プログラムPROGRAM
2015 8

OPEN THE COVER 未公開映画のフタを開ける
8月1日(土)〜11日(火)
思わずドキドキする日本映画3作品の連続公開が決定!
良質な未公開作品の発見シリーズ第一弾として、先どり、蔵出し、カルト感が漂う、何れもいまどきジャパンの青き春を描いたラインアップ。

damn01「ダムライフ」
(2011/84分/ HD[ブルーレイ上映])
監督・脚本・撮影・編集:北川仁
出演:笠継景太、菅原佳子、米元信太郎、小野孝弘、武井哲郎、菊池翔空
第33回ぴあフィルムフェスティバル PFFアワード2011グランプリ作品
第24回東京国際映画祭 日本映画・ある視点出品
釜山国際映画2011 ニューカレンツ部門ノミネート出品

子供の頃、妹を殺してしまいトラウマを持って育ったロボットのような青年小谷。ダム工事の現場で働き始めるとすぐにいじめにあう。偶然に起きた同僚の転落死をきっかけに事態は急変、小谷はトンデモ大殺戮を引き起こしてしまう。引きの演出、狙った画面、意外な展開…。北川仁監督の強烈な長編デビュー作!

併映「りんご」
(2013/10分/ HD[ブルーレイ上映])
監督:北川仁 出演:池脇千鶴 制作・提供:ユニジャパン
第66回カンヌ国際映画祭ショートフィルムコーナー出展
第12回ウラジオストク国際映画祭短編コンペティション部門出品
被災した土地で、略奪を重ねながら生き抜く女。ある日、朽ち果てた一軒家に侵入した女が見た光景とは…。主人公のセリフを一切排し、荒涼とした風景の中に生と死を強烈に描き出した、ひとつの極北の物語。女を演じた池脇千鶴の圧倒的な演技が印象を残す。

 

SRチラシ表面入稿原稿「スーパーローテーション」
(2011/77分/HD[ブルーレイ上映])
監督:斎藤久志
脚本:加瀬仁美 撮影:水口智之
出演:下村響子、藤原慧、小泉将臣、倉持幸歩、中村圭吾、安藤尋
日本映画学校 25期俳優科卒業ドラマ作品

若い男女のありようを優れた洞察力で描いてきたPFF出身の斎藤久志監督の軽やかな恋愛劇。演劇学校に通うヒロイン恋愛の心変わりをユーモアでほろ苦く切り撮った演出は、良質の映画を撮れる監督として再評価が望まれる。

 

 

 

 

 

SRチラシ表面入稿原稿「つまさき」
(2014/102分/HD[ブルーレイ上映])
監督・脚本:加瀬仁美 撮影:岩永洋
プロデューサー:斎藤久志
出演:河野桜、圓若創、松井美波、小川智子、川瀬陽太、クノ真季子

相手がいなくなった交換日記…女子中学生の繭子は好きな友達が拒食症で入院したことで心の変化が訪れる。中年男との寒々しい出会いや気になるイケメンの先輩。抜けるような空と孤独感をキーワードに、少女の魂の成長を全編手持ちのカメラで温かく見守る視点は、女性監督群の新たな一翼となるだろう。

 

 

 

北川仁 中・短篇集
「ポストガール」(2010/49分)PFFアワード2010入選作品
「コレクト」(2007/10分)福井映画祭入選
「大根侍」(2008/11分)
「blanc」(2009/22分)ふかや映画祭優秀賞受賞 福井映画祭審査員特別賞受賞

 

《料金》入れ替え制
当日券 一般1700円 学生・シニア1100円 会員1000円
前売券 3回券3000円 1回券1300円[当館で発売中]


ストローブ=ユイレによるブレヒト映画
2015年8月14日(金)〜16日(日)

レクチャー:時空を超えるブレヒトの旅
8月16日(日)16:45〜 参加無料
渋谷哲也(ドイツ映画研究)
「ブレヒト主義者」を自称していたストローブ=ユイレはブレヒトのテクストを用いて2本の映画を製作した。どちらも彼の亡命中に執筆したテクストを用いて、限りなく挑発的な技法を特徴としつつ、それ以上に映画的な快楽を溢れさせた傑作である。『歴史の授業』の長大なトラヴェリングとカエサル神話の資本主義的読み替え、『アンティゴネー』での円形劇場に限定された空間での言葉の果たし合い。限りなく禁欲的でありながら、心の奥底を揺さぶるような映画体験をもたらしてくれる。

rekishino01「歴史の授業」
Geschichtsunterricht(1972/85分/16mm 35mm
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:レナート・ベルタ

ベルトルト・ブレヒトの未完の小説『ユリウス・カエサル氏の商売』を基にローマの古代と現代を交差させたエッセイ風劇映画。カエサルの死後40年目にして伝記を執筆しようとする歴史家青年の前で、生前のカエサルを知る者たちの証言が、世紀の英雄の真実の姿を次第に浮き彫りにしてゆく。

 

antigone01「アンティゴネー」
Die Antigone des Sophokles nach der Hölderlinschen Übertragung für die Bühne bearbeitet von Brecht 1948(1991-1992/100分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ

ソフォクレス作の古典ギリシャ悲劇をヘルダーリンがドイツ語に翻訳した草稿を基に、ブレヒトが大胆に加筆改稿した戯曲を映画化した。戦争のさなかで国の裏切り者となって死んだ兄の遺骸を弔うアンティゴネ—と、それを反逆行為として糾弾する叔父クレオン王との対決。ブレヒトはそこに戦争とファシズムへの批判を読み込んだ。

 

作品解説:渋谷哲也
協力:神戸ファッション美術館、アテネ・フランセ文化センター

《料金》入れ替え制
一般:1300円 学生・シニア:1200円
会員一般:1200円 会員学生・シニア:1100円

《割引》当日2本目は200円引き


エドガー・G・ウルマー入門
2015年8月23日(日)・24日(月)

講座:〈亡命〉映画作家エドガー・G・ウルマーが辿ったまわり道
8月23日(日)16:30〜 参加費1000円
井上正昭(翻訳・映画研究)
〈亡命〉という言葉は適当ではないかもしれない。しかし、エドガー・G・ウルマーという映画作家が生涯置かれていた状況を知れば知るほど、”exile” という言葉こそそれにふさわしいと思えてくる。『日曜日の人々』の制作に共に携わったワイルダー、シオドマク、ジンネマンらがハリウッドで成功を収める姿を横目で見ながら、同じヨーロッパ移民組のなかで彼らよりも遙かに映画的才能に恵まれていたはずのウルマーだけは、なぜ生涯日陰の道を歩まねばならなかったのか。ヨーロッパで生まれ育ち、そこで映画デビューし、その後渡米してハリウッドで成功をつかみかけた矢先に、メジャーで活躍する道をなかば完全に断たれ、マイナー映画、アンダーグラウンド映画、少数民族向け映画、はては健康PR映画といった、ありとあらゆる映画の周縁をさまよい続けた、真にマージナルな映画作家ウルマー。彼の映画にはヨーロッパの影がいつもちらついて見えるのだが、その一方で、晩年、ヨーロッパで映画を撮ることを余儀なくされてからも、彼はハリウッドで成功する夢を決して諦めなかった。いわば、ヨーロッパとアメリカの狭間で帰るべき場所を失ってしまった故郷喪失者。そしてそんな故郷喪失者たちは、『黒猫』や『恐怖のまわり道』を始めとする彼の映画作品の中でも暗に繰り返し描かれてきた。ウルマーはしばしば〈B級映画の王者〉などと呼ばれる。たしかにそれは間違ってはいない。しかし、この呼称がウルマーという映画作家を型にはめてきたことも事実である。この講座では、伝説と事実が分かちがたく入り交じり、いまだ謎に満ちた彼の生涯を、新資料にもとづいて改めて辿り直しながら、より大きな視点からウルマーの映画について再考してみたい。そしてそれは、表には描かれることのなかった、映画史の影の領域を浮き彫りにすることにもなるはずである。

「日曜日の人々」生演奏付き上映
8月24日(月)18:40〜 ピアノ演奏:柳下美恵
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「日曜日の人々」Menschen am Sonntag
(ドイツ/1930/73分/DVD提供:株式会社ブロードウェイ)
製作:モーリツ・ゼーラー、ハインリッヒ・ネーベンツァール
監督:ロバート・シオドマク、エドガー・G・ウルマー 脚本:ビリー・ワイルダー、カート・シオドマク
撮影:オイゲン・シュフタン 撮影助手:フレッド・ジンネマン
編集:ロバード・シオドマク(クレジットなし)、オイゲン・シュフタン(クレジットなし)
音楽:オットー・シュテンツェル 美術:モーリツ・ゼーラー
出演:エルヴィン・シュプレットシュテーサー(タクシー運転手)、ブリギッテ・ボーヒャート(レコード店員)、ヴォルフガング・フォン・ヴァルタースハウゼン(ワイン店員)、クリストゥル・エーラース(エキストラ女優)、アニー・シュライヤー(モデル)
後にハリウッドで名を馳せる監督らが一堂に会し、ラフな脚本だけを頼りに、素人俳優を使ってほぼ即興で撮り上げた彼らの記念すべき処女作。当時のベルリンの日常を活写したこの映画は、『伯林-大都会交響楽』などの前衛作品を受け継ぐ一方で、その斬新な映画作りはヌーヴェルヴァーグを遙かに予告しており、今見ても新鮮である。
Photo by スズキマサミPhoto by スズキマサミ

 
 

wifeofmont「モンテ・クリストの妻」The Wife of Monte Cristo
(アメリカ/1946/78分/16mm/日本語字幕無し)
製作会社:PRC(Producers Releasing Corporation)
製作:レオン・フロムケス 共同製作:ジャック・D・グラント
監督:エドガー・G・ウルマー 脚本:ドルカス・コクラン
脚色:エドガー・G・ウルマー、フランツ・ローゼンワルド(アレクサンドル・デュマの小説『モンテ・クリスト伯(巌窟王)』より)
脚本監修:シャーリー・ウルマー(クレジットなし)
撮影:エドワード・A・カル(アドルフ・エドワード・カルの名前で)、オインゲン・シュフタン(クレジットなし)
編集:W・L・バジエ(ダグラス・バジエの名前で)
音楽:パウル・デッサウ 美術:エドワード・C・ジュエル
舞台:グレン・P・トンプソン 衣装:モナ・バリー
出演:ジョン・ローダー(警察長官ド・ヴィルフォール)、レノール・オベール(モンテ・クリスト伯爵夫人)、チャールズ・ディングル(ダングラール男爵)、フリッツ・コートナー(メイヤール)、エドゥアルド・シャネリ(ジャック・アントワーヌ)、マーティン・コスレック(モンテ・クリスト伯爵)

PRC時代のウルマー作品としては破格の製作費をあてて作られた冒険活劇。スタッフ・俳優の大部分が中欧系移民で占められ、『日曜日の人々』の名キャメラマン、オイゲン・シュフタンも撮影に協力している。ワイマール時代のドイツ映画を思わせる夜の街頭風景や、ラングの『M』を彷彿とさせる悪夢めいた裁判シーンが目を惹く。

 

hersisterssecret「ある姉妹の秘密」Her Sister’s Secret
(アメリカ/1946/83分/16mm/日本語字幕無し)
製作会社:PRC(Producers Releasing Corporation)
製作:ハインツ・ブラッシュ(ヘンリー・ブラッシュの名前で)
監督:エドガー・G・ウルマー
脚本:アン・グリーン(ジーナ・カウスの小説『Die Geschwister Kleh』[英題「Dark Angel」]より)
脚本監修:シャーリー・ウルマー(クレジットなし)
撮影:フランツ・プラナー 編集:ジャック・W・オギルヴィー
音楽:ハンス・ゾマー 美術:エドワード・C・ジュエル
舞台:グレン・P・トンプソン
出演:ナタリー・コールマン(トニ・〈アントワネット〉デュボワ)、マーガレット・リンゼイ(ルネ・デュボワ・ゴードン)、フィリップ・リード(ディック・コノリー)、フェリックス・ブレサート(カフェ店主ぺぺ)、レジス・トゥーミイ(ビル・ゴードン)、ヘンリー・スティーブソン(デュボワ氏)

ウルマーがPRCで撮った最後の作品で、彼には非常に珍しいメロドラマ。画面の華麗さでは敵わぬものの、繊細な感情描写はダグラス・サーク作品と比べても少しも遜色がない。ウルマーの隠れた傑作の一つである。原作の舞台をウィーンからアメリカに移し替えてあるが、ウルマーのコスモポリタニズムは随所に垣間見える。

 

作品解説:井上正昭
協力:株式会社ブロードウェイ

《料金》入れ替え制
演奏付き上映 一般1500円 学生・シニア1400円 会員1300円 *招待券のご利用不可
上記以外(日本語字幕無し) 一律700円 *当日に限り2本目は200円割引


戦後70年特集 収蔵フィルムで綴る 戦時下の暮らし
2015年8月29日(土)・30日(日)

Aプログラム
参考上映+講座:運命の歌姫 李香蘭
8月29日(土)13:00〜(終了予定15:10)
羽鳥隆英(神戸映画保存ネットワーク研究員)
山口淑子(1920年‐2014年)とは何者か? 敗戦70年を迎えるに際し、この難問に取り組みたい。彼女が中国人歌手=女優李香蘭の仮装の下、15年戦中期の日本人を熱狂させ得たのはなぜか? 敗戦後、彼女はいかに日本の芸能界に「復員」し、さらにアメリカや香港の芸能界に進出したのか? あるいは今年、彼女にはいかなる別れの言葉が送られたのか? 激動の世紀を生きた運命の歌姫の軌跡を辿りつつ、新たな研究の可能性を探りたい。

 

Bプログラム
issen01「一銭の力」

(1940/17分/16mm)
愛國兒童協会作品 監修:国民貯蓄奨励局
後援:大蔵省企画院 原案:天野雉彦
製作:長瀬鉄男 撮影・現像・録音:日本ラヂオ・トーキー
福島県小高町の小学生が登校中に一銭のお金を落としたが、授業で先生から偉人の話を聞いた。その人は明治の水害で天皇から下賜されたお金をもとに無駄遣いせず増やし学校に奉安殿を寄付した。感動した少年は下校する際に必死にお金を探す。勤倹貯蓄、消費節約がテーマ。

 

santa01「三太のラッパ」(1941/39分/16mm)
原作:高須賀公正 監督:津田不二夫 撮影:源裕介
出演:林文夫、高橋君子、田中春男、末鮫洲
愛媛県三津浜梅田小学校。出征する兵隊さんを送るために楽隊を作りたいと願う三太らが、仲間を集め先生と共に練習する。ラッパを買うために果物市場で働き病に倒れるが、仲間の皇国少年音楽隊が出演したラジオを聴いて元気が出る。「愛国行進曲」「愛馬進軍歌」「出征兵士を送る歌」などの軍歌が聴ける。部分欠落、画像不良。

 

Cプログラム
tachiaga01「銃後美談 起ち上った少年」(1940/29分/16mm)
提供:国民精神総動員聯盟、大阪朝日新聞社
脚本・監督:細山雅皓 撮影:源祐介 装置:小池一美
照明:服部卯三郎
出演:小高まさる、小高たかし、鴨川京子、土屋詩郎、小柳壽郎、竹村信夫、一條真一郎、観堂正夫、小山富士雄
一家の大黒柱である父親が出征し、母と弟との三人で暮らす貧しい一家の少年が大阪朝日新聞の配達をして母親を助ける銃後の美談。堅忍持久の精神こそ国民の心構えひとつであると訴える。

 

gohei01「五作ぢいさん」(1940/31分/16mm)
監督:徳光壽夫 撮影:高井四郎 装置:小池一美
照明:轟木次郎
出演:横山運平、片桐日名子、朝川清、河田京子、竹村信夫、田邊若男、大友純、國方博之、澤村春次郎
尋常小学校国語読本・巻七の挿話を映画化。病に倒れ納税免除になっていたじいさんが、納税のために溜めたお金を自ら村に差し出す感動美談。アナウンサーの徳光和夫の父で神戸出身の映画監督・徳光壽夫の珍しい残存作品。

 

Dプログラム
akatsukino01「暁の路(無声版)」(1935/51分/16mm)
原作:簡易保険局 脚色・監督:清涼卓明 撮影:藤井清
照明:内田照天 舞台設計:伊藤熹朔 舞台装置:橋本欣三
出演:浅田健二、歌川八重子、森山保、山縣直代、一條桂子、片岡好右ヱ門
父を亡くし母の苦労で大学を卒業したものの職はなく、毎日職探しに明け暮れる主人公。自分が今あるのは亡き父が残してくれた郵便年金のお陰と知る。ある日、酒場で不良に絡まれた紳士を助けたのがきっかけでその紳士の勤める会社に就職ができた。トーキー作品の字幕入無声版。

 

kiku01「菊作る家」(1941/27分/16mm)
企画:逓信省 原作・脚色:青地忠三
潤色・演出:下間登良男 撮影:宮崎正男
出演:第一協団・全日本自由契約映画俳優協会(浅田健三、木下ゆづ子、金光嗣郎、阿部好司、文野朋子、國方博之、清水元、原田耕一朗、上野市郎、千葉栄)
紀元二千六百年紀念映画。景気が良かった頃に遊び惚けたために不景気になって困窮した老人の例を示した後、父が菊作りをする一家に場面は転じ、長兄が出征中にもかかわらず三男が飲み歩くのを次男が戒め、兄弟ともに工場の団体年金に加入し銃後の使命を果たす。最終部欠落。

 

*すべて当時のプリントにつき画像・音声共に不良で、欠落部分もございます。予めご了承ください。

《料金》入れ替え制1プログラムあたり
一般1200円 学生・シニア1000円 会員1000円 学生・シニア会員900円
《割引》当日に限り2プログラム目は200円引き


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。