資料館セレクション】として当館の収蔵作品(所蔵:プラネット映画資料図書館)が上映されましたが、同じプログラムを凱旋上映いたします。さらに近年、国立近代美術館フィルムセンターに素材提供して復元した新大都映画2作品と大正期の珍しいフィルムをまとめて上映いたします。

Aプログラム
「ターチャンの海底旅行」
(1935/7分/サイレント/35mm)監督:政岡憲三
『くもとちゅうりっぷ』などの作品で知られるアニメ映画の巨星、政岡憲三の新発掘フィルム。ターちゃんとミーちゃんが豆潜水艦で海中散歩して遭遇する危機や冒険を描いた作品で、映画保存協会が「映画の里親制度」により2010年の「第5回映画の復元と保存に関するワークショップ」の課題として9.5ミリから35ミリにブローアップしたもの。本来はトーキーだが、音声現存せずサイレント上映。

 

「ノンキなトウサン竜宮参り(夢の浦島)」
(1925/10分/35mm)監督:木村白山
なまけ者のノンキなトウサンが、夢で海中のカフェー竜宮館で遊び、みやげに貰った玉手箱から出てきた鬼におどろかされ働き者になるというアニメーション。本来はサイレントだが、1942年に牧野周一の解説を入れたトーキー版。木村白山は看板描きからアニメに転身し「白山漫画」として知られた作家だが生没年、本名、出身地など不明で謎の多い作家。

「美の誕生」
(1948/9分/35mm)監督:岡崎宏三
川島雄三、豊田四郎、小林正樹ら多くの名監督と様々な作品を手掛け、80歳を越えても現役カメラマンとして活躍、2005年に86歳で没した撮影監督・岡崎宏三が監督・撮影したデンマーク体操の紹介映画で、女学生たちが音楽に合わせてリズミカルに体操する美を描く映像詩。そのカメラワークや編集などサイレント時代から培った岡崎の技が見どころ。

「煉獄に咲く花」
(1953/38分/35mm)監督:石山稔
ある売春婦の手記を映画化したもので、水害で家族を失い東京に出てきて路頭に迷っていたところ、声をかけてきた親切そうな女に騙されて娼婦に転落した女と、貧しい漁村から病身の母の治療費をかせぐために東京に出て娼婦になった女を主人公に、人身売買の悲惨な実体を批判する映画。「衆議院参議院婦人議員推薦」と字幕が出る。

 

 

「海魔陸を行く」
(1950/53分/35mm)監督:伊賀山正徳
漁師が蛸壺で捕まえた蛸が、行商中の魚屋の荷車から脱げ出し、線路で列車に轢かれそうになったり、野原の火災に巻き込まれたり、野山の各種動物に襲われるなど、さまざまな危機を乗り越えて故郷の海を目指すという風変わり極まりない映画。解説は徳川夢声が担当。残念ながらタイトルや若干のシーンが欠落している。

 

Bプログラム
「チャップリンとクーガン[仮題] 」
(1920年代/11分[16fps/部分]/染色/サイレント/35mm)監督不詳
チャップリンらしきキャラクターや「キッド」の子役ジャッキー・クーガンを思わせるキャラクターが登場し、日本の映画撮影を見学する内容のアニメーション。フィルム入手時には3巻あったが、内1巻は完全に溶けて画像が消滅していたので、残り2巻を不燃化したもの。文献の記録に見あたらない不思議な作品。

 

 

「元祖 大曲藝連鎖 東京江川巡業部」
(大正時代/1分[16fps/断片]/サイレント/35mm)監督不詳
幕末の軽業師・江川作蔵が南洋に渡って修得したと言われる玉乗りは、明治初年から関東大地震まで浅草六区で興行し大評判だった。この「江川の玉乗り」を撮影した映画も多数記録されているが動く映像は存在しないと思われていたので、断片ではあるが歴史資料的価値は高いはずである。

 

「怪談 皿屋敷[仮題] 」
(1923年以前/11分[16fps/断片]/染色/サイレント/35mm)監督不詳
フィルムセンターの調査によるとおそらく日本映画のなかで現存する最古の「皿屋敷もの」。断片なので作品名を特定できないが古い形式の映画の一例として興味深い。二重露光や逆回転撮影など後の特撮がすでに使用されており、当時の撮影技術を知る上でも貴重なフィルムである。

 

「剣劇女優とストリッパー 」
(1953/26分/35mm)
新大都映画 監督:平澤譲二 撮影:富澤恒夫 美術:古川健一 音楽:志村道三
出演:大都あけみ、奥山紗代、三島百合子、空飛小助、キャロル都
当時人気のあった女剣劇とストリップを組み合わせた客受け狙いの際物映画。田舎の芝居小屋で歌舞伎芝居が不入りだったが、東京から呼び寄せたストリップと歌舞伎の二本立て興行をしたところ大成功。映画スターに出世した女座長の回想として描く。無声映画の弁士として知られる加藤柳美が画面を説明。

「アナタハン島の眞相はこれだ!! 」
(1953/53分/35mm)
新大都映画 監督:吉田とし子 撮影:亀谷明正 美術:大溝一彦 音楽:加藤光雄
出演:比嘉和子、髙野眞、小泉郁之介、諏訪孝介、加藤勇、佐伯徹、熊木浩介、里木三郎、大塚周夫
太平洋の孤島で1人の女性と32人の男達が共同生活していくうちに、男たちがその女性を巡って争うようになり、男性達の間で公然と殺し合いが行われるようになったという「アナタハンの女王事件」の映画化。当事者である比嘉和子本人が主演するという話題性を狙った際物映画で、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督が『アナタハン』を作るにあたって参考にしたとされる。初期の女性監督作品でもある。

《料金》入れ替え制
1プログラムあたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

《割引》
2プログラム目は200円引き


エジプト映画の巨匠 ユーセフ・シャヒーン
2011年4月16日(土)・17日(日)
エジプト映画界のフェリーニあるいは黒澤明とも呼ばれる、ユーセフ・シャヒーン監督。その作品は音楽あり活劇あり歴史あり政治ありの豊かな映像世界で、国際的に賞賛されてきた。
『アレキサンドリアWHY?』では1942年当時国際都市であったアレキサンドリアを、『放蕩息子の帰還』では1960年代ナセル時代末期の小さな町を舞台に物語を紡ぎ、中東現代史の相貌をも浮き彫りにしている。

 ユーセフ・シャヒーン YOUSSEF CHAHINE
1926年エジプト・アレキサンドリア生まれ。大学1年で渡米し、ロサンゼルスで映画と演技を学ぶ。帰国後、24歳の時に父親をモデルにした『誠実なパパ』(1950)で監督デビュー。以降、カンヌやベルリン等の国際映画祭で作品が上映され、高い評価を受ける。『アレキサンドリアWHY?』で、ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。1997年『炎のアンダルシア』で、カンヌ国際映画祭の50回記念特別グランプリを受賞。世界を代表する11人の監督によるオムニバス作品『セプテンバー11』(2002)にも参加した。2008年、82歳で逝去。

 
「アレキサンドリアWHY?」 Iskandariyah… lih?
(エジプト/1979/132分/35mm)
製作:ミスル・インターナショナル・フィルム
配給:シネマトリックス、アイディ
監督:ユーセフ・シャヒーン
脚本:ユーセフ・シャヒーン、モフセン・ザイド
撮影:モフセン・ナスル
音楽:ファウド・ザヘリー
出演:モフセン・モヒーディーン、マフムード・メリーギ、モフセナ・タウフィーク、ライラ・ハマーダ、ザイナブ・セドキー
ベルリン国際映画祭銀熊賞・審査員特別賞
1942年のアレキサンドリア。演劇に情熱を燃やす18歳の青年の夢と友情、そして家族との絆を鮮やかな映像で綴る。シャヒーン監督の自伝的4部作(アレキサンドリア・シリーズ)の第1作。アラブ人青年とユダヤ人の娘の恋、エジプト人貴族とイギリス軍兵士のホモセクシャルな愛、そしてチャーチル暗殺を企むナショナリストや戦争成金など、多彩な人間模様。
題名の「アレキサンドリアWHY?」とは、アメリカへの演劇留学の夢断ちがたい主人公が自問する「アレキサンドリアよ、何故僕はここにいなければならない?」に由来するが、同時に「何故、私たちはいつも戦争の時代を生きなければならないのか?」というシャヒーンのプロテストの声も秘められている。
 
 
「放蕩息子の帰還」 Awdet el Ebn el Dal
(エジプト/1976/125分/35mm)
製作:ミスル・インターナショナル・フィルム
配給:シネマトリックス
監督:ユーセフ・シャヒーン
脚本:ユーセフ・シャヒーン、サラーハ・ジャヒーン、ファルーク・ベローファ
撮影:アブデル・アジズ・ファミー
音楽:アブー・ザイド・ハサン
出演:ショクリー・サラハーン、アーメッド・メヘレズ、ソヘイル・モルシェディ、サイド・アリー・クーイラート、ヒシャム・セリム
1952年の革命後、解放者としてのナセルの栄光が、1967年の第3次中東戦争の敗北や経済危機によって失われつつあった1960年代末期の小さな町が舞台。投獄されていた工場主一家の次男の帰還がもたらすある家族の崩壊と、そこから旅立つ若き恋人たちを対比させ描く。歌や踊りを多用するエジプト映画の伝統的手法を使って作られた、シャヒーン独自の “音楽悲劇(ミュージカル・トラジェディー)” 。
1962年にはナセル大統領の栄光を讃える大作『サラディン』を監督したシャヒーンだが、その後、政府の弾圧から逃れるため、64年から66年にかけてレバノンへの亡命を余儀なくされた。
    

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
2本目は200円引き


完成披露上映会「ミッシング」「コウノトリが…」
2011年4月24日(日)16:30〜
*13:30〜関係者のみの上映あり
神戸映画資料館では、毎夏、映画作りのワークショップを開催してきました。
昨2010年は、ワークショップ生が主要スタッフ(脚本・監督・出演ほか)をつとめた『コウノトリが・・・』を製作。
さらに年末には『シャーリーの好色人生』などを手がける佐藤央監督を招聘して、『ミッシング』の撮影を新長田で行いました。この撮影にはワークショップ生の有志や神戸芸術工科大学の学生も参加し、低予算の自主製作で出来ることを、映画のプロの現場から実地に学ぶ機会としました。脚本に小出豊を迎え、佐藤央監督の新境地を示す作品です。
この度、完成したばかりの2作品の披露上映を行います。
「ミッシング」
(2011/55分/HD)製作:神戸映画資料館
監督・編集:佐藤央 脚本:小出豊 撮影・照明:四宮秀俊
録音:新垣一平 音楽:近藤清明 美術:大石佳奈
助監督:大岸智博 制作:唐津正樹
キャスト:土田愛恵、きく夏海、信國輝彦、昌本あつむ、八尾寛将、堀尾貞治
夫と1人息子のヒロと幸せな生活を送っていた清瀬晧子は、軽い気持ちからヒロとの約束を破ってしまう。その日以来、ヒロは二度と帰ってこず、「自分のせいだ」と自らを責める晧子は夫と別れ1人ヒロを待ち続ける。それから5年の月日が過ぎ…。

 この映画は、何かとても大事なものを失ってしまった人々について語った映画です。自分にとってとても大事なものを失ってしまうと、弱さからか、たとえそれが自分のせいでなくても自分のせいだと思ってしまう。この映画ではそのことを「因果」と呼んでいますが、そのような「因果」と呼ばれる事柄に直面してしまった人々を見つめる眼差しが、この映画のテーマとなっています。
 ほぼ映画初出演であるキャストの昌本あつむと堀尾貞治さん始め、主演の土田愛恵さん、きく夏海さんらキャストの方々と、スタッフとしてみぞれの振る年末に獅子奮迅の活躍を見せてくれた神戸芸工大の若者たちの息吹が息づいたこの映画を楽しんでいただければと切に願います。

  監督・佐藤央

[監督]佐藤央
1978年大阪生れ。映画美学校フィクションコースを卒業後、2005年、短編ドキュメンタリー『キャメラマン 玉井正夫』を監督(フィルムセンター、三重映画フェスティバル、神戸映画資料館などで上映)。2007年、オムニバス映画『夢十夜 海賊版』の一本「不安」(第八夜)、2009年には『シャーリーの好色人生』を監督し、冨永昌敬(『パンドラの匣』『乱暴と待機』)との二本立て映画『シャーリーの好色人生と転落人生』として全国で公開。各方面で高い評価を得る。2009〜10年には自主制作で『結婚学入門(恋愛篇・新婚篇)』の2作を続けざまに監督した。
 
[脚本]小出豊
1974年生まれ。映画美学校フィクションコースを卒業後、2006年、『お城が見える』(第4回CO2オープンコンペ部門優秀賞)を監督。2009年には初長編『こんなに暗い夜』(ハンブルグ映画祭、シネマ・デジタル・ソウルなどで上映)、オムニバス映画『葉子の結婚』「月曜日」を監督し、各地で話題を呼んだ。その他の仕事に、万田邦敏「県境」「一日限りのデート」(BS-i)の脚本などがある。映画批評誌「シネ砦」団員。
 
 
「コウノトリが…」
(2011/45分/HD)製作:神戸映画資料館
監督:村津蘭 脚本:小林紗季 撮影:岡山佳弘 
録音:堀修生 美術:南山真之 助監督:大岸智博 
制作:山本暢俊、橋口明弘
キャスト:小川尊、真塩優、根村茂次、西山真来、佐々木嘉子、岩村襟子、
原田佐之助、上田洋子
10年後、少子化対策で政府は代理母制度を奨励するが、代理母の数は足りていない。産婦人科医である洋介は中絶と養子へ出す母親が多い現実に違和感を感じつつも、子どもセンターで働いている。ある日古い友人に頼まれ、非正規の代理母出産を引き受けるが、依頼した葉子も代理母の亜紀も子どもに関心は薄く…。

 「10年後」という設定で脚本を書くこと、映画の文法に沿って作品を組み立てていくことが今回WSのお題でした。WS生で選んだテーマは「10年後母性はどこに行くのか」。「10年後」というテーマは現代という時代をどのように捉えるか、ということでもあります。WS生自身が作った脚本を基に、俳優・演出・美術・制作等それぞれの役割から想像し、手探りで作った「10年後」。多くのWS生が映画製作が初体験の中で、猛暑の下撮られたこの作品で「現代」が少しでも浮かびあがればと願います。
  監督・村津蘭

《料金》1000円


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。