プログラムPROGRAM

20世紀傑作映画 再(発)見

連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第12回 小津安二郎と『東京物語』

2021年11月27日(土)・28日(日) *28日は前日の講座の録画

このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。

13:30〜 上映
「東京物語」
(1953/135分/35mm)松竹大船
監督:小津安二郎 脚本:野田高梧、小津安二郎 撮影:厚田雄春
出演:笠智衆、東山千栄子、原節子、杉村春子

 

16:00〜 講座
(終了予定17:30) *28日は前日の講座の録画
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)
『東京物語』が小津安二郎の最高傑作であるかどうかはともかく、この映画が多くの人から小津の代表作と考えられていることは間違いないだろう。日本のみならず、海外でもファンの多いこの映画は、小津作品の中でもとりわけ広く観客に受け入れられる内容を持つと同時に、〈小津的なるもの〉が満遍なく散りばめられている作品でもある。その意味では、小津安二郎の映画を知るための絶好の入口となる作品かもしれない。今回の講座では、複数の脚本や小津の日記、関係者の証言など、残された様々な資料も参考にしつつ、小津映画の東京、垣間見える戦争の影、独特の音楽などなど、様々な角度から、いつものように細部に拘ってこの作品を分析してゆきながら、〈小津的なるもの〉とは何かについて改めて考えてみる。時間の余裕があれば、紀子3部作の残り2作『晩春』『麦秋』や、『秋日和』『小早川家の秋』などの原節子のイメージについても触れたい。

 

井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。訳書に『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

《参加費》 上映付き  一般1800円 ユース(25歳以下)1200円 会員1500円
予約受付
メールと電話によるご予約を承ります。鑑賞を希望される日時と作品名、お名前、電話番号をお知らせください。予約で満席でなければ、当日に予約無しでもご入場いただけます。
info@kobe-eiga.net 078-754-8039

文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業


連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第11回 殺人者はわれわれの中に──フリッツ・ラング『M』を読み解く

2021年6月12日(土)  5月から6月に延期となりました

このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。

13:30〜 上映
「M」
(ドイツ/1931/96分/16mm)
英語字幕版プリント、日本語字幕は投影
監督:フリッツ・ラング
脚本:テア・フォン・ハルボウ、フリッツ・ラング
撮影:フリッツ・アルノ・ヴァグナー
出演:ペーター・ローレ、オットー・ベルニッケ、グスタフ・グリュントゲンス、エレン・ウィドマン

 

15:30〜(終了予定17:00) 講座
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)
『M』がワイマール時代のドイツ映画を代表する極めつけの名作であることは言うまでもないが、この作品はまた、亡命映画作家フリッツ・ラングのフィルモグラフィーにおいても、彼のドイツ時代とアメリカ時代とをつなぐ蝶番のような位置を占める極めて重要な作品である。少女連続殺人というおぞましい事件をテーマにしながら、ここにはナチス前夜のベルリンの空気が見事に描かれていると同時に、アメリカ時代にも通じるラングの作品世界がほとんど完成しつつある。講座では、この傑作の時代背景やそこに現れるフリッツ・ラング的な諸テーマ、斬新なナラティヴと空間描写、それを支えるユニークな音響の使い方などなど、様々な観点から作品を読み解いてゆく。

 

井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。訳書に『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

《参加費》 参考上映付き  一般1500円 ユース(25歳以下)1000円 会員1200円
予約受付
メールと電話によるご予約を承ります。鑑賞を希望される日時と作品名、お名前、電話番号をお知らせください。予約で満席でなければ、当日に予約無しでもご入場いただけます。
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連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第10回 最も物議をかもしたアメリカ映画──グリフィス『国民の創生』を再考する

2020年10月31日(土)

このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。

13:30〜 上映
「国民の創生」
The Birth of a Nation
(アメリカ/1915/156分[16コマ|短縮版]/16mm)
監督:デヴィッド・ウォーク・グリフィス
原作:トーマス・ディクスン
脚本:フランク・ウッズ、デヴィッド・ウォーク・グリフィス
撮影:ビリー・ビッツァー
出演:リリアン・ギッシュ、メエ・マーシュ、エルマー・クリフトン、ロバート・ハロン、ヘンリー・B・ウォルソール、ミリアム・クーパー

伴奏:鳥飼りょう

 

16:20〜(終了予定17:50) 講座
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)
映画のアルカイックな時代に終わりを告げ、映画芸術の真の誕生を世に知らしめた、アメリカ映画最初の偉大な作品──グリフィスの『国民の創生』。世界の映画を見渡しても稀なことであるが、アメリカ映画において、国民の誕生は、映画の誕生とぴたり一つに重なり合う。それを象徴しているのがこの作品である。だが、この映画は他方で、最も嫌悪すべき人種差別主義的映画のシンボルとして、当時から今に至るまでタブーのように扱われてきたのだった。仮にグリフィスの映画に人種差別主義が存在するとして、それはいかなるものだったのか。『国民の創生』以前と以後のグリフィス作品における黒人やインディアンの描写も参照しつつ、この問題をもう少しニュアンス豊かに掘り下げてみたい。とはいえ、この映画はこの問題だけに収まりきるものではない。バイオグラフ時代からの集大成として作られたこの作品を通して、グリフィス映画の魅力のありかを探り、その映画史的意義についても再検討する。

 

井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。訳書に『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

《映画鑑賞料》 生演奏付き 一般1700円 ユース(25歳以下)1200円 会員1500円
《講座参加費》  一般1000円 ユース(25歳以下)500円 会員700円
予約受付
[先行予約]映画鑑賞と講座のセット予約
[開催一週間前より受付]映画鑑賞、または講座の単独予約
[映画鑑賞の単独予約]講座(定員19名)が満席になりましたので、映画鑑賞(定員38名)の単独予約を受け付けます。また、映画鑑賞を予約された方に限り、講座のキャンセル待ち予約を受け付けます。(10月5日より)

メールと電話によるご予約を承ります。鑑賞を希望される日時と作品名、お名前、電話番号をお知らせください。予約で満席でなければ、当日に予約無しでもご入場いただけます。
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連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第9回 子供の叫び声は聞こえない──ドライヤー『吸血鬼』の謎に迫る

2020年7月11日(土)
4月から7月に延期となりました
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)

このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。


15:15〜 参考上映
「吸血鬼」Vampyr
(フランス・ドイツ/1932/75分/16mm)
監督:カール・テオ・ドライヤー
撮影:ルドルフ・マテ

16:45〜(終了予定17:15 18:15) 講座
カール・テオ・ドライヤーにはいつも「聖なる映画作家」という呼び名がついてまわる。たしかに、彼の映画には、「聖なる」という言葉をつい使ってみたくもなる、静けさ、厳かさ、神秘に満ちた作品が多い。しばしば描かれるテーマの宗教性も、この言葉をいかにも彼にふさわしいものにしている。しかし、『裁かるゝジャンヌ』の灰色の壁が、実は、モノクロ画面において理想の階調をえるためにあえてピンク色に塗られていたことに象徴されるように、もしもドライヤーの映画に「聖なるもの」が描かれているとしても、それはひとえに映画というマジックによって可能になったのだということを忘れるべきではない。この初期の傑作『吸血鬼』においても、ドライヤーは映画ならではの技法をとおして唯一無二の世界を作り上げている。今回の講座では、この作品の特異なナラティヴや、迷路のような空間をつくりだすカットつなぎと移動カメラ、独特の音響効果などを、細かく分析すると同時に、あまり語られることのない原作小説との曖昧な関係や、吸血鬼映画というジャンルとの関わりなどについても考察を加えてゆく。また、ドライヤー自身の生い立ちがこの作品にいかなる影を落としているかについても考えてみたい。

井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。訳書に『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

《参加費》 参考上映付き  一般1500円 ユース(25歳以下)1000円 会員1200円
予約受付
各回入場制限(座席数の2分の1の19席)を行いますので、メールと電話によるご予約を承ります。鑑賞を希望される日時と作品名、お名前、電話番号をお知らせください。予約で満席でなければ、当日に予約無しでもご入場いただけます。
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連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第8回 パプストとブルックス──『パンドラの箱』を読み解く

2019年12月22日(日)

このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。

13:30〜 上映
「パンドラの箱」
Die Büchse der Pandora
(ドイツ/1929/131分/16mm)
監督:ゲオルク・ヴィルヘルム・パプスト
原作:フランク・ヴェデキント
脚本:ラディスラウス・ヴァイダ
撮影:ギュンター・クランプ
出演:ルイーズ・ブルックス、フリッツ・コルトナー、フランツ・レデラー、グスタフ・ディーズル

伴奏:塩屋楽団
(鈴木勝:guitar 山本信記:synthesizer, electronics 森本アリ:sampler, trumpet)
 

16:00〜(終了予定17:30) 講座
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)
G・W・パプストの映画『パンドラの箱』が作られてから今年で実に90年になる。しかしこの映画でルルを演じた女優ルイーズ・ブルックスはその輝きをいささかも失っていない。それどころか、彼女はその謎めいた存在感で現代のわれわれをますます魅了しつづけている。女優と登場人物が、そして作品そのものがこれほど分かち難く結びついた映画は稀である。『パンドラの箱』を語ることは、ルル=ブルックスを語ることと同じだった。しかし、それ故にこの映画のそれ以外の細部はしばしばし見過ごされてきたとも言える。今回の講座では、〈宿命の女〉ルル=ブルックスについて考えてゆく一方で、ヴェデキントの原作戯曲やワイマール文化、そしてパプストの演出などにも注目しながらこの映画を読み解いてゆく。『パンドラの箱』はブルックスという稀有な存在なしにはありえなかった。それは間違いないが、監督パプストとの運命的な出会いがなければこの作品が生まれなかったこともまた確かである。今講座では、巨匠と呼ばれながら今ではあまり語られることのない、このなんとも輪郭の曖昧な〈映画作家〉にも照明を当ててみたい。

井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。訳書に『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

《映画鑑賞料》 生演奏付き 一般1400円 学生1200円 会員1200円
《講座参加費》  一般1000円 学生500円 会員700円


連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第7回 ネオリアリズムから遠く離れて──『無防備都市』再考

2019年7月7日(日)
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)

このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。

15:10〜 参考上映
「無防備都市」
Roma città aperta
(イタリア/1945/103分/16mm)
監督:ロベルト・ロッセリーニ
脚本:セルジオ・アミディ、フェデリコ・フェリーニ
撮影:ウバルド・アラータ
出演:アルド・ファブリッツィ、アンナ・マニャーニ、マルチェロ・パリエーロ

17:00〜(終了予定18:30) 講座
ロッセリーニの名前はネオリアリズムという言葉と分かちがたく結びついている。むろん、この映画作家はそんな言葉に収まってしまうような小さな存在ではないのだが、ロッセリーニに貼られたこのレッテルが、彼の地位を不動のものにする一方で、その全体像を見えづらくしてきたことも確かである。ネオリアリズムの誕生を世界に知らしめ、イタリア映画史上最も重要な作品と言われたりもする『無防備都市』でさえ、今見直してみれば、多くの人が抱いているネオリアリズムのイメージとはいろいろな点でズレていることに気づくだろう。今回の講座では、様々な要素が混在するこの〈不純な〉ネオリアリズム映画を、『戦火のかなた』や『ドイツ零年』はもちろん、ファシズム時代のイタリア映画などとの関係も探りつつ、さらにはメロドラマや映画的クリシェなどといった様々な観点からも、考察していく予定である。

井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。訳書に『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

《参加費》 参考上映付き  一般1500円 学生1000円 会員1200円


ハワード・ホークス特集 1930年代編
2019年4月27日(土)〜29日(月・祝)
2019年5月3日(金・祝)〜5日(日)

アメリカ映画の巨匠ハワード・ホークスの1930年代の監督作8本を一挙上映!
連続講座「20世紀傑作映画 再(発)見」も併せて開催します。

 

「暗黒街の顔役」Scarface
(1932/93分)
監督・製作:ハワード・ホークス
脚本:ベン・ヘクト
撮影:リー・ガームス、L・W・オコンネル
出演:ポール・ムニ、アン・ドヴォラック、ジョージ・ラフト、ボリス・カーロフ

暗黒街の帝王アル・カポネの盛衰を、チェーザレ・ボルチアとルクレツィア・ボルチアの近親相姦的な兄妹の物語と重ね合わせて描いたギャング映画の金字塔であり、以後のこのジャンルの作品に決定的な影響を与えた。ジョージ・ラフトのコイン投げやボーリング場でのボリス・カーロフの最後など、今や伝説となっている名場面も数多い。ギャングの描き方などをめぐって検閲にひっかかり改変を余儀なくされ、エンディングも複数存在する。ブライアン・デ・パルマがアル・パチーノ主演で『スカーフェイス』(83) としてリメイクした。

 

「群衆の歓呼」The Crowd Roars
(1932/85分)
監督:ハワード・ホークス
原作:シートン・I・ミラー、ハワード・ホークス
出演:ジェームズ・キャグニー、ジョーン・ブロンデル、アン・ドヴォラック、エリック・リンデン

ワーナーでホークスがジェームズ・キャグニー主演で撮った2本のうちの一つ(もう一本は『無限の青空』)。レーサーでもあったホークスが、カーレースの世界を描いた活劇である。この作品あたりから始まる早口の台詞回しは、『ヒズ・ガール・フライデー』のオーバーラップするマシンガン・トークで頂点に達する。キャグニーがアン・ドヴォラックに肩を抱かれて泣くシーンは忘れがたい。男が泣く映画としても記憶されるべき一本である。ちなみにホークスは最晩年にもカーレースの世界を描いた『レッドライン7000』を撮っている。

 

「奇傑パンチョ」Viva Villa!
(1934/115分)
監督:ジャック・コンウェイ、ハワード・ホークス(クレジットなし)
脚本:ベン・ヘクト
出演:ウォーレス・ビアリー、レオ・キャリロ、フェイ・レイ、ドナルド・クック

メキシコ革命の英雄パンチョ・ビリャをウォーレス・ビアリー主演で描いた歴史活劇。『今日限りの命』をのぞくと、ホークスがMGMで作った映画はこれしかない。『大自然の凱歌』同様、監督を途中で降板させられた作品だが、実質的な監督はホークスだったと言われている(メキシコ・ロケをホークスが行い、それ以外の室内シーンなどをJ・コンウェイがMGMの撮影所で撮った)。この映画のパンチョは、『暗黒街の顔役』のトニー・カモンテらと並んで、ホークスが描いた最も強烈なキャラクターの一人である。紛れもなくホークスの作品でありながら、上記の事情からいささか過小評価されるきらいがあり、再評価が待たれる。

 

「特急二十世紀」Twentieth Century
(1934/91分)
監督・製作:ハワード・ホークス
脚本:チャールズ・マッカーサー、ベン・ヘクト
出演:ジョン・バリモア、キャロル・ロンバード、ウォルター・コノリー、ロスコー・カーンズ

傲慢で嫉妬深い舞台演出家と、彼を捨ててハリウッドに行った女優が、偶然同じ列車に乗り合わせたことから起きる珍騒動を描いたホークス初のスクリューボール・コメディで、これを彼のコメディの頂点と考える人も少なくない。いかにもホークスらしく、心理ではなく叫びとジェスチャーによって描かれる男女の活劇に終始圧倒される。ジョン・バリモア(ドリュー・バリモアの祖父)の芝居じみたキレ芸やキャロル・ロンバードのヒステリックな演技に加えて、列車の中であらゆる物や場所に「悔改めよ」と書かれたステッカーを貼り付けていく謎の老人など、ユニークな脇役たちが大いに笑わせてくれる。

 

「バーバリー・コースト」Barbary Coast
(1936/90分)
監督:ハワード・ホークス
脚本:ベン・ヘクト、チャールズ・マッカーサー
出演:ミリアム・ホプキンス、エドワード・G・ロビンソン、ジョエル・マクリー、ブライアン・ドンレヴィ

1849年、ゴールド・ラッシュに沸くサンフランシスコの賭博場を舞台に語られる、ギャング映画のようでもあり、西部劇のようでもあるピカレスクな物語。実在した女性エレオノール・デュポンがモデルになっている。ホークス自身はあまり気に入ってなかったらしいが、エドワード・G・ロビンソンの周囲に漂うヤクザな雰囲気や、港町に立ち込める霧が醸し出すホークスらしい抑制のきいたポエジーが忘れがたい名作。ホークス作品に計6回出演することになる超個性派俳優ウォルター・ブレナンのホークス初出演作品でもあり、その型破りで愛すべきキャラクターの魅力はこの作品ですでに存分に発揮されている。

 

「永遠(とわ)の戦場」The Road to Glory
(1936/103分)
監督:ハワード・ホークス
脚本:ジョエル・セイアー、ウィリアム・フォークナー
撮影:グレッグ・トーランド
出演:フレデリック・マーチ、ワーナー・バクスター、ライオネル・バリモア、ジューン・ラング

第一次世界大戦のフランス軍の塹壕戦を描いた戦争映画。フランス人ならだれもが知っている戦争映画の古典レイモン・ベルナールの『木の十字架』に部分的にインスパイアされている。好戦的な映画であるとはとても言えないが、あからさまに反戦的なわけでもなく、命をかけて任務を遂行してゆく男たちをただ淡々と描いてゆくところがいかにもホークスらしい。 二人の男が同じ女を愛するという物語は、『港々に女あり』『虎鮫』『大自然の凱歌』などのホークス作品でも繰り返し描かれるテーマである。歳をごまかしまでして息子の指揮する部隊に入隊して戦おうとする老齢の父親を、ライオネル・バリモアが印象的に演じていて忘れがたい。

 

「大自然の凱歌」Come and Get It
(1936/99分)
監督:ウィリアム・ワイラー、ハワード・ホークス
撮影:グレッグ・トーランド、ルドルフ・マテ
出演:エドワード・アーノルド、ウォルター・ブレナン、ジョエル・マクリー、フランシス・ファーマー

ウィスコンシンの大森林を舞台にした大作ロマン。原作者のエドナ・ファーバーは、それと知らずにホークスの祖父を作品のモデルのひとりにしていた。ホークスのルーツを知る上でも見逃せない一本である。プロデューサーと対立したためにホークスが監督を途中降板し、ワイラーがその後を引き受けた。前半のホークスの豪快な演出と、後半のワイラーの文芸メロドラマ調があまりにも違いすぎていて面白い。ホークスはこの映画を、たとえばイーストウッド(!)を使って西部劇としてリメイクしたいと思っていた。悲劇的な末路をたどった伝説の女優フランシス・ファーマーを見られる数少ない作品の一つでもある。

 

「赤ちゃん教育」Bringing Up Baby
(1938/102分)
監督・製作:ハワード・ホークス
脚本:ダドリー・ニコルズ、ヘイジャー・ワイルド
撮影:ラッセル・メティ
出演:ケイリー・グラント、キャサリン・ヘプバーン、チャーリー・ラグルス、バリー・フィッツジェラルド

これ以後、ホークス的世界に欠かせない住人のひとりになっていくケイリー・グラントが、ホークスと初めてタッグを組み、キューカーの『男装』に続いてキャサリン・ヘップバーンと共演したスクリューボール・コメディ。女に免疫のない博物館主グラントが、「赤ちゃん」(ベイビー)と呼ばれる豹を連れた令嬢ヘップバーンと出会ってしまったことから、デタラメな騒動が繰り広げられてゆく。登場人物全員が奇人変人という、何度見ても抱腹絶倒、茫然自失のクレイジーな大傑作。時代に先んじすぎたためか公開当時はまるでヒットしなかったが、今や映画史に残る古典である。

 

*全作品16mmフィルム上映

解説:井上正昭
協力:プラネット・プラス・ワン
 

《料金》入れ替え制1本あたり
一般1000円 学生700円 会員900円
《割引》当日2本目は200円引き

 


連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第6回 ハワード・ホークス──〈一目瞭然の映画〉の謎

2019年4月27日(土)
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)

このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。

ジャック・リヴェットが「一目瞭然の映画」という言葉でその映画的知性を讃え、ゴダール、トリュフォー、スピルバーグ、ジョン・カーペンターなど、多くの監督たちから敬愛されてきた映画監督ハワード・ホークス。今回の「20世紀傑作映画再(発)見」は、いつもとは趣向を変えて、この稀有な映画作家の軌跡をたどる第一回目の特集上映の一環として行われる。『暗黒街の顔役』『赤ちゃん教育』『空軍』『赤い河』『遊星よりの物体X』など、あらゆるジャンルを手がけながら、ホークスは驚くべき一貫性をたもちつづけた。この機会に彼の作品をまとめて見た人は、〈作家性〉とでも呼ぶしかないものに否が応でも気付かされるに違いない。エクリチュールの透明さゆえに語り難い映画作家ではあるが、今回の講座では、一目瞭然であることがそのまま神秘でもあるようなホークス映画の魅力になんとか迫りたいと思う。

井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。訳書に『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

《参加費》  無料(要ハワード・ホークス特集のチケット半券)


連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第5回 涙とワルツ──マックス・オフュルスと『忘れじの面影』

2018年10月6日(土)
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)

このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。

13:30〜 参考上映
「忘れじの面影」
Letter from an Unknown Woman
(アメリカ/1948/87分/16mm)
監督:マックス・オフュルス
脚本:ハワード・コッホ
撮影:フランク・プラナー
出演:ジョーン・フォンテーン、ルイ・ジュールダン

15:10〜(終了予定16:40) 講座
トリュフォー、キューブリック、P・T・アンダーソンなど、様々な作家たちにリスペクトされてきた監督マックス・オフュルス。今回は、アメリカ亡命時代の最高傑作であり、彼の最も美しい作品の一つである『忘れじの面影』を取り上げる。ドイツ時代の『恋愛三昧』やフランス帰国後の『たそがれの女心』など各時代の代表作とも比較しつつ、この作品を様々な角度から仔細に見てゆきながら、絶えず移動し続けたこの映画作家の作家性の在り処を探っていくと同時に、「女性映画」や「メロドラマ」といった問題についても少し考えてみたい。

井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。訳書に『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

《参加費》 参考上映付き 1500円 学生1000円


連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第4回 『カメラを持った男』──機械の眼が見た〈真実〉

2018年5月26日(土)
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)

このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。

14:00 13:30〜 参考上映
「カメラを持った男」
Человек с киноаппаратом
(ソ連/1929/66分[24fps] 100分[16fps]/16mm)

「キノ・プラウダ」
Kino-pravda
(ソ連/1922/20分[16fps]/16mm)
「キノ・プラウダ」1-12号を再編集したダイジェスト版。
監督:ジガ・ヴェルトフ
伴奏:鳥飼りょう

15:45〜(終了予定17:15) 講座
劇映画を否定し、「不意打ちの人生」を捉まえることを唱え、ゴダールにも影響を与えたソ連の映画作家ジガ・ヴェルトフ。今回の講座では、彼の代表作であり、映画史上もっとも重要なドキュメンタリー=アヴァンギャルドの一つ『カメラを持った男』について考える。パンク映画と呼びたくなるほど現代的なこの映画を、あえて同時代の文脈の中に置き直して、その画面の意味を読み解いてゆくと同時に、エイゼンシュテインのモンタージュ理論はもちろん、未来派・構成主義といった同時代の芸術運動やスターリン主義などとの関係についても検証する。

井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。訳書に『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

《参加費》 参考上映付き 1800円 学生1200円


連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第3回 1930年代のジャン・ルノワール

2017年9月24日(日)
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)

このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。

13:30〜 参考上映
「素晴らしき放浪者」Boudu Sauvé des Eaux
(フランス/1932/84分/16mm)
監督・脚本:ジャン・ルノワール
原作:ルネ・フォーショワ
撮影:マルセル・リュシアン
出演:ミシェル・シモン、シャルル・グランヴァル、マルセル・エニア、セブリーヌ・レルシンスカ、ジャック・ベッケル

15:15〜(終了予定16:45) 講座
1930年代のジャン・ルノワール
ジャン・ルノワールが世界最高の監督の一人であるという評価は、日本においても今や多くの人に共有されるようになったといえる。しかし彼の30年代の作品は、いまだに未公開の『人生は我らのもの』を始めとして、ちゃんと見られているという状態からはまだまだ程遠いし、この時代の彼の政治的活動のこともあまり知られていない。今回の講座では、リヴェットが「完全に政治的な映画」と呼ぶトーキー初期のアナーキーな傑作『素晴らしき放浪者』を様々な角度から分析しつつ、30年代のルノワールの活動全般についても考察する予定である。

井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)などの訳書がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

《参加費》 1500円(参考上映付き)


連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第2回 ジョン・フォードと西部劇の神話──『駅馬車』をめぐって

2017年6月24日(土)
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)
 
このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。
 
13:30〜 参考上映
「駅馬車」Stagecoach
(アメリカ/1939年/99分/16mm)
監督:ジョン・フォード
製作総指揮:ウォルター・ウェンジャー
原作:アーネスト・ヘイコックス
脚本:ダドリー・ニコルズ
撮影:バート・グレノン、レイ・ビンガー
出演:ジョン・ウェイン 、トーマス・ミッチェル、クレア・トレヴァー、ルイーズ・プラット、ジョン・キャラダイン

 
15:30〜(終了予定17:00) 講座
ジョン・フォードと西部劇の神話──『駅馬車』をめぐって
「古典的完成にまで達したスタイルの成熟を示す理想的な実例」という言葉でアンドレ・バザンが絶賛した、西部劇の代名詞とも言える名作『駅馬車』。完全に低迷していた西部劇を復活させると同時に、ほとんど無名だったジョン・ウェインを一躍スターへと変貌させた、このあらゆる意味で神話的な作品を、西部劇の歴史とジョン・フォードのフィルモグラフィーのなかに位置づけ直し、分析を加えてゆきながら、ウェルズやストローブ=ユイレなどの〈現代的〉作家たちからも絶対的な評価を得ているこの巨匠の魅力に迫る。
 

井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)などの訳書がある。
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《参加費》 1500円(参考上映付き)


連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第1回 『市民ケーン』とは何だったのか

2017年4月8日(土)
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)
 
このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。
 
13:30〜 参考上映
kane01「市民ケーン」Citizen Kane
(アメリカ/1941年/119分/16mm)
製作・監督:オーソン・ウェルズ
脚本:ハーマン・J・マンキウィッツ、オーソン・ウェルズ
撮影:グレッグ・トーランド
編集:ロバート・ワイズ
音楽:バーナード・ハーマン
出演:オーソン・ウェルズ、ジョセフ・コットン 、ドロシー・カミンゴア、エヴェレット・スローン、アグネス・ムーアヘッド
 
15:45〜(終了予定17:15) 講座
『市民ケーン』とは何だったのか
映画批評家や映画雑誌が選ぶオールタイム・ベストで長らく1位を独占してきた文字通りの不朽の名作『市民ケーン』。だがしかし、今となっては、この映画がなぜ当時あれほどのスキャンダルを巻き起こしたのか、その理由さえ知らない人も少なくない。『市民ケーン』とは一体何だったのか。いまだに信じられている数々の神話を解き明かしながら、様々な角度から作品を分析してゆき、この映画の登場がなぜ、映画史における「コペルニクス的転回」とまで言われるほど、映画の様相を一変させることになったのかを再検証する。
 

井上正昭
1964年生まれ。京都大学文学部仏文科卒業。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)などの訳書がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

 

《参加費》 1500円(参考上映付き)


これまでのプログラム|神戸映画資料館

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