プログラムPROGRAM

まぼろしの昭和独立プロ黄金伝説 後編
2011年10月21日(金)〜24日(月)
 9月の「まぼろしの昭和独立プロ黄金伝説 前編」に続く後編をお届けします。初代ピンクの女王・香取環さんをお招きしての、「特別編 伝説の女王・香取環」と「第三の伝説 追憶 向井寛の世界」。
 本特集に先立って行なわれていた、東京・ラピュタ阿佐ヶ谷の「60年代まぼろしの官能女優たちⅡ」の最終週、「昭和桃色映画館」出版記念会に熊本から急きょ駆けつけてくれた香取環さん。さらに今度は神戸映画資料館にも駆けつけてくれることに。上映プログラムを変更して、お気に入り&特選作品を準備した。「まぼろしのヒロイン」が長時間にわたってファンとの交流の場を持つのは初めてと言っても良い。記念すべき日となろう。
 若松孝二とともに、60年代桃色映画の最前線を疾走し、その人気を若松と二分したといわれる向井寛。だが、あくまで過激で時代の先頭にあり続ける若松と違い、滝田洋二郎をはじめ後進の育成やプロデユーサー業、穏やかな作風へとも転じた向井寛の作品世界は、今日その多くが散逸しフィルムは失われ省みられることが少ない。「ドキュメント」「反戦」「情念」「犯罪」「スキャンダル」……、向井寛が挑んだテーマは、そのまま時代のテーマでもあった。08年に物故した向井寛監督の世界をひらき、研究の第一歩となる画期的上映が実現した。
*予告していた内容を一部変更しています。
 
←香取環さん(右)。向井寛監督夫人の内田高子さん(左)と、ラピュタ阿佐ヶ谷「60年代まぼろしの官能女優たち」(09年)開期中の「対談」(「昭和桃色映画館」収録)記念撮影
 

10月22日(土)15:35〜トーク
スペシャルゲスト:香取環  聞き手:鈴木義昭
(映画史家・ルポライター)
《昭和独立プロ黄金伝説・その2 初代ピンクの女王・香取環》
「神戸は想い出の土地なの」、われらが初代「ピンクの女王」は言った。「女王」は赤木圭一郎と同期の第四期ニューフェイスとして日活撮影所入り、久木登紀子の本名でデビュー。多くの日活青春映画に出演しながら、1961年『肉体の市場』で勃興期の独立プロに身を投じ香取環として生まれ変わり、活躍が始まる。昭和桃色映画史に燦然と輝く「女王」の軌跡は、そのまま60年代の桃色映画の歴史だ。目の眩むような日本映画の黄金時代の記憶! 72年に映画界を引退してから長く消息を絶ち沈黙を守り続けた「女王」が、鈴木義昭の取材に応じたのは四年前。伝説の名作と知られざる佳作を語り、女優として女性として語り始めた。「女王降臨」を、いま、体感せよ!(鈴木義昭)
 
 参考上映 :香取環出演映画名場面集、「昭和桃色映画館」出版記念会記録映像(後篇)
 
鈴木義昭
1957年、東京都台東区生まれ。76年、「キネマ旬報事件」で竹中労と出会い、以後師事する。ルポライター、映画史研究家として芸能・人物ルポなどで精力的に執筆活動を展開中。
著書に「ピンク映画水滸伝」(青心社)、「風のアナキスト・竹中労」(現代書館)、「日活ロマンポルノ異聞 国家を嫉妬させた映画監督・山口清一郎」(社会評論社)、「若松孝二 性と暴力の革命」(現代書館)、「ちんこんか ピンク映画よどこへ行く」(野上正義著・責任編集/三一書房)、近刊に「昭和桃色映画館」(社会評論社)がある。

[特設コーナー]香取環の部屋

 
「特別編 伝説の女王・香取環」
10月21日(金)・22日(土)
「牝罠」
(1967/ 72分/16mm/パートカラー)葵映画
監督・脚本:西原儀一 撮影:池田清二 照明:森康 製作:後藤充弘
出演:香取環、中原美智、森三千代、渚マリ、田中敏夫、山田晴生、椙山拳一郎
結婚式を控えた農家の一人娘・陽子(香取環)は、三人の若者に襲われ純潔を散らされる。上京し銀座のホステスに、やがてバーを経営するまでになるが、その肉体には男を憎み狂わす魔性が棲みついていた。美しさゆえに都会の中でもがき苦しみ流転し堕ちていく女。日活出身の香取と宝塚映画出身の西原が、独立プロ全盛期に結実させた伝説的作品
 
 
「女は二度燃える」
(1969/45分短縮版/16mm/パートカラー)ワールド映画
監督:奥脇敏夫 脚本:俵ヒト見 撮影:武田勝也 音楽:辻正
出演:香取環、里見孝二、相原香織、真湖道代、高鳥和子、青葉洋子
遊泳中に溺れ死んだという姉(相原香織)、その死に疑問を抱いた妹(香取環)が姉の恋人だった男(里見孝二)に近づき真相を探る。眩しい陽光ときらめく海、極度におさえた台詞、ボートの揺らぎの中での性愛。日活映画が得意とした海の映画の系譜を超えるかのように、復讐に燃える女を、当時パートナーだった奥脇敏夫の下で巧みに熱演する香取環。
 
  
「桃色電話 (ピンクでんわ)」
(1967/60分/16mm/トリミング版/パートカラー)葵映画
監督・脚本:西原儀一 脚本:久木登 撮影:池田清二 音楽:古関正 美術:加山大洋
出演:香取環、椙山拳一郎、清水世津、森三千代、千月のり子、松井康子、田中敏夫
ポン引きの拳(椙山拳一郎)に付いて来た薄汚れた友子(香取環)は、少し頭が弱く失敗ばかりするが憎めない。当時流行のデートクラブで働く友子だが、やはり失敗ばかり。初代「ピンクの女王」香取環は西原儀一の葵映画専属となり、愛らしい絶妙演技を魅せて人気を不動のものとする。「忘れられない作品」という、彼女自身によるリクエスト上映!

香取環(かとり・たまき)
1939年熊本市生まれ。九州女学院高校在学中にミス・ユニバース熊本代表、全国大会で準ミスに選出。卒業後、日活第四期ニューフェイスに応募し入社。同期に赤木圭一郎がいた。本名の久木登紀子の名で多くの作品に助演したが、61年に日活を退社。佐久間しのぶの芸名でテレビにも出演。62年、ピンク映画第一号『肉体の市場』に主演、芸名を香取環と改名。以後、その演技力で60年代のピンク映画に「女王」として君臨。72年に映画界を引退。

   
「第三の伝説 追憶 向井寛の世界」
10月23日(日)・24日(月) 
「暴行少女日記♀(めす)」
(1968/16mm/80分/パートカラー)向井プロ
監督:向井寛 脚本:宗豊 撮影:東原三郎 音楽:芥川隆 
出演:一星ケミ、佐東洋一、小野保、久保新二、津村伸一、城浩、エディ・リンドン、吉野洋子
関西の底辺に生まれ、母に反発しながら自らも肉体を売って成り上がろうとする少女(一星ケミ)。男を騙し、男に騙されながら生きていく姿は、あまりに痛々しい。ドキュメンタリー出身の向井寛ならではのカメラワークは、底辺の町に生きた少女の物語を刻み込む。一時代を築いた向井のシャープな映像感覚の中で、奔放な一星の演技が輝く幻の傑作登場!
「セックス女優残酷史」
(1968/76分/35mm/パートカラー)日本芸術協会
監督:向井寛 脚本:浜多加志 撮影:伊藤正治 美術:清水好 音楽:芥川隆
出演:一星ケミ、久保新二、相原香織、井川美千代、相澤梨花、火鳥こずえ、佐東洋一、小野保
六本木「野獣会」にも属していたという一星ケミは、激しい存在感で60年代後期独立プロ屈指のスターだった。プロデューサーと恋人との狭間で揺れ動いて生きる姿は、肉体を武器に芸能界を生きたケミ自身であり、多くの「ピンク女優」の姿でもあろうか。向井寛はスキャンダラスでスタイリッシュなアングルの中に、女の身も心も描写しようとする
 
「秘伝腹芸十八番」
(1969/72分/35mm/パートカラー)青年芸術協会/東京興映
監督:向井寛 脚本:宗豊 撮影:浜野誠之 音楽:芥川隆 照明:大田博
出演:藤井貢、火鳥こずえ、乱孝寿、江島裕子、水木洋子、松本寛、市村譲二、平野元
藤井貢は、慶応大学ラグビー部出身で戦前松竹蒲田の青春スター。戦後も時代劇などで活躍したが、フリーとなって向井寛作品の常連に。一代で築き上げた相場師(藤井貢)の腕と才覚は老いてなお発揮され、英雄色を好む性癖に翻弄される女たち。高度成長期の男たちの愛憎劇に正面から肉迫する、向井寛らしい正攻法の人間ドラマ。
 

向井寛(むかい・ひろし)
1937年満州大連に生まれる。九州大学経済学部中退。今井正、野村浩将、佐伯清らに師事。劇映画の助監督の傍ら、62年に教育映画『二人の少年』で監督デビュー。63年、『地熱』で東京都産業映画部門・金賞受賞。65年に向井プロダクションを設立。同年の『肉』で成人映画に進出。精力的に監督作品を発表する一方、プロデユースにも手腕を見せた。『GOING WEST 西へ…』(97年)など一般作品の監督も多い。08年肝不全の為永眠。

 
*プリント状態が悪く映写機にかからない場合は上映作品が急遽変更になる場合があります。
企画協力:鈴木義昭、東舎利樹

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

トークイベント 1000円
《割引》
2本目は200円引き

これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。