キートン × ベケット──『フィルム』を中心に
2012年12月15日(土)・16日(日)
サミュエル・ベケットの唯一の映画作品にして、バスター・キートンの最晩年の出演作『フィルム』。この二人の邂逅を出発点に企画した特集上映です。
[関連企画] 12月15日(土)
神戸映画資料館レクチャー:映画の内/外
第11回 音・イメージ・言葉──キートン×ベケット=幽霊
講師:木内久美子(比較文学研究、東京工業大学)
「フィルム」Film
(アメリカ/1965/20分/DVD上映)
監督:アラン・シュナイダー 脚本:サミュエル・ベケット
撮影:ボリス・カウフマン
出演:バスター・キートン
キートンが死去する約一年半前に撮影された作品。すでに癌に冒され体調が芳しくなかったキートンは、当初は出演に乗り気ではなかった。だが映画史家ケヴィン・ブラウンローに、「あなたにとって『天井桟敷の人々』のような作品になるかもしれない」と説得され、出演を決心した。冒頭でキートン演じる主人公がカメラの視線を逃れんと疾走する姿が印象的だ。カメラは主人公を執拗に追いかける。両者のチェイスは街頭の人々を巻き込みながら、室内戦へもつれこむ。逃げ場を失った主人公を待ちうける結末とは?
「キートンの空中結婚」The Balloonatic
(アメリカ/1923/27分[18コマ映写]/16mm)
監督:エディ・クライン、バスター・キートン
出演:バスター・キートン、フィリス・ヘイヴァー
キートンが長篇作に移行する1923年に公開された短篇喜劇の最後の時期の傑作。スマートにアウトドアレジャーを満喫する女性と、それと対照的なキートンの悪戦苦闘ぶりが素晴らしい。
サミュエル・ベケットのテレビ作品
「幽霊トリオ」Geister Trio
(ドイツ/1978/30分/DVD上映)
BBCおよび南ドイツ放送で「亡霊/影たち」という番組で放映された作品のひとつ。A(遠景)・B(中景)・C(近景)の三点固定で撮影された作品。『幽霊トリオ』という題名は、作品中で繰り返し聴こえてくるベートーヴェンのピアノ三重奏曲『幽霊』の第二楽章第二主題による。テレビという表現媒体で、目に見えない「幽霊」をどう表現するのか──これこそが、この作品の課題である。作品冒頭では全面白壁の室内が映され、続いて女性の声が観客をその室内へと誘う。そこには一人の男が何かを抱えて座っている。すると不意に音楽が聴こえてくる。女の声と男の動作、さらに音楽という三者が反復的に組み合わせられるなかで、「幽霊トリオ」の正体が浮かび上がる。
「……雲のように……」… nur Gewölk …
(ドイツ/1978/15分/DVD上映)
『幽霊トリオ』同様、「亡霊/影たち」で放映された作品。作品のタイトルは、W・B・イェイツの詩「塔」の一節からとられている。イェイツの詩に似て、『……雲のように……』では、男が亡き女の幻影を想う。不意に画面に現れる女の顔。だがそれはすぐに消える。女の顔は男性の夢想なのか、それとも亡き女の幽霊的な現れなのか。画面上ではこの二つのイメージが交錯している。
「夜と夢」Nacht und Träume
(ドイツ/1983/10分/DVD上映)
南ドイツ放送局の依頼でベケットがドイツ語で執筆した作品。作品中で聴こえてくる音楽は、シューベルトの歌曲『死と乙女』である。この歌曲では若い女と死神との対話が歌われる。若い女は死神を拒むが、死神は穏やかな死へと女を誘う。同様に『夜と夢』でも、死との穏やかな和解の兆しが描かれている。覚醒状態と夢とを行き来するなかで、主人公は聖餐に似た儀式を夢に見る。
《料金》1プログラムあたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円
《割引》
2プログラム目は200円引き
[レクチャー:第11回 音・イメージ・言葉──キートン×ベケット=幽霊] 参加者は1プログラム目も200円引き
企画:木内久美子、神戸映画資料館 協力:Samuel Beckett Estate