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「加藤泰、映画を語る」増補文庫版 刊行記念
加藤泰を見る、語る
2013年8月10日(土)・11日(日)
ちくま文庫版『加藤泰、映画を語る』
出版記念上映会へ向けて

山根貞男 

加藤泰の講演集『加藤泰、映画を語る』が、ちくま文庫になった。元の単行本は1994年に筑摩書房から出版されたが、絶版になって久しい。近年、加藤泰作品の上映の機会が増えているなか、文庫版による復活は多くのファンへの贈り物になると思われる。しかも、新たに見つかった講演とエッセイを加えた増補版であり、愛娘加藤文の書き下ろしエッセイも収録されている。
この『加藤泰、映画を語る』は安井喜雄とわたし(山根)の編集による。そこで、当然のことながら、安井喜雄が館長の神戸映画資料館で加藤泰作品の上映会を催し、わたしが当館における加藤泰講座の特別版トークをおこなうことになった。
上映作品は『清水港は鬼より怖い』(1952)と『男の顔は履歴書』(1966)。この初期作品と中期作品を合わせて見れば、およそ同じ監督の撮った映画とは思えないことに、だれもが驚嘆するにちがいない。あらためて加藤泰恐るべし。

山根貞男映画講座「特別篇・加藤泰の世界」
8月10日(土)16:30〜
(終了予定18:00)


「清水港は鬼より怖い」
(1952/ 80 70分/16mm)
製作:宝プロ
監督:加藤泰 脚本:木下藤吉、友田晶二郎
撮影:近藤憲昭 音楽:高橋半 美術:鈴木孝俊
出演:大泉滉、沢村国太郎、原健作、尾上菊太郎、加東大介、朝雲照代
日本映画史には次郎長もの映画は無数にあるが、これほどデタラメな映画はめったにないだろう。江戸の老舗の若旦那が侠客に憧れて次郎長の子分になる。たったそれだけの話だが、漫才ミュージカルとでもいうべき奇天烈な時空をくりひろげてゆく。これがデビュー作『剣難女難』前後篇につづく第2作と、だれが信じられよう。(神戸映画資料館収蔵フィルムより欠落の少ない長尺16ミリ版で上映。当初80分と記していましたが、実際は約70分のプリントです。何卒ご了承ください。)
 

©1966松竹

「男の顔は履歴書」
(1966/89分/35mm)
製作:松竹
監督:加藤泰 脚本:星川清司、加藤泰
撮影:高羽哲夫 音楽:鏑木創
美術:梅田千代夫
出演:安藤昇、真理明美、伊丹一三、中谷一郎、内田良平、中原早苗、嵐寛寿郎
加藤泰が初めて松竹で撮った映画で、しかも本格的な現代劇。第2次大戦に敗れた直後の日本では、闇市に建ったマーケットが庶民の暮らしを支えてきた。そこの支配をめぐるいわゆる「マーケット戦争」が、戦中派の医師を主人公に、壮烈なアクション映画として描かれる。主役があの安藤昇なので、やくざ映画と誤解されることもあるが、戦中から戦後へかけての激動の底辺に封じ込められたマグマの噴出に焦点が合わされている。加藤泰はこのあと安藤昇と組んで『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』(1966)『懲役十八年』(1967)を連作するが、その戦中派3部作の第1作である。
 

《料金》入れ替え制
[映画]1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
当日、2本目あるいは講座参加者は200円引き
 
[講座]
一般1200円 会員1000円
*講座参加ご予約受付中 
info@kobe-eiga.net 宛に、お名前、連絡先(電話)、参加希望日を書いてお送りください。
追って予約受付確認のメールを差し上げます。


濱口竜介プロスペクティヴ in 関西
6月29日(土)〜7月8日(月)[水・木休館]
 
神戸・大阪・京都のミニシアター5館で同時開催する「濱口竜介プロスペクティヴ in 関西」。神戸映画資料館では、4時間を超える大作『親密さ』と、東北ドキュメンタリー三部作を上映。関西に拠点を移した濱口竜介の「これから」の「はじまり」にお立ち会いください。

トーク
6月29日(土)『なみのこえ 気仙沼』上映後
 芹沢高志(『なみのこえ』『うたうひと』プロデューサー、デザイン・クリエイティブセンター神戸センター長)
 酒井耕(映画監督/東北三部作共同監督)
 濱口竜介(映画監督)
 
6月30日(日)『親密さ』上映後
 丹生谷貴志(神戸市外国語大学 教授)
 濱口竜介(映画監督)
 
7月7日(日)『なみのこえ 気仙沼』上映後
 酒井耕(映画監督/東北三部作共同監督)
 濱口竜介(映画監督)

 
「親密さ」
(2012/255分[途中休憩あり]/HD[ブルーレイ上映])
製作:ENBUゼミナール
監督・脚本:濱口竜介
撮影:北川喜雄 編集:鈴木宏
整音:黄永昌 助監督:佐々木亮介
制作:工藤渉 劇中歌:岡本英之
出演:平野鈴、佐藤亮、伊藤綾子、田山幹雄 ほか
ともに演出家であり、恋人同士でもある令子と良平は互いに傷つけ合いながら舞台劇『親密さ』初演を迎える。
4時間を越える大作だが、ENBゼミナールの演技コースの修了作品としてスタートした企画である。映画と映画内の舞台劇の関係においてだけでなく、それぞれの中でも、現実と虚構が複雑、微妙に交錯し続け、虚実の彼岸にあるリアリティーの核心が胸を揺さぶる。美し過ぎるラストが、岡本英之の音楽とともに脳裡に焼き付く。
 
「なみのおと」
(2011/142分/HD[ブルーレイ上映])
製作:東京藝術大学大学院映像研究科
プロデューサー:藤幡正樹、堀越謙三
監督:濱口竜介、酒井耕
撮影:北川喜雄 整音:黄永昌
2011年7〜8月に撮影された岩手県から福島県沿岸部の、津波被災者6組11人への対話形式インタビューの記録
酒井耕と共同監督で、東日本大震災についてのドキュメンタリー。濱口と酒井は、震災の爪痕を撮影したり、地震発生時の記録映像を引用したりはせずに、被災者の証言を記録することに集中する。その際二人は、ドキュメンタリーでは掟破りともされかねないある方法を用いるが、これは被災者の表情により迫るための真摯な試みだ。
 
「なみのこえ 新地町」
(2013/103分/HD[ブルーレイ上映])
製作:サイレントヴォイス
プロデューサー:芹沢高志、相澤久美
監督:濱口竜介、酒井耕
実景撮影:佐々木靖之 整音:鈴木昭彦
2012年1月から2013年3月に行われた福島県新地町に暮らす6組10名への対話形式インタビューの記録。
震災後約一年、原発事故後の不安と海の汚染や海産物の風評被害の下にある福島県新地町という、被災地の中でも相当に微妙な状況の下で、濱口と酒井は、『なみのおと』の特異な方法論を先鋭化・徹底化させながら、複雑なものを単純化せず、分かり易くせずに提示し、観客に共有させようと、あるいは共有の困難さを示そうとする。
 
「なみのこえ 気仙沼」
(2013/103分/HD[ブルーレイ上映])
製作:サイレントヴォイス
プロデューサー:芹沢高志、相澤久美
監督:濱口竜介、酒井耕
実景撮影:佐々木靖之 整音:鈴木昭彦
2012年1月から2013年3月に行われた宮城県気仙沼市に暮らす7組11名への対話形式インタビューの記録。
人口が減り続け復興の未来の見えない気仙沼だが、未来への希望を人々は微かに見ようとしている。濱口と酒井は『なみのおと』の方法論を受け継ぎながらもそこに着目し、震災に直接関わる内容を超えて、被災者の過去をも掘り起こそうとする。喋るのが苦手な人にあえてカメラの前で語らせることで、確かに見えてくるものがある。
 
「うたうひと」
(2013/120分/HD[ブルーレイ上映])
製作:サイレントヴォイス
プロデューサー:芹沢高志、相澤久美
監督:濱口竜介、酒井耕
撮影:飯岡幸子、北川喜雄、佐々木靖之
整音:黄永昌
宮城県に暮らす語り手による東北地方伝承の民話語り。これは同時に彼らを訪ね続けた聞き手の記録でもある。
酒井耕との共同監督作品で被災地に取材しながら、ここで濱口と酒井が取り上げるのは民話(昔話)を語る老人達である。取材やインタビューの経験から触発されたこの作品では、語りは聞き手の反応があってのコミュニケーションであることが浮き彫りにされ、さらには映画とは何かの根源さえも問われることになるだろう。
*作品解説:木村建哉(映画研究者)
公式サイト
ウェブ・スペシャル 寄稿
 「〈言葉〉を撮るドキュメンタリー──濱口竜介・酒井耕の東北三部作について」
 井上正昭(翻訳・映画雑文)

 
ウェブ・スペシャル 映画時評[一年の十二本]
 第十二回 たどり着くことから解き放たれてすべては「はじまり」となる──『親密さ』
 藤井仁子(映画評論家)

 

《料金》入れ替え制
[親密さ]
一般2000円 会員1800円
 
[その他作品]
一般1300円 会員1200円
3回券3300円
(前売・当日あり/数に限りがあります/他会場と共通/複数人での利用可/『親密さ』にはご利用いただけません)
 
*招待券のご利用不可
*上映館により、各種料金の設定が異なりますのでご注意ください。

企画:fictive 後援:LOAD SHOW


濱口竜介プロスペクティヴ in 関西
6月29日(土)〜7月8日(月)[水・木休館]
 
神戸・大阪・京都のミニシアター5館で同時開催する「濱口竜介プロスペクティヴ in 関西」。神戸映画資料館では、4時間を超える大作『親密さ』と、東北ドキュメンタリー三部作を上映。関西に拠点を移した濱口竜介の「これから」の「はじまり」にお立ち会いください。

トーク
6月29日(土)『なみのこえ 気仙沼』上映後
 芹沢高志(『なみのこえ』『うたうひと』プロデューサー、デザイン・クリエイティブセンター神戸センター長)
 酒井耕(映画監督/東北三部作共同監督)
 濱口竜介(映画監督)
 
6月30日(日)『親密さ』上映後
 丹生谷貴志(神戸市外国語大学 教授)
 濱口竜介(映画監督)
 
7月7日(日)『なみのこえ 気仙沼』上映後
 酒井耕(映画監督/東北三部作共同監督)
 濱口竜介(映画監督)

 
「親密さ」
(2012/255分[途中休憩あり]/HD[ブルーレイ上映])
製作:ENBUゼミナール
監督・脚本:濱口竜介
撮影:北川喜雄 編集:鈴木宏
整音:黄永昌 助監督:佐々木亮介
制作:工藤渉 劇中歌:岡本英之
出演:平野鈴、佐藤亮、伊藤綾子、田山幹雄 ほか
ともに演出家であり、恋人同士でもある令子と良平は互いに傷つけ合いながら舞台劇『親密さ』初演を迎える。
4時間を越える大作だが、ENBゼミナールの演技コースの修了作品としてスタートした企画である。映画と映画内の舞台劇の関係においてだけでなく、それぞれの中でも、現実と虚構が複雑、微妙に交錯し続け、虚実の彼岸にあるリアリティーの核心が胸を揺さぶる。美し過ぎるラストが、岡本英之の音楽とともに脳裡に焼き付く。
 
「なみのおと」
(2011/142分/HD[ブルーレイ上映])
製作:東京藝術大学大学院映像研究科
プロデューサー:藤幡正樹、堀越謙三
監督:濱口竜介、酒井耕
撮影:北川喜雄 整音:黄永昌
2011年7〜8月に撮影された岩手県から福島県沿岸部の、津波被災者6組11人への対話形式インタビューの記録
酒井耕と共同監督で、東日本大震災についてのドキュメンタリー。濱口と酒井は、震災の爪痕を撮影したり、地震発生時の記録映像を引用したりはせずに、被災者の証言を記録することに集中する。その際二人は、ドキュメンタリーでは掟破りともされかねないある方法を用いるが、これは被災者の表情により迫るための真摯な試みだ。
 
「なみのこえ 新地町」
(2013/103分/HD[ブルーレイ上映])
製作:サイレントヴォイス
プロデューサー:芹沢高志、相澤久美
監督:濱口竜介、酒井耕
実景撮影:佐々木靖之 整音:鈴木昭彦
2012年1月から2013年3月に行われた福島県新地町に暮らす6組10名への対話形式インタビューの記録。
震災後約一年、原発事故後の不安と海の汚染や海産物の風評被害の下にある福島県新地町という、被災地の中でも相当に微妙な状況の下で、濱口と酒井は、『なみのおと』の特異な方法論を先鋭化・徹底化させながら、複雑なものを単純化せず、分かり易くせずに提示し、観客に共有させようと、あるいは共有の困難さを示そうとする。
 
「なみのこえ 気仙沼」
(2013/103分/HD[ブルーレイ上映])
製作:サイレントヴォイス
プロデューサー:芹沢高志、相澤久美
監督:濱口竜介、酒井耕
実景撮影:佐々木靖之 整音:鈴木昭彦
2012年1月から2013年3月に行われた宮城県気仙沼市に暮らす7組11名への対話形式インタビューの記録。
人口が減り続け復興の未来の見えない気仙沼だが、未来への希望を人々は微かに見ようとしている。濱口と酒井は『なみのおと』の方法論を受け継ぎながらもそこに着目し、震災に直接関わる内容を超えて、被災者の過去をも掘り起こそうとする。喋るのが苦手な人にあえてカメラの前で語らせることで、確かに見えてくるものがある。
 
「うたうひと」
(2013/120分/HD[ブルーレイ上映])
製作:サイレントヴォイス
プロデューサー:芹沢高志、相澤久美
監督:濱口竜介、酒井耕
撮影:飯岡幸子、北川喜雄、佐々木靖之
整音:黄永昌
宮城県に暮らす語り手による東北地方伝承の民話語り。これは同時に彼らを訪ね続けた聞き手の記録でもある。
酒井耕との共同監督作品で被災地に取材しながら、ここで濱口と酒井が取り上げるのは民話(昔話)を語る老人達である。取材やインタビューの経験から触発されたこの作品では、語りは聞き手の反応があってのコミュニケーションであることが浮き彫りにされ、さらには映画とは何かの根源さえも問われることになるだろう。
*作品解説:木村建哉(映画研究者)
公式サイト
ウェブ・スペシャル 寄稿
 「〈言葉〉を撮るドキュメンタリー──濱口竜介・酒井耕の東北三部作について」
 井上正昭(翻訳・映画雑文)

 
ウェブ・スペシャル 映画時評[一年の十二本]
 第十二回 たどり着くことから解き放たれてすべては「はじまり」となる──『親密さ』
 藤井仁子(映画評論家)

 

《料金》入れ替え制
[親密さ]
一般2000円 会員1800円
 
[その他作品]
一般1300円 会員1200円
3回券3300円
(前売・当日あり/数に限りがあります/他会場と共通/複数人での利用可/『親密さ』にはご利用いただけません)
 
*招待券のご利用不可
*上映館により、各種料金の設定が異なりますのでご注意ください。

企画:fictive 後援:LOAD SHOW


サイレント映画鑑賞会 「溝口健二著作集」刊行記念
2013年6月9日(日)
日本が生んだ世界映画界の巨匠溝口健二が、生前に自身の署名で発表した記事を出来る限りすべて、重要と思われる発言を網羅した「溝口健二著作集」(溝口健二著 佐相勉編/発行オムロ 発売キネマ旬報社/6月上旬発売予定)刊行記念の一環として、神戸映画資料館で上映会を行います。
今回は、溝口初期の貴重なサイレント作品と、溝口と比較されるシュトロハイムの名作を、国内はもとより海外でも活躍中の演奏家、柳下美恵さんのピアノ伴奏付きでお楽しみいただきます。
 
15:00〜 第一部
「愚なる妻」Foolish Wives
(アメリカ/1921/110分[18コマ]/16mm)
監督・原作・脚本:エリッヒ・フォン・シュトロハイム 撮影:ベン・レイノルズ
出演:エリッヒ・フォン・シュトロハイム、ルドルフ・クリスティアンズ、ミス・デュポン、モード・ジョーンズ、メエ・ブッシュハリソン・フォード  
ユニヴァーサルでこの映画を監督したシュトロハイムは、巨額の製作費、5時間を超える長さのためにスキャンダルとなり、短縮を余儀なくされた。欧州大戦直後のモンテカルロ。ロシアの亡命貴族カラムジン伯爵(シュトロハイム)は、ヒューズ夫妻の妻ヘレン(ミス・デュボン)に接近し、金を巻き上げようと企む。ミシェル・メニルはその著書「溝口健二」(三一書房)にてシュトロハイムの「すべてを語り、すべてを示す」点などで溝口との類似を見ている。
 
17:10〜 第二部
トーク:柳下美恵+西田宣善(「溝口健二著作集」編集・発行者)
「ふるさとの歌」
(1925/50分[20コマ]/35mm)
東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
監督:溝口健二 原作:松居張二 脚本:清水龍之介 撮影:横田達之 美術:亀原嘉明
出演:木藤茂、髙木枡二郎、伊藤寿栄子、辻峯子、川又賢太郎、加藤司郎
サイレント期の作品が殆ど失われた溝口健二の作品の中で、最古の現存作品である。欠落した部分も殆どない貴重な作品。東京から故郷に戻ってきた貧しい青年(木藤茂)が、学問を捨てて農業に従事する。日活が文部省の委嘱で製作した教育劇映画で、農本主義的プロパガンダ臭は露骨にあるが、何度も見ていると、その軽快なカッティング、水辺のシーンの美しさ、当時の溝口作品の常連だった横田達之のキャメラが見られるところなど、美点は多く感じられてくる。
 

演奏:柳下美恵                             写真:スズキマサミ
サイレント映画ピアニスト。武蔵野音楽大学ピアノ専攻卒業。1995年、朝日新聞社主催の映画生誕100年記念上映会でデビュー。以来、国内では東京国立近代美術館フィルムセンターや映画館、各地の映画祭等、海外はポルデノーネ無声映画祭やボローニャ復元映画祭(イタリア)、ボン無声映画祭(ドイツ)、韓国映像資料院などで伴奏した。イギリスのユリイカレーベル、㈱紀伊國屋書店から『裁かるるジャンヌ』『魔女』のブルーレイ、DVDで音楽を担当。日本映画ペンクラブ奨励賞受賞。国やジャンルを越えた作品をこれまでに600以上伴奏した。

《料金》
一般1800円 学生・シニア1600円
会員一般1600円 学生会員・シニア会員1400円

*招待券のご利用不可

共催:神戸映画資料館、オムロ 協力:東京国立近代美術館フィルムセンター


新収蔵ポーランド映画特集1
2013年5月3日(金・祝)〜6日(月・祝)
ポーランド映画の輸入配給、演劇研究家として知られるYAKOの山田正明氏が遺したフィルムや映画文献、オリジナル・ポスター、ビデオテープなどが神戸映画資料館に寄贈された。その新たに収蔵された日本語字幕付き35mmフィルム6本を上映。同時にポーランド映画オリジナル・ポスター展も開催。
 
「アウシュビッツの女囚」Ostatni etap
(1948/109分/35mm)
監督:ワンダ・ヤクボフスカ
脚本:ワンダ・ヤクボフスカ、ゲルダ・シュナイデル
撮影:ベンツィオン・モナスティルスキー
音楽:ロマン・パレステル
出演:バルバラ・ドラピンスカ、ワンダ・バルトヴナ、タチアナ・グレッカ、アントニーナ・ゴルドン・グレッカ、アレクサンドラ・シュロンスカ
戦前より記録映画などを手がけていた女性監督ワンダ・ヤクボフスカが、自身の収容所体験をもとにアウシュビッツにおけるエゴと暴力、そしてそれに立ち向かう地下活動を描く。死に直面するなか、歌で励まし合う収容者たちの不屈の姿が印象的。戦後ポーランドで作られた劇映画の3作目にあたる。
 
 
「ロトナ」Lotna
(1959/89分/35mm)
監督:アンジェイ・ワイダ 
脚本:アンジェイ・ワイダ、 ヴォイチェフ・ジュクロフスキ
出演:イェジー・ピケルスキ、アダム・パウリコフスキー、イェジー・モエス、タデウシュ・カリノウスキー、ボジェナ・クロウスカ
1939年9月1日ドイツ軍のポーランドへの侵攻作戦が開始された。ポーランド騎兵中隊は砲弾の炸裂する戦場を疾走する美しい白馬・ロトナを贈られるが、その馬に乗る者が次々に死んでいきついに部隊は全滅する。ワイダにとって最初のカラー作品。
 
 
「死の教室」The Dead Class
(1976/79分/35mm)
監督:アンジェイ・ワイダ 脚本:タデウシュ・カントール 撮影:エドヴァルト・クウォシンスキ
出演:マリア・グレツカ、ボフダン・グリボヴィッチ、ミーラ・リフリツカ、ズビグニエフ・ベトナルチック、ロマン・シヴラック
フランスの不条理演劇の作家ウジェーヌ・イヨネスコの「授業」を、タデウシュ・カントールが演出した舞台の模様をワイダ監督が映像化した異色作。テレビ放映用として製作されたが、ポーランド国内では放映、公開ともにされなかった。日本では1988年に公開。
 
 
「トップドッグ」Wodzirej
(1978/106分/35mm)
監督・脚本:フェリクス・ファルク
撮影:エドワード・クロシンスキー
出演:イエジー・ストゥール、スワバ・クワシニエフスカ、ヴィクトル・サデツキ、ミハウ・タルコフスキ
芸能団に所属する司会者ダニエルは、大役を得るためにあらゆる手段を使い始める……。アンジェイ・ワイダが代表をつとめるプロダクション・イスクによる製作。“この作品は現実の生活を良く伝えています。活動的な動きと変化、そしてアイロニーがあり、同時にコミカルでもあるといった特徴はポーランド映画には珍しいものです”(ワイダ)
 
 
「麻酔なし」Bez Znieczulenia
(1978/131分/35mm)
監督:アンジェイ・ワイダ
脚本:アグニェシュカ・ホランド、アンジェイ・ワイダ
撮影:エドウルト・ワイダ
出演:ズビグニエフ・サパシェヴィッチ、エヴァ・ダルコウスカ、クリスティナ・ヤンダ
著名なジャーナリストが権力の目に見えぬ力によって死へ追い込まれて行く姿を描く。「手荒な扱い」を受ける主人公の姿に、ポーランドの現実に対するワイダ監督の政治的メッセージが込められている。カンヌ国際映画祭カトリック事務局映画賞受賞。
 
 
「悪夢」Zmory
(1979/100分/35mm)
監督:ボイチェフ・マルチェフスキ
脚本:パヴェル・ハイニ
撮影:ヴィエスワフ・ジドルト
音楽:ジグムント・コニエチニ
出演:ピョトル・ウィサク、トマシ・フジエッツ、ブロニスワフ・パブリック、テレサ・マルチェフスカ
第一次大戦前のガリツィア地方。少年ミコワイは性に目覚め、社会主義思想に触れ、精神的な彷徨を繰り返していく。1935年に発表されたエミル・ゼガドヴォヴィチの小説を下敷きにしたボイチェフ・マルチェフスキ監督の劇映画デビュー作で、国内新人賞、ムンク賞、文化芸術賞、サンサバスチャン国際映画祭で受賞している。
 

プラネット・シネマテーク
《会費》収蔵協力費として
入れ替え制1本あたり
会員900円 会員学生・シニア800円
《割引》2本目は200円引き
*非会員のかたは、1日会員(登録料100円)のご登録をお願いします。


宝プロ・チャンバラ映画特集
2013年4月26日(金)〜29日(月・祝)
宝プロダクションは、東亜キネマの撮影所長だった高村将嗣(正次)が1950年に設立した独立プロダクションで、当初は立石電機(現在のオムロン)の敷地内にあった戦前からの双ヶ丘撮影所を使用して時代劇を専門に製作した。1953年に天神川沿いに新たな撮影所をオープンしたものの、1958年に倒産。その後は永らく「日本京映撮影所」という貸しスタジオだったが、今は面影もなくなっている。
大映京都で助監督をしていた加藤泰が監督に抜擢され手がけた劇映画デビュー作『剣難女難』前後篇を含む5作品を上映する。
加藤泰は宝プロについて「日本最低のプロダクションと云われていた」と繰り返し発言しているが、映画はとても最低とは思えない豪華版である。
 
「剣難女難 第一部・女心流転の巻」
(1951/70分/16mm)
製作:高村将嗣 監督:加藤泰 脚本:木下藤吉
原作:吉川英治 撮影:藤井春美 音楽:高橋半
出演:黒川弥太郎、市川春代、堀正夫、加賀邦男、阿部九州男、澤村國太郎、東龍子
加藤泰監督の記念すべき劇映画第一作。吉川英治原作の痛快娯楽時代劇。主人公、福知山藩の春日新九郎は剣が全くダメな武士。兄の重蔵が宮津藩との剣道試合で自斉に破れため、兄共々藩を追われた。許嫁・千浪に横恋慕する玄蕃に命を狙われ、それを助けた女に惚れられるなど紆余曲折。江戸の道場に入門し剣に励むが、ある日、宿敵の自斉が現れ試合するも惨敗。その後、将軍家綱の側室の姉・お光の方に見初められ愛欲に溺れる。
 
「剣難女難 第二部・剣光流星の巻」
(1951/71分/16mm)
スタッフは第一部に同じ
出演:黒川弥太郎、市川春代、堀正夫、加賀邦男、阿部九州男、徳川夢声、澤村國太郎、東龍子
玄蕃に父を殺された千浪が、兄の重蔵とともに江戸に出てきた。新九郎は、お光の方から離れ賭場を転々とし、巷では「御曹子の新九郎」と呼ばれていた。千浪と重蔵に出会えた新九郎は心機一転、信州の山奥で剣の修行に励む。お光の方の取り計らいで宿敵・自斉との御前試合が実現。千浪と病に伏した重蔵は剣の達人となった新九郎の勝利を祈った。
加藤泰は「チャンバラ映画への初心とウンチクを、この前後篇一万三千呎のチャンバラにつぐチャンバラへ、唯一筋に、何の衒いもなく傾けて、脇目もふらず撮りあげたと言えるのを、今でも嬉しく思っている」と回想している。総集版も存在するが、今回は一、二部別々の最長版を上映。
 
 
「神変美女峠 解決篇 又四郎笠」
(1951/70分[一部欠落]/16mm)
製作:高村将嗣 監督:萩原章 脚本:豊田栄、萩原章
原作:山手樹一郎 撮影:藤井春美
出演:黒川弥太郎、市川春代、花井蘭子、大友柳太郎、高山廣子
 
山手樹一郎原作「又四郎行状記」の映画化。萩原章監督のデビュー作『神変美女峠』の続篇で、松平家の三男・源三郎と多恵姫との縁組みを妨害し、お家乗っ取りを企てようとする陰謀を、黒川弥太郎が演じる主人公・笹井又四郎が阻止する勧善懲悪の物語。なお、萩原章は萩原遼監督の弟。プリント状態は不良で約13分欠落している。
 
 
「天草秘聞 南蛮頭巾」
(1952/76分/16mm)
製作:高村将嗣 監督:丸根賛太郎
脚本:木下藤吉、丸根賛太郎
撮影:喜多村幸三郎、近藤憲昭
音楽:高橋半 美術:鈴木正治
出演:黒川弥太郎、川喜多小六、大友柳太朗、宮城千賀子、御園裕子、菅井一郎、市川男女之助、鳳衣子、植村謙二郎、飯田覚三、加賀邦男、堀正夫、吉田義夫
 
寛永十四年(1637年)徳川三代将軍家光の治世、鎖国を断行して他国との交渉を断った徳川幕府はキリスト教を弾圧。それまでキリスト教徒の安住の地だった天草は迫害の地に変わった。領主の圧制に喘ぐ農漁村を舞台に、領主に叛逆する浪人たちと救世主のように現れた天草四郎の活躍を描く。『春秋一刀流』の丸根賛太郎監督が見せるサイレント時代劇風の画づくりは見事。
 
 
「ひよどり草紙」
(1952/73分[一部欠落]/16mm)
製作:高村将嗣 監督:加藤泰 原作:吉川英治 脚本:野島信吉
撮影:松井鴻 音楽:高橋半
出演:重光彬、星美千子、江見渉、沢村マサヒコ、沢村国太郎、朝雲照代、河野秋武、鳳衣子、故里ひびき、坊屋三郎、益田喜頓、山茶花究
 
徳川家康が一朝有事の際にと人知れず埋蔵した莫大な軍用金の在処を示す地図を秘めた紅ひよどりを求めて美剣士、美女が入り乱れる。坊屋三郎ら喜劇人の歌や踊りを盛り込んだ宝プロならではの娯楽大作で、子役の津川雅彦(沢村マサヒコ)が活躍するほか、配役には阿部九州男、綾小路絃三郎、河部五郎、市川男女之助など往年の大スターを起用し、活動写真ファンだった加藤泰が喜々として取り組んだ様子が読みとれる。加藤は「再びチャンバラにつぐチャンバラを、初心に帰り、丁寧に撮った映画である。撮影は昭和廿七年の夏の終りから秋にかけての、酷しい残暑の頃。その時かけずり廻った、京都近郊のロケ地の多くは、開発の嵐にのみこまれて、その頃の面影を失おうとしている」と回想。残念ながら約15分欠落したプリント。
 

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1000円 学生・シニア900円
会員900円 会員学生・シニア800円

《割引》
2本目は200円引き


春の時代劇まつり
2013年3月2日(土)・3日(日)
Aプログラム
「続水戸黄門」(楠公篇)
(1928/部分12分[16コマ]/無声/16mm)
総指揮:池永浩久 監督・脚本:池田富保
助監督:渡辺邦男、坂本信
撮影:井隼英一、中西与之助
出演:山本嘉一、三桝豊、磯川金之助、桜木梅子、久米譲
荒果てた楠木正成の墓を目にした徳川光圀は、墓前で菊水の旗のもと湊川で足利軍と戦い敗れ自害した正成を偲び、「嗚呼忠臣楠子之墓」の碑を建立し、盛大に法要を営むのだった。神戸が舞台の珍しい無声映画。
 
「さむらひ鴉」
(1935/53分[不完全]/16mm)
監督:池田富保  脚色:滝川紅葉
原作:子母沢寛  撮影:町井春美
音楽:白木義信  
出演:黒川弥太郎、鳥羽陽之助、山本礼三郎、光岡龍三郎、上田吉二郎、花井蘭子、衣笠淳子、五月潤子
国定忠治の子分、友五郎の母が危篤で許嫁のお久が赤城山まで知らせに来た。故郷に帰るとすでに母は亡くなり、お久の父らに金を騙し取られて実家は傾いていた。友五郎はお久の父を斬るが、恨んだお久を連れ落ち延びてゆく。利根川のシーンは滋賀県の近江八幡水郷で撮影されたと思われ、堅田船が行き交う。
 
Bプログラム  
「清水次郎長伝」
(1929/部分17分[16コマ]/無声/16mm)
監督:沖博文 脚本:大国狂助 撮影:永井政次
出演:阪東妻三郎、中村政太郎、中村吉松、志賀靖郎、小松峰子
次郎長は病む妻のお蝶と子分の森の石松を連れ尾張瀬戸まで落ち延びた時、小川の勝五郎に助けられる。次郎長のお陰で尾張一の大親分となった保下田の九六に勝五郎と次郎長は援助を求めるが、恩知らずの九六は凶状持ちの次郎長に御用の捕手で迫る。上映の機会が少ない阪妻映画。
 
「主従無上」
(1940/45分[不完全]/16mm)
監督・脚色:田崎浩一 原作:土師清二
撮影:近藤憲照 音楽:高橋半
出演:月形龍之介、原健作、河部五郎、深水藤子、月宮乙女
鳥類の捕獲を禁じた御鷹場で雀部善馬は従者の萬助から銃を受け取り鴨を撃ち落とした。銃声を聞いて駆けつけた御鷹見役は銃を取り上げようとして善馬に斬られたが、それは萬助の父であった。萬助にとって親切な主人が仇となり苦悩する。萬助役の原建作、その妹役の深水藤子が初々しい。
 
Cプログラム
「野狐三次」
(1930/部分22分[16コマ]/無声/16mm)
監督:小石栄一 脚本:赤木一平 撮影:円谷英一
出演:林長二郎、千早晶子、浦浪須磨子、日下部竜馬、関操
悪旗本の長谷川に頼まれた火消しの庄吉が秋田屋の娘・お糸を連れ去ろうとした時、「に組」の火消し三次が助ける。三次は長谷川とお糸の結婚式を妨げ旗本屋敷で大乱闘。その時、半鐘の響きを聞いた三次は火事場に駆けつけ庄吉と対決、纏を揚げ「に組」の面目を取り戻したのだった。傾向映画の小石栄一、特撮監督・円谷英二(本名・英一)の若き日の仕事が見どころ。
 
「大江戸七変化」
(1949/39分[不完全]/16mm)
企画:辻久一 監督:木村恵吾
脚本:柳川真一 撮影:牧田行正
音楽:佐藤顕雄 美術:川村鬼世志
録音:中村敏夫 照明:森下喜一
出演:市川右太衛門、坂東好太郎、大友柳太郎、杉狂児、香川良介、相馬千恵子、橘公子、大美輝子、佐川悦子、上田吉二郎、葛木香一、原聖四郎
金山を発見した加賀屋半次郎は、旗本の硲主水正らに横領と放火の罪をきせられ島送りになる寸前に脱獄。旗本一味の金山横領に気づいた大岡越前守は半次郎の無実を証し、旗本らの悪行を暴く。欠落が多いが珍しい右太衛門映画。
 

《料金》入れ替え制
1プログラムあたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
2プログラム目は200円引き


『あるいは佐々木ユキ』公開記念
福間健二監督作品集
2013年2月15日(金)〜19日(火)
 
「急にたどりついてしまう」
Suddenly Arriving
(1995/90分/35mm)英語字幕版
製作・配給:タフ・ママ
製作:本多昇、禰屋順一、福間健二
監督・脚本:福間健二
撮影:小西泰正 照明:櫻井雅章
同期同時録音:浅沼幸一
編集:金子尚樹 記録:田中小鈴
制作:サトウトシキ、瀬々敬久
音楽:THE WAR BABYS、dè-ga-show
出演:伊藤猛、松井友子、北風太陽、今泉浩一、小林節彦、田中要次、伊藤清美
 
『急にたどりついてしまう』は詩人福間健二による初の長編劇映画である。
舞台は東京郊外の町。ソーセージ屋で働く青年信次。彼の出会った女の子リサ。二人をとりかこむさまざまな人物たち。《いつのまにか大事な場面に立ち会っている》それぞれの春。
『急にたどりついてしまう』は、この地上に生きる者たちの息づかいをしっかりとつかまえたリアルライフ・ムーヴィーだ。
 
福間健二は『結婚入門』『行儀のわるいミス・ブラウン』『きみたちは美人だ』『旧世界』といった詩集で、現在の生活風景の隅々にまで言葉を届かせながら、新鮮な映画的イメージを紡いできた。同時にその一方で、1960年代からの映画体験にこだわりつづける独自な視点をもった映画批評を書き、さらに映画を撮りたいという夢を育んできた。
その夢は、彼がこのところ交流をもってきた瀬々敬久、サトウトシキ、上野俊哉、松岡邦彦といったピンク映画の俊鋭監督たちの全面的な協力によって、一気に実現されることになった。
『急にたどりついてしまう』というタイトルは、福間健二の詩集のひとつの題をそのまま持ってきたものだが、作品の内容ばかりでなく、この映画が作られるにいたった過程をも語っているように思えてくる。
 
「岡山の娘」
My Dear Daughter of Okayama
(2008/92分/HD[ブルーレイ上映])
製作:tough mama、岡山映画祭実行委員会、幻野映画事務所
製作:福間恵子
脚本・監督:福間健二
撮影・照明:大西一光 音楽:吉田孝之
録音:進巧一、折元亮 記録・編集:福間雄三
 
出演:西脇裕美、家ノ上美春、石原ユキオ、季羽和喜、入海洋一、東井浩太郎、岡本文子
 
『岡山の娘』は、詩人福間健二の、『急にたどりついてしまう』以来13年ぶりの監督作品である。
日本の地方都市岡山の、ひとりの娘の夢と現実、ひと夏の経験。彼女と彼女をとりまく人々の物語。だれもが立つ地面に詩をひきよせる、いままでになかった語り方の映画である。
私たちはいま、ここで、何に抗議し、何を許すべきなのか。
近年、詩集『侵入し、通過してゆく』と評論集『詩は生きている』で話題をあつめた福間健二が、根底に人間へのあたたかい肯定のまなざしをもって、世界と映画への新しいヴィジョンをつむいでいる。
撮影は、『映画の記憶』『IZANAMI』『青空(映画の記憶2)』を撮影・監督した大西一光。
音楽は、朗読テープ『地下帝国の死刑室』を福間健二と作った吉田孝之。
主演の西脇裕美は、オーディションで選ばれた新人。そのほかのスタッフ・キャスト全員が、この映画への呼びかけに応えて参加した岡山在住の人たちである。
生きる。傷つく。誘惑する。
魅力あふれる岡山の娘たちが駆け抜けるリアルライフ+ファンタジーのなかに、「私たちがいま出会うべき大事なもの」が生まれ、未来への視界をさえぎられて疲労のなかにうずくまるように見えるこの世界へと、あざやかに発信される。
 
「わたしたちの夏」
Summer for the Living
(2011/89分/HD[ブルーレイ上映])
製作・配給 tough mama
製作:福間恵子
脚本・監督:福間健二
撮影:鈴木一博 編集:秦岳志
音響設計:小川武
 
出演:吉野晶、小原早織、鈴木常吉、千石英世、松本雅恵、川野真樹子
『岡山の娘』から3年。
冒険的な映像構成に体温とやさしさを引きよせる福間健二の新作です。
詩と映画を結びつけるその果敢な挑戦が、日本が大きく揺れたいまこそ見てもらいたい作品として、そして何よりも女性たちへのオマージュとなる作品として、結実しました。
〈映画は、夢と現実をひとつにする。そして、ひとは、どんなに遠い夢に迷い込んでも、生きて、現実に帰ってくることができる〉。
二人の女性。アラフォー世代と20歳前後。戦争と死者を思い出す日本の夏。
〈つらいこと、苦しいことのなかにこそ、自分を救ってくれるものがある〉。
生きていること、その大切さ。夏の光と影、女性たち、植物の生命力。
この世界の隠された「蜜」を感じとる映像と言葉が、あなたを誘い、あなたに問いかけます。
ヒロイン千景には、瀬々敬久監督『汚れた女〈マリア〉』(98)以来の主演作となる吉野晶。その千景の元恋人・庄平を、一昨年TVドラマ『深夜食堂』のオープニング曲「思ひ出」が話題になった歌手の鈴木常吉、その娘・サキを新人の小原早織が演じます。
この三人をメインに、個性豊かな人物たちが、それぞれの言葉と存在感をもって登場します。
撮影は『ヴァイブレータ』『blue』『あしたの私のつくり方』などの鈴木一博、編集は『エドワード・サイード OUT OF PLACE』『チョコラ!』などの秦岳志、音響設計には『ぐるりのこと』『マイ・バック・ページ』などの小川武が参加しています。
 

《料金》
【各作品】1000円
*「あるいは佐々木ユキ」の半券提示で100円割引


『二つの祖国で 日系陸軍情報部』公開記念
「東洋宮武が覗いた時代」「442 日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍」
 
すずきじゅんいち監督、渾身の日系史ドキュメンタリー
三部作一挙上映!
 
2012年12月21日(金)〜23日(日)「東洋宮武が覗いた時代」
撮った。生きた。戦った。
かつてアメリカに日系人強制収容所があった—
第二次大戦中、アメリカ政府は市民権を持つ日系人、在米日本人を強制的に収容所に押し込めました。その収容所に禁じられたレンズを隠し持ち、手製のカメラを完成させて、その実態を写した写真家がいました。東洋宮武、その人です。そして東洋と親交があった20世紀を代表する写真家アンセル・アダムスとエドワード・ウェストン。彼らの作品と共に、東洋の500枚の写真で証言しながら、収容所の真実と日系人の歴史を描く感動のドキュメンタリーです。
「東洋宮武が覗いた時代」Toyo’s Camera
(2008/日米合作/98分/HD[ブルーレイ上映])
製作:Toyo’s Camera Film Partners(UTB フイルムヴォイス 東北新社 米国日本ハム)
制作:UTB+フイルムヴォイス
企画・脚本・監督:すずきじゅんいち 
撮影監督:小渕将史(UTB)、本間秀幸(日本部分) 
編集:水原徹 音楽:喜多郎
出演:アーチーミヤタケ、ダニエルイノウエ、ジョージタケイ、渡部昇一、細江英公、ジミーサコダ、スティーブンオカザキ
 このドキュメンタリーに写る約500枚の写真にアンセル・アダムスとエドワード・ウェストンの作品も登場。風景写真の第一人者として有名なアダムスが写したものは収容所の人物主体の写真でした。東洋が師と仰ぐウェストンは8×10インチの大判カメラを使用する先鋭的な写真家。収容所でのふたりの感動的な出逢いは、我々に深い感銘を与えます。監督はアメリカ在住のすずきじゅんいち。初のドキュメンタリー作品。
[公式サイト]
 
2012年12月24日(月・祝)・25日(火)・28日(金)「442 日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍」
 
名誉のために命を賭け、栄光と偏見に挑んだ65年目の真実。
兵士たちの最後の証言で綴るドキュメンタリー
知られざる歴史のヴェールが開かれる!

 
「442 日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍」
442 Live with Honor, Die with Dignity
(2010/日米合作/97分/HD[ブルーレイ上映])
製作:442フィルムパートナーズ(UTB フイルムヴォイス NTTラーニングシステム、かねふくアメリカ、米国日本ハム、トレンド社)
制作:UTB+フイルムヴォイス
企画・脚本・監督:すずきじゅんいち 
撮影監督:小渕将史 
編集:水原徹 音楽:喜多郎
 アメリカ陸軍442連隊は、第二次大戦時に日系二世で編成された部隊で、アメリカ軍史上最も多くの勲章を受けた。
 本作は父母の祖国・日本と戦う苦悩を抱えながら、アメリカの中で人種差別と戦い、ヨーロッパ戦線ではファシズムと戦った伝説の兵士たちのドキュメンタリー。終戦後、トルーマン合衆国大統領は「諸君は敵だけでなく偏見とも戦い、勝ったのだ」と賛辞を送り、自ら生還者を激励した。
 アメリカ国内における日系人の地位向上に寄与しただけでなく、フランスをはじめとしたヨーロッパ諸国では、長期間ナチスドイツに占領されていた自分たちの町を解放に導いたヒーローとして、現在も語り継がれている。
 しかし、日系人強制収容所から出征した兵士たちが、ユダヤ人強制収容所を解放したという真実は、ほとんど知られていない。
 日系アメリカ人として、星条旗を背負って戦う自尊心と愛国心、その一方で敵性国民に指定された人種差別への怒りと哀しみ、葛藤を描いた問題作。現在、元兵士たちは80代半ばから90代と高齢になり、当事者たちによる貴重な証言はこれが最後になるかも知れない。
 
「東洋宮武が覗いた時代」に続く米国日系人史映画の第二作目。前作同様、監督はベテランのすずきじゅんいち、音楽はゴールデングローブ賞やグラミー賞受賞者の喜多郎、その他メインスタッフも、同じメンバーである。 ハリウッドの日米バイリンガル放送局UTBと、日本からはフイルムヴォイスが共同で製作に当る。
 
[公式サイト]
 

《料金》
【当日券】1000円


キートン × ベケット──『フィルム』を中心に
2012年12月15日(土)・16日(日)
サミュエル・ベケットの唯一の映画作品にして、バスター・キートンの最晩年の出演作『フィルム』。この二人の邂逅を出発点に企画した特集上映です。
 
[関連企画] 12月15日(土)
神戸映画資料館レクチャー:映画の内/外
第11回 音・イメージ・言葉──キートン×ベケット=幽霊
講師:木内久美子(比較文学研究、東京工業大学)

Aプログラム
「フィルム」Film
(アメリカ/1965/20分/DVD上映)
監督:アラン・シュナイダー 脚本:サミュエル・ベケット
撮影:ボリス・カウフマン
出演:バスター・キートン
キートンが死去する約一年半前に撮影された作品。すでに癌に冒され体調が芳しくなかったキートンは、当初は出演に乗り気ではなかった。だが映画史家ケヴィン・ブラウンローに、「あなたにとって『天井桟敷の人々』のような作品になるかもしれない」と説得され、出演を決心した。冒頭でキートン演じる主人公がカメラの視線を逃れんと疾走する姿が印象的だ。カメラは主人公を執拗に追いかける。両者のチェイスは街頭の人々を巻き込みながら、室内戦へもつれこむ。逃げ場を失った主人公を待ちうける結末とは?
「キートンの空中結婚」The Balloonatic
(アメリカ/1923/27分[18コマ映写]/16mm)
監督:エディ・クライン、バスター・キートン
出演:バスター・キートン、フィリス・ヘイヴァー
キートンが長篇作に移行する1923年に公開された短篇喜劇の最後の時期の傑作。スマートにアウトドアレジャーを満喫する女性と、それと対照的なキートンの悪戦苦闘ぶりが素晴らしい。
 
Bプログラムサミュエル・ベケットのテレビ作品
「幽霊トリオ」Geister Trio
(ドイツ/1978/30分/DVD上映)
BBCおよび南ドイツ放送で「亡霊/影たち」という番組で放映された作品のひとつ。A(遠景)・B(中景)・C(近景)の三点固定で撮影された作品。『幽霊トリオ』という題名は、作品中で繰り返し聴こえてくるベートーヴェンのピアノ三重奏曲『幽霊』の第二楽章第二主題による。テレビという表現媒体で、目に見えない「幽霊」をどう表現するのか──これこそが、この作品の課題である。作品冒頭では全面白壁の室内が映され、続いて女性の声が観客をその室内へと誘う。そこには一人の男が何かを抱えて座っている。すると不意に音楽が聴こえてくる。女の声と男の動作、さらに音楽という三者が反復的に組み合わせられるなかで、「幽霊トリオ」の正体が浮かび上がる。
 
「……雲のように……」… nur Gewölk …
(ドイツ/1978/15分/DVD上映)
『幽霊トリオ』同様、「亡霊/影たち」で放映された作品。作品のタイトルは、W・B・イェイツの詩「塔」の一節からとられている。イェイツの詩に似て、『……雲のように……』では、男が亡き女の幻影を想う。不意に画面に現れる女の顔。だがそれはすぐに消える。女の顔は男性の夢想なのか、それとも亡き女の幽霊的な現れなのか。画面上ではこの二つのイメージが交錯している。
 
「夜と夢」Nacht und Träume
(ドイツ/1983/10分/DVD上映)
南ドイツ放送局の依頼でベケットがドイツ語で執筆した作品。作品中で聴こえてくる音楽は、シューベルトの歌曲『死と乙女』である。この歌曲では若い女と死神との対話が歌われる。若い女は死神を拒むが、死神は穏やかな死へと女を誘う。同様に『夜と夢』でも、死との穏やかな和解の兆しが描かれている。覚醒状態と夢とを行き来するなかで、主人公は聖餐に似た儀式を夢に見る。
 

《料金》入れ替え制1プログラムあたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
2プログラム目は200円引き
[レクチャー:第11回 音・イメージ・言葉──キートン×ベケット=幽霊] 参加者は1プログラム目も200円引き

企画:木内久美子、神戸映画資料館 協力:Samuel Beckett Estate


年忘れ幻の時代劇
2012年12月8日(土)・9日(日)
「忠臣蔵」
(1933/139分/35mm)
監督・原作・脚本:衣笠貞之助 撮影:杉山公平
音楽:塩尻清八、杵屋正一郎 美術:吉川観方
出演:阪東寿三郎、林長二郎、市川右太衛門、田中絹代、川崎弘子、岡田嘉子
 
日本初の土橋式トーキーは現代劇では『マダムと女房』、時代劇ではこの『忠臣蔵』。林長二郎や市川右太衛門が二役を演じるなど豪華キャストが見どころ。長年、幻の映画と思われていたが35mmの可燃性フィルムが1970年代に三重県で発見され、不燃化プリントが1975年の第12回なにわ芸術祭古典映画鑑賞会として大阪のサンケイホールで初上映された。当時のチラシには「幻の名画遂に発見! 幾多の紆余曲折をへて奇跡的に発見! 天の巻・地の巻一挙上映!」とある。「大忠臣蔵」と改題されたプリントで、途中に『赤垣源蔵』(1938)の一部が挿入されているほか、音声が良好でないことをお断りしておく。
   
「寶の山に入る退屈男」
(1938/65分/16mm)
監督:西原孝 原作:佐々木味津三
脚本:原健一郎 撮影:竹野治夫
音楽:深井史郎
出演:市川右太衛門、高山廣子、國友和歌子、甲斐世津子、原聖四郎
佐々木味津三による大衆小説を原作に、市川右太衛門が主演して1930年に最初の「旗本退屈男」が作られた。以後、右太衛門の当たり役となり、戦後は東横から東映の時代劇シリーズとして定着していった。この『寶の山に入る退屈男』は戦前に作られた最後のシリーズ作品。額に三日月傷でお馴染みの早乙女主水之介が、秩父山中に残された武田家の軍資金百万両を巡る地図争奪戦の中で大活躍する。
 

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
2本目は200円引き


ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク ドイツ三部作
11月3日(土)・4日(日)、9日(金)〜11日(日)
 
1970年代、ニュー・ジャーマン・シネマの時代に発表され、注目を集めたジーバーベルクの「ドイツ三部作」を一挙上映。ナチズムを生み出した近代ドイツを前衛的手法で描き出し、ドイツ国内では激しい議論を呼ぶ一方、国際的な評価を得た作品群である。
 
「ルートヴィヒII世のためのレクイエム」
Ludwig- Requiem für einen jungfräulichen König
(ドイツ/1972/134分/DVCAM上映)
監督・脚本:ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク
撮影:ディートリヒ・ローマン
出演:ハリー・ベア、ペーター・ケルン、ペーター・モーラント、ギュンター・カウフマン
 
バイエルン国王であり、リヒャルト・ヴァーグナーのパトロンとしても知られるルートヴィヒII世(1845-1886)。ヴァーグナーのオペラを髣髴とさせる書き割りセットを背景に、ルートヴィヒII世をめぐる夢幻的な物語が、ヴァーグナーからヒトラーを結ぶドイツ史を照らし出す。既存の映画美学を否定する「未来の音楽としての映画」として制作された「ドイツ三部作」の第一作。
   
「カール・マイ」Karl May
(ドイツ/1974/182分/DVCAM上映)
監督・脚本:ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク
撮影:ディートリヒ・ローマン
出演:ヘルムート・コイトナー、クリスティーナ・ゼーダーバウム、ケーテ・ゴルト、アッティラ・ヘルビガー
ドイツの冒険小説家カール・マイ(1842-1912)の半生を描いた「ドイツ三部作」の第二作。ネイティヴ・アメリカンと白人の友情を描いた「ウィネトウ」を始め、映画化されたマイの小説は多数。ヒトラーも熱烈な愛読者だったと言われる。マイを演じるヘルムート・コイトナーは、40年代から50年代にかけてのドイツを代表する映画作家。クリスティーナ・ゼーダーバウムなど、ナチ時代のスター俳優も出演。
 
「ヒトラー、あるいはドイツ映画」
Hitler – Ein Film aus Deutschland
(ドイツ/1977/410分/DVCAM上映)
第1部「盃」(91分)
第2部「ドイツの夢」(126分)
第3部「冬物語の終わり」(93分)
第4部「われわれ、地獄の子どもたち」(100分)
 
監督・脚本:ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク
撮影:ディートリヒ・ローマン
出演:ハインツ・シューベルト、ペーター・ケルン、ヘルムート・ランゲ、ライナー・フォン・アルテンフェルス
 
「ドイツ三部作」の掉尾を飾る最大の問題作。ヒトラーおよびドイツ史をめぐるさまざまな視覚的、音楽的、言語的要素のシュールレアリスティックな混合。ジーバーベルクの目指す「ブレヒト+ヴァーグナー」の壮大な実験であると同時に、「未来の音楽としての映画」の完成形を模索する。スーザン・ソンタグから「20世紀最高の芸術作品かつ史上最高の映画」と激賞された。
 
 
共催:ドイツ文化センター・大阪、神戸映画資料館
協力:アテネ・フランセ文化センター

《料金》入れ替え制
1プログラムあたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
2プログラム目は200円引き


「マルグリット・デュラスのアガタ」
2012年7月13日(金)〜22日(日)[水・木休館]

「マルグリット・デュラスのアガタ」Agatha et les lectures illimitées
(フランス/1981/86分/35mm)配給:ジェイ・ブイ・ディー
監督・脚本:マルグリット・デュラス
撮影:ドミニク・ルリゴール、ジャン=ピエール・ムーリス
編集:フランソワーズ・ベルヴィル
出演:ビュル・オジェ、ヤン・アンドレア
声の出演;マルグリット・デュラス、 ヤン・アンドレア
 
愛の作家デュラス、「終わりなき朗読」
永遠の別れのために冬の海辺で再会をはたす兄と妹。二人の秘められた愛の記憶が、断片的な映像とデュラス自身の朗読によって語られていく。ジャック・リヴェット作品などで鮮烈なイメージを残すビュル・オジェとデュラスの当時38歳年下の恋人ヤン・アンドレアの美しい孤独と彷徨が、言葉とイメージ、身体と声、死と生、すべてのものがラジカルに分離する世界で描き出される。小説「愛人」や「ヒロシマ、モン、アムール」で著名だが、映画監督として『インディア・ソング』や『破壊しに、と彼女は言う』など数多くの作品を監督しているものの日本では上映の機会が稀だった「映画作家」デュラスの真髄がここにある。本作はゴダールとの共同企画の後に執筆された小説を自身で監督したものである。
 
予告篇
 

《料金》
一般1500円 学生・シニア1300円
会員1300円 学生会員・シニア会員1200円
リピーター1000円
(半券をご提示ください)
 
※初日7月13日(金)先着10名様に35㎜カットフィルムをプレゼント!


妄想の操り師 石井輝男
2012年6月22日(金)〜24日(日)
〈キング・オブ・カルト〉の石井輝男監督が、晩年に自らプロダクションを興し製作した3作品を一挙上映。フィルムによる保存を目的として作られた『盲獣vs一寸法師』の35ミリプリントを関西初公開する。
 
「山根貞男 連続講座 〈新編:活劇の行方〉 5」でも石井輝男を取り上げ、その活劇世界を論じていただきます。
[関連企画] [山根貞男 連続講座〈新編:活劇の行方〉5]
 
写真右:『盲獣vs一寸法師』撮影中の石井輝男監督 左:丹波哲郎
 
「盲獣vs一寸法師」
(2001/95分/35mm)
製作: 石井プロダクション
監督・脚色・撮影:石井輝男
原作:江戸川乱歩
美術:鈴屋港、八木孝
音楽:藤野智香
 
出演:リリー・フランキー、塚本晋也、平山久能 、藤田むつみ、リトル・フランキー、丹波哲郎、及川光博、しゅう、手塚眞、園子温、中野貴、熊切和嘉
 
江戸川乱歩の「盲獣」と「一寸法師」をもとにした猟奇ミステリー。石井輝男が製作・監督・脚色、そして撮影まで手がけた異色の自主製作映画にして遺作である。デジタルカメラで撮影された低予算映画ではあるが、石井輝男の職人的な演出術がきわだっている。フィルムによる保存を目的として今年2012年に作られた35ミリプリントで上映する。当時映画初出演のリリー・フランキーが主演。
 
「注目すべきは、呆然とするほど安っぽいのに、全篇、どの画面もきちんと形をなし、有機的な関係のもとに画面が展開されていって、運動感を刻み出すことである。だから、チープさにほとほと呆れつつ、見る人によるかもしれないが、馬鹿馬鹿しさを楽しめる。つまりショットが成立しているのである。そして、そのことはDVカメラで撮影されたという製作過程のあり方と何にも関係がない。」(山根貞男/「キネマ旬報」2004年5月下旬号「日本映画時評188」より)
 
 
「地獄」
(1999/101分/35mm)
製作: 石井プロダクション
監督・脚本:石井輝男
撮影:柳田友貴
音楽:竹村次郎
美術監督:原口智生
出演:佐藤美樹、前田通子、斉藤のぞみ、丹波哲郎、平松豊、鳴門洋二、大地輪子、若杉英二
 
世紀末の日本を騒がしたカルト教団、連続幼女殺害事件、毒入りカレー事件…。これら実際に起きた事件の犯人たちが地獄で裁かれる。石井輝男のキワモノ魂が炸裂。伝説のグラマラス女優・前田通子が閻魔大王を演じている。
 
 
「ねじ式」
(1998/85分/35mm)
製作: 石井プロダクション
監督・脚色: 石井輝男
原作:つげ義春
撮影: 角井孝博
美術:松浦孝行
音楽:瀬川憲一
 
出演:浅野忠信、藤谷美紀、金山一彦、丹波哲郎、アスベスト館
 
つげ義春の漫画4篇(「別離」「もっきり屋の少女」「やなぎ屋主人」「ねじ式」)をオムニバス形式で映画化。主人公である売れない貸本漫画家ツベを浅野忠信が演じている。スーパー16ミリからのブローアップ。
 
「つげ義春も石井輝男も、明らかに現実体験にこだわるぶん虚構意識が強い。妄想性がそれを示している。
つくりものに対する尋常ならざる執着といいかえてもいい。つげ義春でいえば、なによりの現れは漫画「ねじ式」のデタラメなまでの超現実性であり、(略)それらはまさに夢でしかない荒唐無稽な世界だが、石井輝男はストレートに受け止め、忠実に模型やセットでスクリーン上に描き出す。」(山根貞男/「ねじ式」パンフレットより)
 

わが狂気をえがくためには、
  
 理屈はいらない、ストーリーもいらない、予算と役者はほどほどでいい。
 イメージさえあればいい───。
 石井輝男監督の遺作となった『盲獣VS一寸法師』は、2001年にビデオで作られたものだったため、なんとかフィルムで保存しておこうということになり、最近その試写が行われた。東映時代の問題作『恐怖奇形人間』(1969年)と原作が同じ乱歩ということもあって、32年の間隔はあるものの連作の思い入れがあったと考えられる。晩年、「キング・オブ・カルトムービー」ともてはやされていた石井さんは、本当に確信をもってわが狂気に向かい合っている。あんなにも折り目正しい紳士である石井さんに、その覚悟がごく自然に膨らんでいったのはなぜなのか。1950年代から60年代にピークを迎えた日本映画の一角を確実に支えた石井さんが到達した表現が女体であり、流れる血であり、バラバラにされた手と足だった。単なる猟奇趣味では決してない。一部の浮世絵にみられるような血みどろの世界、そして春画が石井さんの心象の奥に拡がっていたことは間違いない。彼は青春時代を浅草で過ごし、浅草で映画を学んでいる。あのダンディーは、江戸文化に裏打ちされていたのだ。
 「来なかったのは軍艦だけ」と言われた東宝大ストで、共産党にコリゴリという人達が新東宝に結集。石井さんもその一員。新東宝の組合は当初みどりの旗をかかげて東宝の配給網を支えていたが、経営側にも分裂が伝染して東宝と対立し、私たちが新東宝に助監督として入社した1955年頃にはもう赤旗を振っていた。その頃、石井さんはチーフ助監督。清水宏、成瀬巳喜男という日本映画の中軸ともいうべき監督に付いていた。57年に石井さんは監督デビュー、われわれは喜んで石井組に付いた。ところが配給網が弱体だった新東宝は、6社体制から弾き飛ばされて61年に潰れる。東映から移籍した石井さんは、しゃれたギャングものから『網走番外地』でヒットを飛ばし、68年から73年にかけ独自のエログロ路線を突っ走る。その東映京都撮影所で、石井監督排斥運動が起きたことも忘れられない。女優さんを裸にして縛り上げ拷問するとかいうことで、ハレンチに騒がれたのだが、石井さんはビクともしなかった。東映大泉からは小松範任・伊藤俊也両氏から京都批判が展開され、私たち新東宝時代の石井組の面々も両氏に共感した。撮影所の中で、監督の表現をめぐる排斥運動があり、撮影所横断的に石井監督支持の動きもあったという事実は正当に伝えられるべきだ。そうしたねじれの続く映画史の中で、石井さんはわが狂気の表現に到達した。上記の乱歩原作2作をぜひ見たうえで検証してほしい。
 
 山際永三(日本映画監督協会会報「映画監督」2011.9 №656より転載)

石井輝男(1924-2005)
清水宏や成瀬巳喜男などの助監督をつとめた後、1957年『リングの王者・栄光の世界』で監督デビュー。代表作に『花と嵐とギャング』(1961)、『黒線地帯』、『黄線地帯(イエローライン)』(1960)、「網走番外地」シリーズ(1965-67)などがあり、『徳川女系図』(1968)、『徳川いれずみ師・責め地獄』、『江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間』(1969)などの〈異常性愛路線〉が再評価され、〈キング・オブ・カルト〉の監督として人気を博す。90年代に入り、10年以上のブランクの後、映画界に復活し石井プロダクションとして3作品を自主製作した。

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
2本目は200円引き


初夏の名画座 ジャン・ルノワール 1
2012年6月16日(土)・17日(日)
「素晴らしき放浪者」
Boudu Sauvé des Eaux

(フランス/1932/84分/16mm)
監督・脚本:ジャン・ルノワール
原作:ルネ・フォーショワ
撮影:マルセル・リュシアン
出演:ミシェル・シモン 、シャルル・グランヴァル 、マルセル・エニア、セブリーヌ・レルシンスカ、ジャック・ベッケル
 
セーヌ河に身投げしたブーデュ(ミシェル・シモン)を助けた古書店の主人は、彼を一家に招き入れる。しかし、自由人ブーデュは恩も感じずやりたい放題で……。
画家オーギュスト・ルノワールの息子として生まれ、ヌーヴェル・ヴァーグの父となったジャン・ルノワールの傑作。放浪者ブーデュの遺伝子は、グルジアの映画作家イオセリアーニなどにも受け継がれているだろう。
 
 
「ピクニック」Partie de Campagne
(フランス/1936-46/40分/16mm)
監督・脚本:ジャン・ルノワール
原作:ギイ・ド・モーパッサン
撮影:クロード・ルノワール
出演: シルヴィア・バタイユ、ジョルジュ・ダルヌー、ジャヌ・マルカン、ジャック・ボレル 、ガブリエル・フォンタン
 
モーパッサンの短篇を下敷きにした作品。田舎にパリから遊びに来た家族を、陽光と水面の美しい情景とともに描く。撮影から10年の後、助監督だったジャック・ベッケルらが編集して完成させた。
[併映]「チャールストン」Sur un air de Charleston
(フランス/1927/25分[16fps]/サイレント/16mm)
監督:ジャン・ルノワール 撮影:ジャン・バシェーレ
出演:カトリーヌ・エスラン、ジョニー・ハギンズ、ピエール・ブラウンベルジェ、ジャン・ルノワール
 

《料金》入れ替え制
1本あたり
会員900円 学生会員・シニア会員700円
《割引》2本目は200円引き
*非会員のかたは、1日会員(登録料100円)のご登録でご覧いただけます。


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